マルチ決済とは?システム概要と特徴・人気メーカーを比較
マルチ決済サービスは、クレジットカードに限らず様々な決済方法に対応するサービスです。
「100億円あげちゃうキャンペーン」などで話題となったPayPay(ペイペイ)をはじめとしたスマホ決済サービスや電子マネーなど、IT化が進むにつれて決済手段も増えているため、マルチ決済を導入した店舗は利用者の拡大が見込めます。
マルチ決済サービスは、キャッシュレス化が進む訪日外国人の集客にも欠かせません。マルチ決済サービスの概要や、サービス・端末ごとの比較について解説します。
【目次】
- マルチ決済の概要
- マルチ決済を導入するメリット
- マルチ決済を導入した場合のデメリット
- マルチ決済は国内外問わず需要が高まっている
- マルチ決済サービスの対応に動き出している企業
- マルチ決済サービスには「マルチ決済端末」がよく使われる
- 訪日外国人向けなら2大ブランドに対応しておきたい
- マルチ決済サービスを導入して顧客の決済ニーズを満たそう
マルチ決済の概要
マルチ決済とは
マルチ決済とは、電子マネー携帯キャリア、コンビニ等の決済方法に対応していることを指します。
現金やクレジットカードだけではなく、交通系電子マネーやプリペイドカードなど決済の手段が増えています。そのため、マルチ決済システムを店舗に導入すれば、購入者にとってもっとも都合のよい支払方法を選択してもらえます。
マルチ決済システムには、以下の決済方法があります。
- クレジットカード決済
- Webバンク決済
- ペイジー決済
- 携帯キャリア決済
- 電子マネー決済
- プリペイドカード決済
- 中国向け決済
マルチ決済システムの主な流れ
マルチ決済サービスを導入する場合は、決済代行会社に加盟するケースが多くなっています。決済代行会社を利用しない方法もありますが、その場合はカード会社ごとに契約書の締結や管理が必要となります。
お客様のクレジットカードや電子マネー情報は、決済代行会社を介して、まずカード(または電子マネー)を運営している会社に送られ処理を行います。その後、指定の日にちに店舗の口座に金額が振り込まれます。
マルチ決済を導入するメリット
店舗側のメリット
マルチ決済を導入した店舗は、訪日外国人や「電子マネーで決済したい」と希望している利用者の拡大を見込めます。
電子マネーやクレジットカードで決済するとポイント還元があるため、決済方法で店舗を選ぶ利用者に購入してもらえる可能性が高まります。
また店舗で管理する現金の額が下がれば、その分強盗などのトラブルに遭うリスクも下がります。レジの現金と帳簿を合わせる「レジ締め」の手間も軽減できるので、店舗管理のコスト削減も期待できるでしょう。
お客様側のメリット
最近は「荷物を増やしたくない」というニーズが高まり、スマホ1台+電子マネー1枚程度という身軽なスタイルを好む人が増えています。マルチ決済に対応した店舗が増えれば、あまり現金を持ち歩きたくないという人も利用できるお店が増えます。
またマルチ決済に対応している店舗なら常用しているクレジットカードや電子マネーによるポイント還元が受けられるので、高額な買い物をするほどお得感があります。
マルチ決済を導入した場合のデメリット
店舗側のデメリット
手数料が発生する
マルチ決済サービスは手数料が発生しますが、手数料は全て店舗側が負担する必要があります。(購入者に手数料を請求するのは契約違反となります)
利用金額に応じて手数料は変わるため、購入金額が大きいほど店舗が負担する手数料もアップします。
入金まで日数がかかる
また、購入者から直接現金を受け取らないため、売り上げが高い日でも即日売上金を受け取ることができません。マルチ決済サービスの代行業者は振込日が決まっていることが多いので、入金日まで待つ必要があります。
お客様側のデメリット
使いすぎに注意
マルチ決済サービスでキャッシュレスに決済すると、お金を使った感覚が薄くなり使いすぎる傾向があります。クレジットカードの使い過ぎと同様の現象が起きるので、自己管理が必要となります。
情報漏洩の心配
めったに起こるものではありませんが、キャッシュレス化に慣れていない場合はカード情報の漏洩が気になる利用者もいるようです。
マルチ決済は国内外問わず需要が高まっている
マルチ決済サービスの多様化や訪日外国人によるインバウンド消費などの背景により、日本でもキャッシュレス化が少しずつ進んでいます。
日本は海外に比べてキャッシュレス化が遅れています。理由としては、治安が良く偽造通貨もあまり出回らないという背景があります。マルチ決済の導入を悩んでいる店舗には「手数料が高い」という意見もあります。
ただ、マルチ決済サービスを導入すれば訪日外国人や国内利用者の増加が見込めるので、手数料以上の利益は期待できるでしょう。
