デスクワークを効率化するRPAの導入で店舗運営もスマートに
近年は少子高齢化の影響により、労働人口がこれから極端に減っていくことが現実レベルで予想されていることが話題になっています。
今後数十年のうちに日本の人口の4~5人は高齢者になると言われ、少ない人手で彼らとともに共生できる環境を整えていくことが喫緊の課題と言えるでしょう。
すでにその影響は都市部では如実に見られ、コンビニエンスストアやファストフード店では外国人の労働者や、人材不足が深刻な飲食業界では時給の上昇が少しづつ進むなど、これまで通りのやり方では店舗運営が立ち行かなくなってきています。
そこで注目を集めているのが業務をスマート化し、少ない人手で店を運営できるシステムを構築していくアプローチです。
バーコードの登場やPOSレジの浸透もそうでしたが、積極的なテクノロジーの導入は限られたスペースで店を経営していくために欠かせないものになります。
今回はRPAと呼ばれる技術に注目し、これがどのように店舗経営を助けるのか、そしてRPAを導入することで生まれるリソースの余裕をどのように活用していくかについてご紹介していきます。
【目次】
- RPAとは
- RPAの具体的な機能について
- RPAを取り巻くキーワード
- RPAの活用で余った人手はどう使うべきか
- RPAができること【業種別事例】
- RPAとマクロの違いについて
- 代表的なRPAツール
- RPAのフリーソフト
- 2018年に開催されるRPA関連セミナーについて
RPAとは
パターン化されたデスクワークを自動化してくれるRPA
RPAは「Robotic Process Automation」の略称で、その言葉通りロボティクス技術を用いて処理業務を自動化するという取り組みです。
ロボットによる作業の自動化は工業やIT分野においては先進的に取り入れられ、今ではなくてはならない存在にまでなっているのが伺えますが、この場合のRPAとは、デスクワークのようにいわゆるホワイトカラーの仕事をロボットで自動化してしまおうというものです。
体を使うブルーカラーの仕事とは違い、オフィスで働くホワイトカラーの仕事は頭脳労働なのでロボットには難しいと言われてきました。
しかしながら頭を使う仕事といえどもパターン化された業務というものはかなりの割合を占めており、これはロボットに最適化させれば簡単に自動化できてしまうことも少なくありません。
加えて人工知能の発達など、ロボティクス分野での技術力の向上も著しいものがあります。
単純労働しかできないと言われてきたロボットも人間に等しい、あるいはそれ以上の思考力を持ち始めているケースもすでに登場し始めていめており、デスクワークも部分的には現代の技術でロボットに代替が可能なのです。
RPAの具体的な機能について
RPAは広告作成のようなクリエイティブな業務ではなく、いわゆるルーティンワークとなった日常の「作業」を自動化するのに最適化されたシステムです。
ルーティンワークはRPAで解決
例えば日々の売上報告であったり、ソフトウェアのアップデートであったり、ハードウェアの点検など、わざわざ人が頭を使わずに業務を遂行できてしまうような単純労働はRPAの出番と言えるでしょう。
また、こういった業務は人の手で行うと単調化してしまうため、ヒューマンエラーが起こりやすい側面も持っています。人間のケアレスミスが目立つ業務もまた、RPAの導入でエラー回避率を最大限大きくすることができるようになるでしょう。
アナログ業務もデジタル化を通じてRPAで自動化が可能
RPAはコンピューターによる自動化を実現するため、現在コンピュータを用いて遂行している業務が対象になります。ただ、だからと言ってアナログ業務を自動化できないというわけではありません。
コンピューターを使わないルーティンワークは単に使わないだけで、コンピューターが使えないというケースは稀です。そのため、まずは業務をデジタル化し、その上でRPAの導入を検討すればたいていの場合解決することが可能です。
あるいはRPAを前提に業務のデジタル化を進めていけば、極めて効率的にルーティンワークを自動化させていくことができるでしょう。
RDAとの違い
RPAと類似する言葉として、RDA(Robotic Desktop Automation)というものもあります。RPAとRDAは基本的に業務をコンピューターに任せてしまうという点では同じで、ソフトのインストール先がサーバーなのがRPA、個人のコンピューターなのがRDAといった違いがあります。
