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【前編】訪日外国人に日本製品をPRするアプリ「Payke」、実はオムニチャネル戦略に一石を投じるサービスだった

東京オリンピックを2020年に控え、各方面でインバウンド施策が盛況です。それは小売業も例外ではありません。

「Payke」は、日本の小売店を訪れる訪日外国人が商品のバーコードをスキャンすれば、多言語で商品情報を伝えてくれるサービス(スマートフォンアプリ、店舗設置型タブレット)。現状7言語に対応しており、ダウンロード国数は144ヵ国、ユーザー数370万人、海外のアプリストアで1位を獲得したこともある、今小売業界でも注目のインバウンド対応サービスです。

今回、Paykeを運営する株式会社Paykeの事業戦略室 事業推進責任者、杉山元紀様にサービスが生まれた背景やインバウンドマーケットの現状、今後の展望などを詳しくお伺いしました。

インタビューを通じて見えてきたのは、Paykeが単なるインバウンド対応に止まるものではなく、小売業界の誰もが気になるであろう「オムニチャネル戦略」の具現化に一石を投じるサービスである、ということでした。
本記事とあわせて後編もご覧ください。

【目次】

オフラインでの「情報格差を埋める」ことで消費高を上げる

株式会社Payke 事業戦略室 事業推進責任者
杉山元紀 様

——Paykeというサービスが生まれた背景を教えていただけますか?

杉山様(以下敬称略):私たちはコアミッションとして「買い手、作り手、売り手の三方良しで世界の消費高を上げていく」というものを掲げています。「買い手」である消費者、「作り手」であるメーカーやブランド、「売り手」であるリテーラー、この三方を繋ぐプラットフォーマーとして我々が位置して、買物消費高を上げる。消費高のパイを奪い合うのではなくて、消費高そのものを上げていけるようなサービスを提供する、ということです。

では、どうやって消費高を上げるのか。私たちが注目したのは「商品情報」でした。例えば、誰も知らない新商品が店頭に置かれた場合、置かれただけでは誰も買わないと思うんですよね。なぜなら、誰もその商品について何も知らない、分からないからです。

消費者にとって「物の価値とは情報である」と私たちは考えています。つまり、物体そのものの価値に魅力を感じて購買の意思決定をするのではなく、その物体を取り巻くストーリーや口コミなどの「情報」こそが、購買の意思を左右する大きな要因になっているのです。

作り手は、様々な情報を消費者に届けたいと思っているはずです。例えばここにあるお茶であれば、茶葉の生産者は誰かという情報や、「大人だけではなく子供にも飲みやすい成分が入っているんです」、というような商品が持つストーリーなどです。そういった商品の付加情報が消費者に届くことで、初めてちょっと買ってみようかな、家族のお土産にしてみようかな、というような購買意欲が湧いて、それが結果的に購買に結びつくわけです。

では、この大切な価値を持つ「情報」が販売店の中で現状はどう扱われているかというと、商品パッケージの中にある情報、POPに書かれている情報など、必要最低限の情報しか消費者はパッと目にすることができません。昨今これだけを見て購買の意思決定をする消費者はほぼいないでしょう。

さらに、オフラインの消費行動においては大きな情報格差が存在しています。なぜなら、「作り手が消費者に届けたい情報」は「物流」の上に乗っていないからです。

メーカーから卸、小売、消費者へと、物自体は流れていきますが、その過程で情報はどんどん削られていき、消費者が店頭で手に取る段階では必要最低限になっている。消費者は知らないものは買わない生き物です。その前提に立った時、「オフラインにおいては消費行動がものすごく制限されてしまっている」というところに課題があると考えたのです。その課題を解決するソリューションとして提供しているのがPaykeというわけです。

——オンラインでは人によっては好きなように情報が取得できますが、リアル店舗、オフラインでは情報格差がある、というところにこそ、このサービスの存在価値がある、ということですね?

