請求書発行システムの導入による業務改善
BtoBにしろBtoCにしろ、何かしらの商取引を交わしたとき、必ず発行するのが請求書で、街の小売店などでは「レシート」が、請求書と領収書を兼ねることも多くなってきます。
一方BtoBの場合は、これまで紙面による請求書発行が日本では主流でしたが、このところそれをWEB上で済ませることが可能な、「請求書発行システム」を取り入れる企業や店舗も増えてきました。
そこで今回は、請求書発行システムとはなにかに続き、手書きの請求書発行とどのような点で違いがあり、どういった面がメリットとなってくるのかなどについて、以下の項目に沿ってお話します。
- 請求書発行システムとは
- 請求書発行システム導入によるメリット
- 1、時間の削減
- 2、コストの削減
- 3、ミスの防止
- まとめ
請求書発行システムとは
従来までの請求書発行は、
- 請求金額の決定
- 取引データの作成
- 請求書の作成・印刷
- 社印等の捺印
- 封書などへの封入
- 郵送
- 相手方の確認・請求金額の受領
という過程を踏んでおり、経理や総務などの部署が発行及び、管理にあたっていました。
一方、請求書発行システムとは、取引データに基づいて作成した請求書を、そのまま取引相手のWEBへ送信し、閲覧もしくは自社発行することで請求を確定するものであり、上記のうち③~⑥までを、そっくりカットできるシステムです。
実は、日本ではBtoBよりもBtoCにおいて、請求書発行システムの導入例を日頃から見かけるケースの方が多く、具体的には携帯電話各キャリアや、自動車保険会社が導入している、「WEB明細・請求書」がそれにあたります。
一方、企業間取引であるBtoB の場合、セキュリティーや請求書発行後の保管・管理の問題から、「紙面以外の請求書は認めない」という企業も多く、なかなか普及が進んできませんでした。
しかし、紙で管理しなければ公的なものとして認められなかった文書を、電子データとして管理・保管しても良いとする、「e-文書法」が施行されたことにより、請求書発行システムの導入を検討する企業も増加してきました。
ただし、請求書発行システムと言っても、
- (ア) 請求書をPDF化し、取引先へメール添付・送信。
- (イ) 保有サーバーに請求データを入れ、取引先がアクセスしデータを取得。
- (ウ) クラウドサービスを利用し、請求データをやり取りする。
といった3パターンが存在し、それぞれを自社で実施するケースと、アウトソーシングを活用するケースがあります。
請求書発行システム導入によるメリット
さて、請求書発行システムのあらましについて解説したところで、ここからはシステムの導入によって発生するメリットについて、整理をしていきます。
時間の削減
まず、最もわかりやすく発生するメリットは、経理や総務などといったバックオフィスにおける、大幅な業務時間の短縮で、取引先の件数が多ければ多いほど顕著になってきます。
さらに、システム上で請求データを管理しているため、取り引き先から請求内容についての問い合わせがあった際、紙としての管理よりも格段に検索が容易です。
また、システムによっては、
- 作成済
- 閲覧済
- 支払い完了
などといった具合に、進行状況ステータスを確認できる機能が、備わっているものまであり、これを利用すればさらなる業務効率化も可能になります。
加えて、郵送に頼らない請求書発行システムでは、請求書の到着がほぼリアルタイムになるため、確認・決済スピードのアップいう、ビジネス上非常にありがたい時短効果も期待できます。
また、相手方にとっても送付された請求書の管理が容易になるため、データ管理対応時間の短縮が図れたり、担当人員を減らせたりなど、お互いに「WINWIN」の関係を得ることができます。
【ここがポイント!】~取引内容・件数に合わせたシステムのチョイスが必要~
請求書発行システムについて3つのパターンを紹介しましたが、このうち(ア)については、確かにペーパーレス化にはつながるものの、件数が多いとかかってくる時間と手間は、紙面による請求書発行とさほど変わりません。
とはいえ、月間の取引件数が少ない場合では、こちらでも十分対応可能ですし、不動産取引のように一度の請求金額が大きな事業の場合では、紙と時間がかかっても社印が押された請求書を、作成する必要もあります。