デスクトップというワードが入っている通り、個人で気軽に導入してみたい場合にはRDAが最適であることも多いですが、厳密にRPAとRDAが分けられていないケースも存在するため、この2つの違いは実際に導入を検討する際に担当者に質問してみるのが良いでしょう。
RPAを取り巻くキーワード
業務の自動化における3つのクラス
RPAには3つのクラスがあり、細かいことを言えばRPAそのものはそのクラスの1つのことを指しています。
- RPA(Robotic Process Automation)
- EPA(Enhanced Process Automation)
- CA(Cognitive Automation)
それぞれについて、解説しますね。
1.RPA(Robotic Process Automation)A
1つ目は今回紹介しているRPAです。これはルーティンワークを自動化し、想定内の作業を人の手に頼らずとも高速で業務を遂行してくれるオートメーションシステムを指しています。
ただ、デメリットとして想定外の事態には自ら判断して対応することはできないため、あくまでも日常業務で想定外の事態や自己判断を要する業務に導入することはできません。
2.EPA(Enhanced Process Automation)
2つ目にEPA(Enhanced Process Automation)があります。これはRPAよりもレベルの高い業務の処理可能にしたシステムを指しており、機械学習やAIが導入されることでこのクラスのシステムも入手しやすくなりつつあります。
RPAでは対処しきれない、いわゆるビッグデータのような膨大な情報の処理や、チャットボットによる複雑な問い合わせ対応をEPAは担い、ある程度想定外のイレギュラーな業務にも対応することができます。
RPAよりも少し自立したシステムで、信頼性は高いと言えるでしょう。
3.CA(Cognitive Automation)
3つ目にCA(Cognitive Automation)です。これは高度な状況判断や意思決定を行えるシステムを指しており、このクラスになると業務内容だけを見れば人間と判断がつかないというケースもしばしば存在します。
膨大なデータをAIやディープラーニング駆使して処理し、リアルタイムの状況に応じて最適と考える意思判断を提供してくれるのがCAです。
天候や経済、国内外のニュースなどから状況を判断し、意思決定に取り組むだけでなく、深層学習によりその予測精度は使い込むほどに高くなってくことが期待できるなど、ホワイトカラーとしての業務にフルコミットできる可能性を持ったシステムになっています。
RPAの活用で余った人手はどう使うべきか
RPAのようにロボティクス技術を用いた業務効率化は、人間の職を奪ってしまうのではないかという懸念も存在します。
RPAによる業務の洗い出し効果
その懸念は幸か不幸か正しいものと言えるでしょう。ロボットやAIの台頭で現在人の手によって成立している仕事は、将来的に現在の3割程度にまで労働人口が落ち込むと言われ、残りの7割は全てオートメーションシステムによって自動化されるとされています。
しかし一方で、今の人間が携わる業務は本当に必要かどうか、適切な仕事量なのかといった議論も企業では進んでいます。RPAで自動化できる業務は人間が行う必要はありませんし、他にも工夫次第で自動化できてしまったり、そもそも必要のない業務が隠れているかもしれません。
RPAの導入は、そのように業務の見直しを促進し、経営のスマート化にも大きく貢献してくれるのです。
そして余った人材を有効活用し、人材不足を限りあるリソースで解消していくことができるようになるでしょう。
人間にしかできない仕事とは
そしてRPAなどのオートメーションで対応できない業務とは、人間同士のコミュニケーションは第一に挙げられます。接客などの業務も考え方によっては自動化できるとは言えますが、消費者のニーズを考えると必ずしもロボットが適切であるとは限りません。
店舗で買い物をする消費者にはスタッフとのコミュニケーションを目的に来店するケースも存在し、人と人との会話が行えるのもまた人間だけです。
また、クリエイティブな広告作りや、芸術的な営みもまたプロセスは自動化できても、「人が作ったもの」と「ロボットが作ったもの」とでは評価も違います。
RPAは確かに人の仕事を奪うかもしれませんが、新しく人の仕事の価値を高めたり、創造することになるかもしれません。
