リセラーとは:世界のリセラープログラムから契約の種類までを分かりやすく解説!
ソフトウェアやアプリ、クラウドサービスなどを開発元から仕入れて再販する事業者を、リセラー(reseller)といいます。
リセラーは主に法人向け製品を扱うため、企業間で契約を交わす必要があります。
今回は、リセラー契約の基礎知識やAdobe、Amazonが実施しているリセラー・プログラムまでを分かりやすく解説します。
【目次】
リセラーとは再販業者や販売代理店のこと
リセラー(reseller)は、開発された製品を開発者や卸業者から仕入れて顧客に販売する事業者のことを意味します。
販売パートナーやディーラーと呼ばれることもあり、主に法人向けの製品を扱う場合に使われる用語です。特に、物品ではなくソフトウェアやサービスなど形になりにくいものを扱う事業者をこのように呼称します。
開発元公認の事業者は認定リセラー
一般消費者へ車や楽器を販売するのに、正規ディーラーや正規販売店があるように、法人向けの製品にも、販売元の認定を得てある種のパートナーシップを締結している業者がいます。このような開発元あるいは販売元公認のリセラーは、「認定リセラー」といいます。これは正規ディーラーや正規販売店と同等の意味をもちます。
付加価値をつけて販売するリセラーはVAR
リセラーの種類には、「VAR」というものもあります。これは、付加価値再販業者(Value Added Resseler)の略称。つまり、開発されたソフトウェアやサービスを買いつけてそのままの形で再販するのではなく、何か別の製品と組み合わせることで新たな価値を創造する販売業者のことです。
フラワーショップで例えるならば切り花を花卉(かき)園芸者から仕入れて販売するのがリセラーで、別の場所から仕入れた栄養剤とセットにして売ったりインテリアに映えるようなフラワーベースや鉢とセットにして売ったりするのが「VAR」です。
開発元のノウハウを超えた新しいサービスや、高度な技術をもった別々のソフトウェアを結びつけて新たなソリューションを世に送り出すという意味において、ビジネスにおける「VAR」の役割りは重要なものです。
リセラーの契約には2種類ある
ソフトウェアやアプリ、クラウドサービスといった現物のない製品を扱う場合、それぞれの条件などを確認事項として契約書に残しておく必要があります。
開発元や提供会社とリセラーが結ぶ契約には、「ディストリビューター方式」の契約と、「エージェント方式」の契約の2つがあります。
リセラーの契約1. ディストリビューター方式
ディストリビューター方式の契約とは、いわばリセラーが卸売業者としての役割を担う契約です。
開発元となっている企業からソフトウェアやアプリを仕入れて、それにリセラーの利益を上乗せした価格でエンドユーザーとなる法人に販売するのが仕入れ型リセラー契約です。
この方式は、仕入れ型の契約と呼ばれることもあります。
リセラーの契約2. エージェント方式
エージェント方式は、紹介型ともいい、業態にマッチしたソフトウェアやクラウドサービスを探している企業と、ソフトウェアを開発している会社を結びつけてマージンをとる契約をさします。
この場合に押さえておきたいのは、提供されるサービスに関する契約は提供元企業とそれを必要とする企業(エンドユーザー)同士でおこなわれるということです。
エージェント方式のリセラーの役割と利益はあくまで仲介であり、契約は開発元とエンドユーザーである企業を結びつけたことに対しておこなわれます。
とはいえ、
- 紹介のみで業務を終了とする契約
- アフターサポートの一次対応窓口として関わりを継続する契約
があるので、一次対応を任される契約の場合は、紹介後も引き続き両社と関わりが生じていくことになります。
バグや不払いの責任分担は契約によって異なる
リセラー契約を締結する場合には、まずディストリビューター方式かエージェント方式のどちらに準拠しているかをまず確認します。
2つの契約のもっとも大きな違いは「責任分担」です。
リセラーは、どちらの契約を締結すれば低リスクで多いリターンを得られるか、よく考慮して選択する必要があるでしょう。
ソフトウェアやクラウドサービスを運用していく上で、バグや不具合によって損害が発生した場合、もしくはエンドユーザーである企業が不払いをした場合、それぞれの責任分担は次のようになります。
- ディストリビューター方式:リセラーが負担
- エージェント方式:サービス提供社が負担
ディストリビューター方式はリセラーが負担する
ディストリビューター方式は、バグや不具合によってエンドユーザーが損害を被った場合、賠償する義務が発生します。また、エンドユーザーである企業が何らかの理由で使用料の不払いをおこなった場合、開発元の企業が被った損失を負担しなければなりません。
また、ディストリビューター方式の場合は、免責事由の確認と損害賠償の範囲についてしっかりとチェックしておきましょう。
ディストリビューター方式を採用するリセラーは、リスクを考慮したマージンの設定、契約の準備が必要です。
エージェント方式ではサービス提供社が負担
エージェント方式では「紹介」がリセラーの主な業務であるため、エンドユーザーである企業に対する賠償責任や不払いのリスクは発生しません。
また、競合サービスの取り扱いを禁止するような条項が設けられていないかどうかチェックしましょう。競合サービスの取り扱いが禁止されていると、別のサービスに乗り換えられなくなったり、類似のソフトウェアを扱う他社と新規契約ができなくなったりします。
エージェント方式ではリセラーに対する報酬をどのように支払うよう定めているか、また契約が終了した際の照会料についてどのように定められているかを双方で確認するべきです。
補足:取得代行業者もリセラー
