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メーカーと小売は「競争」から「共創」へ!トレードマーケティングで売場を最適化

小売業界は、原材料価格の高騰や人手不足の深刻化、さらには消費者の購買行動の多様化といった要因により、大きな変化に直面しています。メーカー側にとっても、従来の経験則に基づく販売活動だけでは、小売店への安定的な配荷や棚の確保が難しくなりつつあります。

このような環境下で、メーカーと小売が手を組み、共に売上を最大化し、店舗運営を最適化するための戦略が、トレードマーケティング(Trade Marketing)です。これは、単に消費者向けの販促活動を行うだけでなく、小売店のバイヤーや経営層をターゲットにした、戦略的なマーケティング活動として非常に重要です。本記事では、トレードマーケティングがもたらす具体的な効果や、カテゴリーマネジメント(Category Management)との連携の重要性、そして業態別の実践例を解説します。

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ターゲットは消費者だけではない:小売の意思決定を動かす戦略

トレードマーケティングの目的は、「小売企業への販売活動をマーケティングとして実行する」ことです。これは、消費者との関係構築を主とするブランドマーケティングとは、役割が異なります。

ブランド・マーケティングとの役割分担:想起度から購買のしやすさへ

ブランドが成長するためには、二つの「利用可能性」を高める必要があります。

  1. ブランドの想起度(心の棚に並ぶ状態): ブランドマーケティングが担い、広告や広報を通じてブランドを消費者の記憶に定着させ、購入を検討する際に真っ先に思い出してもらうための優位性を築きます。
  2. 購買のしやすさ(手に入れやすさ): トレードマーケティングが担い、適切な店舗での配荷、魅力的な陳列(棚割り)、そして適正な価格設定を通じて、消費者が「買いたいと思ったときに、すぐに手に取れる」状態を実現します。

トレードマーケティングは、この購買のしやすさを最大化することに焦点を当て、小売店の店頭という最終的な販売現場を変革します。

経験則からインサイトベースへ:バイヤーの課題解決

これまでのメーカー営業は、過去の取引経験や営業担当者の勘といった経験則に頼りがちでした。しかし、今の小売バイヤーは、客観的なデータに基づいた論理的な提案を求めます。

トレードマーケティングでは、バイヤーインサイトの理解が重要です。バイヤーの意思決定は、「どれだけ売上・利益が出るか」という物理的課題と、「店舗の作業負担が増えないか、経営層から評価されるか」といった心理的課題の二つの側面から行われます。

メーカーが提案を成功させるには、「この施策は、収益向上(物理的課題の解決)だけでなく、店舗オペレーションの負担を軽減できる(心理的課題の解決)」という、両方の課題を解決できる戦略が必要です。データに基づいて、配荷、棚割り、アウト展開といった店頭の施策を実行に移してもらうことが、トレードマーケティングの鍵となります。

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業態別の活用事例:バイヤーのニーズに合わせた提案の具体化

トレードマーケティングの戦略は、各小売業態が抱える独自の課題や、バイヤーが重視する指標に合わせて調整することで、最大の成果を生み出します。

家電量販店における事例:高付加価値商品の販売支援

家電店では、人件費の負担増やECとの競争から、高付加価値商品の販売力強化と店頭スタッフの業務負担軽減が課題とされています。

  • トレードマーケティング施策: 特定の専門カテゴリ(例:最新調理家電など)について、メーカー側が店頭スタッフ向けに製品知識と顧客への提案話法をセットにした教育プログラムを提供します。また、体験型展示のレイアウト設計や什器の設置・撤去までをメーカーが担うことで、店舗側の作業を極力減らします。
  • 効果: スタッフのスキルと販売効率が向上し、高マージン商品の販売比率が高まります。これは、バイヤーの「利益最大化」と「教育・運営コストの削減」という二つの課題解決に貢献します。

コンビニエンスストアにおける事例:オペレーション効率の最大化

コンビニエンスストアのバイヤーは、高頻度な新商品導入に対応しつつ、限られた人手と時間で迅速に店舗運営を行うことを最優先します。

  • トレードマーケティング施策: 新製品を導入する際、店頭での陳列やPOP設置にかかる作業時間が最小限で済むよう設計された販促キットを提供します。例えば、すぐに設置できる一体型の什器や、作業手順を簡略化したマニュアルなどです。さらに、エリアの天候や顧客データを踏まえた推奨発注量とタイミングを提案し、在庫リスクを軽減します。
  • 効果: 店舗スタッフの作業負担が大幅に軽減されるため、バイヤーは新商品の導入をスムーズに判断できます。これにより、商品の回転率と鮮度が高まり、棚を獲得しやすくなる優位性が生まれます。

ドラッグストア・スーパーにおける事例:データ主導の売場再構築

ドラッグストアやスーパーマーケットでは、品揃えが豊富であるため、カテゴリーマネジメント(CM)を通じて顧客の購買行動を深く分析し、カテゴリ全体の売上向上を図ることが不可欠です。

  • トレードマーケティング施策: メーカーは、自社製品だけでなく、カテゴリ全体のPOSデータ、ID-POSデータ(会員情報と紐づいた購買履歴)を分析し、小売バイヤーに提供します。「この顧客層は、特売品と一緒に高付加価値商品を併せて購入する」といったデータに基づくインサイトを提供し、棚割りやプロモーションの共同企画を行います。特にスーパーでは、生鮮品と関連する調味料などを組み合わせるクロスマーチャンダイジングの最適なパターンをデータで提案します。
  • 効果: 小売店は客観的な根拠に基づいて、来店客のニーズに合った売場を構築できます。結果として、客単価(バスケットサイズ)とカテゴリ全体の利益率が向上し、メーカーはカテゴリ全体の成長に貢献することで、小売との強固な信頼関係を築くことができます。

カテゴリーマネジメントとの連携:データで共創する店舗変革のエンジン

トレードマーケティングの取り組みが、単なる一過性の販促で終わらず、持続的な成果を生むためには、カテゴリーマネジメント(CM)との連携が不可欠です。CMは、来店客視点での棚割り・品揃えの最適化を目指す手法であり、トレードマーケティングの目標である「購買のしやすさの最大化」を、売場という具体的な形で実現するためのフレームワークです。

「売れる」を証明するデータ活用

CMを効果的に運用するためには、来店客の属性、購買傾向、併売データといった客観的なPOSデータ分析が欠かせません。

トレードマーケティングでは、メーカーがこのデータ分析を担い、インサイトベースの提案を通じてバイヤーの意思決定を支援します。データは、メーカーの提案が自社に都合が良いだけでなく、「本当に売れる」というバイヤーの懸念に対する明確な根拠となるからです。メーカーと小売が同じデータという共通言語を持つことで、経験や主観に依存しない、論理的かつ客観的な共同の売場設計が可能になります。

協業による利益の最大化

メーカーが自社製品の販売だけでなく、カテゴリ全体の成長と、小売店の店舗運営効率まで考慮した提案を行うことで、小売バイヤーはメーカーを「売場を共に最適化する重要なパートナー」として認識します。

トレードマーケティングは、小売店という限られたリソース(棚のスペース、スタッフの時間)を最適に配分するための競争であり、成功の鍵は小売店の課題解決にいかに貢献できるかにかかっています。データに基づき、バイヤーインサイトを深く理解し、カテゴリーマネジメントを通じて実行可能な店頭施策として落とし込むこと。これこそが、メーカーと小売の双方に持続的な成長をもたらす、現代の小売業界における重要な成長戦略です。

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