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生成AIが小売の未来を拓く:米国で加速する導入の動きは日本にも

米国では、約90%もの小売事業者が生成AIやそれに類する技術を自社に導入するための準備や検討を進めています。

アマゾンが独自の生成AIプラットフォームを発表し、日本でもデジタルサイネージと生成AIを活用した実証実験が行われたり、大企業が小売業向け生成AI事業へ本格的に展開していくと発表したり等、加速度的に気運が高まっています。

小売業界での生成AI活用は、マーケティング、接客、カスタマーサービスだけにとどまらず、配送や在庫の管理、需要予測といった様々なシーンで活用の可能性があります。

パーソナルなショッピング体験を好む傾向や、生成AI技術によるサービスに対するポジティブな反応といった消費者の動向を見ても、生成AIの導入は今後スピーディに進んでいくと予想されます。

本稿では、小売業界における生成AI活用の具体的に挙げながら、米国を先行例として生成AIを中心とした小売業の少し先の未来を紐解いていきたいと思います。

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小売業界での生成AI活用の動き

小売業界では、生成AIを積極的に導入しようとする動きが広がっています。

その動きは欧米で特に顕著で、米国の小売業者の90%以上がAI投資に取り組んでいるという調査結果も出ています。また、同様に米国の調査結果にはなりますが、小売業の約60%は、AIや機械学習、コンピュータビジョン(撮影した画像を処理して必要な画像情報を取得する技術)といった何らかの新しいテクノロジーを次年度内に導入する予定があると回答しています。

生成AIは実験的な段階にあって、完全に普及・実用化しているわけではありませんが、おすすめ商品を自動生成する、対話型のアシスタントサービスで購買体験を向上させる、マーケティングの自動化を行うといった多様な可能性が広がっています。

一方で、小売業内部では生成AI技術に対する専門知識が充分でないケースも多く、予算の確保や導入の検討が進まないという場合もあります。

この場合、生成AI技術に精通しているコンサルタントとの連携や、知見のある企業間での協業体制の構築が求められるでしょう。

例えば、ChatGPTは生成AIの代表格の一つですが、2022年11月に無料版のChatGPT(GPT-3.5搭載)が公開されて以降、一気にユーザー数を増やしました。

2023年現在までに、様々な企業がChatGPTを組み込んだプロダクトの開発、競合の生成AIの研究・開発を行い、日本でも「学校の宿題にChatGPTを使用するのはOK?NG?」といった議論がなされる等、瞬く間に日常生活に近いAI技術となりました。

小売業に活用される生成AIも同様に、何かをきっかけとして一気に普及する可能性は充分にあります。

幅広い領域で活用が見込める事、そして生成されるコンテンツを消費者が概ね好意的に受け入れている事、この2つの点が、生成AIの普及が進む要因と言えるでしょう。

幅広い領域で活用が見込める生成AI

生成AIは、マーケティング、接客、カスタマーサービス、ロジティクス、需要予測、セキュリティという少なくとも6つの分野で活躍できる可能性が見出されています。

今後も、生成AIの精度や技術が向上するに従って、対応可能領域が拡大していくと考えられます。

例えば、マーケティングにおいては、AIによって、顧客へ最適なタイミングと内容の個別メッセージを送れる等、個別にパーソナライズされた提案ができるようになります。より個人的な購買体験を求める傾向が強まっている現在、「自分だけに向けられた提案」、「自分の好みに合わせた商品紹介」は、顧客にとって魅力的なものに映るはずです。

生成AIを導入した店舗内アシスタントの活用によって、リアルタイムの在庫状況に基づいた提案、接客ができるようにもなります。また、自分の体型や着用時の生地の質感までをも再現できるバーチャル試着室も、よりよい接客、またパーソナライズされた顧客体験にとって有力な技術となるはずです。

小売業にとって、というより日本経済において人手不足は解決の糸口が見えなくなりつつある課題ですが、チャットボットやカスタマーサービスを生成AIで自動化する事により、人手不足を補える可能性もあります。生成AIは商品情報やリアルタイムの注文情報をデータとして活用する事によって、オペレーターが対応しているのに近い自然なやり取りができるようになりつつあります。

商品配送のスケジュール管理や、在庫管理、需要予測も、購買データと生成AIを組み合わせれば、自動化が可能です。配送と在庫を一括管理する事でロスやトラブルを事前に回避し、需要予測によって過剰(過小)在庫という小売業における最大の課題を克服しやすくなるはずです。

また、アカウントの乗っ取りやセキュリティ面におけるトラブルも、生成AIを活用する事で不正行為を見抜きやすくなり、フィッシング等の被害を防ぎやすくなります。

まだ実験段階の技術も少なくありませんが、生成AIはこのように、小売の様々なシーンに活用の可能性があります。

生成AIコンテンツをユーザーはどう見ているか

では、消費者は生成AIをどのようなコンテンツとして捉えているのでしょうか?

