モノを買わない消費者に対するコト提案の実現
「お店の売れ行きがよくないけど、どうしたらいいのかわからない…」
と思っている方。
店舗において、モノを売る時代は終わったと言っても過言ではありません。というもの、今ではモノではなくコトを売るのが主流になりつつあるからです。
とはいえ、コトを売るとは何なのか、実際に何をすればよいのかはわかりにくいですよね。
そこで、この記事では
- そもそも、コト提案とは
- 消費者が「モノからコトへ」動いた理由
- コト提案の成功事例5つ
の順に、コト提案について紹介します。
コト提案というと難しく感じるかもしれませんが、ハードルは高くありません。まずはこの記事で、コト提案についてざっくり概要をおさえましょう!
そもそも、コト提案とは
そもそもコト提案とは「購入したモノによってできる体験や経験を売ること」です。コト売りとも呼ばれます。
これまでのモノ提案の考え方だと、どれだけすごいサービスや商品を提供するかという考え方がメインでした。コト提案では、サービスや商品はあくまで手段でしかないと考えます。
例えば、音楽業界においてCDや音源を売るのはモノ提案で、これがコト提案になるとライブやフェスなど、音楽を通じた体験になります。
このように、サービスや商品を使うことによって得られる、体験の価値を重要だとするのがコト提案なのです。
続いては、消費者が「モノからコトへ」動いた理由を紹介します。
消費者が「モノからコトへ」動いた理由
消費者がコトへ動いたことには、さまざまな理由があります。
例えば、モノがあふれてきたことでモノ自体の価値が相対的に減ったこと。他にも、経済の成長が鈍くなったため可能な限り消費を避けようという考え方、SNSなどのコミュニケーションアプリによる「リア充」をよしとする思考などがあります。
特に若者の間で「インスタ映え(Instagram上で映える写真や投稿の内容)」「イベントなどで集まること」を好むのは、最近のコト提案における傾向です。モノを消費するのではなく、モノを消費している自分やモノを消費する体験、充実した生活に価値をおく考え方が、人々をコト消費へと向かわせています。
以前は家や車、時計など、自分が持っているモノがどれだけよいものであるか、自分の感性がとれくらい高いかをアピールすることが多かったのです。しかしながら、今では生活が充実していること、家族や仲間に囲まれていること、活動的なオフを過ごしていることなど、「生活の1シーン」をアピールすることが増えました。
これにより、モノ消費はだんだんと少なくなり、コト消費が増え始めたのです。
続いてはより具体的に、コト提案の成功事例を5つ紹介します。
コト提案の成功事例5つ
ここからは、コト提案の成功事例を
- 記念日の特別さを売る「別邸今宵」
- 旅の情緒を売る「峠の釜飯」
- 健康を作る体験を売る「タニタ」
- 家族で身体を動かす体験を売る「任天堂」
- 世界一のバタートーストを食べる体験を売る「バルミューダ」
の順に紹介します。
1. 記念日の特別さを売る「別邸今宵」
函館にある高級旅館「別邸今宵」では、旅館の1周年を記念したキャンペーンとして、1周年を迎えたカップルを募集するキャンペーンを展開しました。1周年の条件は「付き合って」「結婚して」「はじめてデートして」など何でも大丈夫で、当選したカップルは無料で宿泊できるほか、シャンパンや花束などのサービスが送られます。
このキャンペーンには、旅館の1周年を記念する意味だけでなく、「記念日はこの旅館に泊まる」という体験を提供する意味もあります。これにより、今後も何かしらの記念日があるたびに、旅館を訪れてもらうことにつなげることが可能です。
2. 旅の情緒を売る「峠の釜飯」
1日に6000食を売る、ロングセラー駅弁である「峠の釜飯」。信越線の横川駅で電車が止まっているわずか5分間に、乗客はわれ先にと駅弁を買い求めます。
駅弁を弁当と考えてしまうと、この光景は不思議に思うかもしれません。しかしながら、乗客が買っているのは「電車に乗って峠を見ながら、駅弁を食べるという旅の情緒」なのです。
3. 健康を作る体験を売る「タニタ」
体重計や血圧計など、健康を測るための器具を販売していたタニタ。もちろん、今でも体重計や血圧計を販売しているのですが、タニタは「健康を作る体験」にシフトしています。
例えば、公式ホームページで「健康のつくりかた」と題してメディアを運用したり、健康な食事を提供する飲食店「タニタ食堂」を経営したりなどです。提供する商品は同じでも、見せ方を変えることでコト提案に成功した事例の1つですね。
4. 家族で身体を動かす体験を売る「任天堂」
ゲームメーカーの任天堂は、Wiiによって「家族で身体を動かして楽しむ体験」を販売しました。ハード自体の機能では、競合であるプレイステーション3に負けていたのですが、コト提案をすることで販売台数は5000万台を突破。プレイステーション3と比べても2倍以上の台数を売りました。
5. 世界一のバタートーストを食べる体験を売る「バルミューダ」
相場の5倍以上という破格のオーブントースターである「バルミューダ ザ・トースター」。パンを焼くだけの単機能型なら2000円前後でも買えますが、バルミューダ ザ・トースターは1台25000円ということですから驚きです。
焼く時に水を少し入れ、スチームオーブンで焼くなど、バルミューダは普通のトースターと比べても性能にこだわって作られています。そして、バルミューダのトースターが売れている理由は「世界一のバタートーストを食べる体験」を提供しているからです。
「世界一のバタートーストを食べる体験」が消費者の共感を呼び、結果としてバルミューダのトースターは大ヒット商品となりました。
コトの価値を強めて、価格競争から脱出する
ここまで、モノを買わない消費者へのコト提案について紹介しました。
おさらいすると、そもそもコト提案とは「購入したモノによってできる体験や経験を売ること」です。コト売りとも呼ばれ、サービスや商品から得られる価値を販売することを意味します。
消費者がモノではなくコトへと動いた理由は、
- モノがあふれてきたことでモノ自体の価値が相対的に減ったこと
- 経済の成長が鈍くなったため可能な限り消費を避けようという考え方
- SNSなどのコミュニケーションアプリによる「リア充」をよしとする思考
などです。「自分が持っている良いモノ」をアピールするのではなく、「良いモノを持って生活している自分」をアピールするようになったとも言えます。
そして、最後にコト提案の具体的な事例として
- 記念日の特別さを売る「別邸今宵」
- 旅の情緒を売る「峠の釜飯」
- 健康を作る体験を売る「タニタ」
- 家族で身体を動かす体験を売る「任天堂」
- 世界一のバタートーストを食べる体験を売る「バルミューダ」
の5つを紹介しました。
モノがあふれる現代で、安くて良い商品を提供するだけでは他の競合との価格競争に巻き込まれてしまいます。そのため、自社でしか提供できないコト(=体験、経験)を作る必要があるのです。
自社が提供するコトの価値を強めて、価格競争から脱出することが今後は欠かせなくなってきます。
まずは、自社の商品が提供している体験や経験について考えるところからはじめてみてください。
この記事を書いた人
黒田剛司
大阪市立大学商学部を卒業後、新卒で独立。学生時代に身につけた経営・流通・マーケティングなどの知識を活かし、コマースについて幅広いジャンルで執筆。また、サイト制作やWebメディア運営も請け負っており、IT系の記事作成も可能。無類の動物好き。