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「オムニチャネルの先駆者」が本当に考えていること、やっていること 〜コメ兵 藤原義昭氏〜【後編】

人工知能を活用して、ブランド品の真贋判定を行う「AI真贋」の開発やブランド品特化型CtoCプラットフォーム「KANTE」など、先進的な取り組みでブランドリユース業界のトップを走る「コメ兵」。その中心で同社のマーケティング活動を束ねるマーケティング統括部長・藤原義昭氏は、国内におけるオムニチャネルの先駆者として、本業の傍ら専門メディアでの連載や各種講演にも引く手数多です。

そんなこれからのリテール業界の重要人物は、普段何を考え、どのような視野で日々のビジネスを見ているのでしょうか。エスキュービズムのITコンサルタント・梅木が、藤原氏のマーケティング観から組織の在り方、外部パートナーとプロジェクトを進める上でのポイントなど、あらゆる角度から徹底解剖しました。

後編目次

1.「効果がわからない」のは甘え、KPIをどう作るかを考えるべき
2.自分だけが成績を上げても褒められない組織
3.新しい施策に最初からKPIを設定するのはナンセンス
4.アジャイルが最高、ただしコストが見通せる場合

前編はこちら

スピーカープロフィール

藤原 義昭(ふじはら よしあき)
1974年愛知県名古屋市生まれ。南山大学卒業後、2012年にビジネス・ブレークスルー大学院MBAを取得。1999年4月、株式会社コメ兵入社、ジュエリー部門の鑑定査定業務、商品仕入を担当。2000年にECサイトの立ち上げに携わり、2010年にはデジタルマーケティング、Eコマース事業を行うWEB事業部の新設立部長に就任。2014年、システム全般を統括するIT事業部に業務範囲を拡大後、2016年に全社のマーケティング(リアル、WEB・システム)を統括する執行役員へ就任。「オムニチャネル戦略」を推進しながら、スピーディな全社の事業推進を行なっている。
梅木 研二(うめき けんじ)
1977年福岡県生まれ。長崎大学経済学部卒業後、伊藤忠テクノソリューションズ入社。
一貫して、流通小売業向けのシステム開発に営業として携わる。富士ソフト在籍時は、大規模Eコマースシステム開発に営業として従事、富士ソフト子会社のVINXにてオムニチャネルシステムの企画・支援の立ち上げに参画。2016年にエスキュービズム入社、2018年に取締役就任。

「効果がわからない」のは甘え、KPIをどう作るかを考えるべき

梅木:今御社が抱えている課題にはどんなことがありますか?

藤原:リユース業も競争が激しくなってきているので、今以上にお客様がモノを売ろうと思った時に弊社を思い出してもらうことが一番重要です。それこそCtoCも含めていろんな選択肢がある中で、お客様の中で想起される選択肢の三つ以内ぐらいに入らなければいけません。マーケティングでいうと認知から想起でしょうね。

梅木:そのために特に今力を入れて取り組んでいることってありますか?

藤原:やっていることは昔からずっと一緒なんです。店舗を綺麗に造って、テレビCMで認知していただいて、来店された時にがっかりされない、接客にもがっかりされないようにして、2回目3回目も使ってもらうということです。ただ、その手段が多様化しているので、PDCAを回す時にROIを見て、成果が出ているところに投資するという、マーケティング予算の振り分け方の問題でしょうね。

梅木:その中で、昔と明らかに変わったところはなんですか?

藤原:今言ったようにソリューションが多様化していますから、予算の振り分け項目を少し細かく設定して、デジタルの何々に使う、とか、かなり細かく見ていますね。

梅木:紙とデジタルの使い分け方は、どう検証されていますか?

