インバウンド対策セミナーレポート「迫る東京五輪!増加するインバウンドにもっと対応する店舗」
2019年8月に開催されたインバウンド対策セミナー「迫る東京五輪!増加するインバウンドにもっと対応する店舗」は、増加するインバウンド消費を逃さないための対策について小売店、航空輸送、店舗ソリューションの各分野から現状分析を元に解説されました。
申込数多数で席数を大幅に拡大し、好評だった本セミナーについて、抜粋してお伝えします。
【目次】
- 株式会社サッポロドラッグストアー:増加するインバウンド需要!サツドラが行ってきたインバウンド対応
- 株式会社Payke:店舗を軸にした旅マエ・ナカ・アト一貫したインバウンド対策とは?
- 株式会社エスキュービズム:ちょっとしたことで変わる、店舗のインバウンド対応とは
株式会社サッポロドラッグストアー:増加するインバウンド需要!サツドラが行ってきたインバウンド対応
サッポロドラッグストアーは北海道を基盤に活動するドラッグストアチェーンで、1972年の創業から47年になります。東証一部上場後、2016年にホールディングス化し、現在店舗は国内外に200店舗以上展開しています。
サツドラグループは、リテールを重要な資産という位置付け、北海道の皆様と、そこから色んなことをチャレンジしてマーケットを成長していこうとしています。サツドラのミッションは創業から変わらない「健康で明るい社会の実現に貢献する」ということを掲げています。
そしてそのミッションを実現するためのビジョンとして「ドラッグビジネスから地域コネクテッドビジネスへ」というところでチャレンジシフトをしています。
スピード感をもってチャレンジをすることでチャンスロスを減らす、というマインドでチャレンジを続けている企業です。
インバウンドフォーマット店舗の展開
サツドラは北海道に約200店舗、道外に8店舗、海外に5店舗があります。
また、この中にインバウンドフォーマットと呼んでいる店舗があります。
これは観光地に対して積極的に出店していく店舗で、道内では函館や札幌、小樽やニセコなど、北海道以外にも、東京、京都や奈良、福岡、沖縄などに出店しています。サツドラグループではPOSの開発会社やインバウンドマーケティングを手掛ける会社もあり、グループ全体のシナジーにつながるように一生懸命インバウンドに関する事業展開を行っているところです。
インバウンドフォーマット店舗の売上高の推移を見てみますと、場所ごとに違いが見られます。
北海道では2月に個人旅行客(FIT)が増え、客単価がぐっと上がります。その他紅葉の時期や夏休みなどにそれぞれ山ができるのが北海道の特徴です。沖縄は夏に向けて上がっていき、冬に向けて下がるドーム型になります。
また、東京ではタイからのお客様が多いのが他のエリアより特徴で、福岡は距離的に近いためか韓国からのお客様が多いです。
国別の売上では中国、韓国、マレーシア、タイが少しずつ伸びてきています。
販促はクーポンが有効
販促施策として、どの媒体にも必ずクーポンをつけています。クーポンごとにバーコードを変えて、いつどのお店にどの媒体から利用したか、分かるようになっています。
以前は観光バスの団体客の割合が多かったのですが、お客様がそれぞれ様々な媒体を見て来店、購入されるようになってきたので、クーポンをきっかけとした購入が増えてきました。
Alipay、WeChat Pay、大衆点評、百度、銀聯など、多数の媒体でクーポンを出しています。
また、台湾のブロガーさんや自社スタッフが運営するWeChat Payからのクーポン順位が高くなっています。
Paykeタブレットの活用
この後登壇されるPaykeさんとの取り組みについてご紹介します。
Paykeさんが創業された最初の頃、トライアルから一緒にやらせていただいています。沖縄の店舗で日本人スタッフしかいなかったときに、Paykeタブレットを置いていたことでしっかりと中国からのお客様の対応ができたという実績があり、それをきっかけに導入拡大を決めた経緯があります。現状サツドラでは100台以上設置させていただいております。
Paykeとは
