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アフターコロナでニーズ急増。BOPISの最新事例

今、小売業界には「BOPIS」の波が来ています。キッカケは、やはり新型コロナウイルスの影響による消費者の生活様式、そしてそれに伴う購買行動の変化が大きな要因となっています。

BOPIS先進国とも言える米国では、昨年のブラックフライデーにおけるBOPISの利用率は前年比で40%以上成長し、BOPISを導入している小売企業の売上は、導入していない企業と比べて20%も伸びたと言われています。当然、コロナ禍の影響下にある今年は、それらの数字はさらに伸びることは間違いでしょう。

本稿では、BOPISの基本的な構造やメリット、そして国内における導入事例を上げていきます。小売企業の皆様におかれましては、ぜひ自社のサービスを再構築する際の参考にしていただければ幸いです。

目次:

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感染症対策として加速している「BOPIS」とは

まず、そもそもBOPISとは何か、改めて簡単に説明をしておきます。

これは、「Buy Online Pickup In Store」の略称であり、小売企業のオンラインチャネルで購入した商品を店頭で受け取る購買方法であり、オンラインで購入した商品を自宅以外の場所で受け取る購買方法を指す「クリック&コレクト」の一種です。

株式会社バルクが行った2020年6月に実施した調査によれば、BOPISの認知度は調査対象社の25.1%と比較的高い数字になっていますが、調査時点で実際にサービスを利用したことがある人は僅か5.7%に止まっていました。

しかし、BOPISのサービス内容を理解した上での利用意向に関しては全体で約30%とやはり比較的高く出る傾向にあるだけでなく、コロナ禍の影響を受けた企業や、あるいは医療従事者など、感染リスクに対する対策意識が高い人の利用意向は特に高まる傾向にあることがわかりました。

サービスの利用意向が高いことに対して、実際の利用者が少ないのは、そもそも消費者の選択肢の中にBOPISを導入している小売企業が少ないから、という要因が考えられます。

しかし、今述べたように、コロナ禍の影響を大きく受けた中、人々の生活様式や購買行動根本的に変わっており、生活必需品も購入はオンラインへ移行、極力屋内に長時間止まることを避け、外食なども極力控える方向へとシフトしています。

これらの課題に対して明確なひとつのソリューションになると言えるため、BOPISは今やあらゆる小売企業において導入を検討する価値のあるサービスと言えるでしょう。

加えて、BOPISには、顧客視点からも、企業視点からも、単なる感染対策いは止まらないメリットがあります。以下でそれらを端的にまとめておきます。

BOPISのメリット

<顧客側のメリット>

好きな時に商品を受け取れる

これまでECのデメリットでもあった、宅配時に家にいなくては商品を受け取ることができなかった、あるいは受け取るための宅配時間を調整すること自体が煩わしかった、という部分が、顧客が自分の最も都合のいいタイミングで受け取れるBOPISであれば即解消できます。場合によっては購入当日に商品を受け取ることも可能になります。

配送料がかからない

米国などにおいても、これがBOPISを利用する大きな理由のひとつになっています。もちろんECでの購買において「配送料無料」をひとつのサービスとして提供している企業も数多く存在しますが、物流側への負担が大きすぎることが問題視されていることも事実です。多くの顧客がBOPISを利用することで、その問題を緩和することにも繋がるかもしれません。

買い物にかかる時間を短縮できる

実店舗で商品を購入する場合、店内を歩き回って商品を見つける時間やレジで会計を待つ時間、スーパーなどであれば商品をパッキングする時間など、積算すればかなりの時間を買い物にかけていることになります。しかしBOPISを利用すれば、商品の検索や決済は実店舗に比べて圧倒的に短時間で済みますし(初めて利用するECの場合は、会員登録が必要など、その限りではないかもしれませんが)、実店舗でレジに並ぶ必要もありません。

<企業側のメリット>

省人化・省スペースの実現

特に大型の小売店などは、会計業務や棚出しに従事するスタッフのリソースを確保することが大変という課題があるでしょう。しかし、BOPISであれば、そもそも会計業務に従事するスタッフは必要ありません。加えて、オンラインでの購買を前提にするのであれば、実店舗内で品揃えを「見せる」ための棚を作る必要もありませんから、その分省スペース化を実現できます。

もちろん、BOPISのためのピッキングを担当するスタッフが必要だったり、100%BOPISだけで商売するわけではないため、各企業にとって最適なバランスを考える必要はあります。

