BankPayとは? QRコードで銀行口座決済ができるサービスが2019年秋開始
スマホ決済サービスは増える一方で、「Pay」と名の付くサービスが急増しています。そんな中、2019年秋についに銀行口座から直接引き落とされるスマホ決済サービス「BankPay」がスタートします。
BankPayの大きな特徴は、デビット決済ができるという点。概要をはじめ、店舗側のメリットやキャッシュレス化が進む背景についてご紹介します。
【目次】
2019年秋「BankPay」サービス開始
BankPayならデビッドカード不要で口座引き落としが可能
2019年4月、オールバンクのスマホ決済サービス「BankPay」が開始することが発表されました。最近はスマホ決済やキャッシュレス決済のサービスが急増しており、「〇〇Pay」という名前が乱立しています。
BankPayの大きなポイントは2つあります。スマホによるQR決済ができることと、国内のメガバンクをはじめ国内の多数の銀行口座から直接引き落とすデビット決済ができるという点です。
今まではデビットカード決済をする場合、消費者はレジでキャッシュカードを店舗スタッフに渡す必要がありました。BankPayが導入されたら、キャッシュカードを提示せずにデビット決済ができるようになります。
BankPayがスタートするのは2019年秋。そこから国内の店舗で順次対応が進んでいく見通しとなっています。
参照:日本電子決済推進機構
https://debitcard.gr.jp/dl/BankPay.pdf
サービスを提供するのは「J-Debit」でおなじみの日本電子決済機構
BankPayを主催するのは、デビットカードを推進している日本電子決済推進機構です。店舗のレジや扉に貼ってある「J-Debit」のロゴでおなじみの日本電子決済推進機構は、国内加盟店が45万店を超えるほど浸透しています。
日本電子決済推進機構の会長はNTTデータですが、副会長にはゆうちょ銀行とみずほ銀行というメガバンク2行が名を連ねています。メガバンクが直接関わるBankPayは、サービスが乱立しているスマホ決済事業に大きな影響を与えるでしょう。
デビットカードは年会費無料や審査不要なので、クレジットカードよりも手軽に所有できます。クレジットカードと違いすぐに口座から引き落とされるので、使い過ぎを防げるというメリットもあり利用している人も多くいます。
しかしデビットカードは今流行りのスマホ決済サービスに対応していなかったり対応していても種類がごくわずかであったりと、使いにくさがありました。
BankPayならデビットカードも不要で口座からすぐ引き落とせるので、デビットカード派の人にも受け入れられるでしょう。
スマホ決済サービスはクレジットカード情報が必要だった
BankPayは、メガバンクに限らず地方銀行も対応可能。どの金融口座でも「BankPay」という共通のアプリを使えます。
最近はAppleやGoogleといったIT企業や楽天やPayPay(ペイペイ)といった国内大手企業が、続々とスマホ決済サービスを開始しています。しかしほとんどのスマホ決済サービスは消費者が所有しているクレジットカード情報登録する必要があり、「セキュリティが不安だ」という声があります。
スマホ決済サービスで登録したクレジットカードから支払いを行い、引き落とし日に銀行口座から現金が引き落とされるという仕組みは、現金に比べて単純ではありません。デジタル決済に慣れていない消費者にとって複雑なスマホ決済は、魅力を感じにくいでしょう。
金融機関も対応しているという安心感がある
BankPayはクレジットカード情報を使わず、銀行口座から直接引き落とされます。クレジットカードもキャッシュカードも不要でメガバンクが手掛けているBankPayは、利用者にとって他のスマホ決済サービスより安心感があるでしょう。
そして何よりBankPay決済からお金が引き落とされるまでの仕組みがシンプルなので、利用者はイメージしやすく納得しやすいのです。引き落としまでの仕組みがわかりやすいという点も、安心材料になります。
現行の「銀行Pay」とは対立しない
BankPayの前にも、すでに銀行が関わるスマホ決済サービスは複数あります。銀行業界でいうと、横浜銀行の「はまPay」や福岡銀行の「YOKA!Pay」ゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」などがあり、一般企業ではなく銀行が行っている決済サービスです。
また、銀行のスマホ決済サービスとしては、GMOペイメントゲートウェイ株式会社がリリースしている「銀行Pay」がよく知られています。銀行PayもQRコードによるスマホ決済サービスであり、横浜銀行や福岡銀行、りそな銀行も加盟しています。
