ローソンゴー他、続々実験開始〜世界のレジレス店舗最新事情〜
2016年に、ウォークスルー型レジレス店舗の先駆け「Amazon Go」が発表されてから3年あまり、今では国内外でレジレス店舗の開発・研究、そして実証実験の競争が激化しています。
技術的に解決すべき課題はまだ山積しているものの、省力化・利便性向上の両側面から見て、レジレス店舗がいかに小売業界で期待されているかが伺えます。
本メディアでもレジレス店舗については度々話題として取りあげていますが、今回は事例も含めて情報を最新のものにアップデートしていきたいと思います。
目次:
- ローソンゴー
- 米国セブン-イレブン
- Amazon Go Grosery
- レジレス店舗を支えるシステムの競争も激化
- -Zippin
- -Nano Store
- -Standard Checkout
- -Grabango
- さいごに
ローソンゴー
昨年、2020年内での出店を検討していると発表していた大手コンビニエンスストア・ローソンが手がける初のレジレス店舗「ローソン富士通新川崎レジレス店」が、今年(2020年)の2月26日〜5月25日までの3ヶ月間、期間限定でオープンしました。
本メディアでの予想(実用化前夜?2020年要注目の国内無人店舗事情)とは違い、Amazon Goと同様、天井に吊るしたたくさんのカメラとセンサーを用いた完全ウォークスルー型のレジレス店舗となっています。加えてこの店舗は、富士通が開発した「マルチ生体認証」によって、掌の静脈と顔情報によって入店できる「世界初」の店舗です(生体認証の利用開始は3月16日から)。
レジレス店舗のシステムには、米国のレジレステクノロジーを手がけるスタートアップ企業、VCOGNITION TECHNOLOGIESの「ZIPPIN」を採用。決済アプリには、ローソンの子会社、ローソンデジタルイノベーションが開発した「Lawson Go」を使う仕様になっています。
今の所、扱う商品は弁当や惣菜、清涼飲料水などを中心とした約250品で、ホットスナックの提供や納入代行は取り扱っていません。
また、多くのこの手の店と同様、まずは富士通新川崎テクノロジーセンターで働く従業員向けの実証実験店舗となっており、一般の消費者は利用できません。しかし、ローソンは2020年の夏を目処に都内で一般客が利用できる同タイプの店舗を出店する計画としています。
参考:http://www.lawson.co.jp/company/news/detail/20200218news001.html
米国セブン-イレブン
米国セブン-イレブン(7-Eleven, Inc.)は、今年(2020年)2月、テキサス州の本社近くでレジレス店舗の運営を開始しました。こちらも、御多分に洩れず、当面は従業員のみが利用できる実証実験店舗という位置付けです。
店内は65㎡という広さで、スナックや清涼飲料水、さらには生鮮食品や市販薬も取り扱います。仕組みは他のレジレス店舗と同様、モバイルアプリを用いて入店、決済を行う仕様となっているようです。
セブン-イレブンは日本国内でもNTTデータと共にレジレスの実証実験店舗を六本木で展開しており、こちらもウォークスルー型の店舗になっていますが、米国のセブン-イレブンと技術的に関連があるかどうかはわかっていません。
Amazon Go Grosery
元祖レジレス店とも言うべきAmazon Goも、ここへ来て新たな展開を見せています。
本年(2020年)2月25日、AmazonはAmazon Goの新コンセプト店舗、「Amazon Go Grocery」をシアトルにオープンしました。基本的なシステムはAmazon Goと同様となっていますが、この店舗では名称からもわかる通り、肉や魚介類などの生鮮食品やアルコールなどを取り扱います。
技術的にはAmazon Goと同様のテクノロジーを用いるとはいえ、細かい部分でいえば、たくさんの利用客が一度に様々な生鮮食品を手に取る状態や、食品を保管する冷凍・冷蔵庫を開閉した時にドアが曇ることに対応するために、AIをアップデートする必要があったと言います。