(イ)・(ウ)のような請求書発行システムは、比較的1件当たりの請求額が安価で、かつ件数も多い事業を展開している企業向け、ということができます。
コストの削減
短縮できる時間は、採用したシステムによって変わってくるものの、
- 紙代・印刷資材費
- 切手などの郵送費
- 収入印紙
などといった、請求書発行コストについては、ほぼゼロ円に抑えることが可能です。
また、これまですべて手動で実施していた場合では、システム運用開始に伴う業務効率化によって、長期的にみれば人員削減も可能であり、削減とはいかないまでも、配置の適正化を図ることができます。
【ここがポイント!】~自社でシステム構築する時は綿密なコストチェックも必要~
請求書発行システム3パターンのうち、最も安く簡単に取り組めるのは(ア)ですが、(イ)(ウ)のパターン場合、自社でシステムを構築するには、かなり大きなコストがかかってきます。
前項において、請求書発行システムを導入すれば、コスト削減につながるとお話ししましたが、1つ1つみればそれほど大きな額とは言えません。
ですので、年間何万件もの取引を行っている企業でもない限り、システム構築費用を削減可能な、アウトソーシングシステムの導入を検討する方が現実的です。
ちなみに、膨大な数の請求書を毎月作成・発行する必要がある、携帯キャリアや自動車保険会社は、カットできる発行コストの累計が大きいため、WEB明細・請求書を承諾してくれたユーザーに対して、数百円程度とはいえ「割引サービス」を提供できるのです。
ミスの防止
手書きで請求書を作成している場合、書き間違えてしまったり、作成した請求書を紛失してしまったりと、何かしらのヒューマンエラーが生じることもあります。
一方、自らPDF請求書を作成するパターンを除くと、すでにWEB上で管理しているデータから、自動的に対象データを抽出・請求書作成することができるため、こういったヒューマンエラーを大きく減らすことが可能です。
また、請求書発行システムには、送付先データ管理機能が備わっているものも多く、こういった商品を導入した場合では、誤発送による取引情報の流出のリスクも、削減可能になってきます。
【ここがポイント!】~それでも情報漏洩のリスクは付きまとう~
店舗における業務の電子化は、様々な面でメリットが発生するものであり、請求書発行システムは、企業が業務改善のために採用しているシステムランキングにおいて、第2位となっているほど、高い費用対効果が認められています。
しかし、請求書作成に使用するデータは、
- 顧客情報
- 購入日
- 購入した商品・サービス名
- 購入品目数
- 購入額
など、非常に重要なものばかりで流出によるダメージが大きいため、国内の多くの企業がこれまで紙面での請求書発行と提出、確認・決済に強くこだわってきたのです。
そして、自社でのPDF化やサーバー管理で、大切なデータを守り抜く体制を構築するには、それなりのコストと手間がかかります。
ですので、BtoBビジネスにおける請求書発行システム導入については、ファイヤーウォールやSSL暗号化などといった、情報漏洩に対するセキュリティー体制を整えている、アウトソーシングサービスのチョイスを、心がけると良いでしょう。
まとめ
ビジネスシーンにおいて、一応の完了段階となる請求書発行と、それに伴う請求代金入手は、企業や店舗にとって販促やマーケティング業務が報われる、大変喜ばしい瞬間です。
ただし、請求書に誤った表記があったり、到着までに時間がかかったりすると不信感が募るものです、正確かつスピーディーな発行につながる請求書発行システムの必要性は、ビジネスのIT化に伴い、年々増してきています。
また取引先によっては、紙面での請求書しか承認しないところや、認めたくてもWEB環境などの面で対応できないところも、少なからず存在します。
ですので、自らの業務内容や規模はもちろん、取引相手の対応に合わせたシステムの導入を、検討するようにしましょう。
この記事を書いた人
黒田剛司
大阪市立大学商学部を卒業後、新卒で独立。学生時代に身につけた経営・流通・マーケティングなどの知識を活かし、コマースについて幅広いジャンルで執筆。また、サイト制作やWebメディア運営も請け負っており、IT系の記事作成も可能。無類の動物好き。