【計算式あり】LTV(ライフタイムバリュー)とは?継続的に利益を出す考え方を解説します
「LTV(ライフタイムバリュー)って何?」と思っている方。
ライフタイムバリューとは、顧客が自社にもたらすトータルの利益をさします。
とはいえ、ライフタイムバリューから売上アップにつなげることは、一見難しく感じますよね。
そこでこの記事では、
- LTV(ライフタイムバリュー)とは「顧客が自社にもたらすトータルの利益」
- LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法
- LTV(ライフタイムバリュー)を最大化させる方法
- LTV(ライフタイムバリュー)における売上アップ事例3選
- LTV(ライフタイムバリュー)を学ぶさいにオススメの本
の順にお伝えします。
横文字が多くてややこしく見えるかもしれませんが、ライフタイムバリューの考え方を活用するハードルは高くありません。
ライフタイムバリューのポイントをおさえて、継続的にビジネスを成長させましょう!
LTV(ライフタイムバリュー)とは「顧客が自社にもたらすトータルの利益」
LTV(ライフタイムバリュー)は「顧客生涯価値」を意味します。要するに「顧客が自社にもたらすトータルの利益」のことです。
たとえば、今日3,000円の商品を買ってくれたAさんがいるとします。今日だけを考えるとAさんが自社にもたらした利益は3,000円ですが、自社のファンになってもらうための取り組みをすることで、その後10年にわたって商品を買ってくれるようになったとしたらどうでしょうか?
Aさんがもたらしてくれる利益は3,000円×12か月×10年=36万円です。これが、いわゆるライフタイムバリューにあたります。
ライフタイムバリューの考え方を持つことで短期的な売上だけにとらわれず、継続的にビジネスを成長させることが可能です。
次は具体的なライフタイムバリューの計算方法についてお伝えしますね。
LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法
LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法は2つです。
- LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
- LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
ひとつずつ説明します。
1. LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
もっとも一般的な計算方法が「LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間」です。
たとえば、
- 平均顧客単価(顧客が購入する商品の価格)が1万円
- 収益率(原価に対する利益の割合)が50%
- 購買頻度(どのくらいの頻度で購入されているか)が1回/月(12回/年)
- 継続期間(どのくらいの期間買い続けてくれたか)が3年間
とします。
この場合のLTVは「1万円×0.5×12×3=18万円」です。LTVを計算することで、顧客の価値を短期的な視点ではなく、長期的な視点で考えることができます。
ただし、この計算方法は顧客の獲得や維持に必要なコストが入っていませんので、そのコストを含めて計算したい方は、次の計算方法を使用してください。
2. LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
顧客の獲得や維持に必要なコストを含めた計算方法が「LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間‐(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)」です。
たとえば、
- 平均顧客単価(顧客が購入する商品の価格)が1万円
- 収益率(原価に対する利益の割合)が50%
- 購買頻度(どのくらいの頻度で購入されているか)が1回/月(12回/年)
- 継続期間(どのくらいの期間買い続けてくれたか)が3年間
- 新規顧客獲得コスト(新しい顧客を増やすのにかかる費用)が5万円
- 既存顧客維持コスト(今の顧客を維持するのにかかる費用)が1万円
とします。