しかしながら、顧客体験としてはAmazon Goと大差はなく、どちらかと言うと、AmazonがOMO戦略を推進するにあたり、異なるターゲットに対してタッチポイントを広げるための出店戦略の一環なのではないかと捉えられています。
レジレス店舗を支えるシステムの競争も激化
レジレス店舗は、Amazonのように自社でシステムを開発・構築するのでない限り、第三者の力を借りることでレジレス店舗の運営を可能にする必要があります。
その需要は世界的に膨らみつつあり、まだほとんどの店舗が実用化に至っていない中で、レジレス店舗用のテクノロジーを提供する主力スタートアップ企業は、大型の資金調達を行なってスケールを目指しているのです。
以下で、そのようなレジレステクノロジー企業の事例をいくつかご紹介しましょう。やはり、と言うべきか、そのほとんどがシリコンバレーをベースとする企業が提供しているサービスとなっています。
Zippin
前述したローソンゴーのシステムとして採用されている「Zippin(VCOGNITION TECHNOLOGIES)」も、その一つです。地元のサンフランシスコでは、23㎡の独自のレジレス実証実験店舗を2019年6月にオープンしています。ここ日本でも、今年(2020年)1月に行われた「DOCOMO Open House 2020」にZippinが展示されました。
Zippinの最大の特徴は、エッジ・コンピューティング・モジュールを採用していることで、クラウドではなく、店舗内で独立して画像処理を行うため、インターネットがダウンしてもオフライン状態での営業を可能にすることでしょう。
Nano Store
カリフォルニア州サンタクララのスタートアップ、AiFiが提供する「Nano Store」は、コンテナ型のレジレス店舗システムです。コンテナ型なので、路面に限らずオフィスや学校、スタジアム、建設現場など、周囲に店舗が少ない場所に仮設して営業できます。
Nano Storeは事前登録やアプリの起動などは必要なく、バンクカードをパネルにタッチするだけで入店できるため、その部分においての利用客の利便性は高いと言えます。
Standard Checkout
カリフォルニア州サンフランシスコのスタートアップ、Standard Cognitionが提供するレジレス店舗システム「Standard Checkout」は、2018年に日本進出も果たしています。その時は、大阪の化粧品・日用品・一般用医薬品卸最大手の株式会社PALTACがパートナーである小売店舗にて採用しました。
また、昨年(2019年)には、カメラやセンサー、AIを使った185㎡の大型の実証実験店舗をサンフランシスコにオープンしています。
Grabango
カリフォルニア州バークリーのスタートアップGrabangoは、スーパーマーケット・チェーン「Giant Eagle」のレジレス店舗システムを構築し、現在実証実験中であり、2020年中のどこかの段階で公式にサービスがローンチされると言われています。
この実験では、「Gレール」と呼ばれるセンサーが並ぶレールを開発することで1店舗に対する導入コストを下げ、多店舗展開しやすいシステムを目指しており、さらにはキャッシュレス決済だけでなく、従来の現金やクレジットカードでの買い物も併用できる店舗としていることが大きな特徴となっています。
さいごに
今回ご紹介した事例は、全て実証実験という位置付けになっており、どのシステムも完全な実用化のためには、技術的な課題を少なからず残していることが伺えます。
また、大半はレジレスを完全な無人化と結びつけることはしていないことも特筆すべきでしょう。
現状、コンビニエンスストアという業態は、特に日本においてはホットスナックや納入代行という、有人レジカウンター周りのサービスが価値を作っている側面もあります。したがって、レジレス技術が実用化に至った場合でも、店舗は完全無人化せず、現在、セルフレジを積極的に利用しているような消費者に対して、さらなる利便性を提供する施策として、考えられるのではないでしょうか。
ただし、その実現のためには、全体の導入コストがさらに引き下がっていくことが大前提であると思われます。