そういった意味でも、オートメーションシステムを積極的に導入していくことは次世代の店舗運営を考える上では欠かせないプロセスとなっていくことでしょう。
RPAができること【業種別事例】
RPAの得意とする業務には次のようなものがあります。 ・人事や経理などの事務に関する業務 ・データ分析 ・ビックデータを使った判断、予測処理 ここでは、RPAの得意分野を活用した、より具体的な事例について紹介していきます。
銀行でのRPA事例
数多くある業界の中でも、金融機関はRPA導入の先駆者的存在です。銀行や金融機関のように、正確性が必要な現場では、RPAが大いに活躍しています。
三菱UFJ銀行では、2年間の先行運用期間中に、20種類のRPAを導入したところ、年間8,000時間、つまり1日8時間で計算して毎日約1,000人分の事務的業務の削減に成功したそうです。
保険業でのRPA事例
大手保険会社の日本生命保険では、請求書データのシステム入力作業にRPAが活用されています。 RPA導入により、請求書データのシステム入力作業1件あたり数分かかっていた処理を、20秒ほどに短縮することに成功。また、単純ミスもなくなりました。
製造業でのRPA事例
味噌を中心として有名な大手食品メーカーのマルコメ株式会社では、POSデータ集計業務にRPAを採用しています。 POSデータ集計は、業務頻度としては月1回ですが、社員にとってはかなり負担になっていたそうです。
RPA導入により、1社あたり20分かかっていたPOSデータ集計を、5分に短縮することに成功。顧客への対応時間は70%削減しました。
自治体でのRPA事例
大手民間企業での導入事例が脚光を浴びている中、自治体でもRPA導入の動きが進んでいます。
茨城県つくば市では、民間企業と協力して、2018年1月からRPA導入の共同研究を行っています。住民、法人、外部機関から提出されたデータや紙ベースの書類を、庁内システムに手作業で入力する作業をRPA導入で効率化させることが目的です。
また、RPAが得意な電子データの処理だけでなく、紙や画像データといったOCRを含めた取り組みも見据えられているようで、これが実現すれば、かなりの業務の効率化が図れるのではないでしょうか。
RPAとマクロの違いについて
RPAが登場する以前は、事務業務の効率化ソフトウェアといえば、ExcelマクロやVBAでした。では、ExcelマクロやVBAよりもRPAを活用する動きになっている理由とは何なのでしょうか?
RPAとマクロやVBAでは、効率化する範囲が全く違います。VBAによるマクロは、Officeアプリケーションやドキュメント内での操作に限定されているため業務全体の自動化が図れず、非効率な手作業が残ってしまうことが多いのです。
一方で、RPAはパソコン上のすべての操作が対象になるため、業務全体を自動化し、手間を大幅に削減することができます。
また、マクロを使っている場合、ある程度のITスキルが必要です。担当者が辞めてしまった場合など、メンテナンスに苦労することもあります。それに対してRPAには、プログラミングスキルがほとんどなくても、簡単に自動化プログラムを開発できるものが多くあります。
代表的なRPAツール
RPA活用のポイントとして、ます、社内のセキュリティレベルや、RPA化したい業務内容・スクリプトなどを整理し、現状を把握しましょう。そして現状に合ったRPAツールを選ぶことが大切です。 ここでは、代表的なRPAツールを紹介します。
winactor 販売元:NTTデータ社(日本)
winactorは、純国産ツールなので、完全日本語対応のツールです。サポート体制が整っており、マニュアル類がとても充実しています。 WindowsのPC1台から手軽に導入でき、業務システム・基幹システムを大きく変更する必要がありません。比較的安い価格で導入できるのも魅力です。
Office製品(Excel,Access,Word,Outlook等)、ERP、OCR、共同利用及び個別に作り込んだシステムなど、Windows端末から操作できるあらゆるソフトウェアに対応。
金融機関システム間の情報連携、商社経理業務、基幹システムからの情報収集など、様々な利用事例があり、幅広い業種・業態への導入実績があります。
BizRobo 販売元:RPAテクノロジーズ社(日本)
RPAホールディングスの子会社、RPAテクノロジーズ社がから発売されているBizRobo。評判が良く、国内実績No.1のRPAツールです。日本メーカーなので、日本語によるトレーニングコンテンツが充実しています。