Paykeは店頭で商品のバーコードをスキャンすると商品情報が翻訳表示される多言語対応アプリです。消費者向けにスマホアプリ、小売店向けに店頭設置用のタブレットがあります。
店舗スタッフが外国語を話せなくても、スマホアプリや店頭のPaykeタブレットでお客様自身が商品の内容を確認することができます。
どの商品がいつ、どこで、誰がスキャンしたのかというオフラインの消費行動をデータとして可視化できるメリットがあります。
データも大事ですが、海外の旅行会社さんに営業をした時には、「あなたのお店はこうしてくれたらお客様に紹介しやすいのに高いよね」「通路狭いよね」「この商品はとてもいいよね」など中々気づけない視点でアドバイスをいただけますということを海外の方ははっきり言ってくれます。
他社と比較しての優位性や改善点について、一生懸命分析するのも大切ですがよりオフラインの活動の中で面と向かって言ってもらえたことで店づくりに活かすこともできました。
デジタルだけでなく、足元を固めることを忘れてはいけないと気付かされましたね。
そうした観光業界の方、旅行会社やメディア、個人の方も含めてコミュニケーションを取ることは絶対やらなきゃいけないことだと思っています。
インバウンド対策の重要なポイント
今後、インバウンド対策で何をしていくのかということをまとめると、以下のようになります。
- 市場拡大
- 差別化
- 情報の深堀り
- 振り返り
主に今まで販促の話が中心だったと思いますが、サツドラにしかない商品を突き詰めたりですとか、北海道以外の地域に違いがあるので、深堀りをしていこうと考えています。
株式会社Payke:店舗を軸にした旅マエ・ナカ・アト一貫したインバウンド対策とは?
株式会社Paykeは2014年の11月末創業で、沖縄と東京のオフィス、大阪3拠点で営業活動をさせて頂いています。
我々のコアミッションとしては買い手、作り手、売り手、三方良しで世界に対する商品力を上げると。買い手というのは消費者です。作り手はメーカーさん、売り手は小売りさんを指ています。その三方に対して買い物消費高を上げるためのソリューションとして「Payke」アプリを開発しました。
消費者にとっての物の価値が何かと考えた時に、僕らは「物体そのものの持つ価値」に消費者は魅力を感じて商品を買うのではなくて、商品を取り巻く情報に価値を見出して購入に至っているのではないかと思っています。
物流はしているけど、その上に情報は乗っていない。価値流通がしていない、ということが課題だと考えています。メーカーさん、小売りさん、卸さんという形で当然物体そのもの自体は流れているんですけど、その過程でどんどん情報がそぎ落とされ、消費者が手に取る過程で必要最小限の情報になっている状態です。その情報格差を埋めるためのソリューション「Payke」を提供しています。
商品パッケージのバーコードを利用した多言語対応アプリ「Payke」
アプリ自体は凄くシンプルで、商品のバーコードをアプリを通して読み込むと、ユーザーの端末の設定言語で商品情報が表示されるものです。
現在7言語に対応しており、400万ほどのユーザーさんにご利用いただいています。月単位でいうと15万から20万の外国人にご利用いただいているアプリケーションとなります。
作り手側、メーカーさんに対しては、自社の商品情報を自由に作ることができる管理画面と、オフラインの消費行動のデータを提供しています。
どういった国籍のどういった年代のどういった人がどの商品を手に取っているのか、それが北海道と沖縄でどう違うのかなどのデータを収集して、管理画面上からメーカーさんに返しています。
東京オリンピック後の需要予測
訪日外国人はかなり増えており、昨年が3000万人を突破し、今年も昨年を上回るペースで伸びています。その要因は各国ビザの緩和、旅行人口の増加、LCCの就航が大きなところだと思います。
政府が掲げている目標では、2030年までに訪日外国人旅行消費額を15兆円規模にするということになっています。訪日外国人消費の内訳は宿泊費や飲食費、買い物代など多くが観光産業にあたる消費です。仮に目標値15兆円のすべてが観光産業に当たるとすると、自動車、化学製品、観光産業と、観光産業は今は三番目なんですけど、これが15兆円規模まで成長すると、国内産業首位まで成長することになります。
