POSシステムの耐用年数は?購入とリースの違いについても解説
POSレジなど、店舗で長く使用する設備は固定資産として扱われるため、経営に大きな影響を与えます。
決算の際には、耐用年数から減価償却を行うなどの処理も必要です。
店舗運営を行う上で、POSレジをはじめとした店舗設備の耐用年数については、知っておくべき知識です。
今回はどの業態でも広く扱われているPOSシステムをメインに、耐用年数の解説をしていきます。
- 固定資産の減価償却と耐用年数について
- POSシステムの購入とリースの違いを紹介
- POSシステムはリースでの使用が多い?
- リース資産の場合の耐用年数は?
- POS端末やパソコン・サーバーの耐用年数について
- その他、設備の耐用年数を紹介
固定資産の減価償却と耐用年数について
はじめに、基本的なところから解説していきます。
減価償却とは
店舗で使用する設備の、パソコン・レジ・テーブル・椅子などは長期間使用することが可能です。これらは「減価償却資産」となります。ただ、これらの資産は、時が経つほど利用価値が下がっていきます。
こういったことから、10万円以上の「減価償却資産」については、全額を一括して経費として計上するのではなく、「耐用年数」に応じて期間で按分し、毎年ごとに損なわれた価値の分だけを経費処理していきます。
「減価償却」とは、年々資産の価値が減っていくという考え方になります。
また、「減価償却」の方法は2種類あり、毎期一定の額を費用として計上する「定額法」と、毎期一定の率を掛けて算出する額を、費用として計上する「定率法」があります。
おおまかには、個人事業主は定額法、法人は定率法が償却方法になります。
耐用年数は法で決まっている
「耐用年数」とは、減価償却をする期間と考えられますが、備品ごとの減価償却期間を勝手に決めることはできません。国で定められた年数に従います。国税庁の「法定耐用年数」にそって備品の経費処理をしていきます。
POSシステムの購入とリースの違いを紹介
POSシステムは従来の計算機能中心のレジスターと異なりレジとは異なり、様々なデータの収集や分析はもちろん、手打ちの時間短縮や打ち間違いも防ぎ、人的コストが削減できるメリットの非常に多い設備です。
様々な面で無駄を省いた店舗運営が行えるため、導入を検討されるかたが多いのではないでしょうか。ここからはPOS導入に関わる内容を解説していきます。
POSシステムの耐用年数は?
POSレジは、法定耐用年数が5年と定められています。ですが実際は、不具合が生じていなければ、5年を超えても使用可能です。ただし、5年を過ぎると、減価償却はできません。
基本的な減価償却費の計上の仕方の流れは「資産」→「費用」→最後5年で「1円」となります。なので、5年を過ぎると原価償却ができないということになります。
国税庁の規定:レジスターの法定耐用年数は5年
レジスターの法定耐用年数は5年と定められており、POSレジと通常のレジスターは同じ扱いになります。ただ、支払い方法が進化し続けている現在では、レジスターや、古い機種のPOSレジの場合、機能的に不便を感じることが増えていくことが予想されます。
近年では特に、電子マネーの普及や決済手段の複雑化が進み、仮想通貨を決済手段として利用できる店舗も増えています。法定年数の5年を過ぎると、不具合が生じていなくても機能の不足によった使いにくさを感じることとなるでしょう。
POSシステムはリースでの使用が多い?
POSシステムの導入方法は「購入」「レンタル」「リース」の3種類があります。その中で一番使用が多いのはリースではないでしょうか。
購入との比較
購入するとなると、一度にかなりの費用がかかります。POSレジは、モバイル型が10万円以下、据え置き型の場合は20万円以上で、搭載するオプション機能によっては100万円以上になることもあります。
一度購入してしまえばランニングコストは必要ありませんし、修理やシステム変更によって費用が必要になることはあっても、総額はリースより安く済むでしょう。
しかしながら、大きなリスクとして考えられるのは、IT技術の進歩や支払方法の多様化が進む現在、3年後に購入したレジ機が不便さを感じずに使える保証はありません。十分に対応できなくなってしまう可能性が考えられます。
レンタルとの比較
レンタルのメリットは、いつでも解約が可能な点です。大体は初期費用も不要で、故障しても無料で修理してもらうこともでき、リスクは最も少ない導入方法かもしれません。しかし、デメリットとしては月額料金が高いため、長期間借り続けるとなると、リースや購入に比べ費用は嵩みます。また、レンタルできる機種には限りがあり、自由に機種を選択することはできません。
リースの場合も初期費用が無料、もしくは少額で始めることができます。また、レンタルに比べると月額費用も安いです。そしてレンタルとの大きな違いは、自分が使いたいものをリース会社が購入するため、利用できる製品の幅を広げることができます。ただし契約期間は長期間必要となり、途中解約ができない点はリスクとなります。
結果、リースでの導入を選択し、月額費用を5,000円から1万円程度に抑えるなど、調整を行うケースが増えています。さらに、リースの特徴的なメリットとして、償却資産税や固定資産税などの申告・納付や、保険などの管理が必要なくなることも大きく、事務処理の面からもコストをカットができます。
リース資産の場合の耐用年数は?
リースの方法にはいくつか種類がありますが、広く用いられているのは所有権移転外ファイナンスリースです。この場合、リース契約を締結した時点では、まだ所有権はリース会社の方にありますが、リースした側で長期間独占的に利用可能なため、売買契約に準じた扱いとなります。所有権が、実質的にはリースした側に移っている状態にちかいため、会計処理もその実態に合わせて行い、減価償却などもPOSレジをリースして利用している側で行う仕組みになります。
所有権移転外ファイナンスリースでPOSレジやPOSシステムを導入した場合には、リース会社からPOSレジの機械を借りている状態ではありますが、実質的には購入した場合とほとんど変わらない扱いです。ただ1点だけ、注意しなければいけないのが、POSレジをリースで使う場合の耐用年数です。購入した場合と異なってきます。
リースの場合、リース期間を耐用年数として扱うことになります。6年や7年のリース期間で契約している場合には、POSレジを購入して使っている場合の耐用年数5年と比べて、長い期間減価償却することが可能になります。
ただし、リース資産の減価償却は、定額法で減価償却することとなり、定率法は使えません。リース期間が5年であれば、購入して使う場合の耐用年数と同じですが、毎年の償却額は別々となります。
リース期間が終了したら?