先ほど触れたように、BankPayを手掛ける日本電子決済推進機構の副会長にはゆうちょ銀行も就任しています。BankPayの登場によって銀行Payと対立しないか気になるところですが、公式サイトでは「加盟店の相互開放」に向けて検討を開始していると明言しています。
つまりどちらかのサービスを廃止するのではなく、上手く共存できるように調整を行っていくものと見られます。これまで各銀行が各々で始めていたスマホ決済サービスは、BankPayによって統一されていくのかもしれません。
BankPayはメガバンクをはじめ1000行以上の銀行口座に対応予定
銀行Payは全国の銀行が加盟してマルチバンク決済機能を謳っていますが、実際の加盟銀行はまだ10行前後と発展途上です。りそな銀行やゆうちょ銀行は加盟していますが地方銀行が中心であり、メガバンクの加盟が進んでいませんでした。
BankPayでは、メガバンクを合わせて1000行以上の銀行に対応する予定となっています。それだけの銀行に対応していれば、「自分が使っている銀行が対応していない」というケースもかなり少なくなるでしょう。
消費者としては、「自分が使っている銀行が対応しているから」とBankPayを始めるケースも容易に想像できますし、銀行でBankPayサービスをおすすめするようになれば幅広い年代の利用者が増えると予想できます。
こういった銀行業界全体を巻き込む規模の大きさでも、BankPayは注目されているのです。
加盟店やアプリの詳細は今後の情報を待つ
BankPayはQRコードでスマホ決済できるサービスで、最大1000行の銀行に対応するということはわかっています。しかし手数料や実際に加盟する銀行など詳細なことはまだ決まっていません。
BankPayは、一部の機能を小売企業にも開放すると明言しています。たとえばすでにスマホ向けアプリをリリースしており、クーポンやショッピング機能を搭載している企業も多くあります。BankPayは、すでに企業がリリースしているそれらのスマホアプリ内に銀行口座直結の支払い機能を搭載すると明言しています。
つまり利用者からすると、すでに企業のアプリをインストールしている場合はそのまま決済まで完結できるということです。今では紙媒体やプラスチックタイプのポイントカードを廃止して、アプリに移行している企業が増えています。アプリで会員証をかざして決済までできれば、利用者にとってもスムーズに買い物をしてもらえます。
企業アプリの連携や手数料・詳しいBankPayアプリの仕様・日本電子決済推進機構が明記する「加盟店の相互開放」の詳細については、今後の情報展開を待つしかありません。
BankPay導入による店舗のメリットについて
QR決済システム導入済の店舗なら導入コスト0円
BankPayはQRコードを使うので環境の準備が必要です。設備を持っていない店舗は導入する必要がありますが、すでにQRコード決済の環境を持っている店舗なら既存の環境を利用できます。そのため、導入のコストが0円になります。
QRコードを使ったスマホ決済サービスは多くのメーカーが始めており、初期費用0円を謳っているケースもあります。そのようなメーカーのQR決済サービスを導入すれば、導入コスト0円でBankPayも利用可能となります。
店舗の最大のメリットは「購買履歴のデータ取得」
利用者がBankPayのようなキャッシュレス決済を行った場合、店舗側が手数料を負担しなければなりません。(詳しくは後述)しかしクレジットカードのポイント還元や手軽さというメリットから積極的に利用する消費者は多く、店舗側は手数料を引かれてもキャッシュレス決済を導入する意味はあります。
しかし、キャッシュレス決済のメリットはそれだけではありません。消費者の購入した商品や金額・タイミングなど、現金払いでは取得できないような詳細なデータが取得できるのが、店舗側の最大のメリットといえます。
今キャッシュレスサービスが乱立しているのは、消費者のデータの取り合いという側面もあるのです。
今はデジタルマーケティングが進み、あらゆる媒体からデータが取集できます。ECサイトの閲覧履歴や購入履歴・金額に限らず、キャンペーンの反応までデータ化できます。
BankPayなどのキャッシュレス決済で取得したデータを使って、ECサイトで個人に合わせた商品を分析したり、興味のありそうなクーポンを配信したりとマーケティングに活用可能。顧客の傾向やニーズを把握することで、より店舗経営にプラスとなることは間違いありません。
小売店にありがちな「お金が合わない」もなくなる
BankPayのようなキャッシュレス決済のメリットは、データの収集以外にもあります。リアル店舗を運営していると現金が欠かせないものですが、「レジを清算したらお金が合わない」という運営上の問題はなかなか減りません。
