QR読み取りで支払いも!オールイン型端末でキャッシュレス決済は加速化傾向に
政府はキャッシュレス決済を後押ししていますが、決済比率はいまだ伸び悩みの傾向にあります。
しかし、大和ハウスグループ、りそな銀行などがさまざまなQRコードを含む複数のキャッシュレス決済に対応したオールイン型端末を発表するなど、業界はそれぞれに対策を進めています。
QRコードによる決済サービスは各社期間限定で手数料無料などを打ち出し、加盟店の確保に動いており、ユーザーが利便性を感じることで普及が進むのではないかと期待されています。
【目次】
- マトリックス型二次元コード「QRコード」
- QRコードの活用方法
- QRコード決済にはコード支払いと読み取り支払いがある
- 2018年最前線!各社のコード決済サービスまとめ
- QRコード決済普及のカギ?キャッシュレス決済をサポートするオールインワン型端末
- キャッシュレス決済の種類とは
マトリックス型二次元コード「QRコード」
QRコードは、1994年、高速読み取り(Quick Response)できるように日本のデンソーウェーブが開発した技術です。
当初は配送センターなどの利用を想定していましたが、現在では無料で作成や読み取りできるサイト、アプリが数多くみられ、さまざまな用途に利用されています。
この記事では、QRコードを利用したキャッシュレス決済など、店舗に役立つQRコードの最新動向をご紹介します。
QRコードの活用方法
QRコードは、小さな正方形にさまざまな情報を入れ込むことができます。
その汎用性の高さから、2012年には公益財団法人日本デザイン振興会によるデザイン推奨制度で、産業領域のためのメディア部門の「グッドデザイン賞」を受賞。製造、物流、医療、小売など、各業種、業界で活用されています。
活用されるQRコード1. クーポン
わざわざ紙にプリントしなくても、スマートフォンにモバイルクーポンを配信すれば、簡単にサービスを提供することができます。
消費者はプリントしたクーポンを持ち歩く必要がないため、より気軽に、そして便利にサービスを受けることができるでしょう。
紙よりも低コストで、同等のサービスが提供できることもポイントです。
活用されるQRコード2. 入場管理
モバイルQRコードをチケットにすることで、イベントなどの来場者管理をスムーズにおこなうことができます。
また、この方法だと開催日や時間の直前までチケット販売ができるため、紙に印刷したチケットを発行するよりも販売ロスを低くすることができます。
また、チケットの偽造や改ざん防止の対策も講じることが可能です。
QRコード決済にはコード支払いと読み取り支払いがある
QRコードを決済に使う手段は2つあります。
QRコード決済1. コード支払い:ストアスキャン
消費者がスマホなどにQRコードを表示し、それをPOS端末で読み取るのがコード支払いです。
POS端末を対応させる必要がありますが、イメージとしてはクレジットカードと同様の認証、決済フローになります。ストアスキャンともいいます。
QRコード決済2. 読み取り支払い:ユーザースキャン
決済時に消費者が店舗のQRコードを読み取り、購入金額を入力する方法です。
これは中国、インドや東南アジアでも普及しており、モバイルペイメントに非対応の店舗、専用の端末がない店舗でも導入可能な方法です。ユーザースキャンともいいます。
2018年最前線!各社のコード決済サービスまとめ
諸外国と比較するとまだまだ低い、日本のキャッシュレス決済率。しかし、アマゾンやファミリマートが相次いでキャッシュレス決済に足を踏み入れています。
2018年の最新情報をご紹介します。
アマゾンジャパンの「Amazon Pay」
アマゾンジャパンは、実店舗向けのスマートフォンによる決済サービスを提供しています。
スマホに表示させたQRコードが、アマゾンECサイトのクレジット決済「Amazon Pay(アマゾンペイ)」のIDと紐づいており、実店舗でもこのIDで商品を購入できるようになっています。
世界初となるこのサービスは、決済サービスであるNIPPON PAY(ニッポン・ペイ)のタブレットで利用可能。2018年12月末までに決済システムを導入すると2020年まで手数料無料と謳い、導入を促しています。
このシステムは、中国のEC大手であるアリババグループの「アリペイ(支付宝)」にも対応しており、訪日外国人観光客の利用も視野に入れています。
