攻めの経営!カテゴリーキラーは、強いのか、弱いのか
モノ余りのこの時代では、消費者の目はかなり厳しくなっています。消費者は本当に必要なもの、興味が湧くものだけを購入する時代ですので、特徴がないお店は淘汰され、特徴があるお店だけが生き残り始めています。
- 特定のカテゴリー商品を大量に仕入れて、安く販売するお店がカテゴリーキラーである
- カテゴリーキラーはランニングコストを最大限抑えて、多店舗に展開する
- カテゴリーキラーの強みはブランディング実現と世界中で展開しやすいこと
- 魅力的な戦略の反面、リスクも多く抱える戦略である
カテゴリー特化でライバルを駆逐するカテゴリーキラー
差別化の重要性は企業経営者なら身に染みてご理解されていると思います。しかしその差別化の方法もまた十人十色。価格で差別化するのか、品揃えで差別化するのか、接客で差別化するのか。選択肢は無限大です。
差別化の1つとして、あるカテゴリーに特化して大量に商品を仕入れ、安価に大量販売する方法があります。そしてこのような方法で運営しているお店は俗にカテゴリーキラーと呼ばれています。
特定のカテゴリーを狙い撃ちして、他店より圧倒的に品揃えを充実させ、価格も圧倒的に安くするため、近隣店舗は太刀打ちすることができません。
カテゴリーキラーを実現するためには
カテゴリーキラーのキーワードは大量仕入れ、安価に大量販売です。このビジネスモデルは薄利多売ですので、仕入れ商品は完売するくらいでないと手元に利益は残りません。在庫残しはかなりのリスクになります。
そのためカテゴリーキラーになるためには余分なコストを使わずに、多店舗で大量販売することが必要です。
ランニングコストは極力安く
薄利多売は低付加価値戦略と言い換えることができます。特別な付加価値を提供しない代わりに、とにかく安く売りさばきます。
そして安く売りさばいても、利益を残すためには極限までコストを抑える必要があります。特にランニングコストは1円でも安くしたいところです。
郊外出店でコスト削減
大量仕入れ・大量販売には大きな店舗面積が必要ですが、都心部ではランニングコストが高すぎて採算が合わないため、カテゴリーキラーは基本的に郊外出店になります。
都心部と比べ、郊外ではコストがかなり抑制できるので、カテゴリーキラーは郊外立地にまず目をつけます。
多店舗に展開する
安価が持ち味のカテゴリーキラーでは1店舗ごとの利益は微々たるものです。そのためカテゴリーキラーで成功するには多店舗展開が必須です。
日本全国または世界中にお店を展開することで利益を積み上げます。
カテゴリーキラーの強み
カテゴリーキラーで得られる強みがあります。カテゴリーを絞り、リスクを背負いながら大量に仕入れる。ある意味攻めのスタイルだからこそ獲得できる強みです。
ブランディングの実現
まずはブランディングです。ブランディング実現は多くの企業が悩むところですが、カテゴリーキラーはブランディングがしやすい傾向にあります。
よく例に挙がるお店が、子供用おもちゃ販売のトイザらスです。トイザらスという名前を聞けばだれもが子供用おもちゃをイメージします。それはトイザらスが子供用おもちゃというカテゴリーに特化して、安価に販売してきたからです。
徹底したカテゴリー選択と安い価格という強烈な特徴がブランディング成功に導きます。
国内、国外問わず展開がしやすい
採算が合えば国内外どこでも展開が可能です。何度も言いますが、カテゴリーキラーはランニングコストをいかに抑えて大量に安く販売するかがポイントなので、従業員には量をこなす作業が求められます。
そのためホスピタリティを身に付ける必要性は低いです。日本人は比較的ホスピタリティが高いですが、文化の違いからホスピタリティが不十分な国も多くあります。そのような国で出店する場合、サービス重視の企業ならば現地従業員に徹底した教育が必要ですが、カテゴリーキラーは社員教育がそこまで重要ではありません。
代表的なカテゴリーキラーは?
