タックスフリーショップになりインバウンドでの売上を増やす!2種類の免税店の違い・免税店申請の方法とは
2020年のオリンピックを前に、インバウンドへの対策を課題とする店舗は多いでしょう。訪日外国人観光客数は年々増加の一途を辿り、2018年の年間訪日外国人観光客数は3,119万2,000人と前年比より8.7%増加しました。(JNTO・日本政府観光局調べ)
免税店になることで、増加する訪日外国人観光客の消費を促進できるでしょう。
本記事では、小売店が目指せる免税店「タックスフリー」について説明します。
【目次】
- 全国の免税店数は1年間で10.9%増
- タックスフリーとデューティーフリーの違いとは
- タックスフリーショップの申請方法
- タックスフリーショップになるための審査項目
- タックスフリーショップになったら
- インバウンド需要は今後も向上。タックスフリーショップになり売上増加に繋げよう
全国の免税店数は1年間で10.9%増
観光庁の調べによると、全国の免税店数は2018年10月1日時点で47,441店舗です。前回の調査は半年前の4月1日に行われており、2,795店の増加となりました。
さらに、2017年10月1日からの1年間では4,650店舗、10.9%の増加です。
都市部・地方の内訳は以下の通りです。
- 三大都市圏:29,345店舗
- それ以外の地方;18,096店舗
数としては三大都市圏の方が大幅に上回っていますが、1年間の増加率は三大都市圏で11.4%、地方で10.0%とあまり大きな差はありません。
2017年3月28日に閣議決定した「観光立国推進基本計画」では、2018年に地方の免税店を20,000店舗まで増やすことを目標にしていました。2018年10月時点で18,000店舗を超えるところまで増加しているのは、順調に取り組みが実ってきていることの表れでしょう。
税制改革により免税システムが簡易に
免税店舗数の増加のため、政府が行った施策が「免税制度の簡素化」です。これまでは、免税店が訪日外国人観光客のパスポートに購入記録票を貼り付け・割印をすることが免税販売の手続きでした。
現在の免税販売手続きは、訪日外国人観光客からパスポートの提示を受けた店舗が、免税販売情報を電磁的記録により国税庁長官へ提出する方法に変更されています。
この変更により、免税店側の事務手続き負担が軽減するほか、訪日外国人観光客が抱えていた「購入記録表の貼付によりパスポートが分厚くなってしまった」不満が解消されました。
詳しくは「免税手続きがついに電子化!概要・手続き・メリットを解説」もご覧ください。
税制改革により買い物の利便性が向上
手続きの簡素化のほか、買い物がしやすくなる変更も行われました。
これまでの免税販売のルールは、買った商品を「消耗品(食料品、化粧品等)」と「一般物品(家電、民芸品等消耗品以外)」とに分け、それぞれ5,000円以上買うことが免税の条件でした。
税制改正は、この区分けを撤廃。すべてを「消耗品」とし、免税条件を以下のように定めました。
【免税条件】
- 最低購入金額5,000円、最高購入金額50万円
- 30日以内の国外持ち出し
- 特殊包装が必要
免税条件に掲げられている「特殊包装」とは、国内で購入品を開封できなくするためのものです。免税商品は、あくまでも自国に持ち帰ることを前提として税が免除されます。そのため、「30日以内の国外持ち出し」「特殊包装」が条件に含まれているのです。
こちらの改正により、恩恵を受ける代表的な店舗がドラッグストアです。ドラッグストアは、訪日外国人観光客にとって人気スポット。日本の化粧品を「爆買い」する様子もよく見られます。実際に、国土交通省観光庁の「訪日外国人消費動向調査」(2018年度)に人気の買い物場所として挙げられている店舗を見てもドラッグストアの人気ぶりがわかるでしょう。
【訪日外国人観光客が買い物をしている場所】
1位:コンビニエンスストア(67.1%)
2位;空港の免税店(62.8%)
3位:ドラッグストア(61.7%)
購入されている商品の割合は、以下の調査結果が出ています。
【商品別の購入率】
1位:菓子類(67.5%)
2位:その他食料品・飲料・酒・たばこ(63.1%)
3位:医薬品・健康グッズ・トイレタリー(53%)
4位:化粧品・香水(46.2%)
1~4位に含まれる商品は、すべてドラッグストアで販売しているものです。日本国内で飲食するものは免税の対象外になりますが、一般物品・消耗品を一度に購入する代表的な店舗として、税制改正は消費の大きな後押しになっていくでしょう。
