2027年4月施行。犯罪収益移転防止法の改正でリユース業者の買取業務への影響を探る
マネーロンダリングやなりすましによる不正口座開設を防ぐための法律「犯罪収益移転防止法(犯収法)」が、2027年4月1日に大きく改正されます。
本人確認の方法が抜本的に見直されるため、対応が遅れると、リユース業者では買取業務の継続が困難になったり、宅配買取などの非対面サービスが提供できなくなったりするリスクがあります。
本記事では、この改正の具体的な内容と、いまから準備すべき対策について解説します。
「犯罪収益移転防止法」とは?
犯罪収益移転防止法(正式名称:犯罪による収益の移転防止に関する法律)は、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロへの資金供与を規制することを目的に、2007年に制定されました。金融機関などの「特定事業者」に対し、取引時の本人確認、取引記録の保管、疑わしい取引の当局への届け出などを義務付けています。
同法はこれまでにも時代に合わせて改正を重ねてきました。2018年にはオンラインで本人確認が完結する「eKYC(電子的な本人確認)」が認められ、2020年には郵便を用いた本人確認の要件がさらに厳格化されています。
そして2027年4月、これまでの運用を大きく変えざるを得ない「3度目の抜本的な法改正」が施行される予定です。
犯収法の対象となる業種(特定事業者)一覧
犯収法が定める「特定事業者」には、以下の業種が指定されています。
- 金融機関など: 銀行・証券会社・保険会社など
- リース・クレジット: ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者
- 不動産・カジノ: 宅地建物取引業者、カジノ事業者
- 貴金属・リユース: 宝石・貴金属等取扱事業者(古物商を含む)
- 代行サービス: 郵便物受取サービス事業者、電話受付代行業者、電話転送サービス事業者
- 専門職: 弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士およびそれらの法人
リユース業への影響
ブランド品や貴金属、ジュエリーなどを扱うリユース業は、「古物商」として直接的な対象(宝石・貴金属等取扱事業者)となります。また、買取や販売のプロセスで他の特定事業者(金融機関や決済事業者など)と連携する機会も多いため、間接的な影響も無視できません。
2027年4月改正のポイント:何が変わるのか?
今回の改正の核心は、「偽造リスクのある方法を排除し、デジタルで確実に本人確認を行うこと」にあります。大きく分けて2つの変更点があります。
1. 「写真送信による本人確認」が原則廃止へ
これまでのeKYC(非対面確認)では、スマートフォンで運転免許証などの表面・厚みを撮影し、本人の自撮り写真(容貌画像)とあわせて送信する「ホ方式」が広く普及していました。
しかし近年の「精巧な画像偽造技術」や「ディープフェイク」の発達により、偽造書類を用いた不正口座開設などが急増。これを受け、2027年4月以降は「ホ方式」が原則として廃止されます。同様に、確認書類のコピーを複数枚組み合わせる方法(リ方式)なども認められなくなります。
2. 「ICチップの読み取り」が必須・原則化
改正後の本人確認のベースとなるのが、マイナンバーカードや運転免許証に搭載されている「ICチップの読み取り」です。ICチップ内の情報は改ざんが極めて困難であるため、外観の目視だけでは見抜けなかった書類の真正性を確実に担保できます。
これはオンライン(非対面)だけでなく、店舗(対面)での取引も同様です。従来は写真付き書類を目視確認するだけで済んでいた「イ方式」が厳格化され、店舗でもICチップの読み取りが必須となります。
※例外的な救済措置: ICチップ付きの書類を持っていない、あるいは機器の故障などで読み取れない顧客への対応として、「住民票の写し(原本)の郵送受付」など、一部の限定的な手段は引き続き認められる見込みです。
改正にまつわるスケジュール
この改正は3段階で進められており、2025年・2026年に公布された共同命令が、2027年4月1日に同時施行されます。
| 改正内容 | 施行日(予定含む) | 状況 |
| スマホ用マイナンバーカード機能の本人確認利用 | 2025年6月24日 | 既施行 |
