グッドマンの法則を心底信じられるか?苦情はビジネスチャンスへの分岐点
「ビジネスで成功するには顧客を大事にしなければいけない」
ということは、ビジネスを行う方には痛いほどわかっていることでしょう。
では、顧客側はどうすれば「大事にされている」と思ってくれるのでしょうか。
顧客の心の中は結局わかりません。良かれと思って行った施策が、顧客には大迷惑であり、クレームとなる可能性もあります。そしてクレームを恐れた経営者は身動きが取れなくなることも。
これは、よくある失敗ケースですが「クレーム=悪」と決めてしまうために、このプロセスが生まれます。「クレーム=良」と決めつけてしまえば、このプロセスは良きプロセスへと反転します。
- グッドマンの法則は優良顧客を獲得するヒントとなるかもしれない
- グッドマンの法則は3つの法則から成り立っている
- 苦情は宝と言う考えがベースだが、苦情は扱い方次第でプラスにもマイナスにもなる
- グッドマンの法則に倣うならば企業側は苦情受入れ窓口やスタッフ、さらに情報発信ツールの整備が必要である
- 苦情は宝と思えるかがターニングポイントである
2:8の法則
お客様のうち、2割のお客様が8割の売上に貢献し、8割のお客様が2割の売上に貢献しているという法則があります。「パレートの法則」です。
「パレートの法則」経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという理論。80:20の法則、ばらつきの法則とも呼ばれる。
出典:Wikipedia
2割の優良顧客が売上全体の8割に貢献している事実を考慮すると、ビジネスではいかに2割の優良顧客を獲得するかが成否の分かれ道となります。
これは決して簡単ではありませんが、もしかしたらそのヒントになるかもしれない法則を1つお伝えします。
それが「グッドマンの法則」です。
グッドマンの法則とは
グッドマンの法則の名前にもなっているグッドマン氏は、アメリカで消費者苦情処理調査をしていた経営コンサルタントです。このグッドマン氏が豊富な経験と調査によって導き出した法則が「グッドマンの法則」です。
グッドマンの法則は顧客を客観視する上で大変興味深いです。
三つの法則から構成されていますが、ザックリ言えば「苦情は宝」ということです。
第一の法則
「不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品サービスの再入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い」
不満を持った顧客のうち、苦情を申し立てる顧客と申し立てない顧客では、どちらが不満レベルは高いでしょうか。おそらく、苦情を申し立てる顧客だと思います。
にもかかわらず、その苦情をしっかりと解決してあげれば、苦情を申し立てない顧客より再入決定率は高くなります。
苦情の解決により、後の不満レベルは逆転するのです。
苦情により不満を吐き出す
不満を持つ多くの顧客は、不満を吐き出そうとしません。しかし企業にとってそれはネガティブな感情を持たれ続けてしまうことを意味します。
このような顧客は、将来的には批判者となりネガティブな口コミに発するようになります。
そうさせないためにも、苦情を受け入れやすい環境を整備して不満のはけ口を作りましょう。
真摯な対応を見せられる
苦情を受けたことで企業としては顧客と直接接点を持つ機会ができます。さらに言えば、顧客に対して、苦情処理という形で真摯な対応を見せる機会ができるのです。苦情のない不満を持つ顧客にはその機会さえありません。
第二の法則
「苦情処理に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、二倍も強く影響を与える。」
第一の法則では、最も不満を持つ顧客が苦情処理次第で良き顧客に変貌する趣旨の内容を書きましたが、万が一、苦情処理に失敗した場合は、相当な覚悟をしておいた方がよさそうです。
そもそもポジティブな口コミよりネガティブな口コミの方が広がりやすいのは世の常です。ネガティブな口コミはポジティブな口コミの2倍の影響力を持ちます。
