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消費税減税で変わるインボイスと軽減税率の実務対応、店舗が今整理すべき点

「食料品の消費税が1%になるらしいが、うちの店は何をすればいいのだろう」

2026年8月の閣議決定以降、そうした声を耳にする機会が増えています。レジの税率設定変更に注目が集まりがちですが、実務担当者にとって見落とせないのが、軽減税率の仕組みや免税事業者・インボイス制度との関係です。

売上にかかる消費税率だけが下がり、仕入にかかる税率は変わらないことで、免税事業者や簡易課税事業者には特有の負担が生じる可能性があります。政府もこの点を課題として認識しており、9月15日に決定した大綱では具体的な緩和策も示されました。

本記事では、軽減税率と免税事業者・インボイス制度の関係を中心に、店舗が今のうちに整理しておきたいポイントを解説します。

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1. 消費税減税(1%)の概要とスケジュール

2026年8月5日、政府は臨時閣議で「給付付き税額控除の制度導入の基本方針」を決定しました。酒類・外食を除く飲食料品の消費税率を、2027年4月1日から2年間、8%から1%まで引き下げるというものです。1989年に消費税が始まって以来、初めての税率引き下げになります。

続く2026年9月15日には、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定され、制度の中身がより具体的になりました。1%という税率は、国税0.78%と地方消費税0.22%を合わせたものです。適用期間は令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間で、終わったあとは8%に戻る見込みとなっています。

ただし、2026年9月時点では消費税法改正案はまだ成立していません。秋の臨時国会での審議を経て、正式に確定する見通しです。細かい部分は今後変わる可能性もあるため、実務を進める際は政府や関係省庁の最新の発表をこまめにチェックしておくと安心です。

参考:内閣官房「飲食料品に係る消費税率の引下げ」及び「給付付き税額控除」について

2. 対象品目と税率区分の整理

今回の引き下げの対象になるのは、すでに軽減税率8%が適用されている酒類・外食を除く飲食料品です。税率区分を整理すると、次の3つに分かれます。

  • 1%:酒類・外食を除く飲食料品(軽減税率の対象品目、テイクアウト・宅配を含む)
  • 8%据え置き:定期購読の新聞(週2回以上発行されるもの)
  • 10%据え置き:酒類、外食(店内飲食)、飲食料品以外の商品

施行後は「1%・8%・10%」という3つの税率が同時に存在することになります。一体資産(食品とおもちゃのセット商品など)やケータリングの線引きは、2026年9月時点ではまだ法案作成中で、はっきりとは決まっていません。

テイクアウト・宅配と店内飲食の税率差

飲食店で特に気をつけたいのが、テイクアウトや宅配は1%への減税対象に含まれる見通しである一方、店内飲食は10%のまま据え置かれる見込みという点です。

現行制度での税率差は2%(軽減税率8%と標準税率10%)ですが、時限措置の間はこれが9%まで広がります。同じメニューでも売り方によって税率が変わるため、レジでの判定と、価格をどう設定するかの両方を考えておく必要がありそうです。

3. 免税事業者とは何か、消費税還付の仕組みからおさらいする

免税事業者とは、課税売上高が一定基準(1,000万円等)以下であるために、消費税の申告や納税の義務が免除されている事業者のことです。小規模な事業者の事務負担を軽くするための仕組みです。

消費税には、預かった消費税額よりも支払った消費税額のほうが多いとき、その差額が還付される仕組みがあります。ただし、還付を受けられるのは原則課税を選んでいる課税事業者だけです。免税事業者は、納税義務がない代わりに、この還付も受けられません。

個人経営の飲食料品小売店や、農業・水産業を営む個人事業者など、飲食料品を扱う事業者には免税事業者が少なくないため、今回の税率変更を考えるうえで押さえておきたいポイントです。

4. 免税事業者・簡易課税事業者に生じる構造的な課題

売上・仕入間の税率ギャップが生む負担

食料品の売上にかかる消費税率が1%に下がっても、仕入や経費(電気代、輸送費、包装資材など)にかかる消費税率は10%のまま変わりません。原則課税を採用している課税事業者であれば、この差額は還付として戻ってきます。

ところが免税事業者は還付の仕組みそのものの対象外なので、売上と仕入の税率差がそのまま負担として残ってしまう可能性があります。

この負担を避ける方法として、免税事業者をやめて課税事業者になるという選択肢もあります。ただ、課税事業者になると、消費税の申告に加えて、適格請求書(インボイス)の発行・管理・保存、取引先ごとの登録状況の確認、税率ごとの仕訳など、新たな事務作業が増えます。税理士に依頼する必要が出てくることも多く、その分の費用もかかってきます。