訪日外国人観光客の支出額は1人あたり14万3,000円
国土交通省観光庁が調査している訪日外国人消費動向調査によると、2019年1月~3月期の訪日外国人観光客の消費額は1兆1,182億円。1人当たりの旅行支出は14万3,000人です。
支出のうち、買い物に充てられている金額の平均は48,355円。小売店にとって、免税店となることは、売上増に繋がる重要事項だといえるのではないでしょうか。
出典:観光庁 http://www.mlit.go.jp/common/001230775.pdf
タックスフリーとデューティーフリーの違いとは
ここまでは、「免税店」と一括りにしてきましたが、厳密に言うと「免税店」は2種類に分けられます。それが、今回ご説明する「タックスフリー」と「デューティーフリー」です。
タックスフリーは見聞きしたことがある人も多いでしょう。この2種類は、一体何が違うのでしょうか。その違いは、免除される税金の種類にあります。
タックスフリーとは
タックスフリーの「タックス」とは消費税を指します。つまり、「タックスフリー」とは消費税のみを免除する店ということです。日本語でいうと、「市中免税店」または「消費税免税店」となります。
私たちがふだん街中を歩いていて見かける「免税店」は、すべてこのタックスフリーの店です。ディスカウントショップやドラッグストア、百貨店などが該当します。
消費税の免税を受けられる対象者は、日本国内に住んでいない人です。つまり、そのほとんどが訪日外国人観光客、あとは国外在住の日本人ということですね。
免税手続きが簡素化し、購入ハードルが下げられたのは、先述した通りです。
デューティーフリーとは
タックスフリーに対して、デューティーフリーとは、「消費税・関税・酒税・たばこ税」を免税してくれるお店を指します。基本的にデューティーフリーの店舗は「空港型免税店」とされ、国際空港の出国エリアにある店のことです。なぜ諸々の税金が免除されるかというと、「出国手続き後の空港内出国エリアは制度上日本国外とみなされ、日本の税金が課されない」ルールがあるからなのですね。
これまで、デューティーフリーの店舗は空港内にしかありませんでした。しかし、フライト時間が早朝のため帰国時にデューティーフリー店舗で買い物ができない声を受け、現在では「空港型市中免税店」がオープンしています。「空港型」で「市中」、つまり街中にある店でデューティーフリーで買い物ができるわけですね。
「空港型市中免税店」の例には、銀座三越の「Japan Duty Free GINZA」、新宿の「タカシマヤタイムズスクエア」が挙げられます。買い物の際には、パスポートのほかに航空券の提示も必要です。
タックスフリーの店では、購入物は特殊包装を経たうえで訪日外国人観光客に手渡されます。一方、デューティーフリーの店では、購入物は空港に送られ、出国当日に受け取る手順を踏みます。訪日外国人観光客にとっては、手ぶらで買い物が楽しめるメリットがありますね。
上記の違いから、一般小売店が免税店になるには、「タックスフリー」を目指すことになります。
次の章では、タックスフリーショップになるための申請方法についてご説明します。
タックスフリーショップの申請方法
タックスフリーショップになるためには、税務署への申請が必要です。申請する税務署は、納税地を所轄する税務署となります。そのため、チェーン店を経営している場合、すべての店舗をタックスフリーにするためには、店舗ごとに申請を行わなければなりません。ただ、複数店舗分をまとめて申請することも可能です。
タックスフリー申請の際の持ち物
タックスフリーの許可を申請する際は、「輸出物品販売許可申請書(一般型用)」に記載して持参します。
「輸出物品販売許可申請書」は、国税庁のホームページよりPDFファイルをダウンロードできます。
国税庁サイト:[手続名]一般型輸出物品販売場許可申請手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/150331_01.htm
そのほか、以下の書類の添付が必要な場合もあります。
【添付書類例】
- 販売場の見取り図
- 社内の免税販売マニュアル
- 事業内容がわかる書類(会社案内、会社ホームページのURL等)
- 販売場の取扱商品がわかるもの
必要な書類は税務署により異なります。申請前に所轄の税務署に問い合わせておきましょう。
タックスフリーショップになるための審査項目
タックスフリーショップになるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 消費税の課税業者であること
