消費者の買い物体験を高めるインストアテクノロジーとは?
テクノロジーの進化に関するニュースは毎日のように私たちの目や耳に入ります。VRやAR, AI, IoTといった最新テクノロジー技術はどの分野においても新しい体験や仕事の効率化を促すものとして期待されています。
小売業界でも最新テクノロジー技術を駆使した販売形態が注目を集めています。
最新技術を利用した商品の販売形態は『インストアテクノロジー』と呼ばれています。インストアテクノロジーは顧客の買い物体験をより高め、企業の売上を伸ばすことができます。
インストアテクノロジーでは一体どのような技術が活用されているのでしょうか。
以下ではインストアテクノロジーの例をいくつか紹介していきたいと思います。
スタートトゥデイが手がけるZOZO SUIT
アパレルECサイト「ZOZO TOWN」を運営するスタートトゥデイは、2017年に『ZOZO SUIT(ゾゾスーツ)』を発表して一躍話題となりました。
ZOZO SUITがなぜ話題になったかというと、体のサイズを採寸する伸縮スーツを身につけることでユーザの体型を正確に把握することを可能にしたからです。
ZOZO SUITで採寸をおこなうと、以下のような機能を利用することができます。
- オーダーメイド…自分に合った服をオンラインから注文
- おまかせ定期便…自分の好みに合った服のコーディネート提案
- 自分サイズ検索…サイズが合う服のみ検索に表示される
これによって利用者はネット通販におこりがちな「サイズが合わない」という問題を解消することができます。
実店舗がないECサイトにとって、特にアパレル商品を多く扱うECサイトは試着ができないことが大きなネックでした。実際に商品が届いて身につけてみるとイメージと違ったりサイズが合わなかったりという問題がしばしば起こるからです。
しかしZOZO SUITのような最新技術を取り入れることはユーザの買い物体験をより高めるために企業に対するロイヤリティが高まり、ひいては売上を上げる効果があります。
参考:ZOZOスーツなどのバーチャル試着がECサイトにもたらすメリット
ロレアルパリの「Makeup Genius」や台湾発「YouCam」で簡単にメイクを“試着”
アパレルECサイトや実店舗では服のバーチャル試着ができるインストアテクノロジーが発達していますが、コスメ業界でも同じ動きが見られます。
化粧品は実際に使ってみないと使用した色や質感がわからないため、化粧品カウンターに行ってコスメを試すかドラッグストアなどで試供品を試すという方が多いと思います。しかし自分に合う色を見つけるのは難しく、多くのコスメを試していると途方もない時間がかかり、肌にもよくありません。
近年はコスメをスマホアプリで『試用』することができ、気に入ったらそのままサイトから商品を購入することができる仕組みのものが続々と出てきています。
ロレアルパリの「Makeup Genius」
ロレアルパリはMakeup Geniusというアプリをリリースしています。
このアプリのなかでは、カメラで自分の顔を写すことによって同社の販売している商品を実際に使用したように見せることができます。アプリ内では流行のメイクアップを全て試すことが可能で、これらの機能は全て無料かつ多言語対応しており、実店舗のように販売員も必要ありません。
台湾発の「YouCam」
また、最近では台湾で話題のメイクアプリ「YouCam」も人気です。YouCamでも気に入った商品をアプリ内で購入することができます。Makeup Geniusと同じくカメラで自分の顔を写してメイクアップを疑似体験することが可能です。
これらのアプリは実店舗を用意しなくても商品が販売できるプラットフォームで、化粧品カウンターに行きたくてもなかなか行けない人の悩みを解消してくれます。また商品をひとつずつ試さなくても使用後が目に見え、さらにそのクオリティも高いことからユーザの利便性と購買意欲を高める点で高く評価できます。
サイネージを活用した実店舗のインストアテクノロジー
以上はECサイトでのインストアテクノロジーについてご紹介しましたが、実店舗において活用できるインストアテクノロジーももちろんあります。
