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買い物難民が増加、「食料品を気軽に買えない日」がいつか訪れる?

65歳以上の4人に1人は買い物難民である、という衝撃の推計があります。

買い物が困難とされる対象者は、数にして900万人以上です。

この数字は、住居と店舗まで500メートル以上距離があり、かつ自動車を利用することが困難な65歳以上という条件を設定した上でのデータでした。

この条件にマッチしていなくても日用品の買い出しに不便を感じる人は存在しうるため、実際にはこの数字よりも多くの人が買い物難民化していると想定されます。

さらに、少子高齢化、とりわけ都市部の世帯分布の変化といった環境の変化により、今後は高齢者だけでなく、若年層も日常的な買い物が難しい状況に陥ることが示唆されています。

政府はこれを日本の社会問題とし、課題解決の糸口を探っています。

本稿では、少子高齢化によって増える買い物難民と、食料品のアクセスが難しくなってしまうメカニズムを解説しています。

また、この課題解決のために実施されている対策事例についても最前線をリポートしました。

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少子高齢化社会における「買い物難民」問題

買い物難民とは、食料品や日用品の購入に不便を感じる人のことを指します。

買い物困難者、買い物弱者と呼ばれることもあります。

農林水産省は買い物難民の増加を「食料品アクセス問題」という社会課題として、解決の道を模索しています。

買い物したくても店舗にアクセスできない高齢者が増加

買い物難民が急増している背景には、消費者側と店舗側、双方の変化があります。

消費者側の変化とは、日本全体の少子高齢化が進んだことです。

高齢になると、長距離を歩いて買い物に出かけることが難しい人が多くなります。

また、免許返納や節約意識から車を手放すと、これまで遠方のスーパーへ出かけてまとめ買いしていた人も、ライフスタイルを変えざるを得ません。

公共交通機関を利用しようとしても、ドライバー不足でバスの運行回数が減少していたり、路線が廃止されたりするケースも目立っています。

あるいは、若い世代と同居していれば、買い物を頼んだり運転を頼んだりして外出することができるかもしれません。

しかし、核家族化が進んだ昨今ではそれもレアケースとなっています。

事実、2022年に実施された厚生労働省「国民生活基礎調査」では、高齢者の51.6%が独居世帯とされています。離婚率や生涯未婚率も高めで推移している現状では、この高齢独居世帯は今後も増えていくでしょう。

店舗側の問題も、根本には少子高齢化が関わっています。

郊外の広い土地を活用した大型商業施設が増加していた一方で、個人店や中小規模の店舗が立ち並ぶ商店街は衰退しています。これは、大型商業施設に集客が流れたことだけでなく、事業主の高齢化、人手不足なども原因になっています。

こうした社会全体の変化によって、食料品や日用品の買い物は、以前ほど「当たり前のもの」ではなくなりつつあります。

これは、高齢者や過疎地域に限った問題ではなく、世代を問わず、あらゆる世代で懸念される問題になっていくと予測されています。

状況は今後さらに悪化すると予測

買い物弱者は、過疎地域に限らず都市部でも増加していくと予想されています。

現在でも、都市部の買い物難民の数は神奈川県60万8,000人、大阪府53万5,000人、東京都53万1,000人、愛知県50万人と非常に多く、店舗は存在しているのに思うように買い物に行けないという人の割合は増えています。

2045年までに増える高齢者の6割以上は東京都在住という予測もあり、「買い物したいのにスーパーがない」という問題は、過疎地域から都市部の問題へと広がっていくと予想されています。

そして全世代に占める高齢者の割合が増えることで、店舗を取り巻く状況はより一層厳しくなり、売上を保つために店舗数を絞らざるを得ないチェーン店も出てくるでしょう。

そうなると、高齢者だけでなく働き盛りの若い世代も買い物難民と化してしまうリスクが高まります。

使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています

宅配や移動店舗などの対策事例

生活に必要なものを手に入れる、すなわち日用品の買い物を外注する手段はさまざまです。また、支援を行うことでそれぞれが店舗へ容易にアクセスできるようにする施策もあります。

宅配や車両を利用した移動店舗、買い物代行や買い物ツアーなど、従来から親しまれているサービスから、食料品アクセス問題を社会課題として捉えたコンビニまで事例をまとめました。

宅配

LINEヤフーは、宅配ポータルサイトと連携して注文から30分以内に商品が届くサービスの提供を開始しました。

このサービスは、実店舗と連携することで、食料品や日用品といった「日々すぐに必要な商品」の即時配達を可能にしています。

商品のラインナップは順次拡大予定で、今後は医薬品の取り扱いも視野に入っているとのことです。

この取り組みとは別に、宅配のシステムをスピード化する新しいシステムも注目されています。首都圏の食品スーパーチェーンは、バーコードリーダーやチャット機能、専用の決済機能などが実装された配達者用アプリを導入し、注文品のピックアップ、会計、袋詰めといったフローを一貫して行えるようにしました。

