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アフターデジタル時代にテクノロジーで切り拓く次世代店舗の可能性〜Japan IT Week【秋】セミナーレポート〜

去る10月23日(水)〜25日(金)の3日間、千葉・幕張メッセで、日本最大級のIT展示会、「第10回 Japan IT Week 秋」が開催されました。

本項では、同イベント内で同時開催されたセミナーセッションに登壇した株式会社エスキュービズム 代表取締役社長 薮崎 敬祐による講演「アフターデジタル時代にテクノロジーで切り拓く次世代店舗の可能性」より、内容を一部抜粋してご紹介します。

薮崎が登壇したのはイベント最終日となる10月25日(金)。記録的豪雨が降りしきる中にもかかわらずセミナー会場には1000人近い来場者が詰めかけ、今後の流通小売業が進むべき方向性というテーマに対して、関係者の関心がいかに高いかを裏付けているかのようでした。

目次

「デジタルがリアル店舗を包括する」のがアフターデジタル

株式会社エスキュービズム
代表取締役社長 薮崎 敬祐

弊社は2006年に設立して以来、常に「テクノロジー×流通」という切り口を中心に据えてビジネスを行ってきています。この切り口に基づいて、ネット通販事業や家電メーカー事業、中古車流通事業と幅広く展開して参りました。

その中で、アフターデジタルと呼ばれる時代を前に、デジタルトランスフォーメーション事業に成長の余地を見出し、現在は他の事業を全て売却してIT事業に集中しています。

元々はEコマースのパッケージソフトウェアの開発からスタートしていますが、2011年頃にはiPadでPOSを開発し、在庫や会員を連動するということを当時から始めていました。その後、オムニチャネルやOMO、そして今回のアフターデジタルという言葉が広がりはじめ、今は追い風を受けている状態とも言えます。

元々自社でプロダクトを販売していたこともあり、Eコマースはもちろん、リアル店舗についての知識と経験も蓄積されており、両方を知っているという部分を買っていただいて、多くの案件のご相談をいただきます。

アフターデジタル、OMO、ニューリテール。最近これらの言葉をよく耳にすると思います。OMOは「Online Merges with Offline」の略なのですが、これらの3つはほぼ同じような概念を指しているとお考えいただいて結構です。

今までの考え方では、デジタルとリアルをいかに繋げるか、という思考で、これがO2O、オムニチャネルと呼ばれるものでした。しかし、アフターデジタル、OMO、ニューリテールという概念では、デジタルの方がメインで、デジタルがリアルを包括するという思考になります。これからはデジタルが中心で、店舗を含めたリアルの場は、そのタッチポイント、接触するチャネルの一つであるということです。

これは、店舗を持っている流通小売業の方々からすると、なかなか受け入れにくい概念かもしれません。なぜなら、売上の大半はリアル店舗から上がっていて、資産の大半もリアル店舗が絡んでいるからです。

したがって、アフターデジタルを理解するには、売上や資産という視点ではなく、「次の時代への投資」という考え方を持つと良いと思います。

スマホ起点で考える

今の時代、電車の中ではほとんどの人がスマホを見ていますよね。95%ぐらいの方が見ているのではないでしょうか。

私は学生時代に「R25」」創刊前のフィジビリティスタディにアルバイトとして働いていたことがあるのですが、その時に電車の中で乗客が何をやっているのかという調査をやったことがあります。2003年の頃の話です。その時は7割の人が電車の中では何もせずに寝ていました。2割の人が本を、残りの1割が新聞を読んでいました。いろんな路線、状況で調査しても、ほぼその数値でした。

その5年後、スマホが登場すると人々の行動がだんだん変化していき、今や本当にほぼ全員がスマホを見ています。スマホの登場が世界を劇的に変えた要因であり、アフターデジタル時代ではスマホを起点にして考える、ということが最も重要なキーになると思います。

それを、いくつかの事例でお話しします。

「真の無人店舗」へと進化するのはコンビニではない

有名なところでは「Amazon Go」ですね。スマホで個人を認証して入店、モノを取ったらそのままチェックアウト、会計することなく外に出られます。これが新しい店舗の業態の一つになってくると思います。

ただし、コンビニは無人化しないとも言われています。なぜなら、コンビニの価値は「レジ周り」にあるからです。おでんや温められた惣菜、スナックなどですね。無人店舗にすると、これらがなくなる、つまり今コンビニを支えている価値が消える可能性があるのです。