藤原:まずは、昔からやっている手法の検証ですね。次に「他の手法と比べて」という横軸で比べる。広告宣伝費は無限ではないですから、期が締まった時に、今年はここにいくら投下して、そこからどれぐらい買取ができたか、どのぐらい販売に繋がって、お客様が維持できたかというところを、まずは大きな視点で見ますね。さらにそこから深掘りした時に、それぞれ「これは良かったんだけど、どうしたらもっと良くできるか」とか、「これは悪かったんだけど、どんな理由で悪かったのか」を考えます。悪い理由にも色々あるじゃないですか。クリエイティブかもしれないし、タイミングかもしれない。DMだったら紙のサイズかもしれない。

梅木:紙だとよく「数値が取れない」といった話がありますよね。チラシを実施しても「効果がわかりません」みたいな。

藤原:昔でいうとCMなんかもそうでしたけど、それって甘えでしかなくて、会社の中でどうやってそのKPIを作るかだけの話なんですよね。それを時間軸でずっと見ていって、上がったのか下がったのか、下がったならそれは何故なのか、上がった理由はなんだったのかを検証する。小さくてもいいから、とにかく始めてだんだん大きくしていくという活動をし続けるべきです。一番いけないのは、ロジックがない施策です。それではお客様は来店しません。

自分だけが成績を上げても褒められない組織

梅木:御社では組織を横断して、いろんなチャネルを跨いだ効果検証というのをやり続けているのですか?

藤原:はい。私が統括しているチームではデジタルも紙もあるので、分断しないように横串で全部見られるようにしています。

梅木:そこには当然、店舗運営のKPIを持っている方達も絡むと思いますが、そこも含めて横串で見て最適なチャネルで最適な施策を打つ、というやり方は全社的に仕組み化されているのですか?

藤原:そうです。私達が営業として評価されるのはやっぱり営業利益なのですが、結局それってコストも売上も仕入れも、みんなが協力しないと作れないんですよ。なのでみんなが同じKPIを追っています。あと、弊社では自分だけが成績を上げても褒められないですね。

梅木:それはわかりやすい(笑)

藤原:結構シンプルなんですよ。分化して、部署ごとに利益を守ろうとするというのがないので。

梅木:組織間の壁を取り払った上の連携があるからこそ、現場でも風通しがいい組織になっているのでしょうね。

藤原:そうですね。でも現場は大変ですけどね。上が連携したところから全部話がおりてくるので。要はボスが一人だけじゃない、という感覚なんです。なので、現場に働きやすい環境をどう提供するか、というところも重要な課題ですね。単純にCXだけじゃなくて、EX(従業員満足度)が必要です。結局従業員が面倒臭かったら協力してくれないわけですよ。だからそれがすんなりとできて、お客様も喜んで、自分も評価される、みたいなところは設計すべきだと思っています。

梅木:御社は先進的なテクノロジーやサービスの取り組みに力を入れている企業と思っていたんですが、根本的に接客業としての普遍的な在り方というものを追求しているんだということを改めて認識しました。テクノロジーはあくまで利便性とか生産性向上のための「手段の一つ」でしかないという。

藤原:私はお客様と直接接することはありません。でもお客様に対して誠実に接するという姿勢は、会社のDNAを引き継いでいます。

梅木:DNAの継承となると、組織が大きくなればなるほど難しいと思うのですが、社員にそれを伝えるためにやっていることはありますか?

藤原:いえ、「大切だぞ」とはあえて言ってないですね。私たちはいわゆる小売業なので、お客様の来店なくしては売上はたちません。そこで真摯にお客様とコミュニケーションを取っていれば自ずと誠実な対応になっていくんじゃないかと思いますけどね。

梅木:御社が取り組まれているデジタル施策やITの機能も、全てお客様に対して誠実に接するというDNAに基づいているわけですね。

藤原:今あるアセットをどうやって使ってお客様との関係性を作るかに集中した方が生産性が高いと思っています。

新しい施策に最初からKPIを設定するのはナンセンス

梅木:そういう意味では、流通小売業のトレンドとしてセルフレジとか無人店舗というキーワードが必ず出てくるのですが、御社としてはその辺りに魅力は感じないですか?

