サブスクリプション化がもたらす飲食店の未来
- サブスクリプションの本来の意味は予約金、予約購読など。一定期間、継続的に受け取る商品やサービスに対して対価を払うシステムである。
- 飲食店以外のサブスクリプションでは、雑誌の定期購読や商品の頒布会などがポピュラー。音楽や動画の定額見放題サービスもサブスクリプションの一種である。
- 飲食店におけるサブスクリプション化は、指紋認証やアプリなど、さまざまなテクノロジーを活用しておこなわれる。
- サブスクリプション化の最大のメリットは、安定収益。
サブスクリプションとは
サブスクリプション(Subscription)には、本来、「予約金」や「予約購読」という意味があります。つまりサブスクリプションとは、消費者が一時的に購入するためにお金を支払うのではなく、一定期間使い続けたり、商品を継続的に購入し続けるスタイルをいいます。
消費者にとっては「定期購入」、「一定期間レンタル」への支払いという解釈の方がイメージしやすいかもしれません。
本記事のテーマである「飲食店のサブスクリプション化」について解説する前に、まずは従来の主なサブスクリプションの事例からみてみましょう。
サブスクリプションの主な事例
「サブスクリプション」という言葉は新しく聞こえるかもしれませんが、雑誌の定期購読や頒布会など、同じようなシステムは以前から存在していました。
コスメサンプルを毎月試せるBLOOM BOX
毎月定額でコスメサンプルの詰め合わせを購入できる「BLOOM BOX(ブルーム・ボックス)」。これは化粧品のショッピングサイト「@cosme shopping」が運営している、頒布会に近い形態のサブスクリプション・サービスです。
さまざまなブランドの化粧品を手ごろな価格で試せるとあって、コスメ好きの女性から支持されています。
音楽ダウンロードサービス
「Apple Music」や「Google Play Music」、「LINE Music」といった定額料金で配信されている音楽を好きなだけ聴けるサービスも、サブスクリプション・サービスに該当します。これらは1ヶ月ごとに利用料金を支払うことで、時間や曲数の制限なく音楽を視聴できるサービスです。
動画配信サービス
この動画版にあたる「Amazonプライム・ビデオ」や「Netflix」といった定額制のサービスでは、映画やアニメといったコンテンツを決まった料金で好きなだけ視聴することができます。
サブスクリプション化した飲食店の事例
異業種のサブスクリプションについて知ったところで、現在おこなわれている飲食店のサブスクリプションについても事例をみてみましょう。
事例1:カフェ「ALPHA BETA COFFEE CLUB」
サブスクリプション型カフェ「ALPHA BETA COFFEE CLUB(アルファ・ベータ・コーヒー・クラブ)」は、自由が丘のコーヒーショップです。ここでは、スペシャルメンバーパスを月額7,500円を購入することで、好きなだけコーヒーを飲むことができます。
なお、コーヒー以外の飲み物(ジュースやアルコール)、及びランチメニューは別途購入する必要あり。店舗側は、これらをコーヒーと一緒に注文してもらうことで売上をアップさせるというわけです。
事例2:サブスクリプション型ワインバー「Provision」
六本木のフレンチワインバー「Provision」は、何度来店しても月額料金のみで飲食ができるという形態のレストランです。会員1人の利用なら月額15,000円で、4名までの利用なら30,000円でサービスを利用できます。
路地裏という隠れ家的な立地と、入店のために指紋登録をするというプレミア感で、最先端のサービス演出しているのが特徴です。
事例3:年齢制限ありのサブスクリプション化「野郎ラーメン」
関東に展開するラーメンチェーン「野郎ラーメン」は、スマホアプリを使ったサブスクリプション型のサービスを実施しています。
iOS、Android対応版が同時リリースされた「野郎ラーメンアプリ」では、月額8,600円でラーメンが1日1杯無料。18〜38歳限定と年齢制限がついているのが特徴です。
月額料金を支払って選べるラーメンは「豚骨野郎」、「汁無し野郎」、「味噌野郎」の3種類で価格は780〜880円。 12杯以上食べれば元がとれるという触れ込みです。このサービスはアプリの優待特典第一弾として発表されたもので、今後も新商品の情報や特典などを配信予定とのこと。
このサブスクリプション・サービス、店舗にとってはアプリで登録情報を取得することによって、ユーザーの行動や嗜好といったデータを取得できるメリットがあります。またアプリの利用は、現場における確認や支払いの手間を省くことにもつながります。チェーン店ならではのシステム構築といえるでしょう。
飲食店のサブスクリプション化のメリット・デメリット比較
サブスクリプション化のメリット
サブスクリプションは、ストック型。つまり毎月、安定した収益を得ることが期待できる販売方法です。それゆえ、仕入れや仕込みの予測が立てやすく、コストや食材の無駄を減らすことができます。
また、毎日の売上計算がかんたんになり、季節ごとや地域ごとのマーケティングがいらなくなる可能性も高くなります。
サブスクリプション化のデメリット
思ったように会員が集められなかったり、価格設定を間違えると、サブスクリプション化はうまくいきません。
特に、価格設定は重要です。サービスを受けるための会員価格が高すぎると、消費者は支払った金額に相当する飲食ができないと感じ、登録しない可能性があります。
反対に、サービスに対して安すぎる金額だと、消費者が利用すればするほど店舗側が損をすることになってしまい、運営が成り立たなくなる恐れがあります。サブスクリプション化した後のシミュレーションを綿密におこない、円滑に経営できるように計画を立てる必要があります。
サブスクリプション化の可能性
サブスクリプション化は、雑誌の定期購読、食材の定期配達便がよく知られています。これは、「毎月注文するのが面倒」、「いつも買うものだから一括で支払いたい」という消費者のニーズにも合致していたものでした。
今後は、こうしたニーズが飲食店にも展開できると考えられます。特に、オフィス街のランチや、チェーン展開しているカフェ、ファミレスなどは、サブスクリプションによって店舗、消費者の双方がより便利に利用できる可能性があります。
まとめ
飲食店のサブスクリプション化は、まだスタートしたばかり。システムやサービス内容については、今後新たなスタイルがどんどん登場するのではないかと考えられます。
小規模店だからこそできること、チェーン店ならではのスムーズなシステムなど、店舗の形態に合わせたシステム構築が快適なサブスクリプション化の要といえるのではないでしょうか。