杉山:おっしゃる通りです。オンラインではGoogleをはじめ、あらゆる検索チャネルというものが充実していますが、オフラインでは、こと外国人で言うと、僕らも海外に行けば外国人ですが、オンラインで物を選ぶときに現地と同じようにGoogleで検索できるかと言われると、できないんですね。

なぜなら、入力ボードが基本的には母国語ですし、どうやって検索すればいいか分からない状態になっています。また、検索チャネル自体も海外では制限されてしまっている場合もあります。検索チャネルを新たに作ると言う意味でも、私たちのソリューションが活きてくると思います。

モバイルアプリ、店舗設置型タブレット、取得データの提供をサービスとして展開

——情報格差だけでも大きいところに、言語の壁も存在する、というわけですね。Paykeはサービスとしてどのようなプロダクトを展開しているのですか?

杉山:私たちは、ミッションに沿って、買い手、売り手、作り手の三方に対してプロダクトを展開しています。

まず、買い手である消費者向けのプロダクトとしてはモバイルアプリがあります。仕組み自体はすごくシンプルで、商品に付いているJANコードをアプリを通してスキャンすると商品情報が多言語で引き出せます。
JANコード自体は世界統一の規格で、どの国に行っても商品パッケージには必ずJANコードが付いています。しかし、消費者はJANコードの存在はほぼ100%知っているけれども、使ったことがある人はほぼいない。私たちはそこに目をつけて、このJANコードに情報を載せることによって、流通管理だけでなく、情報のプラットフォームとして消費者に解放すれば、私たちのサービスが活かせると考えたのです。

それから売り手である小売店に対しては店舗設置型のタブレットを提供しています。これは、モバイルアプリのユーザーでなくてもPaykeのサービスを使えるような環境を作るものです。

作り手であるメーカーに対してはPaykeの管理画面を提供しています。ここで何ができるかというと、各メーカーの商品情報を登録する機能はもちろんなのですが、もう一つがデータの部分で、私たちが収集している商品のスキャンデータ、いつ、どこで、誰が、どんな商品を今まさに手に取っているのか、というオフラインの消費行動を可視化できるものです。

画像引用:Payke公式サイト https://payke.co.jp/

国際通りの店舗を端から端まで行脚してニーズをリサーチ

——サービスの開発には実際どれくらいの期間がかかったのですか?

杉山:モバイルアプリからスタートしたのですが、サービス設計をし始めてから最初のアプリをリリースするまではだいたい4ヶ月ぐらいですね。ただ、それまで約1年くらいはマーケットリサーチとして、色々な業者さんにヒヤリングをして、サービスのコンセプトを固めていました。

——そのリサーチ期間も含めて、リリースするまでに一番苦労したことは何でしょう?

杉山:実はあまりクリティカルに困ったことはなかったですね。私たちは沖縄で創業しているのですが、最初はプロトタイプのアプリとサービスのコンセプト資料を持って沖縄の国際通りを端から端まで歩いて、商店やメーカーに飛び込んだんですね。このサービスがあったら何が嬉しいか、お金を払ってくれるか、そういうことを聞いて回りながらコンセプトを固めていくのと、本当にニーズがあるかというところを検証しました。その時のフィードバックにネガティブなものが一つもなかったんですよ。

——全てポジティブだった、つまりニーズが間違いなくあったと確信したのですか?

杉山:ポジティブというか、「こういった機能があるといい」「こういうデータが欲しい」といった感じですね。オフラインの消費データに価値があるという着想を得たのもその行脚からです。

どちらかというと内部的な苦労の方が大きくて、「スタートアップあるある」だと思うのですが、プロダクトを開発する段階でまだエンジニアがいなかったんですね。僕も含めて創業メンバーの4名は全員ビジネスサイドの人間で。なので、最初は沖縄の受託開発業者にアウトソースしました。その時の担当エンジニアが、今のCTOです。

国籍やエリアによって違う消費傾向をデータで可視化

——Paykeは最初からインバウンド対応施策のサービスとして位置付けていたのでしょうか?