実店舗で買い物をするメリットは、顧客が商品をより詳細に見ることができるのと欲しいものをすぐに手に入れることができるという即時性です。これらはいくらECサイトが努力しても実店舗には劣る部分でしょう。
実店舗ではAR(Augmented Reality:拡張現実)と呼ばれる技術を活用した「スマートミラー」と呼ばれるものを活用したり、サイネージで来店客の姿を写し着用後のイメージを与えるものがあります。
ARはスマホやタブレット、サイネージといったデバイスを通すことで、人の目に見えている空間にプラスして表示させたいものを組み合わせることでリアリティを高める技術です。
フレイバ・プロジェクツと加賀電子が共同開発したサイネージミラー「MIRROR-AI(ミライ)」
フレイバ・プロジェクツと加賀電子は「MIRROR-AI(ミライ)」と呼ばれるサイネージミラーを共同開発しました。
このMIRROR-AIは広告を表示することも可能ですが、来店客が画面に触れることによって知りたい情報にアクセスすることができます。また、広告だけではなく鏡としての機能も担います。今後MIRROR-AIはさらにAI(人工知能)・SNS連動・iBeaconの導入・EC連動・広告連動を目指して開発が進められています。
MIRROR-AIはこれまでに服飾販売のAMERICAN RAG CIEやオンワード樫山のSHARE PARKなどの一部の店舗で導入された実績があります。
参考:YouTube、『MIRROR-AI(ミライ)』業界初タッチスクリーン式ミラー×デジタルサイネージ イメージ②
https://www.youtube.com/watch?v=AuCmf-lGSqY
他にも、ビーコンを活用したインストアテクノロジーで実店舗マーケティングも行われています。
ビーコンとは:スマートフォンと連動するインストアテクノロジーへの応用もぜひご覧ください。
実店舗とECサイトを連動することで売上アップの可能性も
近年は実店舗とECサイト両方を運営するような企業も珍しくありません。
最新テクノロジーを駆使することによって実店舗・ECサイト双方で効率的に商品を販売するための連携をおこなっている企業も徐々に増えてきています。
2017年11月にはららぽーとなどの大型ショッピング施設を運営している三井不動産がECサイト「& Mall(アンドモール)」の立ち上げを発表しました。実店舗とECサイトでシームレスな連携をおこなうことによって、どちらの販売形態でも商品を簡単に・かつ便利に購入することができる仕組みを作りました。例えば、実店舗とECサイトでこのような連携をおこなうことができます。
- ECサイトと実店舗両方で三井ショッピングパークカード《セゾン》を使うことでポイントが貯まり、貯まったポイントを店舗とECサイトで使うことができる
- 実店舗で欲しい商品の在庫がなくても、スタッフがその場で在庫状況を確認し後日自宅に届けることも可能(一部店舗のみ)
- ECサイトで商品情報を見た後、実店舗で実際に現物を見て購入したり、実店舗で気になった商品を後日ECサイトで購入することも可能
- 3000円以上購入で送料無料
出典:実店舗がECサイトに参入する理由~三井不動産、セブン&アイなどの事例から探る~
このように、実店舗・ECサイトのどちらからでも確実に売上が上がるような仕組みを用意することは消費者の利便性を高め買い物体験をより良いものにしてくれます。
まとめ
以上、ECサイトと実店舗で活用することができるインストアテクノロジーの例について紹介しました。
ユーザの買い物体験をより高めるために、ECサイトや実店舗向けに現在様々なインストアテクノロジーの開発が進んでいます。今回紹介した技術は一部ですが、これからもますます便利なテクノロジーが登場することになるでしょう。
「良い商品があれば人はその商品を買いたくなる」と売り手目線だけで見るのではなく、「消費者はどのようにして/どのような手段を用いて商品を買いたくなるのか」という買い手の目線も売上を上げていくためには必要です。
そのためにインストアテクノロジーを活用することでより消費者の買い物体験を高めていくことも売上を上げるための手段のひとつです。