Society 5.0 (ソサエティ5.0)の意味とは?最新テクノロジーの活用で何が変わる?
「ソサエティ5.0」についてご存知でしょうか?おそらくまだほとんどの人にとっては馴染みがない言葉かと思います。
「5.0」と表記されていますが、過去に「ソサエティ1.0~4.0」という言葉があったわけではありません。
ソサエティ5.0について簡単に説明すると、日本政府が提唱しているテクノロジーを活用した社会の仕組みをつくることを指します。似ているものとしてドイツのインダストリー4.0があります。インダストリー4.0の目的はIoT(Internet of Technology:モノのインターネット)をはじめとしたテクノロジー技術を製造業において活用することで経済発展を目指すものでしたが、日本が目指しているソサエティ5.0はドイツのインダストリー4.0とは異なります。
以下ではソサエティ5.0の定義とは何か、どのようなことを目標にしているのか、またソサエティ5.0で実現できることはどういったことか、ソサエティ5.0で得られる具体的なメリットは何かについて解説していきたいと思います。
【目次】
Society 5.0の定義とは?
ソサエティ5.0は2016年1月に内閣府から発表された科学技術政策のひとつで、第5期科学技術基本計画の中に盛り込まれています。第5期科学技術基本計画は平成28年から平成32年までの5年間でおこなわれます。計画のなかでは、目指すべき国の姿として、以下の4つの目標を掲げています。
- 持続的な成長と地域社会の自律的発展
- 国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現
- 地球規模課題への対応と世界の発展への貢献
- 知の資産の持続的創出
出典:内閣府、科学技術基本計画
http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index5.html
この4つの目標を実現するための手段としてソサエティ5.0が提案されています。では、いったいソサエティ5.0とは何のことでしょうか。内閣府が発表しているソサエティ5.0の定義は以下のとおりです。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。出典:内閣府、Society 5.0
http://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html
ソサエティ5.0では前の情報社会(Society 4.0)において課題であったサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の間における連携不足な部分を、IoTやビッグデータを活用することによって人とモノがより簡単につながることを目指します。
最終的な目標はIoTやAIなど現代の最新テクノロジーを活用することで経済発展と社会的問題を解決し、人間が質の高い生活を送ることができることを目指しています。
Society 5.0で実現する、としているのは以下の5点です。
- 課題解決・価値創造
- 多様性
- 分散
- 強靭
- 持続可能性・自然共生
国連が採択した「SDGs(持続可能な開発目標)」とも共通する目標であり、世界的にも重要なキーワードになってくる内容となっています。
持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
文科省、総務省や経産省などの各省庁や経団連をはじめとした産業界、関係機関や大学などの研究機関と連携を測りながらソサエティ5.0の計画を進めていきます。
ソサエティ5.0で活用されるモノと活用例
ソサエティ5.0で活用されるモノの例としては、これらのものが挙げられます。
- ドローン
- AI機器
- 自動走行車・無人ロボット
- 遠隔操作ロボット
- クラウド技術の活用
たとえば自動走行車が実用化されることによって交通事故件数の低下につながったり、自動車の運転が難しい人が簡単に移動できるようになります。
また、無人ロボットや農業用ドローンが普及することによって、農業を営む人の仕事を大幅に減らすことができます。
危険リスクが高い仕事を遠隔操作ロボットがおこなうことで、人間の事故を減らすことも期待できます。
これらの最新テクノロジー技術やIoTを駆使することで人間の不便を解消し、便利な社会を構築することがソサエティ5.0の目標のひとつです。
政府がソサエティ5.0を提案している背景として、日本で急速に進む少子高齢化や、世界の先進国と比較した時の日本の生産性の低さといった問題があります。ソサエティ5.0は将来的にこれらの問題を改善するために掲げられた政策です。
最新テクノロジーを活用することで起こる日常生活の変化だけではなく、経済発展も目標のひとつとしてあげられています。以下では経済産業省が進めているConnected Industries 5.0について触れたいと思います。
経済産業省のConnected Industries 5.0(コネクテッド・インダストリーズ5.0)とは
経済産業省が掲げている「Connected Industries 5.0」はソサエティ5.0から派生したものです。Connected Industries5.0は以下の5つの重点取組分野があります。
- 自動走行・モビリティサービス
- バイオ・素材
- スマートライフ
- プラント・インフラ保安
- ものづくり・ロボティクス
Connected Industries 5.0ではこの5つの重要取組分野で目標を達成すること、またさらに連携をおこなうことを目的としています。
経済産業省が進めるConnected Industries 5.0では、各分野における目指すべき方向性について提案されています。以下の資料ではConnected Industries 5.0の重要取組分野における具体的なビジョンや推進主体、また目指すべき経済規模について示されています。
Connected Industries 5.0では、5つの重要取組分野において計画の実行に取り組むことと並行して、3つの横断的な政策があります。こちらがその3つの横断的な政策です。
- リアルデータの共有・利活用
- データ活用に向けた基盤整備 <研究開発、人材育成、サイバーセキュリティ>
- さらなる展開 <国際、ベンチャー、地域・中小企業>
IoT・データの活用の基盤や整備をおこない、さらにテクノロジー技術を活用できる人材を育成することによって、将来も持続可能なデータの活用を目指すことが掲げられています。
Connected Industriesに掲げられた計画の実現によって得られるメリットとして挙げられているのが、地域・中小企業においての活用です。最新テクノロジーを活用することによって、たとえば以下のようなメリットが期待されています。
- ロボットやIoTを活用することによって、単純作業と重労働を減らし老若男女が問わず働くことができる環境を整えることによって人手不足を解消する
- 職人の技も見えやすくすることで技能継承を可能に
- 匠の技やアイデアを活用し、生産体制を整えることで経済効果がアップ
- 高齢化が進む地域での自動運転による日用品や食品の配達、自動運転により車を運転しなくてもよくなることで安全性が確保される
最新テクノロジーの活用によって、このような社会的な問題を解決することができるかもしれません。
企業にとってはビジネスチャンス、日立はいち早くソサエティ5.0について言及
日立製作所はいち早くソサエティ5.0についての発信をおこなっています。
日立がソサエティ5.0で技術を活用できる分野は多岐にわたり、医療、移動、ものづくり、インフラ・まちづくり、金融と様々な分野があります。
ソサエティ5.0が活発化することによって企業同士の連携も広がっていくでしょう。企業にとってソサエティ 5.0は新しい仕事が生まれるかもしれないビジネスチャンスでもあります。日立製作所のウェブサイトではソサエティ5.0に向けた電子カタログをダウンロードすることができます。
参考:日立製作所、Society 5.0 実現に向けた日立の取り組み
http://www.hitachi.co.jp/products/social/society5/index.html
まとめ
ソサエティ5.0は未来を見据えた戦略です。最新テクノロジーを活用することはもはや世界的な動きとなっており、日本もその波に乗り遅れないよう動いています。
ソサエティ5.0が活発になることによって企業同士の連携も増える可能性や、それに付随する新しい取引が発生する可能性もあるため、ソサエティ5.0が活発な企業間取引の起爆剤としてはたらくということも十分あり得ます。
今後ソサエティ5.0がどのように日本を変えていくのか期待が高まります。