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進化するAIレジ、未来の店舗運営の実証実験続く

AI技術の発達によって、人間がレジで会計をしなくても良い仕組みが次々に開発されています。

2018年に世界中で大きな話題となったレジのないAIコンビニ「Amazon Go」を皮切りに、日本でもAIやディープラーニング技術を駆使したコンビニやスーパーの構想が次々に発表されました。しかし実際のところそれほど目にする機会はありません。

一時期矢継ぎ早に発表されていたAIレジのその後の展開はどうなったのでしょうか。以下では、最新のAIレジ事情についてまとめていきたいと思います。

【目次】

AIレジとは?

最近になって「AIレジ」「AIコンビニ(スーパー)」などの言葉を聞くようになりましたが、AIレジとはどのようなものを指すのでしょうか。

AIレジという言葉自体の定義は今のところなく、便宜的にAIレジと呼ばれていますが、今のところ日本で主流なものは画像認識技術が搭載された会計まで一貫して行うレジを指すことが多いです。

どのようなしくみかというと、事前に登録された商品画像を記憶させて商品の形・パッケージに表示されている文字、画像、バーコードなどから商品を認識させる画像認識技術が用いられています。自動で商品を認識することができるため、スタッフがレジで商品をひとつずつスキャンしたり手打ちすることなしに会計を行うことができる便利なレジシステムです。

AIレジの事例1:画像認識技術を駆使したセミセルフレジがパン屋で大活躍

兵庫県に本社を置く株式会社ブレインは、画像認識技術によって商品を読み取る「AIスキャン」というサービスを提供しています。

同社がパン屋からの依頼で開発した「ベーカリースキャン」はトレーに乗った様々なパンの種類を画像で認識し、会計まで行うことができます。来店客が会計まで行うセミセルフレジですが、導入によって混雑時の会計を行うスタッフが減らすことができました。

仕組みとしては、いくつかの商品画像を学習させ、輪郭によって商品を区別しています。
輪郭をはっきりと読み取らせるために透明なトレーが用いられており、下からライトを当てることでより精度の高い画像認識を可能にしました。商品登録のためには数点の画像を認識させるだけで済むため、登録作業にそれほど時間を割かれることもありません。
時々別の商品に間違えることもあるそうですが、その際はスタッフが手動で画面を操作することで正しいものに修正することができます。修正されることで認識精度が上がっていく仕組みです。

現在ではこのベーカリースキャンを用いているパン屋が増えており、需要も高いことがわかりました。国内だけではなく海外のメディアでもこのベーカリースキャンが取り上げられており、注目を集めていることがうかがええます。

参考:ブレイン株式会社 http://bakeryscan.com/

AIレジの事例2:JR東日本の実証実験で用いられたAIレジ「ワンダーレジ」

AIレジとして販売されているサインポスト株式会社の「ワンダーレジ」は、世界初のAI搭載レジです。上記に挙げたブレイン社のAIスキャンのように画像認識によって商品を認識し、会計まで行います。

ワンダーレジは2017年にはJR大宮駅で、また2018年にはJR赤羽駅にてポップアップストアを設置し実証実験を行いました。この2回の実証実験により、今後の運用に役立てるための開発が行われています。

2019年4月からは浜松町にある生活彩家 貿易センタービル店にて運用されており、今のところ完了期限は設けられていません。ワンダーレジの使い心地が気になる方は実際に足を運んでみてもよいかもしれません。

参考:サインポスト https://signpost1.com/wonder/

AIレジとRFIDタグによるセルフレジとの違い

AIレジを見かける機会はまだ多くないですが、近年ではセルフレジを導入している企業が多くなりました。

セルフレジといえばファーストリテイリング社のユニクロやGUで導入されているセルフレジを思い出す方もいるでしょう。セルフレジが導入されてからしばらく経ちますが、今ではすっかり定着した感があります。

会計手順としては、GUの場合セルフレジ下部のロッカーを開けたあとに商品の入ったカゴか商品をそのまま入れるだけで自動的に商品を判別し、会計まで一貫して行うことができます。
ユニクロの場合は商品そのものか商品の入ったカゴを置くスペースがあるので、そちらに置くだけで機械が商品の種類を読み取り会計を行うことができます。

このセルフレジとAIレジとの大きな違いは商品の認識方法にあります。

こちらのセルフレジは画像で商品を認識しているわけではなく、商品タグにあるRFIDによって商品を識別しています。
RFID(Radio Frequency Identification)は、記録媒体であるICタグ(RFIDタグ)に登録された情報を、無線電波によって接触することなく読み書きする仕組みのことです。

