DX時代に知っておくべき「デザイン思考」とデジタル人材の確保について
ビジネスに必要な思考方法としてロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどがありますが、昨今では「デザイン思考」が注目されています。
デザイン思考の認知度はまだ低いものの「新しい価値を創造する」という目的がDXと一致しており、DXの推進がスムーズな企業ほどこのデザイン思考を取り入れているというデータもあります。
この記事ではデザイン思考とデザイン経営、そしてデザイン思考の浸透に欠かせないデジタル人材の確保について解説します。DXやデジタル人材に課題をお持ちのご担当者は、ぜひ最後までお読みください。
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デザイン思考とはUIやパッケージといった視覚のことではありません。デザイン思考には5つのステップがあり、最終的に新しい何かを生み出すことが目的です。
デザイン思考は、UX(ユーザー体験)のデザインを基本として生まれました。技術の発達によって生まれたテクノロジーやインターフェースの発達により、オンライン上でどのようにユーザー体験をデザインするかが重視されているのです。
まずはデザイン思考の概要とそのステップやデザイン経営について解説します。
デザイン思考とは
デザイン思考はユーザーの「満足感」や「共感」といった要素を中心に据える点が特徴です。問題定義や解決意図を明確にして、試作を繰り返しブラッシュアップを重ねます。
デザイン思考には、以下の5つのステップがあります。
ステップ1「共感」:デザイン思考において核となる重要な部分。人々を理解する段階で、ユーザーを観察したりインタビューを行ったりして、「何に共感するのか」「何を求めているのか」を理解する。
ステップ2「問題定義」:ステップ1で得た共感をベースに、ユーザーのニーズを定義する。何を実現したいのか?本当のニーズはどこにあるのか?を言語化し、自社の商品やサービスの方向性・コンセプトを定める。
ステップ3「創造」:デザインプロセスの1段階目で、定義した問題の解決策を作成する段階。アイデアを発想する段階で、チーム内でブレインストーミングなどを行い形にしていく。
ステップ4「プロトタイプ」:試作を重ねる段階。さまざまなアイデアを形にすることで、新たな視点や問題点を探る。試作を繰り返し、実行可能なアイデアはどれか?どう実装すべきか?を試行錯誤する。
ステップ5「テスト」:ステップ4のプロタイプで作ったものをユーザーに試してもらい、フィードバックをもらう。ユーザーの声をもとにブラッシュアップをして、サービスや商品の品質を高めていく。
デザイン思考は、上記5つのステップによって新しい価値の創出を目指します。経営層はこのデザイン思考はもちろん、次でご紹介するデザイン経営も知っておくべきです。
DX推進企業が持つ「デザイン経営」
デザイン経営が果たす役割は、ブランド力とイノベーション力を向上させ、企業競争力の向上を目指すことです。2018年には経済産業省と特許庁がデザイン経営宣言を発表し、産業競争力を高めるよう発信しています。
参考:特許庁はデザイン経営を推進しています
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html
デザイン経営における「デザイン」とは、企業が大切にしている価値と、それを実現しようとする意志を表現する営みのことを指します。外見を高感度の高いものにするだけでなく、顧客と企業が接点を持つあらゆる体験に価値や意思を徹底させ、一貫したメッセージとして伝わることでブランド価値を生むのです。
日本ではあまり認知度が高くないこのデザイン経営ですが、デザイン経営への投資についてはすでにデータが出ています。
経産省の「デザイン経営宣言」によると、デザインに投資することで4倍の収益を期待できるとあります。デザイン経営を行う会社は高い競争力を保っており、世界の有力企業が戦略の中心に据えているのがこの「デザイン」なのです。
デザイン思考・デザイン経営・DX、これらには「新しい価値を創出する」という共通項があります。DXを推進する企業ほどデザイン思考を活用しているというデータもあり、グローバル時代を生き抜く企業は無視できない存在です。
DX推進では「デジタル人材の確保」が課題の1つである
DX推進に難航する企業は少なくありません。経営層がまだDXを受け入れられていない、リソースが足りない、社内のノウハウがないなど事情は様々ですが、経済産業省が警鐘を鳴らす“2025年の崖”はすぐそこまで迫っています。
