外食産業の未来を「ニーズ」と「テクノロジー」から考える
「外食産業の未来は暗い…」
そのように言われることも多いですが、実際のところはどうなのでしょうか。
この記事では
- 外食産業の現状・これから
- 未来の外食産業のニーズ
- 外食産業へのテクノロジーの浸透
という順で、外食産業の未来をニーズ・テクノロジーから考えていきます。
今すでに飲食店を運営されているかたはもちろん、これから飲食店を開業したいかたも要チェックです。
ニーズをつかみ、テクノロジーの流れをとらえることができれば、時代の流れによらない安定した店舗運営ができますよ。
まずは、これからのニーズとテクノロジーを、ざっくりと理解するところからはじめましょう!
未来の外食産業は、どれくらいの市場規模になる?
これから、外食産業の規模はどのように変化するのでしょうか。
日本フードサービス協会の統計によると、平成27年の外食産業における市場規模は約25.1兆円です。
最も外食の規模が大きかった1997年の29兆円と比べると、かなり縮小したと言えます。
出典:http://anan-zaidan.or.jp/data/2016-1-1.pdf
- 経済の成長で、個人の所得が増えた
- 女性が社会へ進出するようになった
- 一世帯あたりの人数が減り、核家族化した
このようなライフスタイルの変化が、外食産業の成長を押し上げました。
しかし、人口が減少していくことから、これからの外食産業は市場が大きくなるとは言いにくいのです。
人工の減少により、市場は小さくなる
総務省統計局の人口推計(平成29年(2017年)1月確定値、平成29年6月概算値)によれば、日本の人口はだんだんと減っています。
そのため、国内の市場は小さくなるばかりです。
さらに、後で詳しくお伝えしますが、調理済みの食品を家で食べる「中食(なかしょく)」の台頭も、外食産業市場の縮小をすすめています。
未来の外食産業でのニーズとは
では、未来の外食産業ではどんなニーズがあるのでしょうか?
ここからは、
- 中食をする消費者ニーズの拡大
- 海外進出によるニーズの開拓
- インバウンド需要による「コト消費」の新たなニーズ
を紹介していきます。
中食の台頭による、ニーズの変化
- コンビニ
- スーパー
- デパートの地下
などでお惣菜などの調理済み食品を買って家で食べる「中食(外食と家の食事の中間)」をする消費者が増えています。
共働きや女性の社会進出などによって、
- 手早く
- おいしく
- 安く
というニーズがさらに高まっています。
今でもテイクアウトメニューがある外食店舗はありますが、今後はさらにテイクアウト、お持ち帰りでの中食ニーズが高まるはずです。
海外へ進出し、ニーズを開拓
もはや日本の外食市場は小さくなりつつあることは、すでにお伝えした通りです。
そのため、未来の外食産業では、海外にニーズを開拓する動きが強まると予想されます。
2013年には日本食の文化が「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。
欧米を中心に「日本食ブーム」が押し寄せている現在、海外進出は生き残りのための道なのかもしれません。
インバウンド需要による、「コト消費」の新しいニーズ
日本の人口は減っていますが、海外から日本へやってくる観光客は増えています。
そのため、外国人観光客に向けたサービス、彼らのニーズをとらえたお店づくりが、これからの外食産業には必要かもしれません。
例えば、「日本食の体験」も一つのニーズです。
- 日本酒の試し飲みができる「利き酒」
- 自分で作ることができる「手巻き寿司」
など、日本独自の食文化を手軽に体験できることで、インバウンドのニーズをつかめるでしょう。
これまで「爆買い」というワードに象徴されたように、海外からの観光客のニーズは「モノの消費」が高いとされていましたが、既に「体験型」や「観光型」の「コト消費」に移行しつつあります。
こうしたニーズをしっかりとつかみ、商品やサービスを提供していくことが重要になってきます。
まとめると、
- 中食をする消費者ニーズの拡大
- 海外進出によるニーズの開拓
- インバウンド需要による「コト消費」の新たなニーズ
が、未来の外食においては重要なポイントとなるはずです。
外食産業にもテクノロジーが浸透していく
テクノロジーの波に合わせて、外食産業も変化していかなければなりません。
ここからは、
- AI・VR・ARによる接客の変化
- VRによる、お店の変化
- ロボットによる調理の変化
の順に、テクノロジーによって作られる、外食産業の未来を紹介します。
AI・VR・ARによる接客の変化
今は人間が行っている接客も、テクノロジーによって変わってしまうかもしれません。
例えば、
- POSデータを活用した、AIによるメニューのリコメンド
- VRによる、バーチャル空間での接客
- ARによる、現実世界での接客
など、テクノロジーで接客の形がさまざまな変化を見せる可能性があります。
VRによる、お店の変化
「お店」という形すら、テクノロジーは変えてしまうのでしょう。
例えば、
- VRで世界旅行の疑似体験をし、各国の料理を食べる
- 自宅でVRの機械を身につけるだけで、そこが飲食店になってしまう
- 遠くにいる人とでも、VRを使えば同じ場所で食事ができる
ということは、不可能なことではありません。
VRで世界旅行の疑似体験、というアイデアは既に行われています。
ファーストクラスに乗って世界を巡る旅を
引用:http://firstairlines.jp/index.html
今後は「同じ場所・時間に同じ食事をとる」ことが、より特別になっていくとも言えますね。
ロボットによる調理の変化
シェフすらも、テクノロジーによって代替されてしまうかもしれません。
- レシピ
- 調理の技術
などをロボットが完全に再現できる日は、着々と近づいています。
たとえば、餃子ロボットを導入したリンガーハットでは、「できたての美味しい生ぎょうざ・焼ぎょうざをご提供できている」としています。
ぎょうざロボットが活躍する外食の近未来を垣間見る先端的なロボット技術
引用:http://www.orixrentec.jp/roboren/case/ringerhut.html
また、海外のロボットメーカーMoley Rotics社が発表した「ロボットキッチン」は人工知能が搭載されており、世界の有名シェフが作った料理を再現してくれるそうです。
このように、調理方法やレシピがデータ化されてしまえば、世界中の美味しい料理がどこにいても提供できるようになるのです。
それこそ、「自宅でVRを身に着けて、ロボットが作った同じ料理を食べる」のようなこともできてしまうでしょう。
まとめると、外食産業の未来はテクノロジーを使うことで
- AI・VR・ARによる今までにない接客
- VRによる、新しいお店の形
- ロボットによる調理の変化
が予想されます。
ニーズ・テクノロジーに合わせた外食のあり方を探るべき
これからの外食産業は、
- 中食をする消費者ニーズの拡大
- 海外進出によるニーズの開拓
- インバウンド需要による「コト消費」の新たなニーズ
というニーズの変化が予想され、
- AI・VR・ARによる今までにない接客
- VRによる、新しいお店の形
- ロボットによる調理の変化
など、テクノロジーによって変わっていくと紹介しました。
とはいえ、必要以上に恐れなくても大丈夫です。
これまでも外食産業はさまざまな変化に対応してきました。
新しいニーズや、未来のテクノロジーに合わせた、外食のあり方を今から探っていけば、まだ間に合うはずです。
まずは外食産業の動きを少しづつ把握して、未来に向けて店舗づくりをはじめましょう!
この記事を書いた人
黒田剛司
大阪市立大学商学部を卒業後、新卒で独立。学生時代に身につけた経営・流通・マーケティングなどの知識を活かし、コマースについて幅広いジャンルで執筆。また、サイト制作やWebメディア運営も請け負っており、IT系の記事作成も可能。無類の動物好き。