この場合のLTVは「1万円×0.5×12×3-6万円=12万円」です。顧客の獲得・維持コストを含む場合と含まない場合で6万円の差があります。より正確にライフタイムバリューを計算したい場合は、コストを含めて計算しましょう。
LTV(ライフタイムバリュー)を高める方法
LTV(ライフタイムバリュー)を高める方法は4つです。
- プライシングを見直す
- 商品カテゴリを広げる
- 顧客のライフイベントに合わせる
- 顧客を巻き込んで、ファンをつくる
ひとつずつ説明しますね。
1. プライシングを見直す
1つ目は、プライシングを見直すことです。プライシングとは「値付け」のことで、商品に適切な値段をつけることができれば、自然と売上を伸ばすことができます。
プライシングの際に注意すべき点は、
- 商品の品質
- 顧客のニーズ
- 競合のプライシング
の3つです。商品の品質に見合わない値段では売れませんし、ニーズの無い商品にいくら安い値段を付けても売れません。また、競合のお店が自店よりも安い値段を付けている場合も、売上を伸ばすことが難しくなります。それぞれのバランスを見極めながらプライシングを行うことが必要です。
2. 商品カテゴリとバリエーションを広げる
2つ目は、商品カテゴリとバリエーションを広げることです。ここではカテゴリとバリエーションの2つに分けて紹介します。
商品カテゴリを広げる
商品カテゴリを広げて、自店で扱う商品を増やすことで「このお店に行けば必要なものがすべて揃う」と感じてもらいやすくなります。他のお店へ行く必要性をなくすことで、自店の売上につなげることが可能です。
バリエーションを広げる
商品のバリエーションを増やすことは、より価格の高い商品を選んでもらうことにつながります。
たとえば同じカテゴリの商品でも、「高級品」「普及品」の2つが選択肢にあるときは安さが優先されます。すると「普及品」が売れやすいです。しかし、「高級品」「中級品」「普及品」の3つが選択肢のときでは、「中級品」が選ばれやすくなります。
なぜなら3つ並べることで「安いほうがいいけれど、品質は落としたくない」という顧客心理が働くからです。これにより、売上アップが期待できます。
3. 顧客のライフイベントに合わせる
3つ目は、顧客のライフイベントに合わせることです。
顧客とのかかわりから得られた情報を活かして、ライフイベントに合った商品の提案をすることで、売上につなげることができます。誕生日や結婚、出産など、さまざまなタイミングに提案が可能です。
4. 顧客を巻き込んで、ファンをつくる
4つ目は、顧客を巻き込んで、ファンをつくることです。
顧客が自店の商品をいちど買ってくれたとしても、自店の商品を”継続して”買い続けてくれるとは限りません。ポイントは、自店のファンになってもらうことです。ファンになると、
- 商品を継続して買ってもらえる
- 自発的に口コミをしてくれる
- 既存顧客の維持コストがかからない
などのメリットがあります。
ファンを作るには、一緒に商品を開発するキャンペーンをしたり、ユーザー同士がコミュニケーションをとる機会を設けたりして、顧客を巻き込むことが必要です。
LTV(ライフタイムバリュー)における売上アップ事例3選
ここからは、ライフタイムバリューの考え方を用いて売上アップを実現した事例を
- 「三井住友カード」のメール配信改善
- 「Pinterest」のユーザー分析による仮説・検証
- 「やずや」のCPM分析
3つご紹介します。
1. 「三井住友カード」のメール配信改善
三井住友カードでは、新規で入会した顧客へウェルカムメールを送っていますが、メールがあまり開かれず、伝えたい情報が伝わらないのが課題でした。それを解決するために、「メールの内容を顧客が知りたい情報にしぼって送る」ことを実施。この結果、メール開封率とクリック率は2~3倍に増加し、メール配信を拒否される割合も減少しました。
2. 「Pinterest」のユーザー分析による仮説・検証
写真共有SNSプラットフォームであるPinterestは、顧客の日々の利用行動をシンプルに分析する方法を確立しています。
ユーザー分析は、ユーザーを過去28日間の利用頻度から大きく
- アクティブユーザー
- 不活発ユーザー
- 新規ユーザー
に分け、その割合の変化を分析するものです。
例えばアクティブユーザーに比べて不活発ユーザーが増加すると、なぜその現象が起こっているのか、原因と対処法を考えるシグナルとしてとらえます。これにより、新しい施策やユーザーインターフェイスの改善が顧客へどう影響するかの仮説・検証をスピーディーに実施し、より良いサービスを提供できるようになりました。
