ディズニーリゾートのテクノロジーを小売業界に活かすヒント
「ディズニーリゾートには多くのお客様に満足してもらうために、たくさんの技術が使われていそうだけど、実際どんなものがあるんだろう…」
と思っている方。
確かにディズニーリゾートでは独自のテクノロジーを使って、販売や顧客体験の質をアップさせています。
とはいえ、具体的にどのようなテクノロジーが使われているかは、意外とわかりにくいですよね。
そこで、この記事ではディズニーリゾートのテクノロジーについて
- そもそもディズニーリゾートとは
- ディズニーリゾートのテクノロジーまとめ
の順に紹介します。
テクノロジーというと難しいイメージがあるかもしれませんが、概要を知るだけなら簡単です。まずはこの記事で、ディズニーリゾートのテクノロジーについてざっくりつかみましょう!
そもそもディズニーリゾートとは
ディズニーリゾートとは、ディズニーが提供するリゾート地のことで、ディズニーランドのようなテーマパークと直営のホテルなどの施設を指します。
日本には東京ディズニーランド、東京ディズニーシーがありますが、海外ですと
- アメリカ(カリフォルニア、フロリダ、ハワイ)
- 香港・上海
- フランス(パリ)
などがあります。
場所によっては小さな都市と同じくらいの規模があるディズニーリゾートも。特にアメリカのフロリダにある「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」は世界最大122km²の広さを誇り、アトラクション数は150以上、使われているテクノロジーも多いです。
続いては、ディズニーリゾートのテクノロジーをまとめてお伝えします。
ディズニーリゾートのテクノロジーまとめ
ここからはディズニーリゾートのテクノロジーを
- コマース系テクノロジー
- アトラクション系テクノロジー
の2つに分けて紹介します。
コマース系テクノロジー
まず、コマース系テクノロジーとは「直接お金のやりとりに関わる技術」をさします。
例えば
- アトラクションチケット
- レストランでの支払い
- ショップでの買い物
などです。
では、この「コマース系テクノロジー」はどこでどうやって使われているか、以下の順番で説明していきます。
- パーク全体で使える「マジックバンド」
- メニューの注文はスマホから「モバイルオーダー」
- 製品カテゴリーをAIで整理「Cloud AutoML Vision」
1. パーク全体で使える「マジックバンド」
まずご紹介するのはフロリダのディズニーワールドにある、「マジックバンド」と呼ばれる手首に巻くデバイスです。
マジックバンドには※RFID(ICタグ)が内蔵されており、お客さまはマジックバンドをつけているだけで
- ディズニーランドへの入場チケット
- ディズニーリゾートホテルのルームキー
- レストラン、ショップでの支払い
など、ディズニーワールド内でのさまざまなアクションが可能です。
また、マジックバンドはお客さまの行動を無線とビーコン(Bluetoothを使って情報を受発信するデバイス)によってトラッキング。ディズニーリゾート内でのお客さまの行動を計測・分析できます。
この計測によって
- 最適な施設の配置
- 売るべき商品
- 組み合わせるべきプラン
などについて大きな検討材料にすることが可能です。
※RFIDについて詳しくは「RFIDとは?RFID活用事例と最新無人店舗化RFID動向」をチェックしてみてください。
2. メニューの注文はスマホから「モバイルオーダー」
ロサンゼルスのディズニーリゾートでは、スターバックスやマクドナルドなどの大手を中心に、スマホから注文できる「モバイルオーダー」が導入されています。
お客さまは「ディズニーランド・リゾート・アプリ(Disneyland Resort App)」からレストランを検索。メニューから商品を選び、事前に登録したクレジットカードで決済します。
決済が完了するとともに、レストランでは専用の受取り口でオーダーが準備されます。
テーマパークの課題である待ち時間を少しでも減らすとともに、オーダーのミスやキャッシュレス化を実現しました。
3. 製品カテゴリーをAIで整理「Cloud AutoML Vision」
ディズニーでは製品カテゴリーをAIで整理する「Cloud AutoML Vision」を導入しています。
Cloud AutoML VisionとはGoogleが開発した機械学習テクノロジーです。専門のエンジニアがいなくてもディープラーニングを実現、どのような企業でもAIによる機械学習を活用できます。
