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小売業界の景気横ばいか 2023年は苦難を乗り越え成長を

2023年がスタートして3ヶ月、本年の景気は、概ね横ばい傾向と予測されています。

アフターコロナとして街中の人出は増えつつあり、インバウンド需要に関しても増加が期待されていますが、世界的なインフレと人件費の高騰、さらに資源や原材料の供給が不安定になっているといった要因により、飛躍的な成長は望めないと予測している企業が大半を占めています。

こうした要因への対策として、各企業は業務プロセスの見直しや、データに基づく販売商品の絞り込み、価格を据え置いて内容量を減らすシュリンクフレーションといった施策を展開しています。

また、ポップアップストアに、「顧客の動向を分析する」という新たな役目を見出したり、AIを活用したデジタル施策を展開したりと、時代や今の価値観に合わせた戦略を実施しています。

本稿では、小売にフォーカスした2023年2月の景気動向を見ながら、長引く景気後退の風潮の中でどのように成長戦略を練っていくべきかというトピックについてまとめています。

商品価格の抜本的な見直し、販売形態とデジタル施策の戦略についても触れています。

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2023年の景気動向

帝国データバンク「2023年2月の景気動向調査」によると、2023年2月の景気DI(景気動向指数)は、42.1となっています。これは同年1月の42.0から概ね横ばいの数値です。

引用:2023年2月の景気動向調査 帝国データバンク
https://www.tdb-di.com/economic-trend-survey/ets202302.php

3月以降も、慢性化する人手不足と、進まない物価高の価格転嫁、原材料や輸送コストの高騰といった下振れ要因と、アフターコロナの人出増加やインバウンド需要の復調といった要因が組み合わさってほぼ横ばい状態で推移すると予測されています。

日本の企業全体につぃては、大企業が伸び悩む中で中小企業においては指数改善が見られました。

また、小売に限定して指数を見ると、2ヶ月連続で景気DI改善の傾向が認められます。

アパレル関連は4ヶ月ぶりの数値改善、医薬品関連も3ヶ月ぶりの改善が見られた一方で、スーパーでは食料品・飲料の価格高騰による買い控えの影響で景気DIが下がっています。

小売業界の成長は見込めるか

小売は、仕入れ価格の高騰に対して価格転嫁が難しい状況であること、引き続き人材不足が常態化していること等から厳しい局面が続くと考えられています。

2024年4月からは、物流業界にも働き方改革関連法が適用されて労働時間の上限規制が設けられることになりますが、このいわゆる「2024年問題」も小売業界にとっては解決すべき課題です。

サプライチェーンの構造改革、提供していたサービス体制の抜本な見直しを迫られる事業者も少なくありません。2023年の成長戦略にも組み込むべき課題になっていると言えるでしょう。

とはいえ、ステイホームの傾向から転じて外出する人が増えたため、この2ヶ月は小売の景気が全体的にやや改善傾向にあります。

特に中小企業はインバウンド需要等も徐々に見込めるようになり、家電の売上も堅調です。

物価高が引き続きリスクに

コスト高騰による伸び悩みは、2021年から断続的に続いています。

コンビニでは、売上が引き続き好調であるにも関わらず原材料の高騰によって商品の値上げ、もしくは利益の減少が見られます。スーパーマーケットも、同様の悩みを抱えています。

物価高による影響は大企業において顕著で、店舗を数多く運営する企業では物価高による消費者の買い控えだけでなく、アルバイトが集まらないといった人的課題も問題になっています。

世界的なインフレによって原材料コストが高騰している企業が多く、個人消費は上向いている一方で利益は微増、あるいは伸び悩みという現状が見えてきます。

原材料コストは、商品の値上げだけでなく、価格据え置きで内容量を減らすシュリンクフレーションで対応する企業も少なくなく、どのように物価高を転嫁するかが売上を上げるための課題となっている様子が窺えます。

世界的な景気後退に対応する小売企業

景気後退は、ウクライナとロシアにおける戦乱、コロナで一変した価値観等、複合的な要因によって引き起こされています。

ウクライナ危機は資源や物資の供給を滞らせています。また、光熱費や生活必需品の値上げが複数回に渡って行われるような大幅なインフレも世界的な問題となっていて、各国の政府が支援を行っても追いつかない状態が続いています。

この2点にプラスして人材不足とそれに伴う人件費の高騰が重なり、世界の景気は三重苦にさらされていると見る専門家もいます。

こうした状況は一過性のものではなく、世界的な企業の多くが、これからもインフレは続き、世界的な供給制限が継続すると予測しています。

ここから見えてくるのは、景気の横ばいあるいは後退という傾向は世界的なもので、日本だけが景気の伸び悩みにあえいでいるわけではないという事です。

世界の企業も国内の企業も同様に、商品価格や販売形態といった基本的な事柄を見直したり、現代に合わせたデジタル施策を展開したり等、今の消費者の価値観やライフスタイルに合わせた戦略で対抗しています。

商品価格

商品価格の戦略として検討される事柄としてはまず、PB(プライベートブランド)の開発、展開が挙げられます。

PBの概念は、1959年にはすでに百貨店の紳士服として存在していたと言われています。

とはいえ、従来のPBは、NB(ナショナルブランド)の代わりに購入される廉価版というイメージが根強く、いわるゆ「ブランド」としての求心力はそれほど強いものではありませんでした。

