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マクドナルドのポテトに学ぶ!物流が止まらないBCP対策のポイントを解説

コロナ禍や災害など様々な要因により、国内でも複数の企業で物流トラブルが起こっています。過去には震災など大規模な災害も起き、企業はどのような状況でも企業活動を継続できる仕組み作りが求められています。

そこで重要なのがBCP対策(Business Continuity Plan)です。部分的なものではなく、新型コロナウイルス感染症のような世界的な災害にも対応できるような、大がかりな事業継続計画の練り直しが必要です。

この記事では、物流領域におけるBCPの重要性や策定のポイントを解説します。

頻発するサプライチェーンの混乱

コロナ禍が長引き、ついに物流にも大きな影響が出始めました。国内外で起こったサプライチェーンの混乱と、今後の課題についてみていきましょう。

供給不足、災害、事故などで起こる物流トラブル

2021年ごろから頻発している物流トラブル。その原因はコロナ禍も大きいですが、災害などもあります。まずは国内で起こった4つの物流トラブルについて、発生時期と概要を解説します。

日本マクドナルドでポテト不足(2022年1月初旬)

カナダ・バンクーバー港付近の水害やコロナ禍による世界的な物流混乱により、フライドポテトの原料であるジャガイモが不足。1か月ほどポテトはSサイズのみの販売となった。

オイシックス配送トラブル(2022年1月)

神奈川県に新設した大規模物流センター「蛯名ステーション」で商品の納品遅れが発生。高精度なシステム導入により「商品が足りない」という不測の事態に対応できず、入荷後の在庫管理や棚入れできないといった混乱が起きた。

コンビニ各社でチキン不足(2021年11月ごろ~)

コロナ禍の影響により鶏肉の加工を行う一大産地タイの工場で生産が停滞。セブン-イレブン・ジャパンは「からあげ棒」と「ななチキ」を、ファミリーマートは「ファミチキ」の供給を一部制限など各メーカーに影響が出る。

アスクル出荷停滞(2021年11月)

大阪市此花区の人工島・舞洲の物流倉庫でおきた大規模火災により、出荷業務が停滞。火元となった倉庫に商品を委託保管している企業も多く、緊急対応として関東の物流センターから商品を出荷するなどして対応。

コロナ禍で物流トラブルが発生したケースもあれば、火災やシステムトラブルが影響しているケースもあります。上記のように物流トラブルは様々な原因で起こる可能性があり、企業は企業活動を持続させるために「BCP対策」が欠かせません。

トラブルをどこまで想定できるかが重要

企業ではどのようなBCP対策がされているのでしょうか。調査によると、BCPの策定状況は意識について、以下の結果がわかりました。

  1. 事業継続計画(BCP)を策定している…43.5%
  2. BCPは策定していないが、災害対策マニュアルなど自社独自の取り組みを行っている…27.5%
  3. BCPも自社独自の取り組みも実施していないが、今後、何らかの対策を予定・検討している…19.8%

1と2を合わせると、およそ7割の企業がなんらかのBCP対策を講じていることがわかりました。

しかし具体的に準備している項目については、以下の通りとなっています。

  • 1位:消火器、救急用品、避難、救難機材の準備…87%
  • 2位:データのバックアップ…80.9%
  • 3位:構内、事務所の整理整頓…77.9%

しかし規模の大きい設備的な対策項目については、以下の通りです。

  • 11位:設備を導入する際、災害に強いものを採用するよう配慮…45.8%
  • 12位:拠点を構える際に、災害に強い立地、施設を選定…43.5%
  • 13位:事務所、車両、倉庫などの重要代替拠点、設備の確保…35.1%

参照: 防災・BCPに関する実態調査(LOGISTICS TODAY調べ)

https://www.logi-today.com/452821

コロナ禍による物流トラブルや火災におけるBCP対策では、上記のような大規模な設備対策が必要です。しかし多くの企業がコスト面でネックとなり、BCP対策が進んでいないことがわかりました。

災害や物流トラブルは外部の要因も大きく、どれだけ注意しても防ぎきれるものではありません。企業は様々な物流トラブルを想定し、事業継続のためにサプライチェーンを再構築することが重要となります。

事業継続のためのサプライチェーン再構築

BCP対策を徹底するためには、サプライチェーンの再構築が必要です。BCP策定の重要性やポイント、事例をご紹介します。

BCP策定の重要性

BCPの観点からサプライチェーン全体を再構築することはコストがかかりますが、大変重要です。

前述したように大企業が次々と物流トラブルに見舞われ、仕入れに難航する状態になっています。例えばマクドナルドやコンビニチェーンのように「ポテトが販売できない」「チキンが販売できない」となれば、この状況はそのまま売り上げ低下につながります。

加えて「欲しい時に欲しいものが手に入らない」となれば、今までの顧客はこれを機に他店へ流れかねません。商品を販売できず、顧客が離れていく際の企業の損害は計り知れないでしょう。小売店では物流も大きな競争力になるのです。

またすでに海外進出している、または進出を検討しているならBCPに強いグローバルサプライチェーンの構築が必要です。新型コロナウイルス感染症のように、世界中に影響を与える災害が再発しても事業を継続できる体制を整えていきましょう。

BCP策定のポイント

BCPを策定する際にポイントとなるのは、以下の項目です。

  • 敏捷性
  • 回復力
  • 速度
  • 可視化できる仕組み

サプライチェーンでは、調達物流、生産戦略、製品物流の3段階があります。調達物流のポイントとなるのが「敏捷性」です。調達ルートを分散するといった変化に柔軟に対応できる仕組みを作ることで、バックアップ生産といった対策が可能になります。

