店舗での指静脈認証を導入することの効果やメリットとは
近年では技術革新が著しいこともあり、様々な手法で個人を特定することができるようになりました。従来の手法であれば免許証など、人の目による確認が当たり前でしたが、今やICカードのようにワンタッチで個人情報の確認を行うことが可能となっています。
そしてこのようなテクノロジーは高いセキュリティレベルが必要な場所だけでなく、飲食店などの日常的に利用する場でも積極的に導入が進んでいます。例えば交通系ICカードによるプリペイド払いはもはやどこでも利用できますし、クレジットの支払いもワンタッチで行えます。
そして個人認証と快適なサービスの利用を掛け合わせて活用できるテクノロジーとして、指静脈認証が導入され始めています。これまでは銀行のような高いレベルの警備が必要な場でのみ利用されてきたこの認証方法は、開発が進み気軽に一般的なお店でもさらに高いサービスを提供できるようにと導入が進んでいます。
今回はそんな指静脈認証の仕組みや、実際に導入している飲食店などについてご紹介します。
- 認証ミスも少なく、素早い識別が可能な指静脈認証システム
- 飲食店での導入事例に期待
- 指静脈認証は私たちの個人情報管理のスタンダードになるかも
指静脈認証の概要
指静脈認証は、その名の通り指の静脈を読み取ることで個人を判別する認証システムで、その詳細な静脈のパターンから驚くほど正確かつ細かい個人の認識が可能となっています。
多くの優れた特徴を持つ指静脈認証
あらかじめ登録していた生体のパターンに合わせた認証方法となっているため、大きな特徴としてはやはりその偽造が極めて困難であることや、たまたま同じようなパターンであったことから誤ってシステムにログインできてしまうというケースは基本的には起こり得ません。
認証精度も高く、認証者の指が乾燥していたり、多少湿っている程度では識別に支障をきたすこともありません。
また、個人認証にかかる所要時間も極めて短いのも指静脈認証の特徴です。ワンタッチで情報を認識することができるので、利用者の負担も最大限に軽くすることができるでしょう。
人一人であっても、指一本づつで異なる静脈パターンが存在するため、個人で複数の認証を登録しておくことも可能です。複数の指で識別パターンを用意しておいたり、分野ごとに違った指を登録するなど、様々な活用方法が考えられます。
身近な指紋認証システムの例も
指紋認証システムは最も身近な例でいうと、iPhoneの指紋認証によるロック解除が挙げられるでしょう。スマートフォンにまで手軽に指紋認証が導入されるほど、指に含まれる情報は扱いやすく、かつ精度も高い情報であるとして認識され始めています。
指静脈認証の活用事例
そんなこれからの活躍が期待される指静脈認証ですが、現在ではすでに居酒屋での導入も始まりつつあります。人気居酒屋チェーンの「くいもの屋わん」では、全国に存在する293店舗に指静脈認証を採用したポイントサービスである、「yubiPOINT」(ユビポイント)を導入したというニュースがありました。
参考:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/10/news088.html
ポイントシステムに静脈認証を導入
これは飲食店や小売店ではすっかりとおなじみとなったポイントカードシステムを指の情報に集約してしまい、カードを廃止して今後は指の情報のみでポイントを貯めてもらおうという取り組みで、ポイント制度を維持しつつもお得なシステムを引き続き利用してもらうことができるという目的があります。
移行の手続きも実にシンプルです。店舗に設置されているタブレットに電話番号や誕生日を入力し、専用の静脈認証デバイスに指を当てるだけで登録が完了するというもので、従来のポイントを蓄積したまま新しいサービスを利用することが可能となっています。
静脈認証用のデバイスを用意しなければいけないというのは確かにコストがかかってしまうところではありますが、大きなメリットもいくつか存在します。
飲食店に指静脈認証を導入するメリット
ポイントカードが不要になる
一つは、やはり利用者がいちいちポイントカードを持ち歩いたり、出し入れする手間を取り除いてしまうことができる点です。ポイントカードが一斉に導入され始めた頃は、多くの人はお得だからといってポイントカードを一通り作り、財布の中がポイントカードだらけになってしまうということもありました。
ただやはりカードという形になるとかさばってしまい、次第にポイントへの魅力も薄れてくることで、結果的にカードを発行するコストだけがかさんでしまうという状況も現れ始めていました。カードにポイントを限定すると紛失によるポイント失効なども起こってしまっていたので、せっかくのポイントを無駄にしないために新しいシステムの導入が待たれていたことも背景にあります。
指のような生体認証であれば家に忘れてきてしまうということも起こらず、財布もかさばらないので効果的なポイントシステムを構築することができるようになります。
ポイントカードのインセンティブを維持するため、静脈認証システムを導入するのはポイントカード飽和時代においては大きな前進になったと言えるでしょう。
カード発行のコスト削減
二つ目には、今も少し触れたようにカードを発行するコストを削減できるようになることです。利用されないポイントカードを発行していても、結局一度きりで廃棄されてしまえばその意味がありません。
であれば多少機器導入のコストがかさんでも、ポイント制度のメリットを維持し、増大させるためにはカードを廃止して無駄なコストを抑え、集客効果に期待する方が大きいというわけです。
店舗での指静脈認証システムの導入はくいもの屋わんが全国初の事例となっており、その動向次第でその他の業種や店舗にも導入が進められていくかどうかが変化していくことでしょう。
注目のポイントとなるのは、やはり機器導入の費用対効果というところになりそうですが、これは導入店舗が増えれば増えるほど利用者も増えていき、結果的にその効果も増大していくことも予想として考えられます。
その他の指静脈認証活用の可能性
指静脈認証技術は飲食店以外での活躍も期待されています。
続々登場する新技術
例えばiPhoneでの指紋認証システムの他にも、ソニーが開発した高精度指静脈認証技術「mofiria」は、設備のセキュリティシステムとしてはもちろん、パソコンやタブレット、スマートフォンへの導入も期待されています。
デザインの自由度の高さや小型化も可能であることから、個人を識別する様々なシチュエーションでの活用が期待できるでしょう。クレジットカードに静脈認証システムを導入で、サインレスが可能に、ということもあるかもしれません。
カード媒体がなくなる日も近い?
個人認証に注目すれば、フィットネスマシンに指静脈認証を導入し、運動履歴などを確認できるシステムも開発されています。
ジムの会員カードがわりに個人の指の情報を登録することでトレーニングマシンを利用できるという仕組みで、IDカードを廃止するだけでなく個人情報も管理してくれるようになるということで、これからのジム利用のスタンダードになる予感も覚えさせてくれます。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/18/news090.html
個人情報を効率よく管理するために最適のテクノロジー
指静脈認証システムはこれらの事例から、個人情報の管理に最適のシステムであるという期待が大きく持てるシステムであることがわかります。
iPhoneの指紋認証のように、今や私たちにとってもそれほど見知らぬ技術であるということもなく、私たちが想像している以上に指静脈認証はスムーズに社会へ普及していくことでしょう。