ソフトバンク&ヤフーによるQRコード決済サービス「PayPay」
ソフトバンクとヤフーによる合弁会社「PayPay(ペイペイ)」は、10月からスマホを利用したQRコード決済サービスを提供し始めました。
クレジットカードと電子マネーの2種類に対応しており、コード支払いと読み取り支払いの両方の決済方法に対応。2021年9月までの3年間は読み取り支払い(ユーザースキャン)の決済手数料を無料に設定するなどを掲げ、加盟店の確保に動いています。
ファミリマートでコード決済スタート
大手コンビニチェーンであるファミリマートは、11月からコード決済の取り扱いをスタートさせました。
対応については段階的で、次のようになっています。
【11月1日以降、一部店舗で利用可能】
- d払い
- 楽天ペイ
- PayPay
- LINE Pay
【12月4日以降、全国の店舗で利用可能】
- d払い
- 楽天ペイ
- PayPay
- LINE Pay
【2019年1月下旬予定で利用可能】
- Alipay
- WeChat Pay
このうち、AlipayとWeChat Payは中国からの観光客に向けたインバウンド消費を見据えた対応のため、12月までにはQRコード決済が一通り整うと考えてよいでしょう。
ローソンでも先んじてキャッシュレス対応を行っており、コンビニでもQRコード決済が活用できるとなれば、普及スピードが速まると予測されます。
OrigamiとJR東日本グループとの実証実験をスタート
読み取り支払い(ユーザースキャン)に対応したQRコード決済サービスを提供する株式会社Origamiは、青森をキャッシュレス化する実証実験をスタートさせます。
これはJR東日本が2017年から始めたプログラム「JR東日本スタートアッププログラム」のひとつで、Origamiは、「アクセラレーションコース」に採用されました。
この実験は、2018年12月1日から2019年3月31日までの4ヶ月間おこなわれ、OrigamiとJR東日本グループは協業して青森県の地域観光資源と、スマホを活用したQRコード読み取り決済によるキャッシュレス化に取り組みます。
参考:https://about.origami.com/press/2018/0724/
小規模オフィス用飲料提供サービス「Coke mini」にLINE Pay対応
11月、コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社が提供する「Coke mini(コーク・ミニ)」の決済方法にLINE Payが導入されています。
「Coke mini」は全国に88万軒以上あるとされる、10名以上から30名未満の小規模オフィスを対象とした飲料提供サービスです。
Coke miniから購入したい商品のQRコードを読み込むことで、小銭をもっていなくてもスマホ1台でドリンクを購入可能です。
2018年は東京都内限定ですが、来春から順次設置エリアを広げていく予定と発表されています。
運営スペース100箇所以上のフードトラック「TLUNCH」QRコード決済を推進
TLUNCH(トランチ)は、ビルの空きスペースとフードトラックをマッチングするプラットフォームです。フードトラックが日替わりでスペースを利用することで、空いているスペースの有効活用と、食事の提供がスムーズに進められる仕組みで、サービス開始から2年9ヶ月で100箇所以上の運営スペースを開拓しました。
このTLINCHも、忙しいオフィス街でのランチタイムを効率よく運営するため、キャッシュレス化を推進させると発表しています。
スマートフォンによるアプリの事前決済は、2016年当時からすでに実証実験がおこなわれてきました。今後も、QRコード決済を中心としたキャッシュレス決済を推し進めていく方針です。
QRコード決済普及のカギ?キャッシュレス決済をサポートするオールインワン型端末
ここからは、QRコード決済普及に向けた最新動向についてご紹介します。
まだまだ低い日本のキャッシュレス決済比率
経産省は、「キャッシュレス・ビジョン」を策定、キャッシュレス決済を世界でも最高水準である80%にすることを掲げています。
しかし、こうした宣言とは裏腹に、国内のキャッシュレス決済は国際的にみてかなり低い数字にとどまっています。
