ファミリーマートのデジタル戦略「ファミペイ」とキャッシュレス決済の今後
2019年7月にローンチされたコンビニPay「ファミペイ(Famipay)」は、1ヶ月でダウンロード数300万を超えました。バーコードでの決済サービス、キャッシュレス決済機能だけでなく、「ファミリーマートでのお買い物をお財布レスにするスーパーアプリ」を目指すとしています。
9月19日に開催された「インストアテック2019東京」のオープニングセッションでは、株式会社ファミリーマート シニアオフィサー 経営企画本部 デジタル戦略部長 植野氏が登壇し、ファミペイを中心としたデジタルトランスフォーメーション(DX)をどのように推進してきたかを語りました。
ファミリーマートがどのように戦略と実践をおこなってきたかを通して、デジタルトランスフォーメーションを実践するポイントや、キャッシュレス決済サービスの今後について解説します。
【目次】
- ファミリーマートのデジタル戦略~「ファミペイ」を軸にしたDXの道のりと今求められるリーダーシップとは〜
- 組織づくりと広報活動がDXの入口
- ファミリーマートDX戦略の三つの柱
- キャッシュレス決済は今後普及するか
ファミリーマートのデジタル戦略~「ファミペイ」を軸にしたDXの道のりと今求められるリーダーシップとは〜
冒頭、植野氏はトレンドワードと化している「DX」について「デジタルごっこで終わらせないこと」「DXはリーダーシップが重要である」と述べました。
植野氏「DXを推進するためには、強い覚悟が必要です。このまま何もせずにいたら、企業の余命は数年、というところも多いでしょう。会社を一度壊して作り直す覚悟、DXを実行しているうちに倒産する可能性もあります。
デジタルトランスフォーメーションとは『デジタル×変革』です。デジタルとは何か、変革とは何か、しっかり考えなくてはなりません」
デジタルと変革(トランスフォーメーション)をしっかり捉える
植野氏「デジタルというビッグワードは大きすぎて、なかなかその全貌をとらえきれないことと思います。自分たちのビジネスモデルにとってのデジタルとはなんなのか、そのテクノロジーがハイプサイクル上でどんなポジションにいるのかを見極めて、外部の知見を借りながらビジネスに取り込んでいくことが重要です。
トランスフォーメーションはデジタルと違い、既に方程式が出来上がっています。グローバルでは変革といえばやることは3つです。
- コストを削減して原資を作る
- 新しいビジネスモデルに投資する
- 新組織を構築して施策を実施する
新しい組織を作るのは時間がかかりますので、これはなるべく早く着手した方がいいでしょう。
コスト削減はそれほど難しくはありません。難しいのはビジネスモデルに投資してどう革新するかという部分です。デジタルトランスフォーメーションでは戦略が複雑化していて、コスト構造の概念がこれまでとは違っています。
自分たちの事業にどのデジタル技術が必要なのか、どのフェーズにあるのか。変革に掛け合わせて新しいビジネスモデルを作るのか。ここが非常に難しいところです。」
組織づくりと広報活動がDXの入口
ファミリーマートではまず澤田社長が「デジタル戦略に全力で取り組む」ことを新聞などのメディアで宣言するところから始まりました。対外的に注目が集まったため、退路を断った形です。社内では横断組織を作り、ビジネスモデルを作っているメンバーで定例ミーティングを行っているといいます。
ファミリーマートのアルバイトスタッフまで含めたインナーマーケティングは、60回にも及び、しっかりと末端にまでデジタル戦略の意義を生き渡らせました。
ファミペイを中心としたデジタル戦略を進めるため、UI、UX、PMO支援、システム、運用、広告といったデジタルに特化したスペシャリストを集めたドリームチームを作ったこともファミリーマートならではといえます。
植野氏「こうした組織づくりと社内外の広報活動をDXの入口とし、改革をすすめていきました」
ファミリーマートDX戦略の三つの柱
ファミリーマートのDXには三つの柱があります。
オープン主義のデジタル基盤
PayPay、LINEPay等、他決済サービス導入及び、dポイント、楽天ポイント、Tポイントといったポイントサービスと提携。ニーズのあるナショナルブランドと提携して利便性を高める。
自社サービスでのデジタル顧客基盤の確立
他社ブランドだけではなくプライベートブランドでも決済サービスを提供。
ファミペイを使いたいという外部のリアル企業とも連携が可能。
未来の事業創出
ファミペイのデジタル基盤を元に、ビッグデータを収集。金融サービスや広告マーケティング分野で事業創出。
植野氏「〇〇Payが乱立している中、オフラインの小売企業であるコンビニがキャッシュを消しに行かずして誰がやる、という気概があります。現金よりファミペイの方が楽でお得だと思っていただけるようなサービスを提供していこうと思います」
キャッシュレス決済は今後普及するか
植野氏も語るように、〇〇Payが続々とサービス開始しています。2019年10月から消費税が10%となるタイミングで、「キャッシュレス・消費者還元事業」がスタートし、キャッシュレス社会へとより大きく1歩を踏み出します。
政府が掲げる「2025年までにキャッシュレス決済比率を40%に」という目標は実現できるのでしょうか。
参考:キャッシュレス・ビジョン
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf
スマホ決済サービスがインストール後利用されていない
MMD研究所が2019年9月に発表した調査結果では、PayPayやLINEPayなどのスマホ決済サービスをダウンロードした後、半数以上が利用していないという実態が明らかになりました。
しかし、「クレジットカードや電子マネーを使ってキャッシュレス決済を利用してみたい」と回答した人も半数以上です。
2025年まではあと5年あるため、キャッシュレス決済利用がこれから進むことも考えられます。
参考:MMD研究所
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1821.html
新ビジネスモデル創出のためのロードマップ
ファミリーマートのように、「キャッシュレス決済を基盤とした新事業創出」を行うためには、まずダウンロード数だけでなく利用者数を増やし、継続利用を促して他社での連携実績につなげていくというロードマップを実現していかなくてはなりません。
DX戦略を行う上で重要なポイントをおさえつつ、企業全体で改革を進めるファミリーマートが今後のキャッシュレス決済普及にどんな影響を与えるのか、注目していきたいと思います。