ウエアラブルPOS導入で店内どこでも決済可能なお店の誕生
ウエアラブルPOSは決済の利便性や店舗運営を大きく変える可能性を秘めています。日本ではまだ注目度が低い分野ですが、アメリカなどのIT先進国ではすでに小売業での導入が始まっています。ウエアラブルPOS導入で海外の決済手段は大きく変わり始めています。
- 決済手段の変化によりPOS端末は固定から非固定端末へ
- ウエアラブルPOSシステム導入によって、並行作業が可能になり、消費者はレジ待ちが不要になる
- ウエアラブルPOSのためにはハード面、ソフト面の進歩が重要である
- 固定POSとウエアラブルPOSで迷っているなら、断然ウエアラブルPOSを選択すべき
そもそもPOSシステムとは?
ウエアラブルPOSの前に簡単にPOSシステムについて触れてみたいと思います。
POSシステムとは日本語で販売時点情報管理と呼ばれています。購入した商品名、価格、商品数だけでなく、日付、時間帯、天気など様々な情報が購入時に一括管理できるシステムです。
各店舗から送信されるこれら情報は本部システムのデータベースに取り込まれるため本部では情報を分析して新たな経営戦略に活かすことができます。
決済手段の変化により変わり始めたPOSレジ端末
コンビニやドラッグストアのレジシステムは据え置き型POSレジです。元来、お店のPOSと言えば、あのどっしりとした据え置き型のPOSレジ端末が主流でした。
2000年代前半までの日本は現金決済がメインでしたので、セキュリティ面を考えると据え置き型POSレジ一択しか考えられませんでしたが、時代は常に変わっています。
ITシステムやECサイトなどソフトウエア技術の高度化により、現金以外の決済手段も大幅に増加し、現金決済の割合が減少したのです。クレジットカードによる決済だけでなく、昨今ではスマホ決済や電子マネー、交通系ICカード、ビットコイン決済なども増え始め、現金決済の比率は確実に低下の一途をたどっています。スマホ決済やビットコイン決済は昔ながらの据え置き型POSレジでは非対応な場合が多いので、POSレジ端末は据え置き型からタブレット端末を活用した非固定型に移行し始めています。
ウエアラブルPOSの魅力
非固定型POSの中で、注目を集め始めているPOSがあります。それがウエアラブルPOSです。ウエアラブルPOSとは、POSシステムが入っているウエアラブルデバイスの総称です。体に装着するデバイスのため、いつでも、どこでも決済が可能になります。
並行作業が可能になる
装着型デバイスなので、スタッフの両手は常に空いています。飲食店であれば、大きなハンディを手に持って注文処理をする必要がありましたが、ウエアラブルPOSは持ち運びに手を使わないので、並行作業が可能になります。
小売店であれば、棚に商品を出したり、接客をしたりしながら会計作業ができます。
また常に装着しているため、なくす心配もありません。
レジ待ち解消が期待できる
ウエアラブルPOSを導入すれば、レジ待ちを解消できるかもしれません。
お店には人で込み合う曜日や時間帯が決まっています。飲食店であればお昼時や週末の夜、洋服店であれば土日の日中にお客様が長蛇の列を作っています。
あまりにも列が長いと商品購入を諦めるお客様が一定数いますので、お店としては機会損失です。
しかしウエアラブルPOSを使えばウエアラブルPOSを持ったスタッフがお客様のもとに行き、決済をすることができます。お客様が購入したい商品コードをウエアラブルPOSで読み取って支払いをしてもらえば決済完了です。
クレジットカードやスマホ決済であればその場ですべて完了しますし、現金決済であればおつりが発生した場合に限ってレジスペースにおつりを取りに行けばよいのです。
外国人にも対応しやすい
日本に来る海外旅行者は年々爆発的に増えてきます。買い物目的で来日する方も多いようですが、必ずしも店員に外国語が分かるスタッフがいるとは限らないため、やり取りが煩雑ですし、レジの並び方が分からない外国人も大勢います。