簡易課税事業者が直面する同様の課題

年間の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者などが選べる簡易課税制度も、同じような課題を抱えています。簡易課税は、実際に仕入にかかった消費税額をいちいち計算せず、預かった消費税額に業種別の一定割合(みなし仕入率)を掛けて納税額を出す制度です。

食料品の売上税率が1%に下がると、計算のもとになる預かり消費税額そのものが小さくなり、控除できる金額も一緒に縮んでしまいます。一方で、電気代や店舗家賃など事業を続けるための経費には、これまでどおり10%の消費税がかかり続けます。そのため、実際に支払っている税額と、計算上控除できる税額との差が広がりやすくなるのです。

簡易課税には基本的に還付という考え方がないため、この差額はそのまま事業者の負担として残ります。

使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています

5. 大綱で示された緩和措置

こうした課題を受けて、2026年9月15日の大綱では、免税事業者・簡易課税事業者向けの具体的な緩和策が示されています。

簡易課税事業者の仕入控除税額の特例

簡易課税制度を使っている事業者が飲食料品を販売した場合、業種区分に関係なく、仕入控除税額を売上税額と同じ金額とする特例が設けられます。つまり、飲食料品の販売にかかる納税額は実質ゼロという扱いになります。適格請求書発行事業者となる小規模事業者向けの2割特例・3割特例を使っている場合も、同じ扱いです。

本則課税への移行を後押しする届出の特例

本則課税に切り替えて還付を受けたい事業者のために、手続き面の緩和も用意されています。通常、課税事業者になるための届出は事前に提出しておく必要がありますが、令和9年4月1日の属する課税期間の末日までに提出すれば、その課税期間の初日の前日に出したものとみなしてもらえます。簡易課税をやめるときの届出も同じ扱いになり、いわゆる簡易課税の「2年縛り」もこの機会は解除されます。

農林漁業者・食品事業者・外食事業者への支援

本則課税への切り替えが難しい簡易課税事業者・免税事業者の農林漁業者には、個別の売上高に応じた給付の仕組みが新しく作られる予定です。食品事業者や外食事業者に対しても、資金繰りの支援や生産性向上に向けた支援が検討されています。

簡易課税事業者・免税事業者が本則課税事業者へ切り替える際の相談対応や、税理士費用などの経費への支援も行われる方針です。こうした支援の中身は、今後の予算編成の中で具体的に固まっていく見込みです。

6. インボイス(適格請求書)対応で確認すべき点

適格請求書への記載ルール

特例税率が適用される取引については、適格請求書や仕入明細書の「適用税率」欄に特例税率を、「消費税額等」欄に特例税率に基づく消費税額を書くことが決まっています。

複数の税率が入り混じる中で、どの取引がどの税率に当たるのかを正確に管理する重要性は、これまで以上に高まりそうです。

総額表示義務の経過措置

消費者向けの総額表示(税込価格の表示)義務は維持されますが、税率が変わる前後、それぞれ最大2ヶ月間は、旧税率か新税率どちらかに基づく総額表示でもよいという経過措置が用意されます。夜間の値札貼り替えが間に合わなかったり、商品パッケージに価格が印字されていたりするケースを想定した措置です。ただし、実際の支払額と誤解されないよう、表示の仕方に一定の工夫が求められます。

また、令和9年4月以降の中間申告についても、新税率で計算し直した前年ベースの税額をもとに記載できる特例が用意されています。納付税額が減る事業者が、中間申告のタイミングで払いすぎてしまわないようにという配慮です。

7. 店舗が今から準備できること

制度の細かい部分がまだ固まっていなくても、今のうちから始められる準備はあります。

  • 自社の取引先が課税事業者か免税事業者かを確認し、インボイス対応状況を整理する
  • 商品マスタの税区分を、1%・8%・10%の3区分に沿って棚卸しする
  • 顧問税理士と、簡易課税・本則課税どちらを選択すべきか、大綱の特例措置を踏まえて相談する
  • 請求書・レシートのフォーマットが新しい税率表記に対応しているか確認する

レジやシステム側の具体的な設定手順、レジのタイプ別の対応期間・費用については、別途公開予定の記事で詳しく解説します。

8. まとめ

2027年4月からの消費税減税(1%)は、レジの税率設定だけにとどまらず、軽減税率や免税事業者、インボイス制度とも深く関わってくる制度変更です。

特に免税事業者・簡易課税事業者にとっては、売上と仕入の税率ギャップによる負担が生じる可能性がありますが、2026年9月の大綱では簡易課税の仕入控除税額の特例や、本則課税への切り替えを後押しする届出の緩和など、具体的な対応策も示されました。

制度の詳細は今後の法案審議で変わることもあるため、最新情報を確認しながら、取引先の状況整理や請求書フォーマットのチェックなど、今できる準備から進めていきましょう。

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