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平等な経済活動ができるのは独占禁止法のおかげ

企業経営は一筋縄ではいきません。来る日も来る日も他社と競い合って勝ち続けなければならず、一歩間違えれば倒産という結果を招いてしまいます。
そのため楽をして売上を上げたいと考える経営者が出てきても何ら不思議ではありません。楽をして売上を上げるということはつまり競争しないということですが、世界ではこういったことを禁止する法律があります。それが独占禁止法です。

  • 独占禁止法は市場競争を妨害する不正行為を防止する法律である
  • 世界中の国々で制定されている
  • 日本ではアメリカのシャーマン法とクレイトン法を参考に戦後作られた
  • 私的な独占、不当な取引制限、不公正な取引方法が独占禁止法に該当する行為である
  • 独占禁止法がないと消費者は不利益を被る
  • 国際社会ではますます独占禁止法による係争が進むと予想される

独占禁止法とは?

独占禁止法とは、健全で公正な競争を維持するために独占的ないし協調的な不正行動を防止する法律です。呼び名は違いますが(アメリカでは反トラスト法と呼ばれています)、同様の法律が世界中で制定されているおかげで、企業は平等に経済活動ができるのです。
近代における独占禁止法はアメリカのシャーマン法やクレイトン法がそのルーツと言われていますが、歴史を振り返るとイギリスのエリザベス1世の時代には独占を禁止する法令が出されていたとも言われています。独占禁止法は基本的には資本主義経済の国で制定されているのですが、計画経済の中華人民共和国でも2008年に制定されています。

日本における独占禁止法の歴史

日本における独占禁止法の正確な呼称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。これは戦後間もない1947年にGHQがシャーマン法とクレイトン法を参考に原案を作った形で制定されました。

どんな行為が独占禁止法に該当するのか?

では、どのような行為が独占禁止法に該当するのでしょうか。基本的な考え方としては「正当な競争を妨害するような自分勝手な行為」が該当すると考えてもらって構わないと思います。

【私的な独占】

市場シェアを占める大手企業が、競合他社の参入を防ぐために単独もしくは複数で新規参入者を妨害する行為です。大手企業の立場を利用して、取引先が新規参入者と契約を結ばないように圧力をかける行為や、正当な理由なく明らかに新規参入を妨害するために安価に商品を販売する行為がこれに該当します。

【不当な取引制限】

企業が他の企業と共同して対価を決定する行為です。いわゆるカルテル談合と表現されます。
本来であれば、各企業は自らの意思で金額を決定するはずですが、口裏を合わせて企業間の話し合いで価格を決定する行為です。カルテルは同業で商品の価格を決定し、自分たちでルールを決めて一定水準以下に下げないよう競争しない行為を指します。
入札談合は建設業などで問題となりますが、入札に参加する企業同士が事前に相談して落札額を決めて、競争しないことがあります。今回はA社、次回はB社が落札できるように事前に決めておくことで、入札がスムーズに決まるというものです。入札価格で競う必要がないため、自ら希望する金額で受注が可能になります。

【不公正な取引方法】

正当な理由がないのに特定の企業と取引をしない、もしくは不公正な取引を要求する行為がこれに当たります。例えば販売希望価格を守らない小売店とは取引を中止したり、故意に納品価格を高くしたりする行為がこれに該当します。

このようにいわば、優越的な立場にある企業が、その立場を利用して弱者に不利益をもたらす行為は基本的に独占禁止法に該当します。

独占禁止法がないと消費者は不利益を被る

今までは企業間同士の取引に関して独占禁止法を見てきましたが、次は消費者目線で独占禁止法を見ていきます。実は独占禁止法が保護している「弱者」には、消費者も含まれています。この法律がないと私たち一般消費者はどのような不利益を被るのでしょうか。

価格の高止まり

競争が働く市場であれば、企業は自社商品を販売したいために他社よりも値段を下げて販売しますし、他の企業も同様なアクションをとるため、商品価格は相対的に下がっていきます。これは消費者にとってはありがたいことですが、もし企業同士で一定水準以下に価格を下げないよう決めていたら、価格は高止まりしてしまいます。それが生活必需品だった場合は、もはやその
価格に納得がいかなくても購入せざるを得なくなるため、消費者にとっては相当な不利益になってしまいます。