しかし、近年はその傾向に変化が見られています。

特に、2022年は日用品を中心に約2万品目が価格改定で値上がりとなり、家計負担額も年間約6.8万円増額となりました。

こうした事情から、低価格でありながら企業のこだわりと工夫が感じられるPBの商品が支持されるようになり、売上は拡大しています。

PBの売上が伸びた企業に見られる特徴として、「ニーズを分析して差別化商品の開発に成功している」、「地場のものを活用したローカルPBを展開している」といった点が挙げられます。

具体な成功例には、消費者の購買傾向を分析して品目数を減らしたにも関わらず前年以上の売上を達成している企業、ヘルシー志向や手軽さといったニーズをにピンポイントで応えている商品を発表している企業が挙げられます。

また、ローカルPBの注目度も高い傾向にあり、野菜や花、鮮魚といった地場にこだわったPB商品は、4〜5年で約2倍まで売上を伸ばしている企業があります。

ここから、PBは廉価版というイメージはすでに過去のものとなっていることが見て取れます。言い換えればPB展開を検討する際は、低価格というだけでなく何らかのニーズや目的に特化したポイントを持つ商品を販売する必要があるという事になります。

販売形態

米国では、ポップアップストアが相次いで出店されて好調な売上を上げています。

数日から数週間限定で出店されるポップアップストアは、1990年代の米国カリフォルニアで流行し、世界各国でイベントやブランドのプロモーションとして実施されるようになりました。

現在の米国のポップアップストアは、そうしたプロモーションの一環としてではなく、顧客データの収集ツールとしての役割を期待して出店され成功しています。

普段はネット販売しか行わないアパレルブランドが、実際に試着できるようにポップアップストアが出店したり、動画配信サービス大手が配信作品の関連グッズを販売するためにポップアップストアを出店したりして、好評を博しています。

日本国内でも同様のストア出店は見られるようになりました。
日本のポップアップストア出店傾向としては、アパレルブランドがカフェを併設する、ポップアップストアでしか購入できない先行販売の限定アイテムを販売する、といった特別感を演出する風潮が見られます。

アフターコロナとなる2023年は、多くの消費者がオンラインの利便性を享受しつつも特別な顧客体験をしたい考える年でもあります。ポップアップストアのような限定的な購買体験、そして誰もが特別になれるパーソナイライズされた顧客体験等が、小売業界の景気を押し上げるキーワードとして重要になってくるかもしれません。

特に、パーソナイライズされた顧客体験については、ここ数年注目されてきたワードですが、インフレ傾向によって生活必需品の購入が優先されがちな2022年〜2023年は、さらに小さな贅沢品を購入する際の満足感を重視する風潮が高まっていくのではないでしょうか。

デジタル施策

コロナ禍で、オンラインショッピングや様々なオンライン体験は普及しました。

しかし、2023年はこの状況をもう一歩先へ進めていく必要があると考えられます。

デジタル技術が普及した後の次の一歩とは、すなわち業務におけるAIの活用や、プロセスの真の自動化です。一時的にデジタル技術を導入するのではなく、業務プロセスを可能な限りデジタルに移行してかかる人的コスト等を恒久的に削減する事も今後や求められていくかもしれません。

業務の一部をデジタルに移行する事で、今までかかっていた様々なコストを削減してその分有用な人材に人件費を充てられるようにするのが、「三重苦」の未来を勝ち抜く一つの手段となるはずです。

有効なデジタル施策を展開していくためには、デジタル人材の確保が必要です。

デジタル人材はすでに各企業ともに獲得に奔走しており、大企業は破格のオファーを提示して優秀なデジタル人材を募集しています。

しかし、デジタル人材の確保や育成には時間とコストがかかるため、自社のデジタル施策をすべて内製するまでには長い道のりが必要とされます。

ゆえに、スピード感のある施策展開を望む場合は、外注や協業といったスタイルを活用させていくのも有効と言えます。

前述の2024年問題や、これから続くと予測される景気後退の雲を突き破って企業として成長していくためには、当然ながら迅速なデジタル施策が求められます。デジタル施策の検討やそれに従事する人材の確保については、スピード感を第一に柔軟な体制で臨むのが基本となるのではないでしょうか。

景気横ばいか後退か、企業の舵取りによって未来は変わる

小売にとって、輸送コストの増大と輸送システムそのものの変化を求められる2024年問題が迫る本年はどのように舵取りをすべきか悩ましいところです。

資源の安定供給が難しいという世界情勢や、止まらない価格高騰の連鎖といった困難は自社の努力だけでは改善が難しく、このような状況で成長戦略を描くのは困難と感じるかもしれません。段落

しかし、必要な部分はAIやデジタル技術を応用して不要なコストを削減する、利益率の低い商品を見直して徹底的に売れ筋だけに絞るといった、大胆な施策を時に決断する事で時代に合わせた成長を遂げる事ができるはずです。

景気後退を静観して何もしないか、横ばいから飛躍につなげられるかは、各企業の施策検討や戦略展開によって変わってくるのではないでしょうか。

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