ドメイン登録の取得代行をおこなう業者のことを、リセラーということもあります。
この場合のリセラーはレジストラと契約することによってドメインの取得代行をおこないます。
レジストラとは、「.com」や「.net」などの各ドメイン情報を保持しているデータベースの管理機関であるレジストリと直接契約を結ぶドメイン登録業者のことです。リセラー(取得代行業者)は、SRS(Shared Registry System 共有登録システム)に直接アクセスする権利がないため、レジストリデータベースにアクセスする権利を有しているレジストラと契約を結ぶことでドメインを取得しています。
つまり、どのような業界であってもリセラー=代理や代行と解釈していれば大きな間違いはありません。
主なリセラー・プログラム
では、ここで世界的な企業がどのようなリセラー・プログラムを用意しているのか具体的に見てみましょう。
G Suite Reseller
Googleには、認定販売リセラーのためのパートナープログラムとして「G Suite Reseller」があります。
G Suiteは、旧称をGoogle Apps for Businessといい、ビジネス向けGmailや共有カレンダー、ハングアウトチャット、ドキュメントやスプレッドシートの作成と共有を一括しておこなえるツールのことです。
G Suite Resellerは、G Suite Business製品の正規代理店のためのプログラムで、サポートやマーケティングツールを提供するものです。
大中規模向けと中小規模向けの2タイプがあり、認定販売リセラーである正規代理店は顧客と直接契約し、サービスを提供することができます。
認定販売リセラーの申請には、有料版のG Suiteアカウントを取得した上で
- 登記事項証明書
- 会社定款
- 信用調査機関から提供される情報
などをGoogleに提供する必要があります。
そして承認が下りるには、さらにG Suiteユーザーライセンスの登録と導入を100件達成するという認定要件があります。
Adobe リセラープログラム
Adobeには、「ADOBE PARTNER CONNECTION リセラー プログラム」があります。
Adobeのリセラーには、製品販売額や販売の体制といったコミットメントの程度に応じて4つにランク分けされています。
もっともベーシックなランクは「レジスタードリセラー」で、Adobeとオンライン契約をすることでメンバーになることができます。
次のランクは「サーティファイドリセラー」です。これはAdobeのパートナーにふさわしい行動規範トレーニングを受講した企業が参加できます。株式会社や合同会社など多数の企業がメンバーになっています。こちらもAdobeとは、オンライン契約を締結することになります。
その上位ランクは「ゴールドリセラー」です。これは販売実績があり、なおかつビジネスについても定められた一定条件を満たしているリセラーのランクです。ゴールドリセラーに認定されると、Adobeの営業担当がその企業に配置され、共同でマーケティングプランを作成することができます。全国大学生活協同組合連合会などが、このメンバーになっています。
もっとも上位のリセラーは、「プラチナリセラー」です。プラチナの条件については「プログラムガイド」に記載があり、一般には公開されていないようです。国内企業では、株式会社大塚商会、加賀ソフネット株式会社 EMカンパニー、キャノンマーケティングジャパン株式会社ほかがプラチナリセラーのメンバー企業です。
なお、ゴールドリセラーとプラチナリセラーに関してはオンライン契約ではなく、直接Adobeの担当営業、ヘルプデスクへの申請が必要になります。
AWS チャネルリセラープログラム(aws solution provider)
Amazonによる「AWS チャネルリセラープログラム」は、民間企業、公的機関などをエンドカスタマーとしてAWSサービスを再販するためのリセラープログラムです。
Adobeと同様、メンバーシップにはランクがあり、順にレジスタード、スタンダード、アドバンスと、プレミアとなっています。
このうち、APNロゴ(AWS Partner Networkロゴ)を使えるのはスタンダード以上のランクのリセラーです。
いずれのランクも申請には
- AWSの収益 1,000 USD/月を達成
- ビジネスレベル以上のAWSサポートプランに加入
- アソシエイトレベルのAWS認定取得スタッフが2名以上在籍
など諸条件を達成している必要があります。
なお、このプログラムは「aws solution provider」と名称が変更になる予定で、近日その詳細が公開されるようです。
Criteo リセラープログラム
フランスを本拠地とするCriteo(クリテオ)は、リターゲティング型動的ディスプレイ広告サービスを提供する企業です。
リターゲティングとは、一度サイトを訪れたユーザーをサイトの外まで追跡する手法のこと。そして動的ディスプレイとは決まった広告ではなく閲覧ユーザーに合わせて流動的に変化する広告ディスプレイのことです。
Criteoは全世界にこのサービスを展開しており、日本でも圧倒的なシェアを獲得しています。Yahoo! Jpanと提携しているので、Criteoの広告をYahoo!ニュースと連携させて配信できることが強みのひとつに挙げられます。
Criteoのリセラープログラムは、共同ブランディングによって高度のトラフィックと販売を達成する目的でプログラミングされています。
まとめ
優れたソフトウェアやクラウドサービスを開発しても、エンドユーザーにまで届かなければ意味がありません。
法人間での需要と供給の橋渡しをするリセラーによって新たな価値が創造されることもあり、仲介によってビジネスが大きく飛躍する可能性を秘めています。