しかしウエアラブルPOSはクレジットやスマホ決済なので、外国人にとっては母国での決済と変わらないため安心して決済することができます。会計をしたそうな外国人を見かけたら、レジに並ぶ前にスタッフが声をかけて、その場で決済してあげればよいので、外国人にとっても気が楽でしょう。
在庫確認が迅速になる
店舗側の視点からですが、ウエアラブルPOSは、リアルタイム情報の送受信ができるため、洋服店であれば売れている商品、売れてない商品、それぞれの在庫の現在の状況が即座に分かります。
今までは在庫確認のためにわざわざバックヤードに行く手間がありましたが、ウエアラブルPOSでは在庫情報を即座に取得できます。また店舗に商品がない場合でも別店舗の在庫をすぐさま確認できますので、別店舗での購入を促すことができます。さらにそのウエアラブル端末に通話機能があれば、別店舗に電話してその場で取り置きが可能です。
売上と目標を随時スタッフで共有できる
売上達成までの残金額をスタッフでリアルタイムに共有できますので、すべき行動が明確になります。据え置き型POSの場合は、リアルタイムでの売上情報共有は難しいものがありました。途中経過の合計売上は計算できてもそれを伝達するにはアナログ的な手段しかありませんでした。しかウエアラブルPOSであればそれぞれが確認したいタイミングでリアルタイムの売り上げを確認ができますので、売り上げ達成に対する目標を見誤ることなく、それぞれが行動を起こせます。
ウエアラブルPOS導入のために求められること
ウエアラブルPOSには据え置き型POSにはない効果が期待できます。しかしながらまだ新しい商品なので、ウエアラブルPOS自身にも課題は残っています。
ウエアラブルPOS端末のハード面レベルアップ
ウエアラブルPOSに求められる点はまずはハード面の強さです。端末自体がまず堅牢で防水性が高くないと使い物になりません。ウエアラブルPOSシステムを導入する企業は紹介してきたとおり、飲食店や販売店が多いので、スタッフはウエアラブル端末を装着したまま店内を歩き回ります。そのためデバイスに水がかかったり、店内の什器にデバイスがぶつかったりすることは起こりえます。飲食店は水をよく使うので、防水機能がないと普及することはないでしょうし、洋服店は狭いバックヤードで品出しをするので、堅牢性が必要です。そのためまずはしっかりとしたハード面の強化が求められます。
システム停止時の臨時マニュアルが必須になる
ソフトウエアはどれだけ丁寧に設計して、工数を積み、テストを実施したとしても障害は発生します。そしてそれは閉店中だろうが営業中だろうが突然やってきます。ウエアラブルPOSシステムの導入は絶対的におすすめですが、万が一システム障害が起きることも想定して、ウエアラブルPOSがない場合の店舗運営マニュアルも用意しておいた方が良いでしょう。
商品包装スペースの確保
ウエアラブルPOS導入で自由な場所で決済ができるようになると、決済後の商品包装に苦労します。なぜならすぐその場に商品を入れる袋もないし、商品をたたむための台がないからです。そのため店内またはバックヤードには商品包装するスペースを作っておく必要があります。
ウエアラブルPOS導入で見えるミライ
ウエアラブルPOSの魅力や課題を紹介してきました。ウエアラブルPOSは会計と決済の効率化を図ります。いつでもどこでも決済ができるので、お客様にとってはレジに並ぶ手間が省け、時間を有意義に使えます。
またお店側にとっては、スタッフ間の売上情報共有や売上戦略のスムーズな伝達など決済以外の面でもメリットが多いです。このようにウエアラブルPOSを導入すれば様々な付加価値が付いてきます。
この分野はまだ始まったばかりなので、さらに高機能なウエアラブルPOSの誕生が予想されます。
特にセキュリティ面での高機能化は大いに期待ができます。
例えば、ウエアラブルPOSに位置情報機能を付ければ、セキュリティや詐欺防止に効果的ですし、指紋認証技術を使えば、指先1つで決済が可能になります。指紋認証決済で詐欺被害に遭う可能性はもはや限りなくゼロに近いです。
このような最新IT技術をウエアラブルPOSに組み込むことができれば、決済はより安全に、便利に、シンプルになっていきます。
今後はもっと買い物がしやすい世の中になっていくでしょう。