3. 「やずや」のCPM分析
「やずや」は、「お客様との絆づくり」を重視したCPM(顧客ポートフォリオマネジメント理論)を用いて成功をおさめました。
CPM分析では、顧客層を
- 現役層:現在も商品を購入し続けている顧客
- 休眠層:一定期間をこえて購入が無い顧客
の2つに分けて考えます。
そうすることで、売上の増減だけでは気づきにくい「顧客離れ」に気づき、すみやかな改善アクションをとることができるようになりました。
LTV(ライフタイムバリュー)を学ぶさいにオススメの本
さらにライフタイムバリューを学びたい方にオススメの本を
- 「顧客生涯価値のデータベース・マーケティング―戦略策定のための分析と基本原則」
- 「社長が知らない秘密の仕組み」
- 「ゼロからはじめる通販アカデミー」
の順に3つ、ご紹介します。
1. 「顧客生涯価値のデータベース・マーケティング―戦略策定のための分析と基本原則」(アーサー・M. ヒューズ)
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 238,319
データベース・マーケティング(顧客のあらゆる情報をデータ化して、より良いサービスづくりに活かすマーケティング手法)の初心者から上級者まで、わかりやすく成功するためのヒントが満載されています。LTVを最大にさせる戦略の策定方法や、RFM分析(過去の購入金額から顧客を分析する手法)、顧客との絆づくりまで、さまざまな事例を豊富に紹介しています。
2. 「社長が知らない秘密の仕組み」(橋本陽輔)
ビジネス社
売り上げランキング: 43,567
「やずや」を成功に導いたCPM(顧客ポートフォリオマネジメント理論)について詳しく説明されています。会社の規模にかかわらず、顧客と直接取引できる商売であれば広く活用が可能です。地味で目立たないお客さまを「宝」とする考え方の重要性や、お客さまが求める「特別感」について学ぶことができます。
3. 「ゼロからはじめる通販アカデミー」(田村雅樹)
「通販」と名前は付いているものの、商品開発やお客さまの獲得から、LTVを最大化させるに必要なことまで、業種を問わず多くのお店に役立つ情報がのっています。やってしまいがちな失敗ポイントなど、初心者にもわかりやすいのも魅力です。
LTV(ライフタイムバリュー)を理解して売上アップを実現しよう!
ここまで、ライフタイムバリューのポイントについてお伝えしました。
おさらいすると、LTV(ライフタイムバリュー)は「顧客生涯価値」を意味し、カンタンにいうと「顧客が自社にもたらすトータルの利益」のことです。
ライフタイムバリューの計算方法は、
- LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
- LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間‐(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
の2つで、シチュエーションに応じて使い分けることをおすすめします。LTVの傾向をざっくりと把握するだけであればカンタンな計算方式でも大丈夫ですが、LTVをもとに今後の方針や戦略を考えるのであれば、コストを含んだLTVを算出しましょう。
また、LTV(ライフタイムバリュー)を高める方法は、
- プライシングを見直す
- 商品カテゴリを広げる
- 顧客のライフイベントに合わせる
- 顧客を巻き込んで、ファンをつくる
の4つがあることをお伝えしました。
ライフタイムバリューのポイントは、短期でなく、長期的な視点でお客さまとのかかわりを考えることです。1回の購入単価が低くても、長い間継続的に商品を購入してくれる顧客は、結果的に多くの利益をもたらしてくれます。
ライフタイムバリューを高めることで経営を安定させ、継続的にビジネスを成長させることが可能です。まずは、自社のライフタイムバリューをざっくり計算してみましょう!
この記事を書いた人
黒田剛司
大阪市立大学商学部を卒業後、新卒で独立。学生時代に身につけた経営・流通・マーケティングなどの知識を活かし、コマースについて幅広いジャンルで執筆。また、サイト制作やWebメディア運営も請け負っており、IT系の記事作成も可能。無類の動物好き。