クラウドソリューションSAP Aribaの概要から導入事例まで
一口に商取引といっても、様々な形態があります。いわゆるBtoBと呼ばれる取引は企業間で行われ、消費者向けの商取引とは事情が少し異なります。
クラウドコンピューティングを用いて企業間取引を支えるというSAP Aribaは、このBtoBに特化したサービスを提供する、世界最大規模の企業です。企業間取引にはどのような課題が存在し、Aribaはどのように問題解決にあたっているのでしょうか。
今回はそんなSAP Aribaについての概要と、実際の導入事例などを参考にしながらそのソリューションを見ていきましょう。
【目次】
SAP Aribaとは
SAP Aribaは企業における間接材の調達業務をサポートするクラウドベースのサービスです。間接材は材木などの直接材には振り分けられない、業務用の工具や文具といった資材のことを指しますが、Aribaはこういった資材調達をエンド・トゥ・エンドで支援してくれます。
たとえば現在EC市場は拡大傾向にあると言われていますが、元々の取引額が大きいのはBtoCよりもBtoBの分野です。
経産省のデータによると、BtoC分野の2017年度の取引額はおよそ16兆円とのことでしたが、BtoBに関しては約313兆円にも登ります。BtoCの20倍近い額の取引が、企業間によって行われているというわけです。
そして今後もますますこの額は増大していくと試算されており、ゆくゆくはBtoBの取引はインターネット上で行われるのスタンダードになることでしょう。
このような企業間商取引を支えるのが、SAP Aribaをはじめとするアプリケーションサービスの数々なのです。
クラウドによるサービス提供のメリット
クラウドによってもたらされる最大のメリットは、導入が容易であることとコストパフォーマンスに優れているという点です。
クラウドアプリケーションであるAribaは導入にあたって特別な機器を用意する必要はなく、Webブラウザ上で動作するためライセンスさえ取得してしまえば定額料金でその日から利用を開始することができます。
新しい機材を導入する必要はないので、コストがかさんでしまう心配もありません。
Aribaを買収したドイツのSAP社について
Aribaは現在190カ国以上で利用され、導入企業も250万社を超えているとのことですが、元々は1996年にアメリカのカリフォルニアで誕生した企業でした。
ところが2012年、Aribaはドイツのビジネス向けソフトウェア企業であるSAPによって、およそ43億ドルで買収されることになります。以降AribaはSAP Aribaという名称に変更され、SAP参加のサービスとして展開していくことになったのです。
SAPの主要製品とAribaの関係
SAPはビジネス向けソフトウェアを提供しているため、普通に生活しているだけではあまり耳にすることもありませんが、実はマイクロソフト・オラクル・IBMに続く世界第4位の大手ソフトウェア企業なのです。
そのSAPがメインの商品としているのが、ERP、いわゆる基幹システムです。
SAPの主力商品であるERP
ERPは企業の運営を効率的なものとするため、あらゆる情報を一元化して管理できるシステムを提供します。組織は巨大化するほどその情報管理が困難になっていくものですが、例えば営業・資材調達・経理といった部署でデータを一元化することができれば、これは企業を経営する人にとっては大きな効率化につながるでしょう。
情報を一元管理してくれるのがERP最大のメリットです。
SAPの既存サービスとAribaの融合
一方、SAPが買収したAribaはデータの統合ではなく、直接、資材調達業務をサポートするアプリケーションです。ERPの提供だけではなく、新たに各企業の業務を改善するシステムとして、これまでの基幹システムとともに課題解決を図っていこうというのがSAPの狙いとされています。
SAPは自社システムによるデータの一元化を行ってきましたが、Aribaも膨大なネットワークと予算を持つサービスです。SAPの提供する基幹システムとAribaのネットワークが融合することにより、サービスを利用する企業にとってはより効率的な企業経営を実現できるということになるのです。
SAPは基幹システムによって社内の業務効率化を行うだけでなく、Aribaを活用して社外、つまり企業間の課題解決に乗り出したと言えるでしょう。
SAP Ariba導入がもたらすソリューション
Aribaが提供するのは、資材の売り手と買い手をマッチングし、見積もりから契約、支払いまでのサポートするというものです。
これは「Ariba Network」と呼ばれる独自に構築されたネットワーク内で行われますが、バイヤーとサプライヤーを同じプラットフォーム上でマッチさせることにより、お互いにとってスムーズな売買が行える手助けをしています。
公式アカウントからはこのような分かりやすいショートムービーも公開されているので、理解の手助けとなるでしょう。
Aribaはこのプラットフォーム上で毎年1兆ドル前後の取引額を記録しており、SAPはその規模の大きさに目をつけたというわけです。
新たな取引の可能性も生み出しているAriba Network
インターナショナルなプラットフォームで世界中のバイヤーとサプライヤーが一堂に会することで、これまでには考えられなかった取引の機会も生まれてきています。
後に少し紹介しますが、Ariba Networkを利用する企業の業種は多岐にわたり、電機メーカーや医療メーカー、建築関係など、多くの買い手が世界中から集まります。
大手メーカーは安定したサプライヤーをすでに獲得しており、新しい取引の可能性は見込めないと外部の業者は考えてしまいがちですが、さらなるコストカットが見込めるのであれば新規取引先でも契約を結びたいというトレンドが、Ariba上には存在します。