また有事の際に企業が回復する強靭性を指す「レジリエンス」という言葉があります。被害を最小限に抑えるようデータをバックアップしたり、オフィスの耐震性を高めたり、システムが損傷しても手作業で対応できたりといった対策により、被害を受けても早く復旧できるようなレジリエンス戦略が必要となります。

そして敏捷性や回復力と同じくらい重要なのが「速度」です。システム異常や災害が起きても柔軟かつスピーディーな対応が可能ならば、BCP対策はひとまず安心でしょう。

そして敏捷性や回復力、速度を備えたサプライチェーンの構築に必要なものといえば「見える化」こと可視化できる仕組みです。

サプライチェーンの規模が大きくなるほど、それぞれの部署が独自で動き連携が取れないケースは少なくありません。その結果、余剰在庫や物流情報の錯綜といったムダが増えてしまい、有事の際にうまく連携が取れなくなります。

サプライチェーンを見える化すると、部分最適ではなく全体最適を行えます。「A地点が被災して物流が止まったら、オーダー情報を共有しているB地点が代わりに対応する」といった柔軟な対応ができるのです。

BCP事例

国内でも、すでに様々なBCP対策の事例があります。今回は、2つの事例をご紹介します。

国際貨物取扱量が急増した九州空港

2021年度における九州空港の国際貨物取扱量は、4年連続で過去最高を更新しています。九州空港は他空港との競争で低迷が続いていましたが、韓国の大韓空港の国際貨物便が19年より北九州空港を本格的に利用することになり、物流量が急増しました。

ヤマト運輸が24年に羽田空港と結ぶ貨物便を就航するなど物流で存在感を高めていますが、その背景にはBCP対応強化があります。

海上に立地しており24時間発着可能九州空港は利便性が高く、運送企業に評価されました。新型コロナウイルスの影響により開運需要がひっ迫した結果、各国で貨物便に切り替える動きが高まっています。これにより、九州空港の需要が急増したのです。

扱う商材は半導体部品や自動車部品などの輸出が多く、輸入では生鮮品や花が多くなっています。今後は陸海空の連携が課題ですが、国際貿易機能が高まれば大阪や東京に負けない成長が期待できます。

プロロジス大阪市と災害時の物流施設利用協定を締結

2022年2月15日、大阪市は米サンフランシスコに本社を置くプロロジスと災害時の物流施設利用協定を締結しました。

「災害発生時等における施設の提供協力に関する協定書」を締結したことで、大阪市は災害時の緊急支援物資の集積配送地点として、プロロジス社の物流施設の一部を利用できます。

プロロジス社はすでに京都府京田辺市や千葉県千葉市、兵庫県猪名川町、埼玉川島町や神奈川県といった多数の自治体と防災協定を締結し、日本のBCP対策に協力しています。

プロロジス社の運営するプロロジスパークは最新鋭の物流施設であり、堅牢性や車両のアクセスが容易なランプウェイ、BCPを考慮した設備が充実しています。今回新たに大阪が加わったことで、より国内のBCP対策が進みました。

今こそ従来のサプライチェーンを見直すタイミング

自然災害のような起こるか定かではないものに、企業は投資しにくいものです。しかしすでに複数の大災害が起こり物流が混乱している今、すでにサプライチェーンを見直すタイミングは来ているのではないでしょうか。

終わりが見えないコロナ禍を生き抜くために、またコロナ後の生活様式の変化に対応するために、企業は早めにBCP対策を講じなければいけません。

コロナ禍でさらに高まったBCP対策

新型コロナウイルス感染症は世界中で猛威を振るい、冒頭でご紹介したように大企業の物流も大きな打撃を受けました。オムニチャネルやDXといった進化が求められるなか、企業活動を続けるためのBCP対策はもはや義務といえるでしょう。

すでに2011年3月に発生した東日本大震災で、BCPの重要性を認識した企業も多いはずです。輸送中のタンクローリーが流されるなど想像を絶する災害が起こり、企業は企業活動や従業員を守る備えが求められています。

災害時の企業活動はもちろん、感染症対策や防災訓練の慣行、有事の際の対応を明確にするといった対策にもコストをかけることで、強い企業へと進化していくでしょう。

BCP対策における物流のトレンド

スマートフォンの普及や生活様式の変化に伴い、ますますオムニチャネルの需要は高まりました。その中でも物流領域はコロナ禍によって大きな変化が起きており、以下の2つがトレンドとして注目されています。

  • 東西2拠点での稼働
  • 自社出荷の一部切り離し

過去に大きな災害に見舞われた企業も多く、拠点を西と東に分けるケースが増えました。東日本大震災などを経験した企業は、拠点を1つだけにすることのリスクを実感したのではないでしょうか。

拠点が多ければ多いほど、物流ではリスク分散ができます。しかし拠点が増えるほど在庫の管理も煩雑になるので、情報の一元管理は欠かせません。

また2拠点以上になると、すべての在庫を分散すると在庫が膨れてしまいます。売れ筋の商品だけを2拠点発送にするなど、リスクヘッジを意識した稼働がポイントです。

東西2拠点と同じように、BCP対策として自社出荷を一部切り離すケースも増えました。自社出荷or外部委託のどちらかで絞るのではなく、一部だけを外部に委託することでBCP対策を行うのです。

自社出荷以外の拠点を手早く増やすことができますが、保管コストなどは対策しなければいけません。売れ筋商品だけにする、容量が小さく保管コストが低い商品だけを委託するなど、効率のいいBCP対策がポイントです。

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