デリバリーサービスが普及していくにつれて、配達業務の人手不足もまた深刻化しています。

同スーパーチェーンは、ピックアップから配達までを一貫して行えるようにすることで、業務の効率化を図り、人手不足をカバーしようとしています。

買い物代行

買い物代行は、その名の通り必要な買い物を代理で購入してくるサービスです。

2010年代にはセレブのために高級品を買いつけるパーソナル・ショッパー(買い物代行人)が話題になったこともありましたが、このまま買い物難民が増えると買い物代行が一般的な仕事になる日が来るのかもしれません。

現在の買い物代行は、妊娠中や育児中で店舗に出かけるのが難しい人や、急な病気で入院、静養を余儀なくされている人などが主に利用しています。

ちなみに、訪問介護にも買い物代行のサービスがあります。

しかし、「利用者本人の援助にあたる買い物のみ」というルールがあり、生活必需品以外を買うことは許されていません。

例えば、利用者が第三者へ贈るお歳暮やお中元を代わりに購入する、お酒やタバコといった嗜好品を購入するということは、生活必需品の枠から外れるためできない決まりになっています。

「地域共生コンビニ」の出店

地域共生コンビニは、社会課題を解決するための店舗です。

大手チェーンの物流網と地元密着小売店とが連携する場として、機能しています。

小売店の閉店、撤退と過疎化は、密接に結びついています。

人口1,000人の町と100人の町とを比較すれば、1,000人の町の方が売上の予測は高くなります。

そして、売上よりも店舗の維持費や人件費の方が高くなれば、閉店せざるを得なくなります。これが、商店街やアーケードがシャッター化する一因でもあります。

これを解決するための「地域共生コンビニ」は、人口減少とともに買い物が難しくなる過疎地域に店舗を構え、地元のスーパーマーケットと連携して豊かな品揃えを実現しています。

コンビニは、スーパーよりも小さな面積で経営することが可能で、全国に物流網があるという強みがあります。

こうしたコンビニが小さな商圏を形づくることで人の流れが生まれ、周辺の小売店が存続できる可能性も出てくるかもしれません。

移動店舗

移動店舗は、販売車が地域を巡回して販売を行う方法で、過疎地域では以前から導入されています。

車に積載できる量には限りがありますが、売れ筋商品を分析によって明らかにしたり、AIのルート予測を活用したりすることで、より地域の住民のニーズに応えられる店舗を作ることはできます。

買い物しやすくするための手段としては比較的古いスタイルの移動店舗ですが、技術革新によってまだまだ利便性を高めて進化することはできるはずです。

移動手段の提供、支援

ここに挙げた手段以外の策には、買い物の付き添いや買い物ツアーがあります。

買い物の付き添いは、主に高齢者向けのサービスで、文字通りスーパーやコンビニへ一緒に行き、買い物に付き添って必要なサポートをするものです。

買い物代行とは違い、利用者が自ら商品を選んで購入するのが特徴ですが、一人一人に付き添うためには多くの人的リソースを必要とするため、どこでも実現可能な方法ではありません。

買い物ツアーは、大型ショッピングセンターなどを目的地としてバスを仕立て、大勢の人を一気に店舗へ連れて行く方法として有効です。

今は高齢者向けに行われることが一般的ですが、過疎地域が広がってくれば、車を持たない幅広い世代の人から求められるサービスになるかもしれません。

他に、商店街で購入したものをまとめて送る、配送だけに特化したサービスなども実施されています。

変化する社会にどう対応するか

買い物難民が増える要因は、販売店舗の減少、高齢者の増加、対策の遅れの3つと言われています。

現代の日本は、少子高齢化でどの業界も人手不足が深刻化しています。

働き手がいない、物価高騰で経費を払えないといった理由で撤退せざるを得ない中小規模店舗が増えると、これからますます、買い物難民となる人は増えるでしょう。

2020年に農林水産省がまとめた食料アクセス問題に関するアンケートによると、「買い物難民の対策が必要」と考えている自治体は全体の85%にも達しています。

しかし、実際に対策をしている自治体はその一部であり、「対策をしていない」、「対策を検討している」と回答した自治体は31.4%にのぼります。

この先は、過疎地域だけでなく、大都市の急速な高齢化が進むと予測されています。

買い物難民対策は、都市部かそうでないかという枠組みに捉われず日本の社会問題として取り組むべき時期と言えるでしょう。

買い物に不自由すると、QOL(生活の質)が低下し、健康と要介護の中間の状態、いわゆるフレイルに近づいてしまうリスクも高まります。

自治体に介護が必要な人が増えれば、ヒューマンリソースや財源における懸念事項も多くなるでしょう。

これからは、一人一人が購買体験にアクセスできる状態を作り出すことが、社会としての健康をながらえることにつながっていくのではないでしょうか。

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