経産省の調査によると、キャッシュレス決済比率が最も高いのは、韓国(89.1%)で、中国(60%)、カナダ(55.4%)と続いています。
2015年の比率調査において、日本の順位は11カ国中10位、比率は18.4%と伸び悩んでいます。
この理由について経産省は、
- 日本の現金に対する高い信頼
- POSレジ処理の速さや正確さ
- 現金を持ち歩くことに危険を感じない国内の治安の良さ
などを理由に挙げています。
つまり、日本の現金に対する信頼感が、かえってキャッシュレス決済の推進を妨げているのではないかということです。
・キャッシュレス・ビジョン 平成30年4月
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf
軽減税率のポイント還元とキャッシュレス決済
2019年10月に予定されている消費税増税も、キャッシュレス決済と関係があります。
政府は、キャッシュレス決済の中でも、
- クレジットカード
- 電子マネー
でポイント還元もしくは増税分の2%を割引する方針をかためています。
QRコードの読み取りやデビットカードなどのキャッシュレス決済は、今後新たに検討していくとしています。
しかし、そもそも中小規模事業者をどのような線引きで決定づけるのか、大手との差別化にどこまで対応するかなど未知数の部分が多いため、動向に要注目です。
キャッシュレス決済の種類とは
キャッシュレス決済とひとくちにいっても、その種類はさまざまです。
- クレジットカードなどの磁気式
- ICカード式
- QRコード読み取り
- バーコード読み取り
- 非接触型(ウェアラブル型)
おおまかに分類すると、現金以外の決済ではこのような多種多様な決済があります。
現金への安心感、信頼感にくわえて、これらのキャッシュレス決済の種類の多さが煩雑なイメージを与え、普及しづらくしている面があるかもしれません。
それゆえか、QRコードによるキャッシュレス決済を普及させるためには、これらの決済を包括的におこなえるオールインワン型の端末が必要とされてきました。
この端末提供事業者として、いくつかの企業が意気込みをみせています。
大和ハウスグループのロイヤルゲート「PAYGATE Station」
11月の記者会見で「業界トップシェアを目指す」と公言しているのが、大和ハウス工業グループのロイヤルゲートによる「PAYGATE Station」です。
- 磁気クレジットカード
- 接触ICクレジットカード
- タッチ決済
- 電子マネー
- QRコード決済
- 共有ポイント
これらに対応し、高度なセキュリティを確保できるマルチ決済端末として注目を集めています。
年度末までに加盟店30万店、それ以上の数字を目指しているとしています。
りそな銀行「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」
りそな銀行は、2018年11月から段階的に、小売・飲食店、サービス業などを対象として、「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」の機能を提供すると発表しました。
主要な決済ツールを1台で対応できるオールインワン型の端末が、加盟店には費用無償で提供されます。
この加盟店を利用する消費者は、
- 会員カードやクーポンの管理
- 加盟店独自のプリペイドカード機能
- 銀行口座からの即時決済機能・後払い機能
- デビットカード、クレジットカード機能
- 家計簿アプリとの連携による電子レシート機能
などを提携ウォレットアプリから利用することができるため、スマホ1台で買い物が可能になります。
こうした決済のトータルサポートは、大手銀行としては初めての試みとなり、加盟店がどこまで増えるか、今後に注目したいところです。
まとめ
スマートフォン1台で買い物ができるキャッシュレス決済。
現金への信頼感は変わらなくとも、お財布をもたずにちょっとした買い物をすませられる利便性や、小銭を多く持ち歩く必要のない社会は、誰にとってもメリットがあるのではないでしょうか。今後、関連サービスやオールインワン型端末の登場が相次ぐでしょう。政府の後押しの影響し、さらにQRコード読み取りの可能性が広がっていくと考えられます。
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