日本政府はキャッシュレス化を推進しており、2027年6月までにはキャッシュレス決済比率を4割程度に引き上げることを目指しています。
2017年時点でキャッシュレス決済の比率は21.0%なので、10年で約2倍を目標としています。
参照:首相官邸HP「未来投資戦略 2018」FinTech/キャッシュレス社会の実現 より
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2018_zentai.pdf
マルチ決済サービスの対応に動き出している企業
大日本印刷はマルチ決済ゲートウェイを含むサービスを提供開始
電子マネーやプリペイドカードに対応したマルチ決済サービスとして、大日本印刷株式会社では「マルチ決済ゲートウェイサービス」をリリースしています。
マルチ決済ゲートウェイサービスは、多様な決済業者をまとめて管理することが可能なので、これからマルチ決済サービスを導入しようとしている店舗におすすめのサービスです。
さらに電子マネーやクレジットカードだけではなく、POSや専用端末に保存された決済情報を一元管理できるので、管理しやすいというメリットがあります。
参照:大日本印刷株式会社「DNPマルチペイメントサービス」より
https://www.dnp.co.jp/biz/solution/products/detail/1189652_1567.html
JTBは「電子スタンプ」を使ったマルチ決済事業をスタート
JTBグループの1社であるJTBビジネスイノベーターズは、外国人旅行者専用の決済サービスとして「Japan Travel Pay」という決済サービスをリリースしています。
Japan Travel Payは日本円への両替の手間を省くのはもちろんのこと、購入者が事前にクレジットカードを登録していれば、スマホのみで決済が可能。香港や韓国・台湾からの訪日外国人に向けた、マルチ決済サービスとなっています。
店舗側は、「STAMPAY(スタンペイ)」という技術が搭載された電子スタンプと、専用の端末を常備しておきます。購入者は店側の端末に表示されたQRコードをスマホで読み取り、店舗スタッフがスマホ画面に電子スタンプを押せば決済が完了します。
JTBは訪日外国人向けにマルチ決済の実証実験を行っていた
JTBグループでは、Japan Travel Payリリースにあたり、2018年8月に関連企業と共同で実証実験を行うことを発表していました。
国内の店舗では中国人観光客に向けた決済サービスは導入が進んでいますが、他国のマルチ決済サービスの対応状況は進んでいるとはいえません。
そのためJTBグループは、中国の次に訪日する人が多い香港・韓国・台湾の旅行者を中心として実証実験を行ったうえでリリースを決定しています。
参照:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1806/13/news145.html
マルチ決済プラットフォーム「StarPay」ならQRコードで決済可能
株式会社ネットスターズが提供している「StarPay」という決済サービスは、複数のQRコードを1つの端末で決済できるワンストップサービスとして注目されています。
StarPay専用端末もありますが、StarPayアプリをダウンロードしたiPad/iPhoneがあれば、端末を用意しなくてもマルチ決済に対応できます。(POSレジでの利用も可能)。
LINE Payやd払い、中国向けのモバイル決済サービスなど、多様な決済サービスに対応しています。
マルチ決済サービス3種類の比較
今回ご紹介したマルチ決済サービスを比較すると、以下の結果になります。
QRコード | POSシステム | 対象 | 専用端末 | |
---|---|---|---|---|
マルチ決済 ゲートウェイ |
× | ○ | 国内利用者 | 必要 |
JapanTravel Pay | ○ | × | 訪日外国人専用 | 不要 (スマホ決済) |
StarPay | ○ | ○ | 国内利用者 | 不要※1 |
※1:専用端末もありますが、アプリダウンロードでiPad/iPhoneで利用可能です
マルチ決済サービスには「マルチ決済端末」がよく使われる
マルチ決済端末とは
マルチ決済端末とは、マルチ決済システムが搭載された端末のことです。クレジットカードの決済端末とよく似たデザインで、カードリーダーやQRコードの読み取り機、プリンター機能などマルチ決済に必要な機能が備わっています。
先ほどご紹介したStarPayは例外ですが、多くのマルチ決済サービスはマルチ決済サービスとセットで店舗に導入されます。
ICカードやピンパッド対応などメーカーによって機能も異なるため、自分の店舗で利用するマルチ決済サービスに適した端末を選ぶ必要があります。
