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「Me2B時代」に必須の顧客データマネジメントの在り方とは

本年は、いよいよ5Gの商用利用が開始となる年です。IDCの調査によれば、これから始まる5G時代に爆発的に増える顧客データは、2025年には163兆ギガバイトに達し、その30%がリアルタイム情報になると言われています。

これは、小売業が「B2C」から「Me2B」へ変革する、つまり、本格的なパーソナライゼーションの時代に入っていくことを示唆していると言えます。

アリババの創業者ジャック・マーも、「ニューリテール2.0」の構想において「今後は5分で2000個の同じ商品を生産するよりも、5分で2000種類の異なった商品を生み出すことが重要になる」と語っています。

この、小売の未来であるパーソナライゼーションの根幹を支えることになる「顧客データ・マネジメント」は、全ての企業にとって喫緊の課題であると言えるでしょう。

目次:

時代はいよいよ本格的な「Me2B」ビジネスへ

Me2B自体は、2016年あたりから提唱され始めた言葉です。

従来型の流通小売業はこれまで「BtoCビジネス」、つまり企業(Business)がサービスを提供する相手を、「一般消費者(Consumer)」と一括りにして捉えていたと言えます。これは、商品の流通やプロモーション、そしてアフターサービスの在り方に至るまで、基本的には企業側に主導権があったが故の考え方です。

しかし、スマートフォンが普及し、消費者の購買にまつわる行動起点(情報収集から実際の購入まで)もスマートフォンが中心になり、かつ、各種センサーおよびIoTの進化によって店舗などリアルな場も含めて全てのチャネルがオンライン化しつつある(いわゆる「アフターデジタル」の世界)今、ビジネスの主導権は「一人一人の顧客」が握っていると言っても過言ではありません。

なぜなら、購買データだけでなくリアルな場における行動データの収集が可能になったことによって、企業は(一個人として認識された)顧客一人一人に対して最適にパーソナライズされたサービスを提供することが当たり前のように求められる時代が到来したからです。2016年当時はまだ不明瞭だったMe2Bの世界観は、今完全にクリアになりつつあります。

表記が「B2Me」ではなく「Me2B」となっているのは、顧客の行動そのものがサービスの方向性やクオリティ向上に寄与する「顧客起点」のビジネスが今後の主流になる、という意味合いが込められていると考えるとしっくり来るでしょう。

パーソナライゼーションを支えるのが顧客データマネジメント

このMe2Bビジネスの根幹となる、あらゆる顧客接点におけるパーソナライゼーションを行う上で欠かせないのが、顧客のデータマネジメントです。

言うまでもなく、データはただ集めただけでは、数字としてそこに存在しているだけで、何の役にも立ってくれません。集積されたデータの量が少なくても多くても同様です。

それでは、データを分析するためにBIツールなどを導入すれば事足りるかというと、それはデータマネジメントにおけるほんの一部分でしかありません。

データマネジメントとは、集められたデータを最適な形で自社のビジネスに活用できる状態を構築し、それを維持、あるいはPDCAを繰り返しながらさらに進化させていくために組織全体で継続的に取り組んでいくものなのです。

顧客データマネジメントの「土台づくり」は一大プロジェクト

ここからは、それぞれの企業で有効な顧客データマネジメントとはどのように構築していくべきなのか、その「土台づくり」に関する大枠の考え方を掻い摘んで述べていきたいと思います。

繰り返しになりますが、データは集めただけでは活用することはできません。まず、どんな目的でそのデータを利用するのかを明確にする必要があります。この目的は、流通小売企業である以上、最終的には売上を伸ばし利益を確保することが目的になりますが、そこへ至るまでのデータ活用法は企業やビジネスの状態ごとに異なるでしょう。また、
同じ企業内であっても、チャネルごとに必要なデータの切り口は変わってくるはずです。

それぞれのポイントでどのようなKPIを持つべきか、そして、有効なデータマネジメントを運用するためにはどんな組織体制を構築した上で、どのツールが必要で、どんな業務フローを組み立てるべきかなどをを棚卸しし、予算と照らし合わせて優先順位をつけていきます。

つまり、本当に有効な顧客データマネジメントを実現するためには、その土台の構築自体を、それに伴うシステム開発まで含めた一つの大きなプロジェクトと捉えた要件定義から始めなくてはならないのです。

そして、実際にデータマネジメントの土台を構築する際に最も重要なポイントになるのが、ECサイトとリアル店舗の会員情報、ポイントカードの利用情報など、現状チャネルごとにバラバラになっている顧客情報を1DBに統合し、チャネル間を自由に行き来する1人の顧客を1IDで観察できるようにしておくことです。1人の顧客がチャネルごとにどのように行動するのかを把握できて初めてパーソナライズしたサービスを提供できるようになるからです。

顧客の個人データは、有益なサービスの「対価」

自社の利益に寄与する運用方法だけでなく、顧客のデータマネジメントにおいては、もう一つ忘れてはならない重要な視点があります。それは、「顧客のデータを保護する」という視点です。

現代の消費者はデジタルに対するリテラシーが高まっており、消費者自身が流通小売企業とのあらゆる接点において様々な(企業にとって価値のある)データを提供し得ることを認識しているだけでなく、それら個人データを同意なしに収集・処理・活用されることに抵抗を示すでしょう。

2018年にGDPR(General Data Protection Regulation; 一般データ保護規則)が施行されたことは、ある意味それを象徴するような出来事と言えるかもしれません。

そして、仮に企業側が顧客の意思に反してデータを不正に利用するようなことが発覚すれば、それまで積み上げてきたエンゲージメントが一気に崩れ去るリスクさえあるのです。

しかし裏を返せば、顧客が自分にとって有益なサービスを享受するためであれば、その「対価」として自らの個人情報を提供することには前向きになるだけでなく、よりその企業に対してのエンゲージメントを深める機械にもなり得るのです。

したがって、データセキュリティの強化には努めつつ、いかにして消費者が納得した上で喜んで個人情報を提供できるようなサービスを構築できるかどうかが、今後の流通小売企業には求められるポイントの一つとなるでしょう。

さいごに

顧客データマネジメントは、本稿で言及した土台の構築に加えて、筋の良い仮説を立てるスキルや、その仮説に基づいてPDCAを回し、細かく改善を繰り返していくという地道な努力の積み重ねが必要となってきます。

また、理想とするパーソナライズサービスをいきなり全て実現することは、多くの企業にとって非常にハードルが高いことでしょう。したがって、優先度の高い施策から小さく初めて、徐々にその範囲を広げていくという、アジャイル開発的な考え方を採り入れながらプロジェクトを進めていくべきではないでしょうか。

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