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フードロス対策の取り組みとアプリ:企業と消費者ができることとは?

2020年1月~2月、エキナカでフードロス削減を目的とした実証実験がおこなわれました。エキナカの営業終了後に、残っている販売しきれなかった食品を、無駄なく消費するための試みです。
フードロスの問題は、資源の有効活用と環境保護のために火急の対策が必要とされている世界規模のトピックといえます。この記事では、フードロス問題の概要と国内の取り組み姿勢から、国内で実施されているエキナカをはじめとしたプロジェクト事例まで、詳しく解説します。

目次:

フードロス対策、日本政府は対策・取り組みを推進

フードロス(食品ロス)は、まだ問題なく食べられるにも関わらずマニュアルや営業状況などの事情でやむなく廃棄されている食品のことです。
国内の食品廃棄物は年間2,759万トンと公表されており、このうちの643万トンはまだ食べられるのに廃棄される食品、つまりフードロスとされています。

飢餓に苦しむ人がいる一方でこれだけの食品が無駄になっているのは、「もったいない」で片づけられない問題です。しかも、食品を廃棄するとCO2が発生するため、環境への負荷も看過できません。

環境相と農林水産省は、平成24年から食品産業に対して食品リサイクル法に基づいた食品廃棄物の「発生抑制の目標値」を設定、フードロス削減を推進しています。

食品リサイクル法とは

食品リサイクル法は、正式名称を「食品循環資源の再利用等の促進に関する法律」といいます。平成13年に施行されました。
目的は、

  • 食品廃棄物の発生を抑制すること
  • 食品廃棄物の減量化をはかること
  • 廃棄物の最終処分量を減少させること
  • 廃棄ではなく肥料や飼料としてリサイクルさせること

などが挙げられます。
この法律の対象になるのは、食品メーカーやコンビニ、デパートなど食品を販売する事業者と、レストランやホテルなど食事を提供する事業者で、廃棄物量が100トンを超過する事業者には、再利用を促進することが義務づけられています。

参考:農林水産省「食品循環資源の再利用等の促進に関する法律」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/s_about/pdf/data1.pdf

対策のためにフードロスの原因を知ろう

フードロスは、企業だけ、消費者だけに原因や責任があるのではなく、消費者と企業双方の考え方や、生産・消費のあり方にあるとされています。

フードロスの原因1. 食べ残し

フードロスの原因1つめの「食べ残し」は、消費者が残した料理を廃棄するケースです。家庭では多めの材料で作って、翌日のお弁当に活用する、一手間くわえてリメイクするといった技を使えますが、店舗ではメニューが決まっている上、衛生上の観点からそのようなことができません。
外食産業では、食べきれない量をあえて提供するような店舗もありますが、食べきれなかった場合はそれらがすべて廃棄(フードロス)となってしまいます。
政府は、フードロス対策の一環として、消費者が食べきれる量の提供を飲食業に呼びかけています。

フードロスの原因2. 直接廃棄

直接廃棄は、贈答品やお土産といった食品を食べずに捨てる、保存しているうちに賞味期限が過ぎてしまい封を切らずに食品を捨てる、というような「そのまま捨てる」ケースをいいます。
これは、消費者が買い物の仕方を工夫したり備蓄食料の消費期限に気をつけるだけである程度減らすことができるかもしれません。

フードロスの原因3. 過剰除去

過剰除去は、調理の過程で食べられる部位まで捨ててしまうケースをさします。例えば、

  • 卵の黄身だけを使って調理し、白身をすべて使わず廃棄する
  • 動物肉の希少部位だけを使って調理し、本来可食部である部位を廃棄する

といったことです。
こうしたフードロスに対しては、可食部を無駄なく使えるようにメニューを組み立てる、店舗運営に対する意識を変えるといったことが、削減策として求められます。

エキナカ初のフードロス対策「レスキューデリ」とは

先に挙げたエキナカの実証実験は、フードシェアリングサービスを通してフードロス削減を目指す株式会社コークッキングによる「TABETE(タベテ)」と、JR東日本スタートアップ株式会社によるものです。

レスキューデリの実験が実施されたのは、2020年1月14日~2月14日の一ヶ月間。エキナカ店舗の営業終了後、販売しきれなかった(売れ残った)商品を指定の従業員休憩室で販売するという手法がとられました。
参加した店舗は、ベーカリーやおにぎり、惣菜を扱う店舗です。こうした店舗は、閉店まである程度の品揃えを確保しておかなければならない、天候によって見込み客の数が大きく変動する、といった理由からフードロスが発生しやすい環境にあります。

実験では、こうした事情によって営業終了後に余剰在庫となってしまった食材を「レスキューデリ」の「レスキュークルー」が買い取り、紙袋に詰め合わせた上で従業員向けに販売。休憩室を訪れた従業員は、商品の中から好きなものを選んで現金で購入できるシステムがとられました。

美味しくお得に購入できるフードシェア「TABETE」とは

この実験のシステムは、廃棄せざるを得ない食品を「美味しく」、「お得」に購入できるプラットフォームを提供するフードシェアリングサービス「TABETE(タベテ)」によるものです。
廃棄の危機にある食品をレスキューするというコンセプトで、「ユーザーよし」、「お店よし」、「環境よし」の三方よしをモットーとしています。
ユーザーはまだ問題なく、そしておいしく食べられる食品を定価よりも割安で購入でき、お店は廃棄せずに利益に転化することができ、また廃棄食品が減ることで処分で発生するはずだった二酸化炭素量を削減できて環境に貢献できる、というわけです。