藤原:いや、そんなことはないですよ。仮にお客様がそれを望んでいるのであれば、提供した方がいいと思います。例えばバーキンをセルフレジでは買わないかもしれませんが、800円のピアスなら「セルフで買いたい」となるかもしれません。それはお客様のニーズ次第だと思いますね。コストを下げるために物流倉庫でロボットを入れるのとは違うので、お客様側に、早く買いたいとか、レジに並びたくないという要望があるのであれば、無人レジも「おもてなし」の方法だと思います。

梅木:いわゆる「省力化」とは明らかに考え方の出発点が違うわけですね。

藤原:そうです。品川駅の新幹線の手前にあるセルフレジでお弁当が買えるのとか最高ですよね。やっぱりそれは時間を縮めてあげることがお客様へのバリューとなっているからで、そのバリューを必要としている人がいるなら提供する方法を考えることが大切だなと。

梅木:藤原さんは各業種の著名な方々と対談される機会も多いですが、みなさんが至る結論も「色々な施策やテクノロジーをどう使うかは、お客様のニーズ次第である」といったところでしょうか?それぞれ抱えている課題は違うと思うのですが。

藤原:結局お客様のインサイトが重要なので、世の中が求めていること、一人の生活者が求めていることを解決するというのが、みなさんスタート地点になっていますね。単純にアテンションが取れるからこんな施策をやりましたというのは続かないでしょうし、再現性もないですから。でも、逆説的ですが、施策って始めるときは「面白いじゃん」でいいと思うんですよ。考えすぎてやらないよりは、まずやってみて、そこでちゃんとマッチするかどうかの数を増やせるかとスピード感が大事です。

梅木:最初からKPIをガチガチに固めて運用をすると「面白い」という発想が削がれると。

藤原:最終的にビジネスに落としていくときはKPIを設定して効果検証できるようにするのは当然なんですけど、初めからKPIを設定するのはナンセンスだと思います。それよりはお客様が喜ぶよ、とか、こんなことがあれば面白いんじゃない?から始めた方が絶対世の中のためになります。

アジャイルが最高、ただしコストが見通せる場合

梅木:御社の20~30代の若手、デジタルネイティブな世代は、新しい施策アイデアを出したり、いろんなシーンで主役になりつつある感じはありますか?

藤原:ちらほらありますね。20~30代の新しい考え方に期待しています。ただ、SNSは私が一番使っているんじゃないかな、という感覚もあります。TikTokは見るだけですけど(笑)これって結構大事で、感覚的には20代の方がデジタルネイティブだと思いますが、だから40代にはわからないというのは言い訳で、いや、まずやってみなさいよと思うんですよね。

梅木:我々のような世代ももっとデジタルを使いこなして、ビジネスの世界では20~30代よりも長く過ごしているぶん、もっと違う切り口で色々考えられるだろうと。

藤原:そうですね。一般的に言われているようなことを真に受けて、20代とは、とか言ってても意味がないので、自分がどういう風に行動するかが全てですね。

梅木:IT業界と事業者さん側で全く違うのがそこなんですよ。SNSやいろんなアプリのように変化のスピードが早いものに対してアレルギー体質があるというか、苦手意識を持っている人も多いと感じます。

藤原:なるほど。世の中に出すサービスって、生活者が許容してくれる範囲であれば、早めに出して、フィードバックをもらって、改善を繰り返す方が絶対にいいと思います。

正直なところ、弊社にも同じような課題はありますよ。小売業としてのプライドがあるので、サービスがこうでなきゃいけないというレベル感に達していないと妥協できなかったり。でも、それをいち早くリリースしてみて、改善して、最終的にお客様に喜んでいただければそれでいいと思うんですよね。

梅木:ベンダー側と事業者さん側がいかに強固なワンチームになれるかがポイントですね。いろんな制約がある中で落とし所を見つけて、スピードアップするという点においては。

藤原:そうですね。多分アジャイル開発が最高だとは思うんですけど、コストがかかるのと、先が見えなくなるので、ちゃんとストーリーが描けていて、最終的にはここを目指すことにコミットします、いつまでに、というのがあるといいでしょうね。結局コストがかかり続けるかもしれないというのが、事業者側からすると一番ドキドキするポイントなので。

梅木:ワンチーム化というのは私たちも課題としているところなので、今日のお話も教訓にさせていただきます。ありがとうございました。

藤原:こちらこそ、ありがとうございました。

前編はこちら

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