そのため、アジアのサプライヤーへ欧米の大企業が取引を持ちかけるということも少なくなく、業務効率化という枠組みで、新しいマーケットの拡大も見られるのがAriba N絵トォrk最大の特徴と言えるでしょう。
業界関係者の全面サポートを行うAriba
また、Aribaでは単にバイヤーとサプライヤーを同じプラットフォームで繋げるだけでなく、Ariba自身がサプライヤーと直接つながる役割を担うこともあるとのことです。
参考:SAP Ariba もうひとつの製造業のデジタル化 買い手と売り手をネットワークでつないで
https://bit.ly/2OOgwk6
こちらのインタビューによると、バイヤーが利用したいサプライヤーがAribaのネットワークに存在しない場合、専門社員がその任を受け、サプライヤーがプラットフォーム上でバイヤーとつながれるようトレーニングや徹底したサポートを無償で行ってくれるようです。
業務のデジタル化は徐々に進行しているとはいえ、企業ごとに足取りが違ってしまってはAribaのようなプラットフォームの浸透も遅れてしまいます。デジタル化へのキャッチアップのサポートもAribaが直接担うことで、結果的にユーザーの獲得につなげているということですね。
またAribaはネットワーク上で使用できるシステムとして「Ariba Pay」を導入しています。受注から出荷、伝票発行に支払いまでを簡潔に行えることが特徴で、さらなるプラットフォームの利便性の向上につなげています。
SAP Aribaの導入事例
Aribaは海外の企業だけでなく、日本国内の企業においても続々と導入が進んでいます。
富士通のケース
例えば富士通ではSAP Aribaを活用した間接材調達と購買改革に取り組んでおり、単なるサービス導入にとどまらないコスト削減効果やコンプライアンスの向上、業務効率化に取り組んでいるとしています。
参考:http://www.fujitsu.com/jp/services/application-services/enterprise-applications/sap/services/application/ariba
日東電工のケース
日東電工もConcurとともにSAP Aribaを導入し、ニュースになりました。
SAP Aribaとともに導入されたコンカーの「Concur Travel & Expense」は、出張費用や交際費用などの経費管理をクラウドで行えるサービスとなっており、SAP Aribaと併用することで間接業務の効率化を急速に進めていくことが可能となりました。
また、これらのクラウドサービスのアウトソーシングとなるBPaaSを採用することで、業務プロセスの変革と高い支出削減を期待できるということで、大きな期待が社内からも寄せられています。
BpaaSはSaaSに続くアウトソースの新機軸として日本IBMが導入を進めるサービスで、調達業務の「見える化」をサポートしてくれます。
参考:https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1092815.html
https://www.concur.co.jp/travel-expense
https://www.ibm.com/think/jp-ja/business/bpaas/
最近の事例だと、ライオンによるSAP Aribaの導入がニュースになっていました。マーケティング部門の調達と購買業務に導入するということで、ライオンによるグローバルスタンダードな調達プロセスが始まったとして話題になっています。
参考:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1807/25/news104.html
ライオンのケース
グローバル市場への挑戦への動きを見せるライオンでは、国内の企業の中でも刷新的な取り組みに力を入れているといえます。Aribaの導入はマーケティング部門の調達業務から開始し、徐々に一元管理の導入、ゆくゆくは他部門への応用も視野に入れているということで、大きく企業の構造が変革していく時期に突入しました。
新しい業務プロセスの導入は広く受け入れられるべきとはいうものの、実際に新規システムの導入は移行のために多くの時間とコストを要することも珍しくありません。特に組織が大きければ大きいほど難しくなってくるため、今回のライオンの動向には多くの企業が注目していると考えられます。
海外の事例に関しては、SAP Aribaの公式サイトでも数多くまとめられているので、気になる方はこちらも参考にしてみてください。ジョンソン・アンド・ジョンソンやサークルKなど、日本でも大手企業が利用していることがわかります。
SAP Aribaの利用にあたって
利用料金について
SAP Aribaの料金システムは、バイヤーとサプライヤーの双方から手数料を徴収することで成立しています。金額についての案内は地域ごとに資料が用意されているため、対応地域に応じて確認すると良いでしょう。
登録に関して
サプライヤーとしてAriba Networkに参加する場合、登録はいたって簡単です。一般的なインターネットサービスと同様に会員登録とログイン情報の取得を行えば、ネットワークに参加することができます。
少しでもネットワークに参入しやすい環境を整えているのもSAP Aribaの大きなシェアを支える要素と言えるでしょう。
SAP Aribaのサポート体制
SAP Aribaはバイヤー・サプライヤーの両方の利用者に対して充実のサポート体制を整えています。
システムについての質問や相談、トラブルシューティングはもちろんのこと、独自のSAP Learning Hubを活用した製品トレーニングを受けることもできます。
ヘルプセンターではSAPのチームからのサポートだけでなく、他のユーザーからアドバイスを受けることも可能です。