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日本の無人店舗普及はどうなる?異業種参入でより活発化

テクノロジーを駆使した実店舗の無人化は、省人・省力化という視点からDXの重要なテーマの一つとして以前より研究が進められてきましたが、2020年に世界を襲ったコロナ禍以降、感染症対策という視点も加わったことで、これからの小売業にとってなくてはならない技術としてこれまで以上に注目されることになった分野です。

さらに、コロナ禍の影響は、単に小売企業に止まらず、さまざまな業種によって店舗の無人化テクノロジーが推進されつつある、という興味深い現象も起きています。

本項では、直近の小売業界での取り組みに触れつつ、無人店舗の現在地と、課題感などについて考察していきます。

【目次】

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店舗の無人化、省人化が進む

数年前、Amazonの手によって生み出された「Just Walk Out」方式がセンセーショナルだったAmazon Goによって、店舗の無人化、あるいは省人化は大きく注目されることになりました。

その後、日本でもコンビニエンスストアなどの業態を中心に、店舗の無人化・省人化の開発と実験が各社において粛々と進められてきています。

以下で、最新の状況を簡単にまとめておきましょう。

ファミリーマート

2020年11月頭に、ファミリーマートは、JR東日本のグループ会社・株式会社TOUCH TO GO(以下TTG)との業務提携を発表、TTGが開発した無人決済システムを用いた店舗実用化を目指すとしています。

TTGはすでに2020年3月、JR山手線高輪ゲートウェイ駅に直営となる無人決済店舗「TOUCH TOGO 高輪ゲートウェイ駅店」を商用化しているほか、紀ノ国屋と手を組んだ「KINOKUNIYA Sutto目白駅店」を開業しており、国内における無人決済システムの実用化においては他社をリードする存在だけに、ファミリーマートとの業務提携も、国内で無人店舗の普及が加速するきっかけとして期待が持てそうです。

ローソン

2020年2月、米国Vcognition Technologiesが開発したシステム「Zippin」を活用したレジレス店舗、「ローソン富士通新川崎TSレジレス店」を実証実験店舗としてオープンさせました。実験は2月26日から5月25日までの3ヶ月間実施されています。

こちらの店舗はAmazon Go同様の完全ウォークスルー型の店舗になっており、店舗内天井には多くのカメラとセンサーが実装されています。また、富士通が開発した「マルチ生体認証」によって掌の静脈と顔認証を用いて入店できる世界初の店舗になったという特徴もあります。

光洋ショップ

ローソンの例を見てもわかる通り、富士通は、レジレス店舗システムの研究開発に積極的に取り組んでいます。2021年1月には病院・介護施設向けのコンビニを展開している光洋ショップ-プラスと組んで、「グリーンリーブスプラス横浜テクノタワーホテル店」でレジレス店舗の実証実験を開始しています。

ローソンの店舗同様、生体認証技術を活用した本人確認を行うシステムとなっており、ユーザーは事前にスマホにダウンロードしたアプリに自分の生体情報を登録することで、QRコードをかざして入店できるようになります。

いろいろな「無人店舗」の形

上記項目で挙げたコンビニにおける実験以外で、今注目されているのが、不動産業界という、ある種”異業種”からの無人店舗・レジレス店舗参入です。

HESTAスマートストア(株式会社大倉)

大阪を拠点とする創業58年の住宅メーカー、株式会社大倉は、AI+IoTを活用したスマートシティプロジェクトを積極的に推進しており、その一環として、2021年2月、大阪市北区の天神橋筋商店街に「HESTAスマートストア」という無人コンビニをオープンさせました。

店内にAIカメラや重量センサーなどを設置し、商品と買い物客の動きを識別するシステムと、スマートフォンアプリに決済情報などを事前に登録しておくなどの方式は他の無人店舗・レジレス店舗とほぼ同様の方式となっています。

現状、まだまだ実証実験というフェーズの店舗が多いため、開発に関係している企業のオフィスや工場の中で営業している店舗が多い中、この店舗のユニークなところは、全国でも珍しい路面店として運営されている、というところです。

加えて、店頭には顔認証で購入できる自動販売機や、QRコード決済が可能な“ガチャ”、顔認証で解錠と決済を行うスマートロッカーを設置するなど、徹底的にIoTにこだわっていることが伺えます。

スマリテ(ゴールデンバーグ株式会社×サッポロ不動産開発株式会社)

もう一点、不動産企業が絡んだ無人店舗の事例として挙げておきたいのが、AI搭載型無人販売機・プラットフォームの「スマリテ」です。

これは、サッポロ不動産開発株式会社が所有しているシェアハウス型賃貸物件に、ゴールデンバーグ株式会社が開発した無人販売機を設置して実証実験を行うもので、2021年1月から実施されています。

利用者はスマートフォンに「スマリテ」アプリをダウンロードし、決済アプリと紐づけることで、販売機上の商品をいつでもキャッシュレスで購入できるシステムとなっており、同社はこれを「日本初クラウド・プラットフォームサービスによる課題解決型“遠隔小売システム”」と位置付けています。

この無人販売機は、IoT機器となっていて専用サーバと常に通信状態なため、販売状況、在庫情報をリアルタイムで把握することが可能になっているほか、それらのデータに基づいて需要予測などに活用することもできます。

加えて食品を販売するのであれば必須の温度管理や賞味期限管理などもできるため、販売者はこれまで人力で行っていた業務の運営コストを限りなくゼロに近づけることが可能となっています。

無人店舗・レジレス店舗が抱える課題点

これまで見てきたように、無人店舗・レジレス店舗は一見このまま普及していくかのようにも思えますが、もちろん、まだ課題も山積している、というのが現状でしょう。

まず、基本的に動いている買い物客を正確に捉え続けることは非常に難しいため、購入商品が正しく認識されなかったり、まだまだ店内の人数に制限が設けられていたり、という部分には改善が必要です。これにはカメラやセンサーのさらなる精度向上が求められます。

これに関連して、酒類やたばこなど、これまで有人の店舗であれば問題なく販売できていた商品をどう販売可能にしていくか、という課題にも取り組まなければならないでしょう。

コンビニと言えば、売上の多くをレジ横のホットスナックが支えている、という側面もあり、それらの調理についてはまだ無人で回せる状態ではないでしょう。

また、現状多くの無人店舗・レジレス店舗が採用している、「ユーザーにアプリを事前にダウンロードさせる」という方式についても、普及させるには、そのためのマーケティング(集客など)コストがかかってくる、という問題もあります。

加えて、それらを総合的に見たときに、現状で無人店舗・レジレス店舗に適した店舗の大きさには限りがある、という結論に至ります。それを示すように、TTGの代表取締役社長・阿久津智紀氏は、TTGを活用する店舗の適正規模として「自販機以上、コンビニ未満」を掲げており、それ以上広い店舗に、現状の無人店舗のシステムは向かないと明言しています。

これらの課題および、そもそも論として、店舗の従業員を増員することがコスト的に厳しい、という企業が現状多い、ということに鑑みると、現状に最もフィットするのは、比較的小規模スペースを活用した完全無人店舗と言えそうですが、もちろん、これは今後の世の中の動きで大きく変わっていく部分であるとも言えます。

もし、コスト削減という視点優位ではなく、あくまでレジレス店舗という立ち位置で、人の手は徹底的にサービスに充てることで、買い物体験を深化させることができれば、それはOMOを実現する店舗として全く新しい価値を顧客に提供できるものになるのではないでしょうか。

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