- 立地・人員配置・設備の整備がなされていること
- 国税の滞納の有無
上記の3項目について、どのような点が審査されているのかをご説明します。
消費税の課税業者であること
タックスフリーショップは「消費税を免除する」店舗のため、消費税の課税業者であることが大前提です。
消費税の課税業者になるには、課税期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者です。事業者の多くは節税に励むため、開業初年から課税事業者であるケースはほぼありません。タックスフリーショップを目指す際は、課税事業者になってからだと覚えておきましょう。
立地・人員配置・設備の整備がなされていること
もっともわかりづらい要件が、ふたつ目の「立地・人員・設備の整備」ではないでしょうか。3つの要件について、順にご説明します。
立地
現在、すでに訪日外国人観光客が利用する場所、または今後利用が見込まれる場所にある店舗であるかどうかが判断されます。
人員配置
訪日外国人観光客に対し、免税販売の手続き方法を説明できる人員が配置できるのかどうかを審査されます。
ただし、流ちょうに話せるレベルの語学力までは求められていません。外国語に対応したパンフレットを用意しているなど、補助道具を使って説明ができる状態が整えられていれば問題ありません。
設備の整備
訪日外国人観光客であるかどうか(国内在住者ではないか)を確認したり、購入記録表の作成を行ったりする場所(カウンター等)があるかどうかを見られます。専用の特別カウンターを用意する必要はなく、あくまでも手続きが行えるスペースが設けられていれば問題ありません。
国税の滞納の有無
国税の滞納をしていないことが求められます。ただし、公式サイトには「滞納額の徴収が著しく困難であるものに限る」と明記されているため、滞納の事実がある場合は問い合わせてみましょう。
タックスフリーショップになったら
無事に申請が許可されたら、晴れてタックスフリーショップとして営業が開始できます。観光庁の免税店公式サイトに免税手続きの多言語説明シートファイルが掲載されているため、必要に応じて利用しましょう。
用意されている説明シートの言語は以下の7言語です。
- 英語
- 簡体字
- 繁体字
- 韓国語
- タイ語
- インドネシア語
- ベトナム語
公式:免税手続の多言語説明シート
http://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/after.html
また、免税手続きで必要な「特殊包装」について確認しておくことも重要です。包装方法には、袋・箱の2通りがあり、ともに出国までに破損しないことが求められます。
開封しないことが決まりであるため、万一開封した際には、そのことがわかるようなシールで封印することも指定されています。
もし、何かわからないことが浮上した場合は、各エリアの観光庁の観光企画課にある相談窓口に問い合わせてみましょう。
公式:相談窓口
http://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/support.html
インバウンド需要は今後も向上。タックスフリーショップになり売上増加に繋げよう
近年、毎年のように増え続けている訪日外国人観光客。政府は、2016年3月30日に開かれた「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において、「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。1年後の2020年には、訪日外国人観光客を4,000万人にすることが目標に掲げられています。
また、2020年の東京オリンピックパラリンピックをピークにすることなく、以降も訪日外国人観光客数の増加政策は継続して行われていくでしょう。「観光先進国」を作ることが、政府が目指す日本の未来であるためです。
日本は少子高齢化社会であり、消費する人口そのものが縮小していく流れにあるといえるでしょう。そうした背景のなか、訪日外国人観光客数の増加は国としても重要です。そして、増加の一途を辿る訪日外国人観光客の売上を伸ばしていくことは、これからの一般小売店が生き残るために必要なことだといえるでしょう。
今回の記事でご紹介したポイントをあらためて抑えたうえで、まだタックスフリーショップではない店舗は、ぜひ申請を目指してみてはいかがでしょうか。