効果的なPOSのリプレースは「パッケージ+カスタマイズ開発」がオススメな5つの理由
リアル店舗を展開している流通小売企業にとって、「効果的なPOSのリプレース」は定期的に訪れる、しかも毎回解決が難しい課題と言えるでしょう。
そのキッカケは様々です。保守契約期間が切れるタイミングだったり、特にレガシーPOSを使用していた企業にとっては、事業フェーズが変わるとともに既存のPOSでは機能が追いつかなくなるというケースもよくあります。
ベンダーにもタイプにも様々な選択肢がある中で、自社の事業にとって最適なPOSを見出すことに頭を悩ませている担当者の方々も多いことでしょう。
そのような場合、まずはパッケージ製品をベースにしたカスタマイズ開発を念頭に置くことをオススメします。
以下で、その理由についてポイントを挙げていきます。
目次:
- リリースまでのスケジュールにはめやすい
- コストの見通しが立てやすい
- 目的に合わせて細かいチューニングが可能
- スピードが早い外部環境の変化にも対応しやすい
- OMOの実現が全ての企業にとって重要なテーマとなりつつある
- さいごに
1、リリースまでのスケジュールにはめやすい
大抵のリプレースプロジェクトは、どれだけ事前に綿密なスケジュールを立てていたとしても、実施に動き始めるとどうしてもスケジュールがタイトになるものです。特に事業規模が大きくなればなるほど、コンセンサスを取るべき関係部署は多くなり、要件が固まるまでに多くの時間を要するでしょう。
開発に着手した後も、仮にスクラッチでの開発となると、予測できないトラブルが多々発生するリスクはパッケージ製品と比較してどうしても高くなります。
導入事例が豊富なパッケージ製品をベースにすれば、仮にカスタマイズ開発を入れるにしても、ある程度見通しが立てやすく、なおかつ開発スピードを落とさずに済むというメリットがあります。
2、コストの見通しが立てやすい
事業や企業の特殊性が高い場合、それにマッチするPOSを用意しようとすると、システム的にはフルスクラッチで構築するのが理想的であるように思えます。
しかし、1から10までをすべてオリジナルで構築する場合、当然開発にかかる時間工数も膨らみます。したがって、イニシャルコストはそれに応じてかなり大きなものになってしまいがちです。
要件を提示した上でベンダーから上がってきた見積り金額が想定をはるかに超えていたという経験がある方も多いでしょう。
ならば、デフォルトでの料金が明確なパッケージをベースにした方がコストについても見通しが立てやすいだけでなく、「同じパッケージがベースである」という前提の導入事例があれば、コストの前提条件が見えづらいスクラッチ開発より予算の社内稟議を通しやすいという側面もあるのではないでしょうか。
3、目的に合わせて細かいチューニングが可能
当然といえば当然ですが、POSに期待する役割や導入やリプレースすることで解決したいことは、業種や業態で違います。
例えば、アパレル店舗のPOSであれば、在庫管理の正確性と業務効率化の両立かもしれません。あるいは飲食店であれば、需要予測と仕入れの最適化、スタッフのシフト管理などかもしれません。
もっといえば、業種業態が同じでも企業の事情ごとにPOSのテーマはすべて変わってくるものです。
一般的にコンビニに導入されるPOSが担うのは、セルフレジによるスタッフの負担軽減、様々な決済手段や複数種類のポイントへの対応を通じた顧客接点の強化などのテーマがあるでしょう。
JR東日本リテールネットが展開するKIOSKやNewDaysでは、同じコンビニでも、駅という場所の特性から「いかにスムーズなチェックアウトができるか」という視点でシステムを構築するはずです。
これらの目的にマッチするPOSシステムを構築するには、スクラッチで開発するまで行かずとも、細かいチューニングが必要になってきます。チューニングが必要な箇所も、インターフェースや新たな外部連携先、その企業独自の機能など、多岐に渡ります。
そういった小回りが利くのは、やはりパッケージ製品のデフォルト機能をベースにしたカスタマイズ開発なのです。
4、スピードが早い外部環境の変化にも対応しやすい
様々なリテールテクノロジーの進化はこの先ますます加速して行くでしょう。それに伴い、POSも常に変化が求められます。
現在でも増え続けるキャッシュレス決済手段への対応に苦労している企業は多いと思います。しかし、この先同じ決済手段が主流であり続ける保証はありません。
QRコードではなく、もっと簡単な動作で決済が完了するFeliCa型の決済手段が台頭するかもしれないし、そもそもすべての決済サービスをまとめられるシステムが生み出されるかもしれません。顔認証をはじめとする、生体認証型の決済手段が実用化される可能性も十分にあります。
決済手段以外でも、AI翻訳機能によって接客ログが残せるツールや、店内行動データを取得分析するシステムと購買データの連携が手軽にできるようになる可能性もあります。
これら、スピードが早く業績への影響もクリティカルな変化にキャッチアップしていくために、毎回スクラッチで対応することはコスト面から考えても不可能でしょう。したがって、拡張性の高いパッケージ製品をベースに、その都度アジャイル的な追加開発で対応できるのが理想的なのです。
5、OMOの実現が全ての企業にとって重要なテーマとなりつつある
これからの時代は、すべての小売企業にとってOMO(Online Merges with Offline)の実現は重要なテーマとなってきます。その視点を持った時に、POSのリプレースを単なるハードウェアの刷新と捉えてはいけません。
ハードウェアの入れ替えという考え方でリプレースに望んでしまうと、機械は新しくなるかもしれませんが、上記項目で述べたような新しいテクノロジーを最適な形で自社のビジネスモデルに取り入れることはできないでしょう。
特に、OMOの実現となれば、店内における顧客の行動データを取得する仕組みや、細かいところではECサイト経由での取り置きリクエストに対応する仕組みなど、従来のPOSにはなかった概念を実装しなくてはいけません。そこに対して今投資できなければ、この先の競争で遅れを取ってしまうリスクさえあると言えます。
そして、それを限られた予算と時間の中で形にしていくためには、繰り返しになりますが、既存のパッケージ製品をベースにカスタマイズ開発を組み込むことがもっとも効率がいいのです。
この時、パッケージ製品としての完成度もさることながら、製品を提供するベンダーのOMOに対するリテラシーにも目を配っておくべきです。なぜなら、OMOを見据えたPOSシステムの構築には、POSだけでなくECに対する豊富なノウハウが必要不可欠になってくるからです。
さいごに
これからの時代を見据えた時に、例えば1億円かけて機能的には入れ替え前と変わらないPOSにリプレースするぐらいなら、1億円+αかけて基盤を整え、未来に投資すべきでしょう。
その時に、ここまで述べてきたように、まず「パッケージ製品+カスタマイズ開発」を念頭に置き、それが可能な(かつ、OMOに対するリテラシーが高い)ベンダーに絞った上で自社が満たすべき要件と製品ごとの機能を照らし合わせていくところから始めると、開発着手までのリードタイムを大幅に短縮できるのではないでしょうか。