一方で、新しい店舗の可能性を示唆しているのが「オフィスグリコ」です。あれは既に無人店舗なんですね。オフィスグリコをデジタル化すると、100円のお菓子だけでなく、色んな価格のものが置けたり、会員データが取得できます。実際、そのような業態に向けた無人レジの開発なども、実は委託を受けて手がけたことがあります。

このように、真の無人店舗はコンビニではなく、オフィスグリコやキオスクなど、いわば「一坪ショップ」のような業態になって出てくるのではないかなと考えています。コンビニはコンビニで、先ほども申し上げたように店員が起点になっている部分に価値があったりするので、また違う進化を遂げていくだろうなと考えています。

フーマーフレッシュのサービスは「テクノロジー×人海戦術」で成立している

「フーマーフレッシュ」は、アリババが手がける中国の有名なスーパーです。店舗に行くと食材が生で売っていて、それを選ぶとその場で調理して食べられたり、スマホで注文するとそれを店員がピックアップして調理したものを配達してくれたりします。

実際現地で見てきたのですが、店内中QRコードだらけなんですね。QRコードがひたすら貼ってあって、スマホで全てが完結します。これは、アリペイやウィーチャットペイなどQRコード決済が普及している中国ならではだなと思いました。

知り合いの中国人に実際オーダーをしてもらって感心したのは、やはりスマホと購買体験の連動性が凄かったことです。食材を買って店内で調理してもらい、それを待っている時に、今どのような状態で、何分で完了するか、ということがずっとプッシュ通知でスマホに届くのです。

一方で、たまたまフーマーフレッシュの地下を覗く機会があったのですが、そこには配送用のバイクとスタッフが300、400と待機している。そのような人海戦術がテクノロジーと合わさってサービスを実現していると感じ、これを日本で実現するのは難しいなと思ったのも事実です。

難しいのはシステム構築ではなくオペレーション構築

次にご紹介する「ラッキンコーヒー」も中国の事例で、コーヒーをスマホで事前に注文して店舗で受け取れるというサービスです。スターバックスやタリーズに行くと10人ぐらい並んでいて時間もかかってしまう、という中、スマホで事前に注文しておけば並ぶ必要がなく美味しいコーヒーが受け取れる、今後も普及していきそうないいサービスなのですが、実は課題もあります。

私たちも同じようなサービスのシステム開発を日本のとあるクライアントからご相談を受けましたが、難しいのはシステムの構築ではなくオペレーションなのです。デジタルから入ってくる注文を制御できないんですね。注文が大量に、同時に入ってきたらどうするんだと。注文した側はすぐに受け取れることを期待しているのに、それを実現することが難しくなってしまうのです。雨の日のタクシー予約サイトと同じです。

ラッキンコーヒーでは、やはり中にたくさん人がいて、別のラインとしてコーヒーをひたすら作り続けるということを実現できているから成り立っているサービスなのですが、2、3人のスタッフで回していくのは非常に難しい。

したがって、お見せしているのは世界では先を行っている事例ではありますが、これを今の人手不足、人件費高騰の日本でどうアレンジしていくのか、というのが非常に大事な視点だと思っています。

ploy.mmm / Shutterstock.com

アフターデジタル時代の店舗で必須になること

Buy(必要だから買う)ではなく、Shopping(プロセスを楽しむ)場所へ

私たちがよくお客様に話しているのは、店舗の「Good」をどこに持っていくか、という定義が必要です、ということです。皆さんもその答えを聞きたいと思うのですが、答えはまだ出ていません。ただ、「リアル店舗の価値はBuyからShoppingへ」という、買い物の「プロセス」を楽しめる場にする、というところに集約されていくことは間違いないと思います。

例えばスーパーなどは、「買うために行く」、やらなくてはならない行動の一環として行く、という側面もあると思いますが、多くの小売店舗においては、店舗に来てもらう理由をどう作るかが重要です。

これまでも、流通小売業の歴史というのは、特売を打ってチラシで知らせたり、いかに店舗に来てもらうかの理由を考えてきた歴史だと思いますが、ECがある今、価格勝負では厳しい世界です。したがって、店舗の臨場感、エンターテインメント性を、フィロソフィーを持ってどう設計するかが大切になってくるのです。

ビジネスに繋げるための設計を伴ったPoC

どんな店舗設計が正解かに答えはありません。したがって、今は頭で考えるだけでなく、PoC(実験実験)で実際にやってみるというのが、ほぼ必須となっています。これは、今やテクノロジーを使うことが比較的安価で手軽になってきたためです。

