POSレジのOSでWindowsが人気の理由
膨大な数の商品を管理する場合、その数は増えれば増えるほど売上を伸ばしていく可能性が増していく一方、それらの商品を人の手で管理することは難しくなっていきます。
売上を伸ばしたいが、維持の手間がかかってしまうのは避けたい。そのような問題を解決するために利用されているのがPOSシステムです。
大手小売業者ではもはやおなじみのシステムですが、このシステムはイメージしているほど専門的なテクノロジーではなく、実は手元のコンピューターでも動かせるほどシンプルで身近な存在でもあります。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアで使われているレジは専門的な形をしているのが目につきますが、あれも中身を開けてみればWindowsで動いているということがほとんどで、専門のソフトを購入せずとも誰でも導入しようと思えばコストを抑えてPOSシステムを利用することができます。
今回はそんなPOSレジの概要と、WindowsのPOSシステムを取り巻く環境についてご紹介します。
POSレジとは
会計処理を一手に引き受けてくれるPOSシステム
Point Of Sales、通称POS(販売情報管理)システムはネットワークによって商品管理を行い、売上や在庫を記録するシステムです。商品情報や売上の記録はバーコードを用いて管理され、バーコードに登録された情報を読み取ることで購入記録が記憶され、売上予測などの統計データとして有益な情報をもたらしてくれます。
現在では据え置き型の専用ハードウェアを使わずともスマートフォンやタブレットでも会計を行うことができたり、売上情報データを自社サーバーではなくクラウドにアップロードし、一元的に管理することができるシステムも構築されています。POSシステムはますます身近に、そして便利になってきているのです。
多機能型のシステムも増加傾向に
加えてPOSシステムは売上管理以外にも様々な機能を持ち合わせており、会計処理をより効率の良いシステムに改善してくれる手助けをしてくれます。例えば今ではおなじみの自動釣り計算もPOSが商品情報に基づいて行いますし、クレジットカードや電子マネー決済もPOSを通じて処理することができます。
あるいはこれまでは別のソフトやマニュアルで行なっていた売上分析は、POSシステムに記録されたデータをそのまま用いて算出され、様々な統計データを導くことも可能になりました。
売上以外にも顧客情報を商品情報とともに記録したり勤怠管理も行うことができますし、さらにはECサイトとの連携機能を備えているシステムも珍しくありません。POSシステムを通じて、あらゆるシステムを一元化する基軸を設け、業務をさらに効率化できる機会を得ることができるようになっています。
なぜWindowsが多用されているのか
上記のように、よりスマートになりつつあるPOSシステムですが、現在最もポピュラーなOSもまたWindowsである点は無視できません。
ビジネスを支えてきたOSだからこそ
2000年代のIT革命時代を支えたWindows、特にWindows XPはその汎用性から多くの企業に愛され、バージョンがアップデートされた現在でもXPのまま使用している企業は決して少なくありません。買い替えのコストや使い勝手の仕様変更の点からPOSシステムのようなソフトは最新で、OSはWindows XPという店舗も珍しくなく、特に問題が起きないうちは現状のままで構わないというケースは日常的です。
またWindowsというOSそのものもビジネスシーンでは最もポピュラーなOSであるということもあり、例え組込型の専用OSであってもWindows系列のものを好んで選ばれたということもあるでしょう。Windowsであれば親和性の高いシステムを構築できる。やはりPOSシステムを導入する上で欠かせないのは、利便性の高さというところになります。
Windowsの抱えるリスク
一方で最近話題になっているのはWindowsを使うのは良いが、XPを使ってPOSシステムを動かすとセキュリティ上のリスクが格段に高まるという点です。
Windows XPはご存知の方も多いように、すでにサポート期間を終えた過去のOSとなっている(POSシステム特化のWindows XP Embeddedも2017年1月でサポート終了済み)ため、セキュリティや動作の保証は公式にされておらず、何かトラブルが起こった場合は自力で対処するほかありません。
加えて昨今はサイバー犯罪の増加により、XPユーザーは例え外部から遮断されたネットワークシステムを採用しているPOSであってもその被害を被ることがあり、決して油断できない状況であることは見逃せません。
POSシステムは特に会計情報や顧客データ、クレジットカード情報なども記録できてしまうぶん、サイバー犯罪のターゲットとして狙われることが多く、セキュリテイ対策をしっかりと行なっておく必要もあります。
Windowsで動作するPOSシステムだからと言って既存の古いOSで動かすのではなく、会計処理を行う以上はある程度時代にキャッチアップできる端末でシステムを導入することが求められているのです。
実際のところWindows XPのサポート終了問題は様々な業界で話題となり、これまでXPでシステムを構築してきた各企業はその対応に追われることとなっていますが、POSシステムに関しては最新版のWindowsに更新する以外にも、新たな代替OSを開拓する企業も散見されます。
その中で注目を集めているのが、スマートフォンでもおなじみのAndroidやiOSの存在です。
Windowsに替わるOSの存在
WindowsもPOSシステムの買い替え需要増加に対応すべく、組み込み用の「Windows 10 IoT」をリリースしており、従来のユーザーの囲い込みと一元化に向けて動き出してはいるものの、AndroidやiOSへのユーザー流出もうまく止められていないのも事実です。
なぜWindows離れが起きているのか
その理由としてはやはりWindows OSのライセンス料やセキュリティの問題が背景となっているようで、特に新興企業や個人事業者はサイバー犯罪のリスクと高いライセンス料を選ぶくらいなら新規参入のPOSシステムを導入するという流れも生まれつつあります。
その代替品として選ばれつつあるのがAndroidベースのPOS一体型端末で、これまでWindowsが提供してきたようなカスタマイズ性の高いシステムと同様の使い勝手を実現しているということで、アジアやアフリカの後進国を中心に注目が集まっています。
AndroidはオープンソースということでWindowsのようにライセンス料を支払うことなく端末の開発を行うことができ、セキュリティだけでなく金銭コストの面でも評価の高いOSとなっているのが特徴です。スマートフォンの普及によりAndroidを取り扱えるエンジニアが増えたことや、スマートフォン開発のようにgoogleの認証を得ることなく開発に専念できることもAndroid向けの環境が整っている背景にあるようです。
また、スマートフォンでのクレジットカード決済を可能にした「Square」の存在もWindows離れを加速させる要因になっています。これまでは大型のハードウェアを導入しなければ使えなかったことや、キャッシュによる決済が主流であったことが尾を引いていたPOSシステムも、クレジット決済の活発化やスマートフォンの普及、高性能化により、専用のクレジットカードリーダーさえあればいつでもどこでも誰でも気軽にPOSシステムを利用することができるようになりました。
事業者のWindows離れは、技術革新や新規参入企業の増加も背景にあるのです。
事業の規模で導入すべきシステムやOSも変わる
とはいえこういった新規参入のシステムにもまだWindowsに及ばない欠点を抱えています。それは大規模な複数のPOS端末を連携させた店舗管理を行うには、マシンスペックが不足するという点です。大型スーパーやコンビニで大きなハードウェアを用いてPOSシステムを導入しているのはこういった理由が大きく、何百もの店舗を一元的に管理するためにはまだまだパワフルなマシンとOSが必要であるということなのです。
個人事業者がわざわざパワフルなハードウェアを導入する必要はなく、AndroidやiOSを用いたPOSシステムを導入するのはむしろ小規模事業向けであるため、積極的にこちらを使っていくことは非常に有効です。
事業内容を踏まえて、適切なシステムを導入できるよう様々なモデルをリサーチしておくのが良いでしょう。