進化が求められるビジネスプロセス。改善のポイントはDX化にあり
企業活動において基本となるビジネスプロセスは、業種によって特徴があります。人に依存するビジネスプロセスは再現性が低いため、標準化することが重要です。
この記事ではビジネスプロセスを進化させたい方に向けて、昨今重視されているAIやデータドリブンな思考、DXを取り入れるポイントを解説します。DXの導入によってビジネスプロセスを見直す一助になれば幸いです。
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企業が特定の目的を達成するために行う活動である「ビジネスプロセス」。どの企業にも基本となるビジネスプロセスがあるでしょう。
まずは小売・製造・ITの3つの分野別に、主なビジネスプロセスについてみていきましょう。
小売業のビジネスプロセス
EC化率の上昇や無人店舗の出店など、小売業も多様化を見せています。小売業の主なビジネスプロセスは以下の通りです。
- メーカーが商品を開発・製造する
- メーカーが卸業者に商品を卸す
- 小売業者が仕入れ・販売を行う
- 消費者が購入・利用する
小売業のビジネスプロセスでは、メーカーが商品を開発・製造することが起点となります。
小売業者は卸業者から商品を仕入れるという流れが基本ですが、昨今では卸業者や代理店を通さず、自社のECサイトでダイレクトにユーザーに商品を販売する「DtoC」(Direct-to-Consumer)の事例も増えています。
製造業のビジネスプロセス
製造業の主なビジネスプロセスは以下の通りです。
- 注文を受け付ける
- 納期や工場設備をもとに生産計画を立てる
- 生産計画をもとに生産活動を行う
- 顧客の出庫指示に従い出庫する
- 顧客のもとへ商品が届きプロセスが完了する
製造業は商材やサービスを作ることが基本です。国内の市場で1番大きな割合を占める製造業は取り扱う商品の幅が広く、生産が数時間で完了するものもあれば数か月かかるものもあります。
ITのビジネスプロセス
ソフトウェアやツール開発を行うIT業界の場合、主となるビジネスプロセスは以下の通りです。
- クライアントとともにシステムの運用方法や期間などを取り決めた要件定義を行う
- 要件定義に従いエンジニアが基本設計書を作成する
- 基本設計書をもとに詳細設計を作成する
- 詳細設計をもとにSEやプログラマがプログラミングを行う
- 要件定義通りシステムが動作するか単体テストを行う
- 単体テスト工程をクリアしたら複数のモジュールを組み合わせて結合テストを行う
- システム全体に不具合がないかシステムテストを行う
- クライアントの要望を満たし正常に稼働するか運用テストを行う
- システムのテストが完了したらシステム移行によって旧システムから新システムへ移行する
- リリース後は保守・運用業務でシステムを監視する
IT業界では効率よく高品質なシステムを開発するために、システムを複数の工程に分けて行います。特に開発に数年を要するような長期プロジェクトになるほど、フェーズを細分化します。
細かくゴールを設定して着実に進めることで、関係者全員が完成図をイメージしやすくなったりタスク管理がしやすくなったりする点がメリットです。
上記が小売・製造・IT業界における主なビジネスプロセスとなります。上記はあくまでも「基本」であり、競争力を高めるためにはビジネスプロセスを再考し、プロセスそのものの価値を高めることがポイントです。
事業の発展と共に求められるビジネスプロセスの進化
事業の発達に伴い、避けられないのがビジネスプロセスの進化です。これからのビジネスプロセスでは、どの業界もアジャイルやAI活用といった新しいものが欠かせません。
PDCAとアジャイルなマインドが重要
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を合わせたPDCAサイクル。仮設・検証型プロセスを循環させる方法の定番であり、知らないビジネスパーソンはいないでしょう。
PDCAサイクルは1950年代に品質管理の分野において生まれた言葉ですが、2020年を過ぎた今でも、ビジネスプロセスのマネジメントにおいて欠かせない概念の1つです。
既存の企業がビジネスプロセスを最適化させるためには、プロセス全体を見直し、仮説を立てたりKPIをセットしたりしながら、PDCAサイクルを回して改革を推進することが重要となります。