不満を抱いて苦情を申し立て、さらに不満を抱いたとなると、顧客の不満は沸点に達します。
環境の変化でネガティブ口コミが出やすい
もともと日本人は不満があってもあまり口には出さず、心の中でぐっとしまいこんでおく傾向がありました。
「本当は苦情を言いたいが、苦情を言うのはみっともない」という感情を日本人は誰でも持っているからです。
しかしインターネット登場で匿名口コミが可能となったことで周りの目を気にせず、感情のままに情報発信できてしまうようになりました。
SNSでスピードアップ
現代の環境では、SNSのボタン一つで情報はネット版口コミとなって瞬く間に広がります。グッドマンの法則が提唱されたのはSNSが登場するずっと前です。
そう考えると今は2倍どころでは済まないかもしれません。ネガティブな口コミはSNSを通じてポジティブ口コミの何倍もの速度で広がります。
第三の法則
「企業の行う消費者教育によって、その企業に対する消費者の信頼度が高まり好意的な口コミの波及効果が期待されるばかりか、商品購入意図が高まり、かつ市場拡大に貢献する」
情報過多のこの時代、消費者は「いいな」と思った商品だとしてもすぐに購入することはありません。なぜならネット検索すれば他にも同じような商品が見つかることをしているからです。商品が良いだけでは買われない時代になっているのです。
見込み客を消費者にする
消費者教育というのは、厳密には既存客の教育と顧客になっていない消費者の教育があります。既存客はすでに購入してくれた顧客なので少なからずサービスに関心を持ってくれています。
大事なのはまだ顧客になっていない消費者の教育(ナーチャリング/育成)です。
購入には至っていない消費者に対し、情報提供を繰り返しコツコツと行い、真摯な姿勢を示し続ければいずれ顧客になってくれるでしょう。
そして、時間をかけて教育した顧客はすでにそのサービスのファンになっている可能性があり、発信する情報も好意的な内容が多いため、見込み客をさらに呼び込んでくれます。
何を買うかより誰から買うか
購買行動が変わり、消費者は何を買うかよりも誰から買うかに価値を置き始めました。モノそれ自体よりも、モノを伴った体験が今の消費者には好まれるようです。
経験の最たるものが誰から買ったかです。誰から買ったかは購買行動の重要な動機の1つです。
グッドマンの法則を実現するためにすべき施策
以上のように、苦情は使い用によっては毒にも薬にもなります。苦情を薬にするために心がけておきたい3つのポイントを紹介します。
1.問い合わせ先を分かりやすく
顧客が苦情を言える場所を用意しておくことが最優先で大事です。溜まった不満を吐き出してもらいましょう。もちろん用意しておくだけではダメで知ってもらう必要があります。ホームページなどで見やすい位置に苦情窓口(名前は問い合わせ窓口などにした方がベター)を表示するなどして、苦情を受け入れる場所を明確に伝えましょう。
2.スタッフの教育を徹底
いざ苦情を受けた時の対応が重要です。苦情対応にミスをしてしまったら、第二の法則のように、ネガティブな口コミが拡大する恐れがあります。丁寧かつ、真摯に対応できるスタッフ教育を徹底しましょう。
3.ツールの整備と定期的な情報提供
第三の法則にあるように消費者教育は欠かせません。そのためには情報発信できるツール(ウェブサイト、SNS、メールマガジン)を整備して、定期的な情報提供を行ってください。消費者を自社のファンにして波及効果も狙いましょう。
グッドマンの法則を心底信じられるか
グッドマンの法則のベースには苦情が宝という考えがあります。苦情を上手に受け取れば、プラスにできるという考えです。
しかし、これは数々のデータを知っているグッドマン氏だから自信を持って言えるのであって、私たちはやはり苦情を恐れてしまいます。
苦情は少ない方が良いし、苦情が来ると嫌な気分になるのが普通ですが、そこが分岐点です。
いかにグッドマンの法則を心から信じられるか。苦情はビジネスチャンスと思えるか。
これができるようになれば、もしかしたら不満を持つ顧客を2:8の法則の2割に該当する優良顧客に昇華させられるかもしれません。