デジタル化に伴い企業はIT化を進めたものの、ブラックボックス化してしまい、多くの企業ではメンテナンスや維持に膨大なコストをかけています。このコストをかけ続けることに限界が来るのが2025年といわれており、「2025年の崖」はDXを推進する背景に1つとして有名です。
ブラックボックス化したシステムを刷新することが必要ですが、そこで求められるのが「デジタル人材」です。AIやビッグデータといった最新技術を駆使し、DXと同じく新しい価値を提供できるデジタル人材の確保こそが、企業の競争率を左右するといっても過言ではないでしょう。
デジタル人材に求めるものは技術だけではありません。デジタル思考のように「人」を中心として、人々の声を聴いたり課題解決をしたりといったスキルを持つ人材が必要なのです。
デジタル人材の確保、育成をどのように行うか
多くの企業はデジタル人材の確保が課題です。デジタル人材は新たに雇用するだけでなく、社内でリソースをかけて育成し、内製化する方法もあります。
ここでは国内の企業におけるデジタル人材の確保について、事例や方法をご紹介します。内製化・アウトソーシングどちらもご紹介しますので、ぜひ自社の人事の参考にしてください。
内製化で支えるDX推進
某大手電機メーカーでは、約13万人もの従業員にデザイン思考を浸透させています。
同社ではビジネスリテラシーの1つと位置づけ、企業内のDXプロジェクトをけん引するデザインセンターを立ち上げました。DXやデザイン思考について下から底上げする取り組みはもちろん、上層部も幹部向けのプログラムに取り組み、両方向から浸透するようアプローチをかけています。
巨大企業ながらデザインプロジェクトのリーダーには2年目のデザイナーを立て、デザインの価値を発信しています。今後もデザインの可能性について、認知向上から行動変容につながるよう発信内容を高めていく見込みです。
長期的な目で見たら、育成にコストをかけDXやデザイン思考を内製化できればベストでしょう。システムやサービスの開発スピードもあがりますし、マインドチェンジや専門性の獲得といったメリットも期待できます。
外部協業によるエコシステム構築も視野に入れる
DXやデザイン思考の推進には内製化がベストとご紹介しました。しかし多くの人材確保や育成などコストがかかり、巨大企業のようにリソースをしっかり確保できる状況でなければなかなか進みません。
この場合は完全内製化を目指すのではなく、外部のリソースを利用するのが得策です。
社内でもチームを作りある程度のコストをかけて育成し、外部のエンジニアと対等に話ができるレベルまで上げることで効率的に推進できます。内製化については、システムの内製化はDX推進と共にある をご参照ください。
昨今では他社の技術提供やサービスを上手く活用して事業を効率よく成長させる「エコシステム」が注目されています。エコシステムを活用すればDXやデジタル思考の浸透が効率的になったり、デジタル人材を確保する近道になったりといったメリットが期待できるのです。
デザイン思考×アジャイル開発で成果が高まる
開発で注目されているアジャイル開発も、デザイン思考と掛け合わせることで成果が高まります。
「素早い」「機敏な」という意味を持つアジャイル開発は、要件定義や設計を細部まで詰めず、工程を小さいサイクルで回すことが特徴です。対義となるウォーターフォール開発は細部までしっかり詰めて進める方法で、開発期間が長くなる点がデメリットとなります。
上記のアジャイル開発にデザイン思考をかけあわせることで、PDCAを素早く回すことができます。
開発のプロトタイプができたら、デザイン思考における「テスト」を行います。ユーザーに使ってもらい意見を収集・反映させることで、よりユーザーに寄り添ったシステムへと高めていくのです。
まだまだ日本はウォーターフォールのプロダクト開発が多いといわれており、アジャイルへの切り替えが課題です。新しい考えやスキルを持ったデジタル人材が増えることで、アジャイルへの切り替えも進んでいくでしょう。
企業を生まれ変わらせるデザイン思考
デザイン思考について、その概要やステップ、課題となるデジタル人材の確保について解説しました。
人々の声を聴いたり課題解決したりといったデザイン思考は、DXの推進において必要です。グローバル社会となりより高い競争力が必要とされる時代となり、デザイン思考やそれを活用できるデジタル人材の確保が求められます。
デザイン思考やDXは、経営層の理解が得られないと推進が難航するケースが少なくありません。経営層を含め、企業全体でデザイン思考への理解を深め、意識をアップデートすることが重要となります。