ディズニーではこのCloud AutoML Visionを活かして、製品ごとに
- どのキャラクターの製品か
- キャラクターは何色か
- 製品自体のカテゴリは何か
などの基準で整理しています。膨大な量の商品を人の手で分類するとミスも起こる上に、種類が増えていくことでその難易度は上がり続けることを、AIに任せることで解決しています。
https://cloud.google.com/automl/
ここまでコマース系のテクノロジーについてご説明しました。
続いてはアトラクション系のテクノロジーを紹介します。
アトラクション系テクノロジー
アトラクション系テクノロジーとは、文字通り「アトラクションそのもの」に関わる技術です。
アトラクションなのでコマースには関係ないと思われるかもしれませんが、こうしたコンテンツテクノロジーをマーケティングの一環ととらえ、自社の事業に応用してみてはいかがでしょうか。
ここでは、
- 砂場に映像を投影「The Storytellers Sandbox」
- 複数人が同時にVR体験できる「DISH」
- プロジェクターによるAR投影「Dynamic Environment」
の順で見ていきます。
1. 砂場に映像を投影「The Storytellers Sandbox」
ディズニーでは砂場に映像を投影する「The Storytellers Sandbox」という技術を2009年に発表しました。
これはプロジェクターを使って砂場に映像を投影するもので、実際の山のように見えたり、海から波が来て流されるように見えたりします。
この技術は東京ディズニーランドでも「グーフィーのペイント&プレイハウス」などにおいて2012年より展開されています。
店内装飾やイベントなどの演出に利用し、インスタ映えを狙ってみてはいかがでしょうか。
2. 複数人が同時にVR体験できる「DISH」
ディズニーではVRを使ってお客さまを楽しませる工夫もしています。
「DISH」は、小部屋の中でいくつものプロジェクター使い映像を投影することで、複数人が360度あらゆる方向から映像を楽しむことが可能です。カリフォルニアや上海など、複数のディズニーランドで活用されています。
また、DISHは新しいレストランの設備を配置するための、シュミレーションにも使われています。アトラクションだけでなく、ディズニーリゾート全体での仮説検証を早めることができる技術がDISHなのです。
3. プロジェクターによるAR投影「Dynamic Environment」
「Dynamic Environment」は、プロジェクターによってAR(拡張現実)を実現するテクノロジーです。例えばドアのように、凹凸があるセットに画像を投影して、ディズニーの世界にあるような魔法のドアに変えることができます。
3Dプロジェクションマッピングという技術を使っており、どの角度から見ても自然に見えます。なので、お客さまはヘッドセッドを付けることなく、ストレスの少ない状態で臨場感のあるアトラクションを楽しむことが可能です。
プロジェクションマッピングについては「エンタメだけじゃない!プロジェクションマッピングを店舗運営に活かす方法」でもご紹介してみます。併せてぜひ参考になさってみてください。
ディズニーのテクノロジーを店舗運営に活かす
ここまでディズニーリゾートのテクノロジーについて紹介しました。まとめると、以下の6つをご紹介しました。
【コマース系テクノロジー】
- パーク全体で使える「マジックバンド」
- メニューの注文はスマホから「モバイルオーダー」
- 製品カテゴリーをAIで整理「Cloud AutoML Vision」
【アトラクション系テクノロジー】
- 砂場に映像を投影「The Storytellers Sandbox」
- 複数人が同時にVR体験できる「DISH」
- プロジェクターによるAR投影「Dynamic Environment」
ディズニーのテクノロジーを店舗に活かす、というと難しく感じるかもしれません。まずはモバイル決済からなど、少しずつ取り入れることをおすすめします。
この記事を書いた人
佐々木ゴウ
大手Sierや、ECコンサルティング会社での経験を活かし、ファッションや食品などの各種商品ジャンルから、バックオフィス、ITインフラ系まで幅広く執筆が可能。webライティングの講師や、メディアコンサルティング、採用系メディアの編集長なども請け負っている。趣味は盆栽。