そして、PDCAサイクルを回すときに意識したいことが「アジャイル」というキーワードです。俊敏や迅速を意味するアジャイルは、IT業界における「アジャイル開発」としてよく使われます。
アジャイル開発は上流工程から下流工程まで計画的に進める「ウォーターフォール開発」の対義であり、機能ごとに小さく開発してPDCAを回していく点が特徴です。アジャイル開発は、トラブル発生時の修正工数の少なさや開発スピードが早いといったメリットがあります。
昨今のIT業界で重視されるアジャイル的な思考は、ビジネスプロセスにおいても1つの鍵となります。ビジネスプロセス全体を見直すことも大事ですが、そのプロセスを構成する1つ1つの小さなプロセスにも着目し、細かくPDCAサイクルを回していくことでよりビジネスプロセスを最適に進化させられるでしょう。
AI活用や分析能力は「手段の1つ」として捉える
AI技術の1つとして生まれた「ChatGPT」は多くの企業が注目しており、いかに自社に取り込むべきかと模索するケースも少なくありません。2023年に入ると日本でも100万人を超えるユーザーが利用しており、導入を進める自治体も増えています。
ChatGPTは「GPT」という文章生成モデルをチャット形式で扱えるITサービスで、ディープラーニングのアルゴリズムでは人間の脳構造を模していることで有名です。自然言語処理の能力も日々向上しており、日本語の品質も上がりました。
品質が上がったChatGPTは多くの企業で利用されており、旅行会社では旅程作成や予約、旅行先でのトラブル対応に活用されたり、企業サイトのチャットボットとして活用されたりと、今後ますます活躍することが見込まれています。
多くの企業が「どうやってChatGPTを自社に取り込むべきか」と考えていますが、導入=正解とは限りません。重要なのは最新技術をいかに取り入れるべきか、ではなく「今のビジネスモデルが最適であるかどうか」という点です。
まずは時代やニーズに合ったビジネスプロセスへと改善し、そのうえで、業務改善に必要と判断した部分に、手段の1つとしてChatGPTなどの技術を取り入れていきましょう。
またビッグデータの活用も進んでおり、大手コンビニ企業なども膨大なデータを管理したり分析したりして企業活動に生かしています。データドリブンな意思決定が重視されるようになり、分析能力も高めなければなりません。
AIの活用やデータの分析には、まずデータを蓄積する仕組みが必要です。多くの企業ではデータが散在しており、うまく活用できていません。ビジネスプロセスの再設計とともにデータの蓄積方法も検討し、使えるデータを蓄積できるように設計していきましょう。
DX化×ビジネスプロセスの改善で進化を続ける
ITの進化が目覚ましく、2023年以降も世界中でデジタル投資の金額は増える見込みです。昨今ではサイバー犯罪の被害を受ける企業が多く、サイバーセキュリティ関連にコストを割いていく企業も少なくありません。
デジタル投資に舵を切る大きな理由として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進があります。
数年前から国が進めているDXは、「デジタル技術の活用によるビジネスプロセスの改善」を目標の1つとしています。さらに「製品やサービスそのものを変化させ、競争上の優位性を確立すること」も目的としており、企業はビジネスプロセスを再考するだけでなく、DXを取り入れて価値を高めることも求められているのです。
ビッグデータの分析や活用には、データエンジニアやデータサイエンティスト、データアナリストといったデータ専門職のスキルが必要となります。企業はIT投資の対象として設備やシステムだけでなく、こうしたIT人材の確保にもコストを掛けなければなりません。
IT投資や人材確保については、小売業界のIT投資は23年以降も増加、DX化のための投資計画で詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
データ活用時代となり企業や消費者を取り巻く環境が劇的に進化している今、ビジネスプロセスの進化は避けて通れません。
AI活用やビッグデータの活用などどの業界でもITを取り入れた進化が必要です。新しい技術も大変重要ですが、あくまでもビジネスプロセスを進化させる「手段」の1つであり、ITの導入がゴールではありません。
ぜひこの機会にビジネスプロセスを見直し、時代や消費者の「今」のニーズに合わせた最適な改善策が見つかるよう応援しています。