「ついで買い」の誘発

BOPISを顧客が利用するということは、その時点で実店舗への集客が確約されている、ということです。もちろん、多くの顧客は「商品を受け取る」ことだけを目的に来店するでしょう。しかし、そこで関連商品を目につくようにしたり、顧客の足を留めさせるような店舗空間を作っておいたり、あるいは店舗で利用できるクーポン配布等の施策を絡めることによって、「ついで買い」によるアップセル、クロスセルを実現することも可能になってくるでしょう。

より多くの顧客データを獲得

これまで実店舗で現金のみを使って買い物をしていた顧客が、もしBOPISを利用するためにオンライン上で会員登録を済ませてくれれば、これまでよりさらに多くの顧客データを獲得することができます。BOPISを導入するのであれば、当然それらのデータを用いて、より精度の高いマーケティングを実施することを念頭に置いておきたいところです。

BOPIS最新事例

ここからは、国内で実際にBOPISを導入している最新事例を列挙していきます。

ニトリ

インテリア用品や家具販売大手のニトリは、「店頭受取りサービス」と銘打ってBOPISを導入しています。「ニトリネット」から購入した商品は、店舗に在庫があれば翌日受取が可能というのが基本サービスで、一部店舗では当日14時までの購入で最短当日受取りも可能となっています。

さらにユニークなのは、一度購入した商品を14日以内なら店頭で返品できる「BORIS(Buy Online Return In Shop)」も実施しているという点です(消耗品やオーダー家具や加工された商品は対象外)。

ケンタッキー・フライドチキン

日本KFCは、2020年10月より、首都圏4店舗でBOPISの実証実験を開始しました。オンラインで注文した商品を店内に設置したピックアップロッカーに保管、利用者は注文番号をロッカーに入力することで解錠して受け取る仕組みになっています。

日本KFCのピックアップロッカーを手掛けたのは寺岡精工で、同社のモバイルオーダー専用の受け取りロッカー「ピックアップドア」がこの取り組みの中心技術となっています。

スシロー

あきんどスシローが2020年11月12日に大阪にオープンする都市型店舗「スシロー天王寺店」も、BOPISを導入しています。テイクアウトはもちろん、店内で食事をしている間に注文したお土産も、専用の「自動土産ロッカー」で受け取れることが特徴です。

通常、BOPISといえばアプリ等、ネットでの購入に対するサービスというイメージですが、スシローではそれ以外にも電話やFAXにも対応しています。こちらのロッカーも、やはり注文の際に発行されるQRコードを解錠に使います。

調剤薬局

全国で調剤薬局を展開する日本調剤株式会社は、宅配ロッカー国内No.1企業のフルタイムシステムと提携し、スマートピックアップロッカー「フルタイムロッカー」を使って、処方薬の受け渡しを開始しました。

薬局で処方箋を受け付けると同時にQRコードを発行し、処方薬はフルタイムロッカーへ預入ることで、患者はいつでも好きなタイミングで処方薬を受け取ることができ、感染リスクの高い薬局内で長時間薬を待つ必要がなくなります。

法整備などが進み、中国などと同様、オンラインでも処方箋を出してもらえる仕組みが整えば、これも将来重要なBOPISのひとつとなって定着するかもしれません。

これからの実店舗にとって必須施策

現状の事例を見ても、BOPISを導入するひとつの鍵は、注文された商品および実店舗と連携するスマートロッカーであることが伺えます。

もちろん、カーブサイドピックアップなど、ロッカーを使わずに人力でBOPISを実現する方法もありますが、ある程度の規模の企業になってくると、効率や省人・省力化を踏まえた上でBOPISを導入しなくてはならないため、どうしてもテクノロジーを介入させていく必要があるでしょう。

BOPISは、ECと実店舗が共にその価値を高め、より利便性を追求するために必須の施策となってくる可能性が高いと言えます。上記の通り、BOPISに紐づいてテクノロジーを介入させるためには、単にロッカーを入れるだけでなく、その裏で元々稼働していた企業の基幹システムをはじめとする様々なシステムと連携させていくという、大掛かりな投資が必要になってきます。

しかし、今二の足を踏むことで近い将来淘汰されるリスクを高めかねないという状況において、あらゆる小売企業は、今一度BOPISの導入について本腰を入れて検討すべき時期にあると言えるのではないでしょうか。

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