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医療から与信まで、購買データの多様な活用事例。物価上昇時代の企業行動とは

購買データは、購買したサービス・商品だけでなく、リピート購入の有無、頻度、決済方法といった履歴と行動パターンを収集し蓄積できます。

今やほとんどの企業が購買データを分析するために活用し、マーケティングや広告出稿、販売戦略に役立てています。

最近では、購買データに新たな価値を見出す取り組みも出てきました。

本稿では、物価上昇が続いた2024年、消費者はどのように買い物をしたのかを読み解き、2025年に企業がとるべき姿勢を探ります。

さらに、マーケティングや商品開発に購買データを活用して成功した事例、大学病院との提携や、与信審査といった新たな分野の応用例も紹介し、小売業界の展望を予測します。

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購買データから読み取る社会の変化

2023年と2024年の購買データを比較したある調査によると、2024年の総購入金額は前年比101%とほぼ変わらない結果となりました。

しかし、平均購入単価と1人あたりの購入数量はそれぞれ前年比で105.8%、97.1%となっています。

これにより、購入単価は上がったのに対して、購入数は減っているということが分かります。

特定の商品の購入数が著しく減少したということはなく、全体的に数が減っていることも明らかとなりました。

物価上昇が続く中で消費の冷え込みが大きく、小売業に大きな影響を及ぼしていることが分かります。

続く値上げ傾向が与える影響

価格改定だけでなく、シュリンクフレーション(価格は据え置きで容量を少なくすること)などのステルス値上げも続いています。

2020年を基準にすると、2024年秋の時点で消費者物価指数が+8.9%も上昇しています。

しかし、輸送費をはじめとしたサービスの料金も上昇傾向にあり、企業としては値上げをしても利益に十分還元されないのがつらいところです。

特に値上げが大きいのはトイレットペーパーや台所用・洗濯用洗剤、牛乳、ビール、インスタントコーヒーなどの日常的な商品で、消費者の節約傾向はまだ続きそうです。

消費者の節約傾向としては、「ついで買い」を減らす、ポイントデーや割引キャンペーンなどの特典が受けられる日にまとめ買いをするといった行動が見受けられます。

また、食料品の品揃えに注力するドラッグストアが増加していることにより、牛乳などの日配品、ドリンク類をドラッグストアで購入する人が多くなっていることもデータから見てとれます。

さらに、競合のアイテムよりも安価に設定されることが多いPB(プライベートブランド)のトイレットペーパー、ビールなどの飲料も売上金額が増えています。

こうした消費者の節約意識や購買傾向を分析することで、2025年にどのような施策をとるべきかが見えてくるはずです。

企業行動への反映

節約傾向の消費者が多数を占める一方で、目立つ陳列や印象的なパッケージ、ネーミングに惹かれて商品を購入する直感的な購買行動をしている消費者も存在します。

直感的な消費者は、商品の値上げに関わらず自分のショッピングスタイルを変えることはあまりありません。

こうした消費者は、一般的にブランドやネームバリューを好む傾向にあり、流行をフォローしたり、新製品を真っ先に試したいという気持ちが強かったりという特徴があります。

節約意識の高い消費者層のみに注力すると、直感型の購買層への訴求力が弱くなってしまうかもしれません。

コストも上昇していく中ではありますが、今後は多様化する価値観を推しはかり、細かくデータを取りながら適宜必要な施策を展開していく必要があります。

使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています

購買データの多様な活用例

購買データは、商品開発からマーケティングまで幅広く活用されています。

さらに、近年では大学病院との提携による予防医療や、個人ローンの新たな与信審査の実現など、用途がさらに広がっています。

ほとんどの企業にとって、購買データの活用はもはや一般的な施策と言ってもよいでしょう。

少し先のミライを考えるならば、購買データを他のどのようなデータと掛け合わせるか、いかに新しい方向性を見出せるか、が重要になっていくのかもしれません。

購買データの活用について、ジャンルの異なる成功例をまとめました。

商品開発

アルコール離れという風潮を覆す新商品の開発にも、顧客データの活用が役立っています。

大手飲料メーカーは、若者の「ビール離れ」や、中高年が年齢とともにハイボールや酎ハイを好む傾向を踏まえて、飲みやすさを重視したビールを開発しました。

マーケティングにおいても、若者、中高年のそれぞれから高い好感度を得ている芸能人を起用し、両方の属性に強く訴えかけるPRを展開しています。

店頭に並んだ後も、割引オファーをID-POSと連動させて発行するなど、セグメントごとに最適なアプローチを行い、成功を収めています。

顧客起点の営業活動

購買データを営業に活かすことで、消費者の視点を取り入れることに成功した例もあります。

大手飲料メーカーの営業部門は、自社、競合、顧客の「3C分析」から、自社、競合、流通顧客(取引先)、消費顧客、流通競合の「5C分析」へと考え方をシフトしました。取引先の企業と、実際に商品を購入する消費者という2つの顧客を起点にすることで「どのような商品を世間に届けたいか」という理想像を明確にするのが狙いです。

