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変わる百貨店 実際のDX事例を紹介

2020年、百貨店各社は、コロナ禍による影響をまともに喰らいました。緊急事態宣言と、その後の生活様式の変化によって客足は遠のき、そこにインバウンド需要の消失が重なって、軒並み売上は大幅に減少したのです。

しかし、百貨店の不振はコロナ禍以前から顕在化していたことであり、各社とも時代に即した新たな百貨店の価値を創出するために、水面下でDXを推進していました。幸か不幸か、コロナ禍は、その取り組みのスピードを上げたという側面があると見ることもできるでしょう。

本稿では、具体的な事例を挙げつつ、主な百貨店各社のDXについて考察していきます。

【目次】

百貨店がDX推進を急ぐ理由

昨年大手百貨店5社の売上は、軒並み10%〜15%の減少を記録しました。これはもちろん、新型コロナウイルスの影響によるところが最も大きいわけですが、仮にコロナ禍という要因が存在しなかった場合でも、以前から売上低迷に直面していた百貨店としては、遅かれ早かれ、その根本に抱える課題にメスを入れる必要がある状態だったと言えるでしょう。

かつての百貨店は、そこに存在するだけで街が潤う存在でした。その時代はもちろんスマートフォンなど存在せず、販売チャネルも基本的に実店舗しかありませんでした。週末に家族で百貨店に出かけるという行為は、それ自体が特別感を伴うイベントとして成立するものだったのです。

このような背景の中で確立された百貨店の提供価値は、いわばオフラインチャネルでのみ発達したものであり、アフターデジタルと表される現代には即さないものとなってしまったことが、コロナ禍以前より百貨店が内包してきた課題です。

そして、その課題を解決しないことには、百貨店が次世代に必要とされる小売企業として生き残る確率は限りなく低かったのではないでしょうか。これが、百貨店各社がDX推進を急ぐ真の理由です。

各社とも現在の状況に危機感を持っていたからこそ、以前よりDXを推進していたのであり、コロナ禍の影響でそれが可視化されやすくなったものの、決して「コロナだからDXの推進を始めた」わけではありません。

百貨店各社の具体策を見ていくと、DXのポイントとして共通しているのが、事業の出自的にどうしても弱かったオンラインチャネルの強化、そしてそれと同時に、高品質な接客をはじめとする、これまで培ってきた百貨店ならではの顧客体験を現代に即した形でアップデートする、という二点に集約できそうです。

百貨店各社のDX事例

ここからは、百貨店各社が取り組むDXについて、具体的な事例を見ていきたいと思います。各社の取り組みの変遷を見れば、それらが新型コロナウイルス発生のはるか以前から計画・推進されてきたかがわかるでしょう。

三越伊勢丹

三越伊勢丹のDXスタートは、2017年に遡ります。当時経営体制が変わるとともに、2本のDX戦略の柱を立てて、ここまでプロジェクトを推進してきました。

1本目の柱は「シームレス事業」です。これは、デジタル接点で取得した顧客データの横断的な活用により、百貨店の最大の強みである「人による接客」のクオリティを現代に即した形で大幅にアップデートしようとする試みです。ECではすでに一般化しているパーソナライズされたレコメンドなどと同様の接客を、リアルでも実現するというとわかりやすいかもしれません。このコンセプトのもと、3D計測による足型計測と人力によるアドバイスで靴選びを支援するサービス「YourFIT365」などが展開されています。また、一貫した顧客データの獲得と顧客の利便性を両立するため、店舗情報を集約・統合した「三越伊勢丹アプリ」の提供も2020年に開始されています。

もうひとつの柱は「デジタル新規事業」です。こちらは、従来の事業形態に捕らわれず、新たな顧客が三越伊勢丹と出会う場を、デジタルチャネル上に創出していく試みであり、AI採寸によって、これまでスーツに慣れ親しんでいない顧客層でも手軽・気軽にカスタムオーダースーツを作ることができる「Hi TAILOR」や、食材の提案型定期宅配サービス「ISETAN DOOR」、SNSを用いてカジュアルギフトを気軽に贈れる「MOO:D MARK」など、さまざまな形態のサービスを展開しています。

阪急阪神

阪急も、コロナ禍以前より、株式会社フロムスクラッチが提供するデータマーケティングプラットフォームを用いてECの主要部門となる阪急ビューティ、阪急フード、阪神オンラインなどでビッグデータを活用する取り組みを行ってきましたが、2020年、その活用領域を阪急婦人ファッションと阪急メンズ部門にも広げています。

ビッグデータ活用によるオンラインチャネルのパフォーマンス向上は目に見えた成果を残しており、コロナ禍という要因はあるものの、2020年4月〜6月売上では前年同月比400%超の増加という数字も出しています。

また、同社は独自のOMO実現モデルとして、EC化されていないものも含む店頭全商品のオンライン決済を実現する「Remo Order」をほぼ全店に採用しており、来店することなくスマートフォンからのオーダー・決済を可能にしています。

これは、電話やメール、SNSなど各チャネルから購入希望商品の名称や品番、価格を伝えることで、決裁用のURLが発行され、オンライン上で決済ができるというサービスで、同社は2021年中に全売場のデジタル化を目指していると言います。

Remo Orderの利用者は6割強が新規顧客という数字も出ており、デジタル上の新規顧客開拓手段としても大いに期待されていると言えるでしょう。

J. フロント リテイリング(パルコ)

2019年の渋谷パルコリニューアルによって、次世代の小売業の姿を世の中に提示した形となったパルコですが、こちらもDXの推進を始めたのは2013年まで遡ります。

当時スマートフォンが普及しつつある状況の中で、「24時間PARCO」というキャッチフレーズを掲げ、いち早くオムニチャネルやOMOの実現を目指し、全店でのSNS活用や店頭商品のウェブ注文や取置きを可能にした「カエルパルコ」、スマホの公式アプリPOCKET PARCOなどを展開していました。

そして、上述した2019年の渋谷パルコリニューアルでは、よりオフラインとオンラインのシームレスな繋がりを実現したPARCO CUBEが登場します。PARCO CUBEでは、店頭在庫ではなく各テナントのEC在庫と連携し、その場に商品がなくても、店頭に設置されたタブレットからEC在庫を注文することができ、数日中に配送を完了する仕組みとなっています。

さらに未来のパルコの姿を「PaaS(Parco as a Service)」と名付けており、そこではMR(複合現実)を活用し、パーソナライズされた商品ナビゲートやゲーム要素を組み合わせた購買体験を実現するなどの構想を持っています。

DXによって蘇る百貨店ならではの価値

ここまで見てきた事例から伺えるのは、各社とも、DXによって全てをデジタル化するのではなく、あくまでもデジタル存在を「人とのコミュニケーション」を進化させるために活用しようとしている、ということです。

それは、これまで培ってきた百貨店の強みを、デジタルの力で蘇らせる取り組みとも捉えることができるのではないでしょうか。その考え方こそが、まさに「OMOの視点を持つ」ことに他なりません。

デジタルの力によって顧客のことをより深く理解できれば、その上に成り立つパーソナルな接客において、他業種が一朝一夕に百貨店の「おもてなし」の域に達することは難しいでしょう。

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