世界的なデータを見ると、消費者の約6人に1人は、生成AIの回答を普段の買い物の参考にしていると言われています。

その傾向は小売業界になるとさらに顕著で、消費者の約17%は生成のAIを活用しているとされています。

また、今後は贈り物を選んだり、家電の機種を比較検討したりする時に、生成AIを活用したいと考えている消費者、そして生成AIを導入して自社の商品を販売したいと考えている企業は、共に増加しています。

今は実験的な段階にある生成AIですが、潜在的なニーズがある事は明らかなので、試行錯誤を繰り返しながら「当たり前に存在するもの」へと進化していくのではないでしょうか。

なお、現在、実店舗で買い物をする顧客も、60%がスマホを使って商品を調べたり二次元コードを読み取ってクーポン取得や購入を行ったりしています。

従業員もスマホやタブレットを装備して勤務する動きが広がっていて、今後は消費者も従業員も、双方がデジタル機器を使いながら買い物をするのが一般的になっていくと予想されています。

こうしたデジタル技術、機器の浸透により、生成AIも加速度的に利用が活発化すると考えられます。

小売企業の活用事例

小売企業の生成AIニーズは、Chat GPTの登場以来、高まり続けています。

購買行動においてAIは、集客、誘導、回遊の3つのシーンで活用できます。

集客においては、AI予測で店舗を訪れる可能性が高いアプリユーザー(ECサイトユーザー)へ最適化した広告配信したり、消費者一人一人にパーソナライズした店舗への地図をAIで生成する等、来店率を高める施策を講じる事ができます。

誘導においては、デジタルサイネージを使ったコンテンツ展開や、自動レコメンド機能をAI技術によって実現できます。

回遊率や滞在時間の向上は、AIカメラとビーコンを活用したデータ分析、また、次世代型広告として可能性が期待されるロボットとAIによる「対話エージェント」の活用も小売に未来をもたらすテクノロジーとして期待されています。

米国ではウォルマートやアマゾンが、積極的に生成AIを導入しています。

また、国内では伊藤忠商事にも、生成AIを活用した小売向けのビジネスにより注力する動きが見られます。

ウォルマートやアマゾンでの事例

米国ウォルマートは、今後、生成AIの筆頭的存在であるGPT-4を活用して、チャットサービスをさらに進化させる計画を明らかにしています。

現在のチャットサービスは「牛乳が欲しい」、「チョコレートを買いたい」といったシンプルなメッセージに対して選択肢を表示するものですが、GPT-4等の大規模言語モデルを導入する事で、「プロブレムベース」のチャットサービスを提供できるとしています。

プロブレムベースとは、例えばアレルギーのある人が旅行を検討している場合、常用している薬をカートに追加するといったような事が可能になるようです。

アマゾンも生成AIの利用に積極的です。今年4月には独自の生成AIプラットフォームとして「Amazon Bedrock」を発表して、生成AI市場に参入しました。

「Amazon Bedrock」では、アマゾン独自の大規模言語モデルTitanの他に、Open AI ChatGPTの競合相手でもあるAI21 LabsやAnthropic、画像生成AIとして話題を集めたStability AI等が利用できます。

「Amazon Bedrock」を使うと、高いパフォーマンスを獲得した過去のキャンペーンをモデルにして新しいキャンペーンに適した広告やテキストを自動作成する、特定のキーワードや商品名を入力してそのワードに最適なソーシャルメディア広告を生成するといった事ができるようになります。

すでに米国では各企業がプラットフォーム活用に前向きな姿勢を見せており、様々な業界で生成AIの利用が拡大していく事になりそうです。

行動分析や潜在ニーズの発掘にも

マーケティング理論には、接客する従業員の知識や対応が、購買行動の意思決定に作用するという説があります。つまり、消費者が見ているのは商品自体のデザインや質だけではないという事です。

この説をふまえた購買促進AI技術には、生成AIも使われています。

店舗やサイトにおける顧客の行動データを行動分析AIで分析し、そのデータをマーケティング理論に基づいて最適化、接客や販促コンテンツを生成AIで作り出すというサイクルによって、顧客の潜在的なニーズを発掘したり、よりよい販促プロモーション、接客を行える可能性が高まります。

購買促進AI技術については、今夏から秋にかけて、山口県のスーパーマーケットで実証実験が行われる予定です。実験では、アバターがデータに基づいたおすすめ商品を自動で推薦できるよう、デジタルサイネージが用いられます。

生成AIは小売をどう変えるか

消費者は生成AIの利用に対して、概ね前向きです。

ショッピング体験はパーソナライズされているべきというニーズも相まって、パーソナルな購買体験のために生成AIが活用されれば良いと考えている消費者が多いようです。

さらにある調査では、約70%もの消費者が、ユーザー体験が不本意なものだった場合はそのサービスを再び利用する可能性が低い、と考えている事が明らかになっています。

プライバシー規制やサードパーティのCookie制限等で、オンラインにおけるパーソナライズが難しくなる中、生成AIはそれを打破して今までになかった全く新しいパーソナルなショッピング体験を提供する便利なツールになり得るかもしれません。

新しい技術を導入する際、顧客(消費者)がその技術を歓迎しているか否かは重要なポイントです。生成AIの場合、消費者が積極的な利用をポジティブに捉えているという点が、企業にとって大きく作用する事は間違いないでしょう。

欧米ではすでに、食材を注文するとそれにふさわしいレシピを提案してくれるサービスや、「100ドルの予算で買えるグリーンの靴を探してください」というような文章形式で質問しても商品を提案してくれるサービス等、生成AIを活用したショッピング体験が現実に提供されています。

また、これまでのバーチャル試着を進化させた、着用時の質感、サイズ感をシミュレートできる新しい試着サービスも限定的な運用ではありますが、実現しています。

生成AIは、万能の魔法ではありませんが、これまで実現できなかった事を補ったり、従来にはなかったまったく新しい体験価値を生み出したりと、大いなるポテンシャルを秘めた技術です。これまでの道具、技術と同様に、どのように使いこなすか、が肝心になるのではないでしょうか。

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