高輪ゲートウェイ駅の無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」が目指すのは省人化
2020年3月14日に開業したJR山手線、京浜東北線の新駅高輪ゲートウェイ駅。山手線の新駅設置が約半世紀ぶりというだけでなく、警備や清掃、施設案内をするロボット、AIチャットを活用したサイネージなど、最先端技術の実証実験の場としても話題となっています。
そしてもう一つ注目を集めているのが3月23日にサービス開始する無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」です。
開店に先駆けてTOUCH TO GOが報道関係者向けに公開されました。
消費者にはウォークスルーでの次世代お買い物体験を、小売店舗には新しい省人化のシステムを提供するTOUCH TO GOのサービスとは?
これまでの2回の実証実験との違いや、今後の展望などをまとめました。
目次:
- 無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」の概要
- 商品は手に取るだけ!次世代お買い物体験
- 実証実験との違い、TOUCH TO GOの進化
- サブスクリプションサービスを小売企業に提供予定
- TOUCH TO GOが目指すのは「省人化」
無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」の概要
高輪ゲートウェイ駅の改札内、2階部分に設置された無人AI決済店舗は、JR東日本スタートアップ株式会社とサインポスト株式会社の合弁会社である株式会社TOUCH TO GO(以下TTG)が開発を進めているものです。
2017年11月に大宮駅、2018年10月に赤羽駅で段階的に実証実験が行われてきた同プロジェクトは、高輪ゲートウェイ駅の店舗が実用化第一号店となります。
「ウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗」で、店内のカメラなどで入店した人と手に取った商品を認識し、決済エリアでタッチパネルディスプレイを操作、交通系ICカードで決済して退店するという流れになっています。
TTGは、「無人AI決済店舗のシステムをサブスクリプションサービスとして提供し、小売店舗が抱える労働力不足などの課題解決を目指す」としています。これまでの実証実験を踏まえたサービスの実用化といえるでしょう。
商品は手に取るだけ!次世代お買い物体験
無人AI決済店舗に入ると、床面に矢印があり、自動ゲートを通って商品陳列棚の方へ誘導されるようになっています。
ゲートをくぐることでカメラが「買い物客」と認識し、商品を手に取るだけでなく袋に入れても追尾しています。
天井には約50台のカメラやセンサーがずらりと並び、買い物客を見守ります。
店舗内は一方通行風になっていますが、ゲートを通った後は自由に行ったり来たりできます。棚には菓子類やソフトドリンクの他、TOUCH TO GOのオリジナル商品、弁当やサンドイッチなどが並んでいます。大宮や赤羽の店舗同様、NEWDAYS、紀伊国屋の商品です。
棚には重量センサーも組み込まれているとのこと。
そして、年齢確認が必要な酒類も購入可能となっていました。
商品を選んだら、決済スペースに行って表示された商品内容を確認します。
酒類購入にともない、年齢確認を行う様子です。
夜間無人店舗の実証実験をおこなったローソンの事例では、「酒類やタバコなどの年齢確認が必要な商品は販売しない」ことで対策していましたが、TOUCH TO GOではバックヤードのスタッフがモニターで確認するフローになっています。
正式オープン前のためか、年齢確認には思ったより時間がかかっていました。
交通系ICカードを端末にタッチして、決済完了。決済後、ゲートが開いて退店します。
酒類以外を買う場合、スマートにいけば1分以内に退店も可能でしょう。
決済は3月現在交通系ICカードのみですが、TTGの代表取締役社長阿久津智紀氏は「6月頃にはクレジットカードにも対応したい」としています。
また、ゲートの外には交通系ICカードで支払いができるコーヒーメーカーがあり、セルフサービスでコーヒーも買えるようになっています。
実証実験との違い、TOUCH TO GOの進化
利便性の高さ
大宮の実証実験の際も感じたメリットですが、アプリなどの事前登録がないため、利用のハードルは非常に低く利便性が高いと感じます。交通系ICカードを持っていて、決済金額がチャージされていればスムーズに買い物ができます。
Amazon GOの場合はまずAmazonのアカウントを持っていることが前提となっており、クレジットカード決済によるウォークスルー型店舗でした。
クレジットカードを持つことのできない人に対しての差別であるとして、現金決済レジを設置するなど開業時に比べると活用のハードルは下がってきていますが、Amazon GOの開発コンセプトからは若干ずれる形となっています。
認識精度の向上
大宮では一度に入店可能な人数は1人、赤羽では3人でした。高輪ゲートウェイでは大幅に増加し、10人までは同時入店可能ということで、カメラ等の認識精度が向上していることが伺えます。
入店ゲートは一人ずつ通るように促し、重なり合って商品を取るなどして認識できなかった商品は、決済時に店舗スタッフやコールセンター(札幌)での対応となるということです。
店舗オペレーションの改善
商品補充時のシステム停止がないことも実証実験時から進化したところでしょう。入店時にゲートを通るのが買い物客、バックヤードから出入りするのがスタッフ、という区別をつけることでシステムを止めずに商品を補充できます。
また、赤羽の実証実験では、決済時にレシートが出力され、商品が正しく認識されていなかった場合は店外のスタッフに申し出る形でしたが、高輪ゲートウェイでは決済前に購入商品の確認をモニターで行えるため、返金処理などの手間が低減されています。
サブスクリプションサービスを小売企業に提供予定
TTGの阿久津氏は「一人分の人件費ぐらいのイニシャルコストで始められるサブスクリプションサービスを、時期は未定だが提供したいと考えている」と語り、現在の小売流通業界が抱える労働力不足という課題を解決するソリューションであるとしています。
通常はレジ対応などで2~3人必要な店舗でも、品出しや年齢確認を行うスタッフ1名でオペレーションを行い、コールセンターでの遠隔対応により多店舗展開の場合でも少人数で運営できるでしょう。
高輪ゲートウェイ駅の一号店はショールームの役割もあり、床面積、店舗規模も大きめとなっていますが、主に狭小店舗での導入を想定しているとのことです。
TOUCH TO GOが目指すのは「省人化」
TOUCH TO GOは無人店舗ではなく「無人AI決済店舗」と謳われています。部分的な無人化を実現した店舗であり、店舗スタッフの業務負担を低減したうえで、利用客の購買体験の品質が向上する店舗であるということです。
目的として「無人店舗を作る」のではなく、その先に表れる効果を目的として開発が進むことを期待します。