それではカテゴリーキラーに該当する代表的企業を紹介していきます。扱う商品タイプが異なる2社に絞って紹介しますが、他にもたくさんの企業があります。そしてたいてい小売の大手企業です。
家電販売代理店No.1のヤマダ電機
ヤマダ電機は売上高1兆円を超える超巨大小売店です。カテゴリーは家電で、平成29年度3月期の売上高は1兆5000億円を超えています。(出典:http://www.yamada-denki.jp/ir/data.html)
ヤマダ電機は家電メーカーの商品を自社で販売していますが、突出すべきはその安さです。他店より高ければ、それよりも安くするという、なんとも大胆な安値戦略を打っています。そしてランニングコストを抑えるために郊外に出店しています。
また自社ブランド販売も始めています。安い家電=ヤマダ電機のブランディングが成功しているので、自社ブランドのPRもしやすいのではないでしょうか。
自社ブランドで展開するニトリ
言わずと知れた大手家具販売店のニトリは、安価な家具を大量販売します。ニトリは自社のブランド商品(PB=パーソナルブランド商品)を中心に展開しているので、安さ以外に自社ブランドとしての価値があります。
ニトリの出店場所は主に郊外で、大型ショッピングモールの隣接地にお店を出しているため、ランニングコストはばっちり抑えています。また台湾やアメリカなど海外でも積極的に出店しています。
カテゴリーキラーの問題点
このように、名の知れた小売大手はカテゴリーキラー戦略で急拡大しています。しかし、これは一部の成功している小売店のお話であり、大多数の小売店は失敗しています。
カテゴリーキラー戦略は、紹介してきたように魅力的な点もたくさんありますが、一方で下記のような問題点も抱えているからです。
- 高価格帯へ切り替えが難しい
- 他カテゴリーへ切り替えが難しい
- 出店を続けなければならない
- ついで買いが期待できない
高価格帯へ切り替えが難しい
安価な商品を大量販売するビジネスモデルなので、いわば大衆的なイメージが定着します。その強力なブランディング力と引き換えに高価格帯への切り替えはかなり難渋します。一度定着したイメージを変えることは一筋縄ではいきません。
衣類のカテゴリーキラーとして有名なユニクロは、一時期高価格帯商品へ切り替えましたが、なかなかうまくいきませんでした。ユニクロでも苦労するのです。
他カテゴリーへ切り替えが難しい
特定のカテゴリーで知られるカテゴリーキラーが、他のカテゴリーに進出することは簡単ではありません。特定カテゴリーのイメージが定着しているからです。
他カテゴリーに進出するなら別ブランドや別会社を作った方が良いでしょう。
出店を続けなければならない
地域ごとに最安値を維持しながら世界中のあらゆる地域に出店を続けなければなりません。
お店を出すためには、コストを抑えるといっても最低限のランニングコストが発生します。そのリスクを承知で出店を続ける必要があります。
ついで買いが期待できない
消費者は小売店に行くと、ついつい目的外の商品まで購入してしまうことがあります。しかしカテゴリーキラーは特定ジャンルのみ取り扱っているため、ついで買いがあまり期待できません。そのカテゴリー商品を買う目的でお客様は来店するのだから当然と言えば当然です。
ですので、そのカテゴリーに関連した商品も取り扱うことで、ついで買いを促す必要があります。
カテゴリーキラーは真似されやすい
カテゴリーキラーの最大の価値は値段が安いということです。
しかし安さは真似ができます。そのため、ライバル企業が同じカテゴリーに絞ってあなたのお店より1円でも安く販売したら、お客はそちらに流れてしまうでしょう。家電量販店の「他店より1円でも安くします」戦争が良い例です。
安さ勝負の小売店は、結局どこかのタイミングで経営が苦しくなります。そのため、それを見越したうえでさらに別の付加価値を見つけるか、もしくは苦しくなることを受け止め、出店と閉店を繰り返しながらも拡大を続けるか、の2つに1つがカテゴリーキラーの生き残る道ではないかと強く感じます。