AR/MRグラスでまったく新しい未知の店舗体験を実現!
自分の部屋にいながらにして、まるで店舗で買い物しているような体験ができる未来のデバイス「AR/MRグラス」が話題です。
現実の世界と、仮想のデジタル情報を融合させることで、自宅が店舗に早変わり。まったく新しい店舗体験の最前線をご紹介します。
目次:
- 未来の技術がすぐそこに:AR/MRグラスとは
- AR/MRとは?VRや新技術SRとの違いは?
- CES 2020で披露されたNrealのAR/MRグラスの店舗体験
- ブランドイメージそのものを自分の部屋に
- Nrealだけじゃない!続々開発中のAR/MRグラス
- AR/MR市場の加速には5Gが鍵となる
未来の技術がすぐそこに:AR/MRグラスとは
AR/MRグラスは、壁や床をセンサーおよびカメラで認識し、その上にデジタル情報を重ねて表示する機能を備えた眼鏡型デバイスのことです。
よく混同されるデバイスに「スマートグラス」がありますが、こちらは現実情報とは別のものとして、視界の一部に情報を映し出すツールです。
スマートグラスは、AR/MRグラスよりも搭載されている機能が少ない分、眼鏡そのものに見えるような軽量化、小型化が進んでいるのが特徴。
一方、AR/MRグラスはセンサーやカメラを複数付属させないと現実(リアル)な情報とリンクさせることができないため、スマートグラスと比べると、大きく重量があることがほとんど。また、比較的高価なため、現時点ではもっぱらビジネス向けの体験提供デバイスとして活用されています。
今回紹介するNrealの「NrealLight」は、その常識を打ち破るかたちで軽量化、低価格化を実現したため、大きな話題を呼んでいます。
AR/MRとは?VRや新技術SRとの違いは?
AR/MRグラスについて詳細を見る前に、ARとMRについて前提知識をおさらいしておきましょう。
VR、SRとの違いについても紹介しています。
ARとは
AR(Augmented Reality)は、「拡張現実」を意味します。
現実世界の形式や地形、感覚といった情報に、コンピュータによる付加的情報を重ねる技術のことをいいます。
今ある現実を、仮想的に拡張するために「拡張現実」といわれます。
MRとは
MR(Mixed Reality)は、「複合現実」のことです。
現実と仮想世界の座標を組み合わせて、現実の世界と仮想の世界を同時に体験できるようにする技術をいいます。
VR(仮想現実)の技術だけでは、フィールドを歩き回るような動作はできませんでしたが、MRを利用すると、現実世界と仮想世界がリンクして動くために、仮想世界を体験しながら歩き回ることも可能になります。
AR/MRとVRの違い
VR(Virtual Reality)は、コンピュータ上に作った仮想世界のことです。ディスプレイ上に映し出された映像を見ていると、あたかもその世界に自分が存在しているように感じられます。比較的古い技術で、1930年代にはすでにフライト・シュミレーターとして活躍していました。
AR/MRとVRの違いは、現実世界にデジタル情報を重ね合わせるか否かという点です。
VRは、現実とまったく別の異世界を作り出す一方、ARやMRは現実世界にあるものとデジタルの情報を重ね合わせて世界観を構築することができます。
AR/MRとSRの違い
まだ実験や構想の段階にある概念、技術としてSR(Substitutional Reality)というものがあります。日本語では「代替現実」といいます。
AR/MRグラスのようなヘッドセットを使い、現実世界に過去の映像を映し出して、そこに存在しているかのような、あるいは過去の出来事が目の前で起こっているような錯覚を、見る人に与える技術をいいます。
CES 2020で披露されたNrealのAR/MRグラスの店舗体験
スマートフォンの次のデバイスとして定着する、と噂されているAR/MRグラスですが、まだその多くは企業向けに販売されており、個人が気軽に購入して使うようにはなっていません。
そんな風潮の中、中国のスタートアップ企業Nreal社は、軽量化、低価格化を実現した「NrealLight」を発表しました。
「NrealLight」は、スマートグラスのような軽量化に成功したデバイスで、重量は88g。視野角は52度で、眼鏡型デバイスとしては比較的広い視野を実現しているのも大きなポイントです。
米国で2020年1月に開催された世界の見本市イベント「CES 2020」では、「NrealLgiht」を体験するための「PORTAL with Nreal」というブースが出展されました。
自宅が店舗になるショッピング体験「PORTAL with Nreal」
「PORTAL with Nreal」の展示内容は、自分の部屋で、店舗以上に便利に楽しくショッピングできるというコンセプトの、「MRショッピング・デモ」です。
体験ルームにはソファとテーブルが置かれ、訪れた人はAR/MRグラスの「NrealLight」を装着することで、テーブル上のミニチュアモデルを見ることができます。
ミニチュアが服を身につけている状態でコントローラーを操作すると、服についての説明が表示される仕組み。さらに選択すると、ミニチュアではなく等身大のモデルが室内に出現し、チェックしたい服の詳細を確認することができます。
ミニチュアから呼び出せる等身大モデルは、マネキンではなく生身の人間を3Dスキャンしたもの。そのため、マネキンに着せられている状態よりもよりリアルな風合いを購入前に確認することができます。
AR/MRグラスでのショッピングは、「試着ができない」という通販と同様の課題を抱えていますが、3Dスキャンの精度が高ければ、具体的に装いをイメージできるため、消費者にとってもそれほどマイナスポイントにはならない可能性があります。
また、AR/MRの技術が進化すれば、瞬時に自分のアバターを作り出し、実際に試着しているような感覚でショッピングができるようになるかもしれません。
