デジタル集客は実店舗にも活用できる
実店舗の集客にSNSやGoogleマップといったデジタルツールを活用する施策は、アフターデジタルという社会変容に応じて今後も増え続けるものと想定されます。
本記事では、コロナ禍そしてアフターコロナでますます必要性が高まる「実店舗への送客につながるデジタル集客」について解説しています。
オムニチャネルとOMOの概念の違いの解説、LINEやGoogle等を用いた施策例を挙げて、小売店舗だけでなく飲食店や美容業界といったサービスを提供する店舗のデジタル集客についても詳しく紹介します。
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オンラインで情報を発信して、情報を目にしたユーザーを実店舗へ送客するという集客のあり方は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の取り組みのひとつととらえることができます。
ですが、企業がDXを行う真の目的を理解していなければ、その施策からユーザーは取り残されてしまいます。デジタル集客として機能する施策を講じるには、OMOの概念を今一度ユーザー(顧客)のために解釈し、企業の利益とつなげる必要があります。
OMOの概念で店舗集客を
DX推進と聞くと、大掛かりなシステムの導入やサービスの一新を思い浮かべがちですが、ECやオンラインのサービスにすべてを移行させることがDXではありません。
実際、コロナ禍の2020年8〜10月に前年同期比30%増という成長をみせた米国のホームセンターチェーン「ロウズ(Lowe’s)」では、様々なデジタルシステムを顧客が直感的に操作できることを念頭において施策が講じられています。
「ロウズ」の場合、店舗で商品を探すナビシステム、オンライン注文をして店舗ピックアップという流れの構築、24時間対応のカスタマーサービスといった顧客の想定する「あったらいいな」、「手軽に使えたらいいな」を具現化したテクノロジーが売上増加をもたらしています。
つまり、DXを顧客満足度を高めるための施策と位置づけることが、結果的に企業の利益を増やすことにつながっています。
これは、OMOつまりオンラインとオフラインの垣根を超えてマーケティングを展開するというコンセプトの進化したかたちととらえることができるでしょう。
オムニチャネルとOMOは異なる?
ここでおさえておきたいのが、オムニチャネルの考え方と2021年の情勢にマッチしたOMOマーケティングの考え方の違いです。
オムニチャネルは、オフライン(実店舗)とオンライン(デジタル集客)とが明確に区別されています。
オムニチャネル的なマーケティングとは、「SNSのフォローやリツイートで店舗購入時に使えるポイントやクーポンを発行」や「商品の使い方や着用イメージを動画で発信する(情報発信のみで購入は不可)」等で、これらは、どちらもオンラインとオフラインが別のチャネルとして機能しています。両者の境界線は曖昧になってはいますが、顧客がデジタルと実店舗をシームレスに移行することはできません。
DX推進の一環としてとらえるOMO的施策には、ユーザー(顧客)が意識せずともデジタルと実店舗の両方にアクセスできるという「曖昧性の確立」といった状態が鍵となります。
オムニチャネルとOMOは、「オンラインとオフラインを活用する」という部分については同様ですが、境界線についての考え方が根本的に異なるケースがあると覚えておくと分かりやすいかもしれません。
とはいえ、オムニチャネルも「新オムニチャネル」というコンセプトでとらえるならば、DX推進と併せて時代に合ったデジタル集客を行なっていけるはずです。
デジタルで実店舗に送客する手法
では、具体的にデジタル集客で実店舗に送客する方法をみていきましょう。
デジタル集客は、OMO的な観点に立って施策構築することが重要です。デジタルの世界と実店舗とのシームレスな動線を確保することで、ユーザーはオンラインとオフラインを意識することなく企業を利用できるようになります。
EC送客と実店舗にLINEを活用する
企業がTwitterやInstagram、LINE、FacebookといったSNSを活用している例は多いでしょう。担当者は「中の人」と呼ばれることもあり、オフィシャルな印象よりもややくだけて個性を感じさせるやりとりが話題になることも珍しくありません。
しかし、SNSアカウントと顧客とのやりとりは企業側が把握しにくく、SNSのやりとりが利益やブランドイメージの向上にどのように作用しているのかが分かりにくいという難点がありました。
これを解消するツールとして有効なのが、LINEとスタッフ管理ツールの組み合わせです。LINEは開発者向けのプロダクトを公開しているため、管理ツールやドキュメントを活用して、自社のスタイルに特化したLINE運営を目指すことができます。
スタッフのLIVE配信で店舗のファンを増やし支店ごとの特性を伸ばすのか、各店舗間の連携をシームレスに実現するチャット機能を充実させて一律的な躍進を目指すのか、自社の目標と特性に合わせたLINEの活用が、今後は重要になってきます。
特に、EC送客に店舗と顧客のコミュニケーション(LINEのメッセージ、SNSのやりとり、動画配信のコメント等)を活用させたい場合には、本社が効率よくそのやりとりのデータを蓄積する必要があります。蓄積されたデータは各店舗の取り組み事例として記録するだけでなく、短期的あるいは中長期的にどのような戦略を構築していくかという判断材料にもなります。
店舗情報の発信をデジタルで行う
現代では多くの人が、実店舗を訪れる前に、店舗の規模や取扱商品をチェックするようになっています。
同じアパレルチェーンブランドであっても、すべての店舗で品揃えや規模がまったく同じというブランドはまずありません。ゆえに、消費者は自分のニーズに合わせて訪れるべき店舗を選択します。この選択は顧客満足度にも大きく関わってきます。