いわゆる“レジ締め”作業はクレジット決済も現金決済も行いますが、現金はどうしても狂いがちでレジ担当者を困らせます。店舗運営においてもコストが高く、レジ締めの人件費は年間5000億円もかかっているといわれています。
参照:流通ニュース「経産省/レジ締め人件費5000億円、キャッシュレス推進でキャンペーン」
https://www.ryutsuu.biz/government/l031340.html
また、高額な現金をずっと店舗内に置いておくのも防犯上好ましくありません。管理や防犯にもコストがかかり、利益が下がります。
キャッシュレス化が進み店舗に置いておく現金が減ると、企業側にも大きなメリットが期待できます。
加盟店は手数料が発生する
銀行にとって手数料は収入源であるため、加盟店はBnakPayの利用に手数料を支払う必要があります。この部分は、クレジットカード決済や他社のスマホ決済サービスと変わらないでしょう。導入コスト0円を謳うスマホ決済サービスも、手数料によって利益を確保しています。この仕組みは銀行でも変わりません。
具体的な数字はこれからの発表を待つしかありませんが、手数料が無料ということはないでしょう。
スマホ決済サービスが乱立した結果、どこに付加価値を付けるかという新たな問題が起こっています。各社キャンペーンをして顧客獲得を競っているような状況ですが、手数料の安さというのは店舗にとって重要な付加価値となります。
2017年にメタップス株式会社とみずほ銀行が共同で設立した「pring(プリン)」という決済サービスは、QRコード決済のほかに他のpringユーザーに送金できるなど多彩なサービスを搭載しています。
このpringで決済した場合、店舗側の手数料はわずか0.95%。他社のQRコード決済にかかる平均的な手数料が3~4%であることを考えると、かなり格安となっています。
参照:https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1806/28/news100.html
これだけスマホ決済サービスが乱立すれば、次は値下げやポイント率といった“付加価値競争”が始まるかもしれません。
BankPayをはじめスマホ決済サービスが増え続ける理由
オリンピック、パラリンピック、大阪・関西万博…インバウンドビジネスのチャンス到来
企業に限らず政府もこの国際的なイベントを足掛かりにして、さらにインバウンドビジネスを盛り上げようと考えています。国外から多くの訪日外国人が観光に来る最大のチャンスであり、このチャンスを逃さないように仕組みを整えています。
たとえば東京都産業労働局では、日本語がわからない人に向けた多言語コールセンターサービスを通訳サービスを自治体が試験的に導入しています。24時間対応可能で、宿泊施設向け・飲食店向け・免税店向けと窓口も多数あります。
インバウンドビジネスを成功させるために、キャッシュレスサービス以外も対策が進んでいるのです。
参照:東京都産業労働局「多言語コールセンター」
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/kakusyu/callcenter/
日本は「キャッシュレス・ビジョン」を策定
キャッシュレス化に向けて、経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」を制定してキャッシュレス化目標を数値化して明言しています。関西万博開催の2025年には40%の決済比率を目標年、将来的には世界と同じ水準の80%まで引き上げることを目指しています。
先進国の中でも、日本のキャッシュレス化は特に遅れています。オリンピックや関西万博をきっかとして、BankPayのサービス開始はキャッシュレス化の推進に一役買うでしょう。
参照:経済産業省 「キャッシュレス・ビジョン」「クレジットカードデータ利用に係るAPIガイドライン」を策定しました
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001.html
BankPayのリリースでついに銀行業界もキャッシュレス化に動き出す
さまざまなキャッシュレスサービスがスタートする中、BankPayのスタートは「銀行業界が本格的に参入してきた」という大きな意味を持ちます。特にデビットカードを利用している人は、BankPayに切り替えるメリットが大きいでしょう。
スマホ決済サービスは、外国人だけではなく国内の利用者にも広まっています。導入が進んでいない店舗は、BankPayをきっかけにスマホ決済サービスを始めてみませんか?