BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)によって得られる効果
ビジネス・プロセス・アウトソーシング(以下BPOと表記)は、その名前にアウトソーシングとあるので、ともすれば人材派遣サービスや業務請負・委託サービスと同じように捉えられることもあります。
しかし、人事や経理に関してサービスを受ける企業が行うそれらと異なり、人材採用から使用するシステムの構築・管理、さらに給与や経費管理に至るまで、すべてを委託するのがBPOサービスです。
今回は、このBPO導入で得られるメリットや、BPO業者の取捨択一のポイントなどについて、以下の項目に沿って解説をしてまいります。
- BPOの導入で得られるメリット
- BPO業者を選ぶ3つのポイント
- 1、価格と実績のバランス
- 2、セキュリティー管理
- 3、自社の成長に対応できるか
- まとめ
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のメリット
一般的なアウトソーシングは、テレホンアポイントメントやカスタマーセンター業務、社内IoTシステム構築時の、ソフトウェアプログラミング・管理業務などが、その対象となります。
国内では北海道や沖縄など、人口の割に物価や地価が安く、併せて人件費も節約できる地域にコールセンターや事務処理施設を構えることにより、社内だけでそれらのコストを削減している企業もあります。
ですが、東南アジアや中国などに本拠を構える完全に独立した外部企業にそれを委託し、大きく運営コストを削減する企業も増えてきました。
BPOでは、冒頭で述べた通り限定的なアウトソーシングではなく、人事や経理といった業務をまるごと、経営戦略として外部委託することになるため、
- システム構築コストのカット
- 人件費・機材費の削減
- 事業所スペースのスリム化
などを図ることが可能です。
その結果、以下のようなメリットが得られると考えられます。
主要業務における競争力の強化
BPOの導入により、スーパーであれば商品の販売促進、保険代理店であれば各保険の加入渉外業務などといった、「利益享受業務」に集中することができ、ライバル会社との競争力を強められる。
業務の効率化
事務的業務を改善していくには、長い時間をかけた教育や熟練、さらにコストが必要だが、BPOを導入することでそれらをかけず、「自動的」に事務的業務の改善をすることができる。
コンプライアンスの向上
BPO請負業者は、長期にわたり顧客情報管理やIoTシステム開発・管理業務を専門的に行っているため、ISMS(※)などの認証を取得しているところが多い。また、経理関係業務では、グローバル化や法制度の変化への対応が求められる中、BPO業者はそれにスピーディーに対応していることがほとんどなので、セキュリティー管理やコンプライアンスの維持につながる。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業者を選ぶ3つのポイント
ただし、社外の人間に重要な業務を委託することになりますので、BPOを委託する業者の選定には、何より気を配る必要があります。
そこでここでは、BPO業者の取捨択一において、そのポイントとなってくることを、3つ挙げて解説をしてまいります。
1、価格と実績のバランス
コストを削減することも、大きな目的の1つであるBPO導入ですが、「安かろう悪かろう」では少々困りますし、だからと言って委託費用が高いと意味がありません。
BPO業者は、国内外に数多くひしめいていますので、選定の際には1社に決め込むのではなく、複数社から見積もりを取って、価格を比較するべきでしょう。
また、各BPO業者はその委託する業務の種類も規模もまちまちで、自社HPなどではどんな企業とこれまで契約し、どんな業務委託を担ってきたか詳細にアピールをしているので、自社の委託したい業務内容及び、ボリュームに合った業者を選ぶよう心がけましょう。
【ここがポイント!】規模が大きく価格も高ければ適したBPO業者という訳ではない
本文中で述べたように、BPO業者にはそれぞれ「得意分野」というものがあり、例えば
- システムエンジニアを数多く抱える「IT開発」専門
- 顧客管理に長けたベテランアポインターを揃える「コールセンター」専門
- 企業簿記・FP・会計士などの経理系資格取得スタッフで構成された「経理」専門
などの業者があります。
複数の業務を同時に請け負う、大規模なBPO業者もないわけではありませんが、当然専門性が高いほど熟練度を望め、複数業務を請け負う業者に比べると、料金もリーズナブルな傾向にあります。
大きな業務改善を求め、一気に多くの業務をBPOに転換する方法も取れますが、自社が苦手な分野や、コストがかさんでいるうえなかなか改善が進まない業務に絞り、BPOを採用するという手も考慮に入れておくとよいでしょう。
2、セキュリティー管理
BPOでは、自社の経理内容や顧客情報などを、そっくり渡して業務委託するわけですから、セキュリテー管理がルーズな業者に委託すると、自社の運営を危うくしてしまいかねません。
前述したとおり、BPO業者はその成り立ち上、どこもしっかりとした情報管理をしているのが基本ですが、新進気鋭のベンチャーなどでは、まだ徹底されていないこともありますので、業者選定の時にはセキュリティーポリシーの提示を求め、提出できない企業には依頼をしないよう心がけましょう。
セキュリティーポリシー・・・大切な情報資産をどのように取り扱うのかについて、そのルールを企業が社内・外問わず、総合的・具体的・体系的に取りまとめ、文書化したもの。
【ここがポイント!】IT系BPOでは特に重要
先日、仮想通貨取引所であるコインチェックにおける、「ネム」という銘柄の仮想通貨が大量流出、事実上盗難されるという事件が起きましたが、実在しないデータとしての仮想通貨のように、企業の情報資産も数多くの犯罪者にとってみれば「お宝」です。
大切なお金を預ける銀行を吟味するのと同様、BPO業者を選定する際にも念に念を入れて、そのセキュリティー管理がどうなっているか、しっかりと複数業者でチェックするようにしましょう。
3、自社の成長に対応できるか
これは、BPOの導入が功を奏して業績が向上し、併せてコスト削減などで企業規模が大きくなってきたケースで考慮していくことでもありますが、自社の成長に伴い契約するBPO業者を、「選び直す」必要性も出てきます。
前述したように、基本的にBPOを初めて導入する際には、できるだけ単体業務に絞り込んで業務委託をした方が、コスト的に望ましいのは確かです。
ただし、業績の向上によりビジネスが拡大し、業務に多様性が増してきたケースでは、各業務を分けて委託するより、複数の業務を請け負える業者にスイッチしたほうが、効率的である場合もあります。
また、単一業務であっても、顧客数の増加や経理規模の拡大に伴い、契約していたBPO業者の処理能力が追い付かないケースも出てきます。
この場合、増えた業務に対応できるかの見極めが必要となってきますので、契約をしているBPO業者にそれがあるのか、過去の実績などを提示してもらって確認し、対応できないと判断した場合は契約の解除や、BPO業者の再選定をするべきでしょう。
【ここがポイント!】短期BPO業者選定にはセンスも必要
BPOには、
- 公式HPデザインの外部委託
- 商品ロゴ・キャッチコピー制作
などといった、短期間で業務を委託するものと、コールセンターや経理業務のように、長期的なスパンで業務委託をするものの2種類があります。
ここまで触れてきたものは後者にあたり、この項でも触れたようにその選定では、業者の実績チェックや、事業規模の確認などがその参考となります。
ただし、前者のケースではこれまでの実績などより、経営者や担当者のビジネス感覚・センスなどが、その採用基準となってきます。
まとめ
BPOを採用すれば手軽に、しかも効率よく自社の業務を改善することができますが、大切なのは業者選びになってきます。
ここで解説した、その選定ポイントをしっかりと抑えて、ビジネスの飛躍につながる、優秀なBPO業者を探すようにしましょう。