また、2020年の東京オリンピックが訪日外国人のピークになってしまい、その後減少すると思われている方もいらっしゃると思いますが、東京オリンピック後も開催年以後の観光需要が長期間にわたって喚起されることが過去のオリンピック開催国のインバウンド観光客数の傾向データからも出ています。
https://www.mlit.go.jp/common/001029815.pdf
こうした、マクロ観点からも、オリンピック後の2020年以降もインバウンド需要が成長し続ける可能性が極めて高いのではないかと、思っております。
インバウンドの中の国内の消費
2018年の訪日観光客の旅行消費額をみると4兆5千円程度、中国、韓国、台湾、香港、アメリカ、この上位5つの国で全体の78%を占めています。インバウンドの対策としてはこの5ヶ国に対して重点的にポイントとして抑えていく必要があるでしょう。
4兆5千億円の内訳は、一番多いのが買い物代で、次いで宿泊費となっています。中国、台湾、香港は買い物代、長期滞在をするアメリカ人観光客などは宿泊費が相対的に上がりますね。
Paykeアプリユーザーに日本旅行での買い物代の予算についてアンケートをとった結果、「10万円以上使う・使った」人が34%、「6万円以上」になると65%と、多くの方が6万~5万以上の消費をしようとしているという傾向が見られます。
エリアごとの人気商品データ
Paykeで日本を訪れた訪日外国人の方がどこでどの商品に興味を持っているのか(商品をスキャンしているのか)を集計し、大阪と東京で比較すると、大阪は医薬品が上位に挙がっており、東京は上位に美容化粧品と医薬品が半々の割合で入っているというような傾向がありました。
これが北海道と沖縄になると、北海道は上位に医薬品と化粧品が6割4割の割合で入っているんですが、沖縄では上位に食品が入っているんですね。こういった面白いデータをPaykeアプリでみることができます。
旅マエ、旅ナカ、旅アト一貫したインバウンド対策
情報があふれる中で選ばれ続ける店舗、選ばれる商品になるには、マクロのデータだけでなくて、よりミクロのデータを活用して、データドリブンで旅マエから旅アトまで顧客設定とコミュニケーション設定をする必要があると思っています。
どこに行くかを決めるプレ旅マエ、何をするかを考える旅マエ、満喫している旅ナカ、帰国後の余韻に浸っている旅アト。大きく4つのフェイズに分けた時に、ステージによって消費者の心理状況も違っていて、情報ソースも訴求すべきメッセージも違います。
まずはきちんと、自社の商品のターゲットを明確にした後で、彼らの動線を分けた時に、それぞれのステージに合わせた訴求内容のチャネルから整理する必要があるでしょう。
ソリューションをぶつ切りするのではなく、ソリューションを横軸で見て、どういったメッセージングで統一できるのか、広告を打った後、どうやって認知をさせて、その後にどういったエキュイションさせるのか、各フェイズで一貫したコミュニケーションをすることが大事ではないかと思っています。
株式会社エスキュービズム:ちょっとしたことで変わる、店舗のインバウンド対応とは
インバウンド時代に4000万人目指していく時代に、実店舗の運営に焦点を当てて、インバウンド対応についてご紹介していきたいと思います。
エスキュービズムは元々はECとPOS、タブレット方式という店頭で使われるPOSレジなどの構築をメインにしている会社です。ORANGEっていうブランドでやらせて頂いているんですけれども、越境ECや海外店舗のPOSなども手掛けることがあります。
今はデジタルトランスフォーメーション事業、IT事業ですね。企業さんのデジタルトランスフォーメーションをお手伝いして、POCレベル、R&Dレベルから幅広くITデジタルを使いながら取り組んでいる会社です。
訪日外国人観光客数の目標を達成するために
政府が掲げる目標値として、2030年6000万人、市場規模15兆円というものがあります。その目標を達成するため、「3つの視点」を掲げました。