品質が劣悪になる

競争が発生しないということは、企業は商品の質を上げる必要がなくなります。なぜなら品質が変わらなくても売れてしまうからです。企業は経営努力をしてもしなくても売上が変わらないのであれば、手を抜き始めるでしょう。するとそれは商品の質に影響することになり、商品の質は劣化していきます。
企業が競争しなくなると、商品を購入する私たちも直接的に不利益を被ることになります。

消費者は,誰もがより良い商品やサービスを求めています。その消費者を顧客として獲得するため,事業者はより安くて優れた商品を提供することで競争を行います。
引用:公正取引委員会ホームページ http://www.jftc.go.jp/dk/dk_qa.html#cmsQ1

独占禁止法違反の事例

実際にあった事例の中で最近起こった独占禁止法違反の例を紹介します。

スポーツ用品メーカーによる再販売価格の拘束

スポーツ用品メーカーのA社は、人気のスポーツシューズを販売した際、小売業者に対し、一般消費者に対する販売価格をA社が希望する価格で販売するように、卸業者を通じて圧力をかけていました。従わない場合は返品させたり、出荷停止にしたりしていたのです。
これは再販売価格の拘束に該当するため、独占禁止法違反として公正取引委員会から*排除措置命令が下りました。

ゲーム運営会社による競争者に対する取引妨害

ゲーム運営会社のD社は、ソーシャルゲーム提供業者に対して、ライバル企業G社を通じてソーシャルゲームを提供する場合は、自社運営のゲームプラットフォームではそのソーシャルゲームのPRがしづらくなるようにしていました。これは競争者(G社)に対する取引妨害と判断されたため、独占禁止法違反として公正取引委員会から*排除措置命令が下りました。

これらはほんの一例で、日本企業でも独占禁止法の事例は定期的に発生しています。

*排除措置命令とは、独占禁止法違反者に対して速やかにその行為をやめて市場を正常状態に戻すために必要な措置を講ずるよう命じる事です。

EU市場でグーグルは3000億円の制裁金

今や経済はグローバルに展開するのが当たり前になってきましたが、それに伴って国と企業の係争も増えてきています。独占禁止法に関する係争も同様に増加しています。
最近ニュースになりましたが、アメリカの大手IT企業googleがEU市場に置いてEU競争法(いわゆる独占禁止法)で訴えられました。理由はGoogleショッピングを検索結果の上位に表示させるよう、不正に操作したことで市場競争を歪めた疑いがあるためです。まだ最終的な結果は出ていませんが(※)、googleにとってはかなりの痛手になりそうです。

※2017年7月下旬の情報

著作権法や特許法で一部守られる

市場では独占が禁止されているのですが、著作権や特許権などの知的財産権によって一定期間においてはある種の独占が守られています。知的財産権が正当に行使されている場合に限っては独占禁止法が適用されないようになっているのです。

国際社会ではますます独占禁止法による係争が進む

経済活動がグローバルになるにつれ、国際的な独占禁止法違反の事例は今後も増え続けていくことが予想されます。
他国の企業が自国の市場を独占するのは、自国の企業が独占するよりも納得いかないでしょうから、心情的に考えても各国の取締り機関は他国企業の独占には厳しい目を光らせるでしょう。
また国によってそもそも独占禁止法のルールが異なるため、企業側が進出した国の独占禁止法(に該当する法律)を理解していないために、訴訟に発展するケースもあります。グローバル展開を検討している企業は、予想外の結果にならないためにも前に国際係争リスクを把握しておく必要がありそうです。

小売業で注意すべきこと

いかがでしたか?
小売店を運営している場合でも、消費者に対して不利益をもたらすことのないよう、独占禁止法は注意するべき法律です。
たとえば、仕入業者に対して、「新規オープンの時に店の業務を無償で手伝うように!」などの圧力をかけることで、不公正な取引方法の「優越的地位の濫用」にあたるとして排除措置命令が下された例もあります。
安易に優位的な立場を利用することなく、しっかりとした知識を持って、公正な店舗運営を行っていきましょう。

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