現在「TABETE」には16万人のユーザー、330店舗の登録があり、累計約1万1千食の廃棄を回避しています。アプリも実装されており、登録ユーザーはレスキュー食品を探すことができるようになっています。
また、2019年には、環境と社会によい活動を応援する環境省「グッドライフアワード」で「環境大臣賞 優秀賞」に選ばれました。

参考:TABETE
https://tabete.me/about

フードロス対策の事例

フードロス対策は、「TABETE」以外にも、自治体レベルや民間レベルでさまざまな取り組みが考案され、実行されています。
TABETE以外の対策事例についてまとめました。

食べきり協力店制度

全国的に展開している制度として、「食べきり協力店」というシステムがあります。
この制度は、フードロスの食品廃棄物の減少を目的として、残さず食べられる小盛りメニューを充実させたり、食べ残し削減のための啓発活動を実施したりする飲食店を増やす制度です。
府県、市区単位で実施されており、2006年からこの制度を施行している福井県では、1,253店もの飲食店が協力しています。

全国の「食べきり協力店制度」実施状況
http://www2.toyo.ac.jp/~yamaya/tabekirikyoryokuten_list.pdf

ホットペッパーグルメ「シェアバッグ」

ホットペッパーグルメでは、2018年10月〜2019年4月の期間中、横浜市内の提携飲食店にて残した食べ物を持ち帰るための「シェアバッグ」をプレゼントするキャンペーンをおこなっていました。
欧米のレストランでは「ドギーバッグ」の名称でよく知られている飲食持ち帰り用のバッグやボックスですが、日本では提供された食品を持ち帰る文化がありません。その意識を変えるべく、ホットペッパーは、「気兼ねなく食べきれなかった食品を持ち帰る」ための施策としてシェアバッグのプレゼントキャンペーンを実施していました。
企画は2段階で実施され、第1弾で200セット、第2弾で300セットのシェアバッグが配布されました。

https://www.hotpepper.jp/doc/sharebag/

余った食品を届ける「GURU+」

「GURU+(ぐるたす)」は、関西初のフードロス削減に貢献するマッチングサービスです。
引き合わせる相手は、食品廃棄をする店舗と消費者。Webサイトを通じて、食材の余剰在庫やキャンセルになってしまった料理などを販売し、フードロスを減らす仕組みです。
店舗は価格を自由に決められるので、割安で販売することもできれば、定価に近い価格で出品することもできます。
サイトから決済し、店頭で商品を受け渡す、あるいは食事をするというシステムになっています。
フードロス対策のほか、廃棄にかかるコスト削減も見込まれます。

・GURU+

https://gurutas.jp/forshop/

廃棄予定品を買取、販売する「ecoeat」

日本もったいない食品センターが運営する「ecoeat(エコイート)」は、廃棄される予定の食品や飲料の買取・無償引取をおこない、食品衛生上問題のない販売可能な商品のみを再販売しています。
フードロス対策のほか、地域貢献、利益による生活困窮者への寄贈などを取り組みの目的に掲げています。

参考:エコイート
https://www.mottainai-ichiba.org/store/

飲食店とユーザーをつなぐアプリ「Reduce Go」

アプリ「Reduce Go」は、フードロスを減らしたい飲食店と、通常より安く食事をしたいと考えるユーザーとのマッチングアプリです。
月額1,980円で一日2回まで、テイクアウトで余剰食品を受け取ることができます。
2019年8月時点での加盟点数は172店舗。これまで11,702食もの余剰食品の削減に成功しました。
現在は関東エリアと名古屋エリアのみに対応していますが、順次拡大予定とされています。

https://reducego.jp/

企業と消費者の意識がフードロス対策の要となる

消費者は、無意識に同じ値段なら少しでも賞味期限の長いものを、少しでも作りたてのものを、と選んで食品を購入しています。
こうした消費者意識を反映して、企業や店舗は食品衛生上問題のない食品でも時間ごとに廃棄し、新しい商品を次々と陳列していきます。
こうしたフードロスありきのサイクルを少しずつ変えていかなければ、食品廃棄量を削減することは難しいでしょう。
先に挙げたどの事例、サービスも、「フードロスを一気に解決できる対策」を掲げているわけではありません。目先のことを一歩ずつ、一食ずつ廃棄されなくてもよい食品を適切に販売することで、廃棄量をゆるやかに削減していくことを目指しています。

スーパーの実験ではフードロス啓発ポスターが効果発揮

京都市は、2017年11月1日〜12月3日、食品スーパーとともにフードロス削減の社会実験を実施しました。協力したのは5店舗の食品スーパーで、検証商品は、豆腐やヨーグルト、青果、惣菜、洋菓子といった日配品が対象になりました。
買い物かご用ステッカーやポスターで、賞味期限間近の見切り品販売シールをアピールし、「値引き商品を購入すると食品ロスが減る」と誘導。
結果、1,000人あたりの廃棄個数が6割程度減少しました(前年同時期比較)。
また、啓発ポスターを見た消費者からは、「賞味期限間近でも充分食べられるのに、もったいないという思いは共感できる」といった旨のコメントも寄せられました。

食品廃棄の実態を知ることと、割安で商品を購入できるというメリットが組み合わさることで、消費者側にもフードロスを減らす「目的」や「意義」が生まれます。
消費者の意識を企業や店舗が変えていくことも、フードロス対策の長期的な取り組みとして重要だと分かる実験だったといえるでしょう。

さいごに

フードロス対策には、資源の無駄づかいを減らすという視点と、廃棄にともなうCO2を減らす=環境に対する負荷を軽くするという視点の2つが必要です。事業者と消費者がそれぞれ食品廃棄物を減らすためにどうしたらよいかを考え、社会全体がフードロスを減らす努力に注意を向けるべきではないでしょうか。

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