例えば、男性が洋服を購入したいと店舗を訪れることを想定してみてください。メンズアイテムの品揃えが多いAブランドa店と、メンズ服取り扱いが限定的であるAブランドb店があるとします。この場合、品揃えが充実したa店を利用した男性顧客の方が、b店を訪れた男性顧客よりも顧客満足度が高くなるはずです。
このように、実店舗が的確な店舗情報をデジタル発信することにより、事前に店舗情報を検索する消費者の顧客満足度を高めることができるでしょう。
顧客満足度を高めることは、企業のファンを獲得することにもつながります。企業のファンを作るということは、長く自社の製品を購入し続けてもらう消費者を増やすことでもあり、競合企業への流出を防ぐという点において、企業利益にも直結しています。
MEO対策としてレビューやGoogleを活用する
Googleで検索されるというアクションを通じて実店舗に送客する方法もあります。
Googleには、Googleマイビジネス(以下GMB)というサービスがあります。
これは、店舗が情報を登録しておくことで「地域×店舗名」、「地域×ジャンル名」を検索したユーザーに対して、店舗情報を表示できる機能です。
これは、MEOの一種で店舗の住所や電話番号といったアクセス情報だけでなく、検索ユーザーの口コミも表示され、口コミに店舗が返信することもできます。
口コミへの返信、クレームや低評価へのフォロー等、リアルタイムで更新すべきことは多くありますが、使いこなせればデジタル集客の強力なツールとなるでしょう。
なお、GMBは各店舗ごとに即応する方が効果を発揮しやすいため、複数の店舗情報を本社で一括更新、というやり方は却ってレスポンスの遅さが店舗価値を下げてしまうリスクもあります。即応性を担保しつつ本社でも動向をチェックして有効な購買データを蓄積していくには、管理ツールの導入も視野に入れると良いでしょう。
実店舗へのデジタル集客は飲食店、美容業界にも有効
飲食店やヘアサロン、エステサロンといった美容業界にも、デジタル集客は有効です。
現在は、感染への不安から多くの人が外食を避けるもしくは頻度を減らす傾向にあります。言い換えると、多くの人は感染予防の対策が講じられた安心できる飲食店で食事をしたいと考えていることになります、
この心理に訴求するデジタル集客として、実際に行なっている感染予防策をデジタル発信する手法があります。アルコール消毒や従業員と来店時のマスク着用、アクリル板設置といった感染予防対策は、前述のGMBのビジネスプロフィールとして「COVID-19に関する最新情報」を記載することが可能です。
他店舗の成功事例を共有することで各店舗の集客に活かす
GMBの取り組みは各店舗の迅速な対応が必須と書きましたが、それぞれの店舗が横の連携を保つことで、効果を何倍にも高めることができます。
本社が各店舗の効果的なマーケティングや取り組みデータを取得し、社内共有ツールで各店舗同士把握することで、成功事例が共有されます。
他店舗でもできることは積極的に取り入れ、またA店にできてB店にできないことなら、同じような効果を上げるようアレンジして取り組むといった柔軟なデジタル集客のあり方が、今後は求められていくでしょう。
それには、本社と各店舗をシームレスにつなぐツールの導入も、重要な検討要素となります。
デジタルマーケティングを実店舗でも活用する
実店舗は物を購入する場所、という概念自体も再考する時代になっています。
実店舗で試して、オンラインで購入するというショッピングのあり方が、ひとつの購買体験として当たり前になりつつあります。
また、コロナ禍においてはオンラインショッピングの大幅な増加により、「人とのふれあい」、「対面での買い物」という購買体験自体の価値が見出されるようになりました。
実店舗は購買の場だけではなくなりつつある
実店舗で試着をしてからオンラインで購入し自宅に配送してもらう、または実物の使用感を試した後でオンライン限定のカラーバリエーションからアイテムを選ぶ、等実店舗をお試しの場として利用するユーザーも増えています。
また、自宅で商品を注文してから職場に近い実店舗で商品を受け取る、ロッカーからピックアップするといったショッピング方法も、浸透し始めています。
これらの場合、「購買の瞬間」はいつになるでしょうか。
商品を試着して購入するという意思を顧客がかためた時か、オンラインで決済ボタンを押した時か、商品が顧客の手元に届いた時か、難しい問題です。なぜならこれら3つのシーンすべてに購買という行為の一部が含まれているからです。
オンラインショッピングが当たり前になる以前、そしてスマホが普及する以前には、実店舗内で完結することが一般的だった購買行動ですが、現在は購買行動の様々な要素がオンライン、オフラインの境界さえ曖昧に存在しているとみるべきです。
店舗ならではの購買体験を
オンラインが現実の社会に広く介在するアフターデジタルの現状において、それでも店舗での購買体験が特別で唯一無二のものになるケースもあります。
特に、アフターコロナにおいては対面での買い物が特別な体験として昇格し、店員とのコミュニケーションや実店舗でしかできない体験を欲する消費者が急増するという予測がなされています。
2020年の緊急事態宣言やステイホーム推奨という風潮により、テレワークやオンラインショッピングが一般化しました。デジタルネイティブ世代だけでなく、それまで「対面が一番」と考えていた層にもオンラインでの活動が浸透し、抵抗感が薄れています。
しかし、だからこそアフターコロナでは、対面や人と人とのふれあいが希少で懐かしいものとして認められ、少々の不便があっても実店舗で購入したいと思うような商品、サービスが人気となるのではないでしょうか。