| 非対面(オンライン)の本人確認方法の見直し | 2027年4月1日 | 同時施行 |
| 対面(店舗など)の本人確認方法の見直し | 2027年4月1日 | 同時施行 |
影響を受ける業界とそれぞれの理由
◆ リユース・古物業
買取時に顧客の本人確認が法律で義務付けられています。現在、店頭での免許証目視や、宅配買取時の書類画像送付で運用している店舗は、2027年4月以降、店頭・オンライン双方でICチップ読み取り対応の端末やシステムへ刷新する必要があります。
◆ 不動産業
宅地建物取引業者も対象です。特に不動産売買など高額な取引を扱うため、マネーロンダリング防止の観点から、より厳格なICチップ確認フローの構築が求められます。
◆ 金融・フィンテック業
すでにeKYCを導入している銀行や暗号資産取引所ですが、これまでは手軽な「ホ方式(顔写真+書類画像)」への依存度が高かったため、本人確認システムの全面的な改修(ICチップ読み取りへの移行)が急務となっています。
◆ バーチャルオフィス・郵便転送サービス業
匿名性の高さを悪用されやすい業種であるため、今回の法改正による本人確認の厳格化がダイレクトに影響します。

いま、事業者が準備すべき4つのステップ
施行まで残り時間が限られる中、事業者が今すぐ着手すべき対策は以下の4つです。
ステップ①:現行の本人確認フローの総点検
まずは自社が現在採用している本人確認の方法が、2027年4月以降も使用可能かをチェックしてください。「写真撮影+自撮り送信」や「書類のコピー提出」を行っている場合は、現行フローの廃止が確定しているため、見直しが必須です。
ステップ②:ICチップ読み取り環境の整備(ハード・ソフト)
対面・非対面問わず、ICチップ(NFC機能)に対応した読み取り端末や、専用ソフトウェア・アプリの導入が必要です。自社でのシステム開発が難しい場合は、法改正に対応済みの外部eKYCツールの選定・導入を早期に進めるのが現実的です。
ステップ③:基幹システムとの連携と社内規程の改訂
新システムを導入するだけでなく、自社のPOSシステムや顧客管理(CRM)システムとの連携開発が必要になるケースがあります。また、現場スタッフの混乱を防ぐため、業務マニュアルや社内規程も法改正に合わせてアップデートしなければなりません。
ステップ④:ICチップが読めない場合の「代替フロー」策定
「顧客がマイナンバーカード等を持っていない」「端末の不具合で読み取れない」といったトラブル時のエスケープルート(代替案)を用意しておきます。「住民票の原本郵送+転送不要郵便」といった例外措置を正しく運用できるよう、現場への教育が必要です(※従来の「別の書類をもう1枚見せてもらう」といった便宜的な対応は不可となるため注意してください)。
リユース店舗のオペレーションを守る:免税制度改正と犯収法への同時アプローチ
リユース業界において、今回の犯収法改正とセットで抑えておくべきなのが、免税制度の改正(リファンド方式への移行)です。
リファンド方式とは、インバウンド(訪日外国人)への免税販売時に一度消費税込みで代金を預かり、出国時に手続きが完了したのち消費税分を返金する仕組みです。
高額なブランド品や時計を扱うリユース店では、「免税手続きのための書類・顧客管理」と「犯収法に基づく厳格な本人確認」という2つの大きなシステム変更が同時期に重なることになります。現場のオペレーション負荷を軽減するためには、これら双方の要件をワンストップで満たせるような、一元管理システムの検討が強く推奨されます。
まとめ:施行直前の混雑を避け、早期のシステム検討を
2027年4月の犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正は、これまでの「目視や写真送付による本人確認」を過去のものにし、「ICチップ読み取りの原則化」へと舵を切る大きな転換点です。
対応が遅れれば、買取業務がストップし、事業継続そのものが困難になるリスクをはらんでいます。施行直前になると、対応システムの開発会社やeKYCベンダーへの申し込みが殺到し、導入が間に合わなくなる可能性もあります。
まずは自社の現状把握を行い、早期に法改正対応のパートナー(システム会社など)へ相談を開始することをおすすめします。