1、観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に
地方の観光資源を活用し、インバウンドの消費額を上げようとするものです。
2、観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に
ITを活用し、デジタルマーケティングで情報の拡散、各種サービスのデジタル化を推進します。
3、全ての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に
通信インフラの整備、顔認証ゲートのシステム開発などの最先端テクノロジー活用を行います。
参考:観光先進国の実現に向けた取組み(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/hakusho/h29/html/n2322000.html
まだまだ店舗運営という考え方でみると、この辺りは難しいなというところです。
中国からの個人旅行者は2012年に28%だったものが、2018年には62%に増加し、全体でも75%に達しています。
その他、韓国、台湾、香港と東アジア圏がすごく多いです。
もちろん、欧米豪からも結構来ているので、ひと括りに3000万人4000万人って言ったとしても色んな人種が来ている状態ですね。これをちゃんと対応できるかを求められているのが、今日本の皆さんへの課題だと言う風に我々は思っています。
インバウンド対策の最重要ポイント「多言語対応」
店舗のインバウンドの課題で最初に解決しないといけないのは、やはり言語対応ではないでしょうか。日本に来る外国人観光客が困っていることの調査結果で、「キャッシュレス、言語について困っている」が50%という高い数値がでています。「日本はおもてなしが素晴らしい」という期待度が高いこともあるかもしれません。
しかし、複数の言語に対応したスタッフを揃えたり、WEBページやメニューの多言語化も英語や中国語といったメインになる言語以外に対応するとなると、どんどんハードルが高くなっていきます。
タブレットPOSレジの中にも翻訳機能を入れ込んだりできるので、実際翻訳機能を搭載したPOSレジを納品させてもらったりしますが、まだまだ精度が高い100%の言語対応は難しいのが現状です。
Amazon Goやラッキンコーヒーなど、無人店舗が結構海外は多く、日本ならではの「おもてなし」とは違った形で言語の壁を突破しています。Amazon Goは顧客体験を大事にすると言いつつ、結局のところは人との関わりを無くして、「言語の壁」をそもそも無かったことにしたというのが画期的だと思います。
言語の壁を取り払うツール「デジベル」
直接コミュニケーションを取らないコミュニケーションツールとしてご紹介するのが、「デジベル」です。ブロックとスタッフが着けるリストバンド、アプリが入ったタブレットがセットになっています。
ブロックには各面に用件が書いてあり、たとえば飲食店なら「お水」「片付け」「メニュー」「会計」といった具合です。「お水」を上にしてブロックを倒すと、〇番テーブルから「お水」の要望が来た、という風に、スタッフが着けているリストバンドに通知がきます。
「すみません」とスタッフを呼んで、用件を伝える、という一往復が無くなって、接客時間の短縮やお客様の満足度が向上するというツールです。
ブロックに多言語で用件を表示しておけば、言葉が通じない相手でも用件を伝えることができます。
OMOで顧客接点をいかに増やすか
これからOMO(Online merges with Offline)といって、デジタルがリアルと融合する時代になっていきます。
今まで可処分所得から可処分時間の奪い合いになったと言われていましたが、OMOの時代には可処分接点の奪い合いになってきます。たとえば旅マエの時点でどれだけ外国人観光客にリーチできるかというところが重要になります。
ECサイトを多言語化しただけでは、外国人観光客が情報に触れることができない。実際にどのように接点を持つかをちゃんと考えていかないといけなくて、そのためには広告や中国でのアプローチをどのようにするのかという視点が大事になってくるかなと思っています。