豊富な実績を生かして、RPA導入時の検討準備・体制構築・全社的な取り組みを見据えた展開をサポートしてくれるので、RPAを初めて導入する企業でも安心して任せることができるでしょう。
Webサーバー1台を用意して、複数のロボットを作成、同時に運用することができます。また、ロボットに覚えさせる業務フローの作成が簡単なので、オリジナルのロボットを作ることもできます。
UiPath 販売元:UiPath社(米国)
UiPathは、全世界ユーザー数が550企業という、メジャーなRPAツールです。日本でも大手金融機関・広告代理店などがUiPathのRPAを導入しています。
主な導入業界は金融と医療で、特に医療業界では、データの電子化や支払処理・医療システム内の患者の利用管理および症例管理など、幅広い利用例があります。
小規模から大規模まで幅広く対応できるRPAツールで、最初は軽量なRPAとして導入した場合も、段階的に規模を大きくすることが可能です。
WorkFusion 販売元:WorkFusion社(米国)
販売元のWorkFusion社は、日本未進出のRPAソフトウェアメーカー。南アフリカやインド等の大手銀行などへの導入で高い成果をあげています。 最大の特徴は、RPAフリーソフトウェア、RPA Expressを完全無料で提供していて、世界150か国で25,000以上のダウンロード実績がある点です。
そして、RPAと機械学習、OCR(光学文字認識)、チャットボットなどを組み合わせた有償ソリューション「Smart Process Automation(SPA)」も展開しています。Smart Process Automationでは、事務作業全体の最大85%を自動化させることができるそうです。
RPAのフリーソフト
大手の企業であれば、すぐにでもRPAの導入を検討したいところですが、中小企業や、個人の場合はコストの面を考え二の足を踏んでしまう場合も多いのではないでしょうか。
それでも、RPAで業務の効率化に取り組みたい方におすすめなのが、無料で使えるフリーソフトです。ぜひRPA導入の足掛かりとして活用してみましょう。
RPA Express 提供:WorkFusion社 完全無料のRPAフリーソフト
RPA Expressは、日本語には対応していないものの、機能や試用期間の制限がなく誰でも無料で使えます。トレーニング・プラットフォームを使えば、インストール作業や基本的操作、ビジネスプロセスの記録方法などを無料で学べます。
機能を更に高めたい場合には、有償オプションPro Subscriptionを選択することもできます。作成したデータは、WorkFusion社の有償ソリューションSmart Process Automationにそのまま移行することもできるので、本格的なRPA活用の第一歩として試す企業も数多くあります。
UWSC 提供:Windows フリーソフト
UWSCは、20年近く前からある国産のPC作業自動化ツールです。 無料版と、有料(シェアウエア)のUWSC Proがあります。 無料版でもキーやマウス操作の記録と再生、画像認識などもできて、Excelマクロを書ける程度のスキルがあれば使いこなせるでしょう。
スクリプトの構文もVisual Basicに近いので、 数十万・数百万円のRPAを導入しなくても、業務の効率化を図れるかもしれません。
2018年に開催されるRPAセミナーについて
RPAへの関心が高まる中、RPAセミナーが東京、大阪、名古屋、福岡と全国各地で開催されています。 ここでは、2018年開催されるRPA関連セミナーが検索できるサイトを紹介します。ぜひセミナーに足を運んで、RPAに対する知識を今以上に深めましょう。
- RPA BANK https://rpa-bank.com/company-event/
- TECH PLAY https://techplay.jp/tag/rpa
- パーソルプロセス&テクノジー https://www.persol-pt.co.jp/eventseminar/list/rpa/
まとめ
今後、RPAの技術は益々進化していくことになるでしょう。 まずは、現在の業務内容を見直し、無駄な業務を削減してください。そして、業務を自動化する余地があるかどうかを見極め、RPAの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
RPAの導入により、生産性向上、コスト削減、人材不足の解消など、日常業務のさまざまな効率化が図れる可能性があるはずです。