一般的には、リース会社へPOSレジを返却して、新しい機種のPOSレジを新たにリースすることになるでしょう。リース契約の場合は、リース期間終了と同時に、耐用年数も満了することになりますので、帳簿価額が1だけ残っている状態です。
リース契約の期間はある程度長期になりますので、契約終了の頃には新機種がたくさんリリースされているはずです。新しい機種の場合も、これまでとリース料の負担はほぼ変わらない状態で、新機種を導入できることが可能になるでしょう。
また、場合によってはこれまで使っていた機種を買い取り、そのまま使い続けることもできます。
POS端末やパソコン・サーバーの耐用年数について
ここからは、POSレジ以外の、主要機器の耐用年数について紹介していきます。
POS端末の耐用年数
POS専用端末は、POSレジに付随した機器で、例えば、メニューや顧客情報を登録する機能を導入するなど、店舗に合わせて開発され、それぞれの業態に適した高い操作性を持ったものです。キャッシュドロワー、バーコードリーダー、クレジット決済受付端末などの周辺機器や、ハンディーターミナルなど、POS専用端末には様々なバリエーションがあります。
これらは、POSレジと同様、法定耐用年数は5年と定められています。
パソコンの耐用年数
パソコンの耐用年数は、サーバーとして使用するかどうかで変わります。サーバーとして使用するパソコンの耐用年数は5年。それ以外のパソコンの耐用年数は4年となっています。
法定められた耐用年数ですが、使用できる期間としては目安として考えます。ただ、このくらいの年数使用したパソコンは、買い替えを検討してもいいころかもしれません。耐用年数を超えて使用すると、起動しなくなったり、障害が発生してこれまでどおりには使用できなくなる可能性もあります。
サーバーの耐用年数
サーバーは長期に渡って使用する設備のため、減価償却資産になります。取得価額が10万円以下なら消耗品費となり、取得価額が10万円以上になると減価償却費になります。
サーバーを複数台購入した場合は、1台当たりの金額で判断します。
もし、サーバーの1台当たりの取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産として、個別に減価償却をせずに、使用した年から3年間にわたり、その年に一括償却資産に計上した資産の取得価額の合計額の3分の1を必要経費に計上していきます。
サーバーの1台当たりの取得価額が20万円以上の場合には、法定耐用年数6年に基づき、定額法または定率法で減価償却費を計算します。
ガソリンスタンドのPOSレジの耐用年数
ガソリンスタンド向けのPOSシステムは、とても特殊なものになります。それは、使用環境の違いです。半屋外での使用ということもあり、耐環境性、夏場の高温下で耐えられる設備が必要です。
また、現在ガソリンスタンドでは、1998年の消防法改正による規制緩和によって、低価格なセルフサービス式の採用が増えています。
そのため、操作マシンは、ICカードの読取り、紙幣・コインの挿入など必要な機能も含めながら、基準のサイズにおさめるといった大きな変化をしています。国税庁の耐用年数では、ガソリン又は液化石油ガススタンド設備8年となり、この耐用年数に準ずる形となります。
その他、設備の耐用年数を紹介
先に紹介した以外に、よくある設備の耐用年数を紹介します。
給湯器法定耐用年数
給湯器は普通は何年間も使用するかと思いますが、使用していくうちにパイプ熱で変色したり、給湯器本体の価値は下がっていくため、給湯器は減価償却資産なります。給湯器は、ガスを使用していますが、「器具及び備品」に該当します。
そして、給湯器は業種によってタイプが異なることから、耐用年数がことなります。飲食業の厨房施設のガス給湯器は耐用年数が8年で、美容室のガス給湯器は13年です。通常の給湯器の耐用年数は6年です。
本棚耐用年数
使用するスペースに合うように、サイズを指示して作成したオーダーでの本棚と、パーツで販売されているものを組み立てて使用する本棚、または、既製品の完成した本棚があります。建物と家具(本棚)が密着していない場合は、建物とは別の償却資産として取り扱われ、税法上は器具・備品に該当します。その中でも、構造・用途が「家具、電気機械、家庭用品」、その他の家具(その他のもの)になり、耐用年数は8年となります。
コンプレッサー耐用年数
コンプレッサーなどの場合、それが「工具器具備品」なのか「機械装置」なのかで耐用年数が変わります。耐用年数が変わると、税金計算も関わりますので注意が必要です
・工具器具備品:単体で機能を果たすもの
・機械装置:複数の設備が1つの設備として機能を果たすもの
ちなみに、診療用のコンプレッサーの耐用年数は7年です。
器具備品耐用年
店舗などでよく扱うのの耐用年数を紹介します。
- 看板、ネオンサイン 3年
- 冷房用・暖房用機器 6年
- 電話設備その他の通信機器(デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話)6年
- タイムレコーダー/ファクシミリ 5年
- 時計 10年
まとめ
経営に欠かせない情報を把握できる機能が搭載されたPOSレジは、今後も手放せない必要な設備になるでしょう。
決して安くはない設備ですので、導入方法については、経営の計画や、業種による形態に合わせた判断が必要です。貴社に合った最適な導入方法で出費をおさえ、安定した経営が行えるようご検討ください。