これを可能にしたのが、顧客データと調査会社の消費者データを組み合わせた独自の顧客データ基盤でした。

顧客データを精査することで、当初はヘルシー志向の消費者に好まれると想定されていた酒類が、実際には高カロリーな食事を好む層に支持されていることが判明するなど、今まで可視化されにくかった情報も明らかになりました。

マーケティング

従来、広告はチラシやCMといった不特定多数へ向けたものでした。

その後、ネットのリターゲティング広告やLINE、メルマガ配信など、特定ターゲット向けの広告が広まりました。

そして、現在は実購買データを活用し、より確実に「ささるターゲット」に対する広告が可能になりつつあります。

衣料品から食料品までを幅広く扱う大手総合小売業は、2024年秋から実際の購買データに基づくデジタル広告配信を始めました。これまでのターゲティング広告は、興味関心といった指標に基づき配信されるものでした。一方、購買データを用いた広告は実際に購入している商品に基づいて広告を配信するので、より個々の消費者に効果的に訴求できる広告手法です。

この広告は、広告を目にしてから実際に商品購入に至ったかどうかを、オンライン、オフラインの垣根を超えて検証できるのが特徴です。

別の大手食品メーカーも、購買データを活用してリテールメディアを積極的に活用しています。このメーカーは、新規顧客層と、商品を購入したことはあるが現在は購入していない離反顧客という2つのターゲットにメディア発信を行い、セグメント分析を実施しました。

こうした発信は、複数のコア・バリュー(中核となる価値観)ごとに発信内容を細かく切り分けることにより、消費者の多様なニーズが可視化され、次の効果的な広告につなげることができます。

消費者のニーズは多様化していますが、購買データと広告配信で得られるデータを活用することで、購入のパターンや購入に至らない心理が見えてくることもあるでしょう。

予防医療

大手スーパーの購買データを利用して、生活習慣病と購買データとの因果関係を探る研究が始まっています。

九州大学病院と九州を中心に小売業を展開する企業は、購買データを予防医療のための商品開発に活かすための次世代型コンソーシアムを設立しました。

このプロジェクトでは、病院の所持する医療データ(カルテデータ)と、ID-POSの情報をビッグデータとして活用して病気リスクの解明を目的とした基礎研究を行うとともに、参画企業との情報共有も行います。

2024年は、個人情報保護法および次世代医療基盤法の定める条件を満たした基礎研究のみが実施されていましたが、来年からは参画メーカーや卸会社との共同研究もスタートする予定です。

与信審査

セブン銀行は期間限定で、個人向けローンの与信審査にセブングループの共通IDから得られる購買データを活用すると発表しました。

具体的には、従来の与信審査と、購買データをAIによって独自に分析し、新たな観点で与信審査を行うとのことです。

これにより借入が難しかった顧客も、ローンを利用できるようになる可能性が高まります。

同社の個人向けローンサービスは、24時間、ATMやアプリから借入れが可能な利便性が支持されて、2024年9月時点の残高が500億円を突破しています。

今後は、小売データと金融データを組み合わせた新たなローンサービスの開発も予定されています。

購買データによる高度な分析と戦略実行を

購買データは収集できる情報が多いため、その量は膨大です。

適切に扱わなければ、その大量の情報を十分に活用するのは難しいでしょう。

大手企業は、以前にも増してデータサイエンティストをはじめとしたDX人材の内製化を進めています。社内人材がデータを活用すれば、データ活用のトライアンドエラーを迅速に繰り返すことができる、スピード感のあるPDCAが実現するためです。

しかし、購買データを活用するには高度な分析力が必要とされるため、中小企業にとってはすべてを社内人材で実施するのは難しい場合がほとんどでしょう。

ゆえに、成果を短期間で効率的に得るためには、外部委託や分析システムの導入を検討する必要があります。

戦略を確実に実行できる駆動力を外部から調達することで、企業の戦略的成長が見えてくることもあるでしょう。

現代では価値観の多様化に伴い、データ活用にも、柔軟な対応や移り変わるトレンドをいち早くキャッチする即応性が求められます。

DX人材の育成は中長期的な視点が必要になるため、今すぐ求めたい力、人材は臨機応変に外部から調達するのがおすすめかもしれません。

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