例えば、CCCが展開している蔦屋家電さんなどは壮大なPoCだと思います。店舗丸ごとの実験で、PDCAを回して色々と変化させながら運営されていますが、あれは日本で一番大きなPoCなんじゃないかと、個人的には思っています。

一方で、様々な局面で直面するのが予算の問題です。新たな形態の店舗設計ともなるとアプリ制作とはかかってくる予算も違うため、PoCの結果が出ないというところで行ったり来たりしているプロジェクトも多いと感じます。したがって、スマホファーストではあるものの、スマホアプリを作ることだけがPoCではなくて、アイデアの中でどのような結果を求めていくかというところまでを設計するところが非常に大切になってきます。

また、スマホアプリは、数が増えれば増えるほど、どんどん使われなくなっていきます。したがって、これをどうやって使わせるかという設計も難しいところです。これらをPoCでどのように実証しながらビジネスにつなげていくかが全てだと思います。

テクノロジーでコスト削減ではなく、付加価値を作る

テクノロジーは、20世紀後半に登場してから、ずっとコスト削減が目的でした。これが、WEBができてインターネットに繋がって変わったのです。それは、Eコマースだけでなく、今はリアルの世界も同様です。

アフターデジタルの世界は、コスト削減ではなく、事業をどう広げていくかという視点が大切です。単純に「商品検索を簡単にして、顧客自身に探してもらって店員を2人減らそう」というような発想は、やっぱりコスト削減にしかなりません。そこに、テクノロジーでどんな付加価値を与えていくのか、というのがアフターデジタル的な考え方だと思います。

「試着室×セルフレジ」の事例

店舗の価値の一つには、やっぱりその場で試せる、買える、という即時性があると思います。私たちが今年の8月に某アパレルに提供したPoCでは、セルフレジと試着室を組み合わせたサービスを展開しました。ネットであらかじめ服を探しておいて、試着の予約をします。店舗に行くとその服が用意されていて、試着していいなと思ったら試着室に設置されたセルフレジでクレジットカード決済ができるというものです。

こうすると、店舗に行ってから服を選んで、店員を探して話して、試着に行って、さらにそれをレジに持って行って並ぶ、という工程を全部カットできます。ものの5分10分で好きな服を試着して買える、ということを実現したのです。これが想定以上に反響が良く、終了期間を延長して実施しています。

ただ、それなりの予算がかかっているのと、やはりオペレーションのところでボトルネックがあり、全店展開はまだできていません。流通小売業の裏側に関わっている方であればよくわかると思いますが、在庫がズレるのです。例えば試着予約の時にMサイズを取り置きします。でも試着してみてやっぱりLかな、と店舗でLサイズを取ってきて、最初のMを買わなかった時、在庫を戻さないといけません。その在庫の扱いをどうするのか、在庫がズレていくという問題は非常に大きいのです。

したがって、店舗で導入する際は、そのあたりのオペレーションをどう改善するのか、在庫がズレた時にどうするのか、といったことまで練っておかなければなりません。

アフターデジタルの世界においてリアル店舗で起きる問題は、こういったオペレーションの部分が多いですね。

エンターテインメントを加速させる

サントリーのBOSSが提供している「TOUCH-AND-GO」は、モバイルオーダーのコーヒーなのですが、スマホを通じてラベルにオリジナルの名前を印字することができます。別に自分の名前でなくてもよくて、推しメンの名前を印字したりして、インスタ映えするということでSNSでも話題になっています。

こうしたアイデア次第で、別に「効率的に安く買う」ではない価値を、「インスタ映え」というのもひとつのキーワードかもしれませんが、店舗に取り入れることができると思います。

弊社でも現在、ホログラムを活用した店舗での新しい体験という、エンタメ性に特化した取り組みを大手のクライアントと行なっております。

店舗の外から中に入って、中から外に出ていくまで、何が実現できるか。ひとつひとつのシステムを作るのは簡単なのですが、先ほども申し上げたように業務と繋げるのが非常に大変だったりするので、そこが突破できれば本当に新しい可能性が芽生えて、さらにそれがブランドやチェーンに適合していくと、未来の店舗の事例になっていくのかなと思っております。

本日は事例を中心にお話させていただきましたが、PoC等、皆様の業種業態に当てはめて何らかのヒントになりましたら幸いです。

ありがとうございました。

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