ブランドイメージそのものを自分の部屋に
Nrealは、「MRグラスを日常的に身につけるようになった未来」のデモとして、ブランドイメージを具現化したオブジェやポスターを、ユーザーの自宅に置くバーチャルアイテムとして渡すサービスも実施していました。
ブランドのファンは、製品だけでなくそのブランドがもつイメージやストーリーを好んでいることが多いので、実現すればユーザーにとって魅力的な体験になるでしょう。
2020年初旬に発売予定:日本ではKDDIから購入なるか
NrealLightの一般販売価格は499ドル(約55,000円)。軽量なだけでなく、AR/MRグラスとしてかなりの低価格を実現しています。
2020年初旬には一般向けに発売が予定されており、手の届きやすい価格設定からすでに好調な売上が期待されています。
Nrealは、KDDI株式会社と戦略的パートナーシップを締結しているため、国内ではKDDIが販売するのではないかという見方が濃厚です。
NrealとKDDIによる「EVE2020」が始動
NrealとKDDIによる開発者支援の共同プログラム「EVE2020」が、2019年12月よりスタートしています。
これは、開発者に対して最大100台のNrelLightとそれに接続可能なスマホを貸与し、NrealLightを活かせるアプリの開発をサポートしようというもの。
NrealLgihtのレンタル期間は4〜8週間で、技術サポートを含め無料で利用できるようになっています。
日本ではまだサービス提供が開始されていませんが、5G試験機も併せて貸与可能です。
・Nreal「EVE2020」
Nrealだけじゃない!続々開発中のAR/MRグラス
もちろん、ARグラス、MRグラスはNrealの専売特許ではありません。非公式ながらFacebookもARグラス(コードネーム「Orion」)を開発中で、2023〜2025年をめどに販売を目指していると噂されています。
また、Appleも視野角が120度以上あるARデバイスについて、米国特許商標庁に特許を出願したことが報じられています。
どちらも開発や販売を明言するようなコメントはありませんが、AR/MRグラスの開発に注力していることは間違いないとみられています。
そんな開発合戦が過熱するAR/MRグラス、現在発売されているものをまとめました。
MRグラス「GLOW」
香港を拠点に活動するスタートアップ企業MAD Gazeが手がけている「GLOW」は、まるで普通のサングラスのような軽量設計が特徴です。
重量は75gとNreal(88g)よりも軽く、視野角はNrealよりやや狭い45度。操作は音声認識やハンドジェスチャーでおこない、USB-Cを用いてスマホと連動させることもできます。
・GLOW
マイクロソフトの次世代機「HoloLens 2」
「HoloLens 2」は、2016年にマイクロソフトが発売したMRデバイスの次世代機です。
初代のHoloLensのおよそ2倍の視野角と解像度を実現し、視線追跡機能も向上、装着の快適性がアップしているなど、さまざまな点が改良されています。
ハンドジェスチャーで操作を実施する設計で、スマホやコントローラーとの連携はしません。
その代わりといってはなんですが、ヘルメットと組み合わせたり産業用に使用できるアプリを追加したりできるなど、自由なカスタマイズが可能になっています。
NTTから発売なるか?「Magic Leap One」
米国のスタートアップ企業Magic Leapの手がけるMRデバイス「Magic Leap One」は、ヘッドセットとコントローラーがセットになっています。
手の関節まで認識可能なハンドトラッキング、アイトラッキング、音声認識、コントローラーの制御と、さまざまなアプローチで操作できるのが特徴。
現在は日本国内での取り扱いがありませんが、こちらの企業もNrealと同様、NTTドコモと業務提携しているため、近いうちに国内でも販売されるのではないかと予想されています。
・Magic Leap One
AR/MR市場の加速には5Gが鍵となる
近年、ARやMR、VRなど仮想空間に関連したテクノロジーを総称するワードとして「XR(エックス・アール、クロス・リアリティ)」が登場しています。
AR/MRを含めたXR市場は、まだ展示会でのデモや体験の域を出ていませんが、5Gによって活気づくと予想されています。
次世代通信規格の5Gは、10Gbpsの最高伝送速度、100万台/㎢の接続機器数、つまり現行のLTEの100倍というパワーをもつ次世代の通信システムです。さらに遅延はLTEの10分の1とされており、IoTの基盤技術として大きな役割を果たすとされています。
5Gは、利用者がタイムラグを感じることなくネットにつながり、さまざまなサービスを快適に受けられるようになります。こうしたことから、この革新性は、XRにも大きな影響を及ぼすとされているのです。
国内では2020年2月現在、5Gの提供はまだされていませんが、米国、韓国、中国ではすでに5Gの商用サービスがスタートしており、各国も続々とこれに続く姿勢をとっています。
日本ではこの春から運用予定とされていますが、提供が開始したら、国内の仮想現実市場界隈も大きく飛躍するという可能性を視野に入れておくべきでしょう。
・総務省「2020年の5G実現に向けた取組」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000593247.pdf
まとめ
買い物や店舗のあり方を一変させると予想されているAR/MRグラス。現実と仮想現実がシームレスにシンクロするという現象は、まるでSFの世界のようです。
さまざまなAR/MRグラスが一般向けに発売されるようになれば、価格帯も下がり、スマホのようにグラスを活用する未来がくるのかもしれません。