参考:デンソーウェーブ
https://www.denso-wave.com/ja/adcd/fundamental/rfid/rfid/index.html

RFIDタグを導入するためには高いコストがかかると言われてきましたが、ファーストリテイリング社が導入したセルフレジに用いられたRFIDタグは低いコストでの導入を可能にしました。RFIDで認識するため、たとえ商品にシワが寄っていたり変形していても問題なく商品を読み取ることができます。

もし商品が簡単に変形するものであれば、画像認識を行うレジではなくRFIDタグによる会計ができるレジが合っているでしょう。

AIレジを導入するメリット/デメリット

次に、AIレジを導入するメリットとデメリットについて解説していきたいと思います。
AIレジを導入するメリットは次の4点に集約できます。

  1. スタッフの人手不足解消
  2. 人件費削減
  3. 会計にかかる時間の短縮化
  4. 来店客のレジ待ち時間削減

一方で、次のようなデメリットもあります。

  • 商品をうまく認識できない場合、スタッフが対応しなければならない
  • AIレジの扱いに慣れていない人は利用しない
  • 決済方法を充実させる必要がある
  • 商品をすべて読み取り面に並べる必要があるため、大量の商品読み取りには時間がかかる
  • 商品の置き方によっては読み取りができない場合も
  • 故障の可能性もあるため、全てをAIレジにすると混乱が生じるリスクもある

AIレジの読み取りはまだ完璧ではなく、上記に挙げたベーカリースキャンも精度は100%ではありません。しかし、修正していくことでデータベースに情報が蓄積され、学習機能で分析精度が上がっていくのがAIレジの特徴です。

またAIレジの最大の難点は商品の置き方や商品点数でしょう。
例えばパッケージに様々な情報が印刷されている商品では機械が読み取りやすいように一定の面を確認しながら置いていくのは時間がかかる上に、商品点数が多いと商品を並べるだけでも時間がかかります。また商品点数が多いと商品登録作業にも時間がかかるため、画像認識によるAIレジは少量の商品の会計にのみ向いていると言えるでしょう。そのため今のところ会計スタッフを完全にゼロにするのは難しく、AIレジはあくまでも補助的に用いる方法にとどまります。

大手コンビニチェーン各社の動向

大手コンビニエンスストアのローソン、セブンイレブン、ファミリーマートはAIをどのように取り入れようとしているのでしょうか。以下、最新ニュースを取り上げて紹介していきます。

Amazon GOに一番近い?ファミリーマートの実証実験

ファミリーマートは2019年4月にパナソニックと共同で最新技術を活用したコンビニを横浜にオープンさせました。まだ実験段階で社員にしか利用できないようですが、一番Amazon Goに近いコンビニかもしれません。

店舗内にはカメラやセンサーが取り付けられており、人の動線や混雑状況を読み取るのに加え、商品の在庫状況を確認するために用いられます。決済は顔認証と画像認識によるAIレジを組み合わせた「手ぶら決済」、棚の表示や掲示物を電子表示させることで商品入れ替えやレイアウト変更にかかる時間を短縮させる狙いもあります。

ローソンは「ローソンスマホペイ」によるセルフレジを運用

ローソンは来店客が少なくなる深夜0時から5時までの時間帯でセルフレジに切り替える方針を発表しています。実験は2019年8月23日(金)から一部店舗にて行われています。対象店舗では、深夜の時間帯に来店する場合ローソンのアプリまたは顔認証によって入店し、セルフレジにてバーコードを読み取り来店客自身が会計を行うしくみです。ローソンの方針としては「省人化」であり、完全に無人になるわけではなく、品出しや発注といった業務はスタッフが行います。

参考:ローソン
https://www.lawson.co.jp/lab/tsuushin/art/1381668_4659.html

ローソンは2015年からいち早くAIを活用した発注システムを導入しており、天気や来店客の特徴、また近隣のイベントなどから販売数を予測するセミオート発注システムによって欠品を減らし、発注業務にかかる時間を削減・商品廃棄を減らす取り組みを行っています。

顔認証システムを実験中のセブンイレブン

セブンイレブンは2018年12月からNECと共に新しいコンビニ作りを始めています。
こちらも今はまだ実験段階ですが、入店する際に顔認証による本人確認を行い、会計も顔認証で行います。

また、セブンイレブンはローソンと同じくAIを活用した発注支援システムを導入することで業務にかかる時間を削減する取り組みも行なっています。

AIレジの運用はまだまだ先?

以上、AIレジについての解説でした。
AIレジは実験段階のものがほとんどで実際の導入には少々ハードルが高いですが、会計まで一貫して行ってくれるAIレジが広く実用化されるようになれば小売店のオーナーにとっても買い物客にとっても非常に便利なものになるでしょう。

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