インバウンドビジネスの影響でマルチ決済端末が続々リリース
2020年東京オリンピックや大阪万博に向けて、日本は国を挙げてインバウンドビジネスに取り組んでいます。訪日外国人の増加に伴い、マルチ決済端末も多種多様になりつつあります。
マルチ決済サービスを店舗に導入するためには、端末の購入など初期費用が発生します。費用が発生する分、会計業務の効率化や客単価の向上、・利用者の拡大などメリットもありますので、マルチ決済サービスは導入したほうがよいでしょう。
訪日外国人向けなら2大ブランドに対応しておきたい
訪日外国人の集客目的でマルチ決済サービスを導入するなら、中国の2大ブランドともいえる「ALIPAY(アリペイ)」と「WeChatペイ(ウィーチャット)」には対応しておくことをおすすめします。
アリペイとは
中国アリババグループが提供している決済サービスの1つ。中国では「支付宝」と表記され、日本でも多くの店舗で導入されています。
中国最大手のECプラットフォーム「タオバオ」の決済サービスとして提供されたアリペイ。今では資産運用やソーシャルサービス、レストラン情報、公共料金の支払いなど中国人の生活の一部となっています。
ウィーチャットペイとは
中国で最も人気のあるメッセンジャーアプリ「WeChat」が提供している決済サービスで、「微信支付」と表記されます。
ウィーチャットペイは「WeChat」というサービスから派生したものです。WeChatはLINEとよく似たサービスで、SNS機能や友人への送金、アプリ内での買い物などが可能。中国では幅広い年代に利用されています。
最初はアリペイのほうがよく使われていましたが、WeChatアプリの人気が高くユーザーが多かったため、今ではアリペイと肩を並べるまでに普及してきています。(ユーザー数の公式データは非公開)。
マルチ決済端末には据え置き型とモバイル型がある
マルチ決済端末には、レジの横に常設する「据え置き型」と、持ち歩ける「モバイル型」の2種類があります。
メーカーによっては端末の種類で機能や料金が異なる場合もあります。よく見くらべて、より自分の店舗に適している端末を選ぶことをおすすめします。
据え置き型
モバイル型に比べて大きい据え置き型は、レジ横などの定位置で使うタイプです。多くのスタッフが会計業務を行う店舗なら、固定できる据え置き型なら紛失のリスクも低くなります。
一概には言えませんが、メーカーによっては据え置き型のマルチ決済端末のほうが、より多くの決済サービスに対応している場合もあります。また、据え置き端末に限りキャンペーンを行うメーカーもあります。
据え置き型は移動ができないので、飲食店などでテーブル会計をする場合は適さないでしょう。スマホや電子マネーを店舗スタッフが預かり、お客様から見えない場所で決済することになります。特に言葉が通じない訪日外国人の場合は、不安にさせてしまう恐れがあります。
モバイル型
モバイル型のマルチ決済端末は持ち運びができるので、レジなど固定の場所で決済を行わない店舗におすすめです。モバイル型であってもプリンター機能が付いているので、宅急便業者のように移動範囲が大きい業種にもおすすめです。
お客様の目の前で決済ができるので、訪日外国人の来店を狙う店舗も相手を不安にさせることなく決済できます。複数の会計スタッフが使う場合、紛失しないように注意が必要です。
マルチ決済端末4つを比較
マルチ決済端末として人気のある4つを比較しました。結果は以下の通りです。
QRコード | 販売形式 | レシート プリンター機能 |
マルチ端末の形式 | 中国2大ブランド(※1) への対応 |
|
---|---|---|---|---|---|
iRITSpay アイ・リッツペイ 決済ターミナル |
○ | 販売のみ | ○ | 据え置き型 | ○ |
KAZAPi | × | レンタル可能 | × | 据え置き型 | × |
PAYGATE Station | ○ | 販売のみ | ○ | モバイル型 | ○ |
StarPay | ○ | 販売のみ | ○ | モバイル型 | ○ |
※1:Alipay(アリペイ)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ)のこと
マルチ決済サービスを導入して顧客の決済ニーズを満たそう
マルチ決済サービスは、キャッシュレスが進むこのご時世に欠かせないものとなります。まだ現金決済の多い日本でも国がキャッシュレス化を推進しているため、今後ますますマルチ決済の需要は高まります。
訪日外国人は、日本よりもキャッシュレス化が進んでいます。オリンピックや万博の開催が決まり日本への注目度が高まる今、早急に導入してインバウンド消費に対応していきましょう。