持続可能な社会の構築に必要不可欠な「スマートインフラ」とは?
「スマートインフラ」という言葉についてご存知でしょうか。
スマートインフラについて厳密に定義されてはいませんが、主にICTを用いたインフラ整備を指します。
インフラ設備は私たちの生活になくてはならないもので、例えば電気や水道、下水、道路、交通、ガスの整備など様々なものがあります。また都市計画に基づく施設の整備について指すこともあります。これらのインフラをICTによって効率化することを「スマートインフラ」と呼びます。
以下ではスマートインフラについてもう少し掘り下げたあと、スマートインフラに取り組んでいる企業の紹介をしたいと思います。
スマートインフラとは具体的に何を指すのか?
スマートインフラはしばしば持続可能な都市計画という意味で用いられます。日本はご存知の通り急速に高齢化が進んでおり、生産労働人口は下がってきています。
日本の戦後の経済成長は労働力人口の増加にも反映されてきたため、労働力人口の減少に伴い生産性を高めることが大切と認識されるようになりました。
ところで、老朽化した建築物やインフラ設備の維持には莫大なコストや労働力が必要ですが、時代の変化とともにこれらの保全・修繕方法について考える必要があります。全ての老朽化した建築物やインフラ設備を維持していくのではなく、何を重点的に維持するかというところから考えるべき時期に来ています。
都市計画をおこなう上でも、無駄なものは省き生産性を高めるべきという考えから国土交通省から「i-Construction」という計画が提案されました。
国土交通省では、「ICT の全面的な活用(ICT 土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組であるi-Construction(アイ・コンストラクション)を進めています。
出典:国土交通省、i-Construction http://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000028.html
このi-Constructionの計画では、建設現場においてIoT、AIや3次元データなど最新の技術を用いることによって生産性が高い建設現場を作ることを目指しています。
2025年までに建設現場における生産性の2割向上が目標値です。国土交通省のi-Constructionのページでは、「i-Construction推進に向けたロードマップ」があり、時期や実施事項についての計画が詳細に記載されています。
計画を実行するためには労働力の確保も重要ですが、建設業界は「3K(きつい、きたない、危険)」というイメージが強く深刻な人出不足に陥っているという問題があります。i-Constructionでは建設現場における労働状況の改善について、平成33年~37年までには新3K(1:給与が良い 2:休暇がとれる 3:希望がもてる)という目標の実現を目指しています。
さらに「Society5.0(ソサエティ5.0)」という日本政府が発表した科学技術戦略を支えるインフラマネジメントの構築も併せて目指します。Society 5.0とは何かについては、「Society 5.0 (ソサエティ5.0)の意味とは?最新テクノロジーの活用で何が変わる?」で詳しく解説されています。
スマートインフラに取り組んでいる企業の例 トプコン
トプコンはGNSS、マシンコントロールシステム、精密農業といったポジショニングや、測量機器、3次元計測といったスマートインフラ、アイケアの製造・販売をおこなっている企業です。トプコンがおこなっているのは測量から設計、施工、検査まで全ての工程です。
トプコンは創業当時から光学技術をベースにして最先端GPS技術、レーザー技術、画像解析技術を融合させたポジショニング製品の製造・販売をおこなっています。また、非接触で高精度な3次元データの取得が可能な3次元レーザースキャナー、モバイルマッピングシステム、空撮技術などを駆使して建築物や道路の維持・補修、河川・ダム・堤防などの計測、災害・事故調査等様々なシーンにおいてインフラの維持・管理の効率化・高寿命化を実現することができます。
トプコンは海外にも数多くの研究・開発拠点を持っており、日本だけでなく新興国市場の大規模なインフラ工事にも力を入れています。
日立グループは情報・制御融合プラットフォームでスマートインフラを目指す
日立グループはスマートインフラの実現を目指すために「スマートグリッド」に焦点を当て情報・通信技術や制御技術の融合・連携に取り組んでいます。スマートグリッドとは「水利用システム」や「次世代送配電網」を指し、最新技術やIT技術を駆使した効率的な水と電力の供給のことを意味します。
水や電力供給には装置や設備におけるネットワークの整備と制御が必要で、またそれらの連携も非常に重要です。日立グループはこれらを「見える化」し、指令を出すものと装置との情報連携および双方向でつなげることでスマートインフラの実現を目指しています。
情報・制御システムは装置や設備に対する制御要求情報、応答情報、また装置や設備から発せられる状態情報や計測情報、さらに情報・制御システムを構成する装置/設備間、サブシステム間での情報のやりとりがあります。これらの情報は「制御情報」と呼ばれ、この制御情報の可視化と連携・システム再構成をおこなっていくことが重要と情報・制御融合プラットフォームの資料のなかで述べられています。
参考:日立、スマートなインフラの実現を支援する情報・制御融合プラットフォーム
http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/2010/08/2010_08_13.pdf
パナソニックのスマートインフラソリューション
パナソニックのスマートインフラに対する取り組みは、防災システムや監視システム、太陽光発電設備、また製造業向けソリューションなど多岐にわたるサービスを展開しています。
パナソニックはスマートインフラの実現のために4つのソリューションを用意しています。
一つは「エコ見える化システム」。パナソニックの提供するエコポータルを利用して電力の消費量測定と目標値の設定をおこない、ポータルを見ながらエコ状態を把握した後、エリア・電力系統単位で省エネシミュレーションをし、詳細なデータを確認して省エネ状況を詳しく把握。PDCAサイクルに則って省エネを実現します。
2つ目は屋外インフラ用創蓄連携装置で、太陽光パネルとリチウムイオン電池で蓄電し電力の供給が難しい場所での自立電源や災害時のバックアップ用の電力として利用することができます。リチウムイオン電池のサイクル充放電特性と独自制御による温度管理によって約10年の長寿命を実現します。
3つ目は電気自動車用の[EV・PHEV充電用] 充電スタンド ELSEEV(エルシーヴ)パブリックエリア向け。100V,200Vコンセントユニットを3個まで追加することができます。
4つ目はIT・インフラ設計/構築ソリューション。シーン別に様々なソリューションが用意されており、スマートインフラに関連のあるものはIoTソリューション、フィールドワークソリューションなどがあります。
まとめ
以上、様々な企業のスマートインフラの取り組みについて例を挙げました。
国土交通省はi-Constructionの中で2025年に向けて2割の生産性向上という目標を掲げており、さらに建設現場における労働環境の改革を図ることで深刻な労働力不足の問題を改善することを目指しています。
スマートインフラはこれからの日本の労働力人口低下による生産性への懸念を解決するために、ICTを活用した効率的なインフラ設備の維持・管理と未来に向けた持続可能な社会の構築ために必要不可欠な施作であると言えます。