杉山:スタート時点ではそうですね。外国人をファーストターゲットとして見ています。観光庁が公表しているアンケート調査でも、訪問先での多言語表示やコミュニケーションに関して、「小売店で16.2%の外国人が困っている」という結果が出ています。その中でも何に困っているかというと、商品を探す時と、商品の内容や使い方を質問する際に不都合を感じている。こうした定量的なファクトもありますし、私たちがユーザーアンケートをとると、日本でショッピングをする際に言語の壁を感じる、というのも実際の声として届いています。

引用:http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000239.html

——Paykeはどの国のユーザーが一番多いですか?

杉山:ある程度訪日外国人の数と比例はしていて、それで言うと本来は中国人が一番多くなるはずなのですが、中国のメインランドに関してはモバイルアプリが既存のものではリリースができなかったので、今は比率でいうと台湾人が一番多いですね。だいたい33%から35%ぐらいが台湾人です。次に香港の方です。
昨年の12月に中国メインランド向けアプリ「配刻」をリリースして、中国人ユーザーの割合もかなり増えてきていて、今の国籍割合は早いうちに変わると考えています。

——訪日外国人の国籍や訪問先エリアごとで消費行動に顕著な違いはありますか?

杉山:はい。エリアによってスキャンされる商品傾向は変わりますね。すごく顕著なものでいうと、東京と大阪です。Paykeには人気ランキングという機能があるのですが、大阪では医薬品のスキャンされる回数が多くて、1位から10位まで全て医薬品です。ところが東京では医薬品が5割、化粧品が5割という感じになります。これが沖縄になると食品がランキングに入ってきます。この違いの明確な理由は現在分析中ですが、事実としてこのようなデータが出ているんですね。

国籍は、比率で言うとエリア別の訪日外国人数とほぼ比例しています。例えば福岡は韓国人が多く、沖縄は台湾からの定期フェリーが就航していることもあり台湾人が多いですね。

「商品情報」を流通させるという文脈ではインバウンドとアウトバウンドの境目はない

——今は7言語に対応していますが、今後言語を増やす予定はありますか?

杉山:それはもちろんあります。今でも訪日外国人の約80%はカバーできているのですが、この辺りは市場の動向に応じて対応していく想定です。

今は訪日外国人にターゲットを絞って展開していますが、私たちが最終的にやりたいのは、商品情報と言う価値を流通させることなので、その文脈においては、対象が外国人も日本人も境目はありません。私たちのサービスは日本人が外国に行く時も、外国の方が日本以外の国に行く時も同様に使えるサービスですし、今よりももっとボーダレスなサービスにしていかなくてはいけないと思っています。

そのためのステップとして、まずはインバウンドがあり、その先にはアウトバウンド、さらに先には世界中で起きているインバウンドという現象に対応できるようなサービスにしていきたいです。

——今でもアウトバウンドで利用されているケースがあるのですか?

杉山:ユースケースとしては圧倒的にインバウンドが多いのですが、一部アウトバウンドでの事例もあります。例えば日本の店舗が海外に出店して、そこで現地の消費者が日本語で書かれた商品情報を取るために使うといったケースですね。

——店頭でパフォーマンスが出やすい商品情報の作り方などはあるのですか?

杉山:私たちも今まさにそこを分析しているところなのですが、すごくわかりやすい事例でいうと、画像が1枚の商品と3枚の商品だと、ページを見た後に別の商品を見るコンバージョンレートが30%ぐらい変わってくる、という傾向は出ています。

——商品情報をPaykeに登録するときは、手入力と、AIも使えるとお聞きしたのですが。

杉山:はい。私たちのサービスの中で商品情報コンテンツのクオリティは一番のキモとなる部分なので、今は基本的に人力で入力することをおすすめしています。でも、メーカーの担当者からすれば商品に思い入れはあるものの、作文が苦手という方もいらっしゃいますし、テキストの作成に工数を割けない場合もあると思うので、ゆくゆくは機械学習やディープラーニングを用いて、JANコードをスキャンした際にあらゆるデータソースから商品に紐づいた商品情報を引っ張ってきて、最適な文量だったり画像の枚数であったり、タイトル訴求という部分をAIが担うということも実現していきたいと考えています。

後編へ続く

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